呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国の最新情報を上海・東京・神戸を拠点に活動する株式会社TNCリサーチ&コンサルティングの呉明憲が紹介します。

ホームセンターB&Qが苦戦中

2012年07月25日 | 日記

 ヨーロッパ最大のホームセンターであるイギリスのB&Qの中国での業績が思わしくありません。

 

 

 

 B&Qの2012年第1四半期の中国エリアの売上高は前年比6.8%のマイナスで、500万ポンドの赤字となり、なんとこれは中国エリアでの6年連続での赤字となります。1999年に中国に進出してきたB&Qは2005年にドイツのOBIというホームセンターの中国業務を買収し、店舗数を63店舗にまで伸ばしました。その当時は2010年には中国の30都市で100の店舗を出店し、年商150億元を目指すと息巻いていましたが、現状は全く計画通りではありません。2007/2008には赤字額が2800万ポンドにまで達してしまい、巻き直しを図るために2009年に「Transformation」(モデルチェンジ)を核とする「T計画」なる計画を策定し、店舗イメージ、レイアウトデザイン、製品陳列、品揃え、顧客サービス等のレベルアップに着手したものの、状況を好転させることはできませんでした。この間にB&Qは20以上の店舗を閉店し、その他の店舗でも縮小を行っています。例えば南京では今年初めに1店舗へ移転し、元々4店舗あったのが現在では1店舗のみとなっています。

 

 B&Qがこのような状況である一方で、中国地場系の紅星美凱龍、居然之家といったところは猛烈に拡張しています。確かにこの二つはB&Qよりも全然見かけます。B&Qがなぜしんどいか、第一財系の新聞記者がB%Qの元職員にインタビューしたところ、B&Qの「内装センター+小売」モデルへの過度の依頼、特に二三線都市では思っていたほど顧客から認められなかったとのことです。内装センターというのは、B&Qが用意したチームが内装設計と製品の購買を担当し、そして製品の85%はB%Qから購入しなければならないというものです。B&Qで売られている商品の価格は相対的に高いこともあり、多くの消費者がB&Qで建材等を購入して内装するのはちょっと受け入れがたいようです。この他、商品のサプライヤーの中にはB&Qはサヤを取り過ぎ(要するに仕入れ価格をたたき過ぎ)と指摘しているところもあり、実際に2007年には上海雅迪尔居飾用品有限公司という会社がB&Qに対しての商品納入をストップしてます。苦戦している外資ホームセンターはB%Qだけではありません。アメリカのホームデポも苦戦しています。本体は堅調なのですが、中国では12店舗あったのが5店舗閉鎖しています。

 

 なぜ外資のホームセンターが苦戦するのか。言われているのが、中国人消費者の習性を分かっていないという点です。例えば、中国国外ではDIYという観念があり、自分でちょっとしたやちょっとしたことをちょっと超えるレベルくらいのことをやる人が多いですが、中国人の場合はマンションに住んでいる人も多く、自分で手を動かしてあれこれいじる部分も多くなく、内装会社に任せてしまうケースが多いという点です。もう一つはやはり価格面の問題です。外資系が行っているような集中購買、集中販売、統一されたアフターサービスというスタイルは消費者にとって方向性としてはいいのですが、いかんせん価格が高いというのがネックになっています。まあ、ホームセンターで買うということ自体安く上げようという発想で買いに行くわけですから、価格面もより敏感になるのでしょう。

 

 しかし価格設定というのは本当に難しいと思います。普通に考えれば安いに越したことはないでしょうが、安いものはクオリティが低いとみられがちです。つまり安い価格設定をするとクオリティが低いに決まっているでしょうとみる人もいます。そう見られないためにクオリティ相応の価格、要するに高めに価格設定をすると、価格が高いので買いづらいという問題が出てきます。こうなるとどのかかくがど真ん中ストライクなのか非常にわかりづらいです。後からこうだったというのは簡単ですが、それを先に読んでおく必要があります。ターゲットとしている顧客セグメント、商品そのものの特性、当然同類商品の動向もよく見極めていかないと価格設定を外してしまうことになってしまいます。これらを総合的に見て初めてど真ん中ストライクとまではいわなくともストライクゾーンに塚づけていけるのではないかと思います。まあ、言うは易し行うは難しです。輸入品なんて物流コストは関税コストもかかってきますので、周りに合わせた価格設定をすること自体が難しいですし。この辺り本当に難しいですね。