書店に行くと中国ビジネスに関するノウハウ本が多く置かれており、少なからずの人がそれを買い求めては参考にしてきたことかと思います。そして、その手のノウハウ本でよく書かれている内容として、「中国企業はなかなか支払わない」という債権回収の問題がよく取り上げられています。現地にいてもよく聞く話なので特に現場の最前線にいる人だと実際にその通りだと実感している人も多いでしょう。
日本と大きく違う点は中国の場合は会社に体力があるにもかかわらず支払い条件が悪いケースが見られる点です。支払い条件が悪いといっても一体どれくらい悪いのかがあやふやで、そのあやふやな情報だけを頼って事業計画を立てるわけにもいきません。ここではより分かりやすくするために数字で検証してみることにしました。業界としては近年中国内販が注目されていることもあり、消費者向けの業種として家電量販店業界及びスーパーマーケット業界を取り上げました。なお、できるだけ業態を合わせるべく基本的には単体決算の数値をベースとしていますが、決算数値より業務を細分化できないものについては連結ベースの数値に基づいています。
家電量販店業界
支払い条件の良し悪しを比較するに当たり、日本企業と比較するのがわかりやすく、ここでは月商に対する仕入債務の数値で比較します。中国企業からは家電量販店の2トップともいえる蘇寧電器と国美電器を取り上げます。日本企業からはヤマダ電機とビッグカメラを取り上げました。
仕入債務 |
蘇寧(単) |
国美(単) |
ヤマダ電機(単) |
ビッグカメラ(単) |
月商比 |
4.0 |
3.4 |
0.4 |
0.9 |
中国企業は12月決算、日本企業に関しては決算期が異なることもあり、上記数値は季節要因等を反映していませんが、すくなくとも中国企業の決済条件が日本企業よりもはるかに厳しいことがわかっていただけると思います。
スーパーマーケット業界
中国企業は物美集団と華聯超市を取り上げます。こちらも同じく中国企業は12月決算、日本企業に関しては決算期や業態が異なることもあり、必ずしも公平な比較ができているわけではありませんが、それでも中国企業の決済条件が明らかに日本企業よりも厳しいことがわかります。
仕入債務 |
イズミヤ(単) |
イオン(連) |
物美(単) |
華聯(単) |
月商比 |
0.7 |
1.7 |
2.4 |
2.8 |
以上からわかるように、サプライヤーから見た場合中国企業が日本企業よりも支払い条件が厳しいのは一目瞭然ですね。
国によって商習慣が異なり、中国企業のサプライヤーに対する支払い条件が厳しいというのは上記の数字が示すとおりです。海外でビジネスを展開する前に様々な情報を調べたうえで進めていくかと思うのですが、その情報がより精緻であればあるほどリスクを軽減させる対応方法も明確になってきます。支払い条件については収集すべき情報の一例として取り上げたまでであり、これ以外にも収集すべき情報はたくさんあります。それらを通じてリスクを0にすることまでは不可能ですが、軽減させることはできるはずです。そもそもリスク0の事業展開などあり得ないのですからね。