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極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

大海無門の国際仲裁

2016年07月13日 | 時事書評

 

 

                       

                 現状のように「体制-反体制」の対立や左翼性が消滅した時代が続き、その都度の
            「イエス・ノー」が時代を動かすことになるんじゃないでしょうか。


                                            
                             Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 

 

Tribunal Rejects Beijing’s Claims in South China Sea July 12, 2016 The New York Times

【国際仲裁裁判:中国の南シナ海支配を認めず】

12日、南シナ海を巡り、フィリピンが申し立てた国際的な仲裁裁判で、裁判所は中国が主張する南シナ
海のほぼ全域に
わたる管轄権について、「中国が歴史的な権利を主張する法的な根拠はない」などと判断
し、中国の管轄権を全
面的否定。中国が南シナ海のほぼ全域の管轄権を主張しているのに対し、フィリピ
ンは「国際法に違反している」などとして33前、仲裁裁判を申し立て、国際法に基づく判断を求めてい
た。

オランダのハーグで審理を行った仲裁裁判所は、この中で、裁判所は、南シナ海に中国が独自に設定した
「九段線」と呼ばれる境界線の内側に「主権」や「管轄権」、それに「歴史的権利」があると主張してい
ることについて、(1)中国が、この海域や資源に対して歴史的に排他的な支配をしてきたという証拠は
ない
と指摘し、(2)九段線の内側の資源に対し中国が歴史的な権利を主張する法的な根拠はないと中国
側の主張を退け、(3)さらに、中国が最近行った大規模な埋め立てや人工島の造成は、仲裁手続き中に
紛争を悪化させたり、拡大させたりしないという義務に反すると判定し、南シナ海の問題を巡り、国際法
に基づく判断が初めてしまされた。仲裁裁判では原則として上訴することはできず、今回の判断が最終的
な結論となる。

中国政府は日本時間の12日夜、「南シナ海の領土主権と海洋権益に関する声明」で、中国人は南シナ海
で2000年以上の活動の歴史がある。中国は南シナ海の島々と周辺海域を最も早く発見して命名し、開
発していて、最も早く、持続的、平和的、かつ有効に主権と管轄権を行使し南シナ海の領土の主権と関連
する権益を確立したとし裁定を拒否。これに対し、
フィリピンのペルフェクト・ヤサイ外相は、「この画期的な判
断が南シナ海を巡る問題の解決に向けて重要な役割を果たすと確信していると述べた上、現在、判断の詳細につ
いて検討をしているが、関係者には、抑制的に、かつ落ち着いて対応するよう呼びかけているし、判断を歓迎する
一方で、中国に対する配慮もにじませる。

また、台湾の総統府は、12日夜、声明を発表し、今回の裁判の過程で、台湾が実効支配する太平島が「島」では
ないとして排他的経済水域を認めない判断意見は求められなかったとして手続きに不満を示し、絶対に受け入れ
られず、法的な拘束力はない」として、強く反発する一方、平等な協議を基礎に、関係国と共同で南シナ海の平和
と安定を促進することを願うとして、対話を通じて平和的に問題を解決すべきだとの立場も示した。

この裁定に岸田外務大臣は、日本は、海洋を巡る紛争の解決には法の支配と力や威圧ではなく平和的な手
段を用いることの重要性を一貫して主張してきた。当事国は、今回の仲裁判断に従う必要があり、日本と
しては、当事国がこの判断に従うことで、今後、南シナ海における紛争の平和的解決につながっていくこ
とを強く期待するとし裁定を歓迎した。

フィリピンと同様と中国と対立するベトナム外務省のレ・ハイ・ビン報道官のコメントを発表。裁判所が
最終的な判断を示したことを歓迎する」と述べベトナム政府として国際法に基づく判断が示されたことを
評価した上で、地域の平和と安定のため、南シナ海の問題が武力や脅迫ではなく、外交プロセスや法律な
ど平和的な手段で解決されることを強く支持することを表明している。

さらに、シンガポールの外務省は、小さな都市国家であるシンガポールとしては、法に基づいて秩序が維
持され、すべての国の権利が守られることを求めるとして慎重な表現をしながらも中国を念頭に今回の判
断を尊重するよう求め田植えで。すべての関係国に対し、法と外交的な手続きを尊重し域内での緊張を高
める行動を控えるよう求めると述べ、各国に、挑発的な行動を取らないよう呼びかけた。

一方、韓国は、公式の見解は発表せず静観。韓国としてはこれ以上、中国との関係が冷え込むことを避け
たい考えで、裁判所の判断にどのような立場を示すのか難しい判断を迫られている。

米政府は12日、仲裁判断は最終的かつ紛争当事国を法的に拘束するものと見なすべきであり、緊張を高
める理由にしてはならないとの見解を示す。アーネスト米大統領報道官は、判断を挑発行為に関与する機
会として用いないよう、すべての当事者に求めると呼びかけ、またこれに先立ち、国務省のカービー報道
官は、南シナ海における紛争の平和的解決という共通目標に大きく貢献するものとした上で、「米国はす
べての当事者がそれぞれの責務を順守するよう希望すると述べている。

アメリカの有力紙「ニューヨーク・タイムズ」の電子版は、今回の裁判は国際的な影響力を強める中国に
とって重要な岐路になる。周辺の国々は、中国との交渉のしかたについてモデルが示されるだろうと期待
していた。裁判所は中国の南シナ海での活動を非難する決断を下した。インドネシアなどの国々は、この
判断が中国の主張に疑問を投げかけ、自国の経済水域の保護につながることを望んでいると伝えた。

また、イギリスの公共放送BBCはオランダのハーグ、フィリピンのマニラ、それに中国の北京からそれ
ぞれ記者が中継を行い、関心の高さをうかがわせ、このうち、マニラの記者はフィリピンのヤサイ外相の
記者会見について、フィリピン政府の反応は控えめなものだった。ドゥテルテ大統領は裁判所の判断に対
する控えめな反応の見返りに、中国から投資の約束を取り付けようとしているという見方も出ていること
を指摘している。(NHK NEWS WEB 2016.07.15 18:16 など参考

以上、関係国の報道を俯瞰してみた。国際法を無視した国家行動により、中国政府は窮地に追い込まれ、
どのような反撃に出るのか要注視(主要注意Zhǔyào zhùyì)。



Beijing rejects tribunal's ruling in South China Sea case | World news | The Guardian July 12, 2016


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【参考:南シナ海仲裁判断、なぜ重要か】  ロイター 
2016.07.12 (抜粋)

2013年、フィリピンは、中国が国連海洋法条約(UNCLOS)に違反し、同条約で認められた200カイリの排他的
経済水域(EEZ)に含まれる南シナ海で開発を行う自国の権利が制限されているとして、仲裁裁判所に提訴した。 
中国は、フィリピンの提訴によって審理を進められることに対して繰り返し警告し、聴聞会への参加も拒否してきた。
裁判官を任命する権利も無視している。仲裁裁判所には権限がなく、南シナ海における中国の歴史的権利と主権
は、UNCLOSが定められるより以前から存在していると同国は主張。

UNCLOSは主権に関する問題は扱わないが、海上における行動のみならず、さまざまな地理的特徴から国が主
張できることを規定している。同条約は島嶼(しょ)や岩礁から12カイリを領海とし、ヒトが持続して居住可能な島か
ら200カイリをEEZと定めている。EEZは主権のある領海ではないが、同水域内において漁業や、石油、ガスなど
の海底資源を採取する権利は与えられる。

中国とフィリピンを含む167カ国がUNCLOSに署名している。米国はそのなかに含まれていないが、南シナ海に
おける海上パトロールなどにおいて、同条約を国際的な慣例法として認識している。

※  国連海洋法条約 Wikipedia
※  大洋に面した主な国連海洋法条約の非締結国としてアメリカ合衆国、トルコ、ペルー、ベネズエラが
  ある。

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【帝國のロングマーチ 16】     

      

● 折々の読書  『China 2049』36     

                                          秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」 

 

ニクソン政権からオバマ政権にいたるまで、米国の対中政策の中心的な立場にいた著者マイケル・ピル
ズベリーが自分も今まで中国の巧みな情報戦略に騙されつづけてきたと認めたうえで、中国の知られざ
る秘密戦略「100年マラソン( The Hundred-Year Marathon )」の全貌を描いたもの。日本に関する言及
も随所にあり、これからの数十年先の世界情勢、日中関係そして、ビジネスや日常生活を見通すうえで、
職種や年齢を問わず興味をそそる内容となっている。 
     

 【目次】 

   序  章  希望的観測
 第1章 中国の夢
 第2章 争う国々
 第3章 アプローチしたのは中国
 第4章 ミスター・ホワイトとミズ・グリーン
 第5章 アメリカという巨大な悪魔
 第6章 中国のメッセージポリス
 第7章 殺手鍋(シャショウジィエン)
 第8章 資本主義者の欺瞞
 第9章 2049年の中国の世界秩序
 第10章 威嚇射撃
 第11章 戦国としてのアメリカ
 謝 辞
 解 説 ピルズベリー博士の警告を日本はどう受け止めるべきか

            森本敏(拓殖大学特任教授・元防衛大臣)   

 Chinese Killer Spear

   第7章 殺手鐗(シャショウジィエン)  

                   難知如陰、動如雷震
                   ――知り難きこと陰の如く、動くこと雷の震うが如し  

                                    『孫子』軍争篇 

  わたしが人民解放軍の資料や文書で見つけた、もう一つの重要な誤解は、中国が勢と時流を自国
 に有利な方向に傾けるために、「打撃増勢一を実行しようとしていること
だ。「打撃増勢」という
 言葉はしばしば中国軍の教科書に登場し、軍内部で議論されて
いるが、「力強く叩き、勢を高めよ」
 という意味である。近年の歴史で中国が武力を行
使したのは、領土を広げるためではなく、むしろ
 政治的な理由から、すなわち、心理
的ショックを与える、危機的状況をひっくり返す、あるいは既
 成事実を作り上げるた
めだった(注40),1950年の朝鮮戦争への介入(注41)、インド(19
 62年)、ソ
ビエト連邦(1969年)、ベトナム(1979年)への驚くべき攻撃に見られるよ
 う
に、中国の指導者は、軍事衝突では先制攻撃が結果を左右し、それによってより幅広い政治的討
 論(領土紛争など)の土台を築くことができると信じている。特に195
0年というアメリカの軍
 事力がはるかに勝っていた(核を独占し、鴨緑江を越えて北
へ進軍可能な10万の部隊、射程距離
 に迫る航空母艦を持っていた)時代に、朝鮮戦争
に介入し、英米を敵に回したことは正気の沙汰で
 はなかった。1950年当時の、中
国の指導者の計算は、軍事バランスの正当な評価に基づくもの
 ではなかったのだ。そ
して現在、米中間で軍嘔衝突が起きるとしたら、最も可能性が高いのは、中
 国の指導者の誤解と、「打撃増勢」をしても大規模な戦争に拡大することはないという計算による
 ものだろう。

     Thomas C. Schelling

  公に述べられることはめったにないが、中国を扱うアメリカの政策立案者と防衛専門家は揃って、
 中国の指導者に深く根づく疑念は米中のどちらも望まない戦争をもたらす、と考えている。199
 7年から2000年まで東アジア・太平洋問題担当の国務次官補代理を務めたスーザン・シャーク
 は、「台頭する中国との避けがたい衝突は、非常に現実味を帯ぴてきている」と警告する。それは、
 「発展し経済的に成功すればするほど、中国は不安と恐怖を募らせていく」からだ(注42)。台頭
  する中国へのアメリカのアプローチの仕方によって、「その責任感を強化することもできるが、逆
 に感情的な性質に火をつけることにもなる」と論じる(注43)。他の中国の専門家もこの見方を繰
 り返している。CIA分析官として長い経験をもつロバート・シュティンガーは中国上層部の政治
 的意思決定システムは「不透明で、風通しが悪く、信用できず、頑なに官僚的で、指導者の意向に
 おもねる傾向があり、その戦略思考は教条的である」と見る(注44)。



 「打撃増勢」を実行するために、人民解放軍は殺手蹟を必要としている。中国の官僚は軍部が殺手
  胴を開発していることについて、アメリカ人に話すのをひどく嫌がる。わたしが高位の軍事戦略家
 にそれについて尋ねたとき、彼は、そんな言葉が使われるはずがない、と言った。しかしわたしは、
 3冊の軍の本と、中国の現代の軍事戦略家による20扁以上の論文に目を通し、その断片的な記述
 をつなぎ合わせて、中国人が議諭し、すでに作っている殺手鐗の兵器の概要を描くことができた。

  殺手鐗は、それが破壊する兵器よりはるかに安価である。そして可能なかぎり秘密裏に開発され
 ている。戦時においては、敵が準備を整える前の、決定的瞬間に使用される。それが敵に与える影
 響は、混乱、衝撃、恐れ、そして圧倒されたという感覚だ。2002年に国防総省が議会に提出し
 た中国の軍事力に関する報告書にあるように、中国の戦略は「敵の軍事行動を指揮するハイテク能
 力を混乱させることにより、敵の軍事行動をスタートから妨害し遅延させる作戦と、大いなる脅威
 である敵のハイテク兵器の種類と場所を特定する作戦を含む」と強調する(注45)。

   昔話に語られる殺手鐗は一つの武器だったが、現代の殺手鐗は、非対称兵器全体を指す。中国空
 軍の上級大佐、ヤン・ジボは記す。「殺手鐗を作るには、中国はまず、開発プログラムを完成させ
 なければならない。それは困難な組織的プロセスであり、開発する新兵器は一つや二つではない。
 それはあらゆる軍務が利用するものだ。全軍で、あらゆる場所で使用される、陸、海、空混合シス
 テムである( 注46
)」

  Civil-Military Change in China

  中国の元首席、江沢民は、殺手綱の強力な推奨者で、中国がその計画に着手したのは、1990
 年代の彼の指示によるものだった。1999年、江沢民は軍の指導者に、「国の主権と安全を守る
 ために必要な殺手鐗を、可能な限り迅速に手に入れる必要がある」と語った(注47)。その年の後
 半に、江は、中国は「主権と安全を守るために、できるだけ速く、いくつかの新しい殺手鐗に習熟
 しなければならない」と繰り返したる」と語った(注48)。その年の後半に、江は、中国は「主権
 と安全を守るために、できるだけ速く、いくつかの新しい殺手鐗に習熟しなければならない」と繰
 り返した(注49)。また2002年には、「中国は大国として世界の覇者と戦うために、いくつか
 の殺手鐗兵器を作るべきだ」と述べた(注49)。そして、同じ年、台湾との紛争の可能性について
 論じる時に、「いくつかの殺手謂兵器を精力的に開発し、装備することが必要である」と言った
 (注50
)。その翌年、江は再び、「新しい殺手鐗は、われわれの国家の主権と安全を守るために必
 要だ」と強調した(注51)。あるアメリカ人の専門家は、北京にこの任務を遂行するための公式な
 オフィスがあると断言する。

  となると、疑問が浮かび上がる。江沢民はだれに対抗して中国の主権を守る必要があると考えて
 いたのだろうか。答えは、「世界の覇者と戦う」という言葉が示す通り、アメリカである。現代の
 軍事状況では、殺手鐗の構想はすべて、アメリカの弱点を突いて、アメリカを無力にする方法を見
 つけることに注がれている。中国の国防大学の外国軍事研究部門の長であるリ・ジユン少将が、ア
 メリカの軍事的弱点を詳述した64名の軍の著者による論文をまとめた書籍を出版したのはそのた
 めだ(注52)。その本の主題は、殺手鐗戦略をもってすればアメリカを敗ることができる、という
 ものだった。



  よく知られるアメリカの弱点の一つは、ハイテク情報システムに頼りすぎていることだ。そして
 世界において中国ほど、アメリカの軍、経済、情報、インフラに関わるコンピューター・システム
 の防御態勢と脆弱性の探究に熱心な国はない。米中経済・安全保障再検討委員会の委員を務めたラ
 リー・ウオーツェルによれば、「中国政府がアメリカに対して大規模なサイバー諜報活動を指示し、
 実行していることを示す強力な証拠があがっている(注53)」。中国は常に、そのような攻撃を否
 定するが、人民解放軍には16のスパイ活動部門があり、「サイバー・ペネトレーション(コンピ
 ューターの弱点の発見)、サイバー諜報活動、電子戦に専念している(注54)」。

12日、ワシントン・ポストは、オバマ政権が核兵器なき世界を目指す新たな核政策の検討に着手し、
択肢の中に核兵器の先制不使用を宣言することも含まれていると報じたが、これは勇気ある行動であ
る。
先回(「帝國のロングマーチ 15」)の反植民地主義(=ロシアマルクス主義遺制)
の過度な軍事戦略
の特徴を見てきたが、今回は米国の過剰な軍事行動のミラー(写像)的側面から考えてみた。そこに、オ
バマ大統領の「核兵器の先制不使用構想」と国際仲裁裁判の「中国の南シナ海支配を認めず」の情報が入
ってくる。仮に、後者の主張が米国議会で承認されれば、押し進めれている中国の「開発独裁」と「軍事
的覇権」の2つの政策は国際的に窮地に立たたされる。それでも強引に「ロングマーチ」をつづけるだろ
うが、それは、ロシアと同様に、巨大なドラゴンの後進性を世界に露わにするだけなのだが、どうする?



                                        この項つづく

  

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鯰七変化

2016年07月12日 | 新自給自足時代

 

 

                       

                   結局、人間の欲望を満たす、あるいは解放する方向にしか、文明は進んでいかない。
                   都市はその象徴的な場所なんですよ。

                                            
                             Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 

                           ※ だとしたら、崩壊しかないよね?!という、反質にどう答えるのだろう。

 

Kinki University farms catfish that taste like eel, The Japan Times,  Oct  15, 2015

● 鯰七変化:養殖魚工場時代へ

11日、流通大手のイオンは、絶滅が危惧されるニホンウナギの代替品として近畿大学が開発したナマズ
の販売を始めると公表。30日の「土用の丑(うし)の日」の目玉商品として、下旬からナマズのかば
焼きを売り出す。ニホンウナギは近年資源量が減少し、国際的に絶滅が懸念されている。クロマグロの
養殖で知られる近大は、かば焼きやうな丼の需要を支えるため有路昌彦教授らの研究グループがウナギ
の代用品となるナマズの開発に着手。ナマズ特有の泥臭さを消すため、水やエサの工夫を重ね、昨年、
ウナギ味のナマズの開発に成功している(上写真ダブクリ)。

 

Global fish production approaching sustainable limit, UN warns, theguardian, July 7, 2016

折しも7日、英国のガーディアン社によれば、25年までに漁獲量が17%上昇、国際的な魚類資源の
約90パーセント――例えば、世界的な人気のマグロの漁獲量が70年以降3倍以上に膨れあがっり、
地中海、黒海海域でが60%の乱獲率にある――が乱獲との危機
にあするとの国連食糧農業機関(FAO)の
調査報告を伝えている。また、同報告によると、21年には供給源として養殖魚が天然魚を追い越す。さらに、養
殖魚は、外来種による紊乱、病気や寄生虫の蔓延などのリスクだけでなく、化学物質汚染や遺伝子改変による
リスクが高まることが懸念する。



The State of World Fisheries and Aquaculture 2016 FAO

さて、近大がこれまでに行ったテスト販売では、消費者から「ウナギと似ている」「また食べたい」など支持する声
が多かったというが、ただ、供給量が少ないため、イオンの販売も一部店舗に限定される見込み。近大は今後の
拡販に向け、量産態勢を整える方針とのこと。ところで、14年6月に
 イオンリテール(株)と世界自然保護基
金(WWF)ジャパン
は、ASC認証つきパンガシウスが日本中のイオン各店で白身魚として発売されるこ
とを記念する共同イベントが開催されている。いずれにしろ、養殖魚工場の貴重な食品として鯰が、蒲
焼き、刺身、ちり鍋(水煮)、天ぷら、照り焼き、煮付け、肝汁として"七変化”していくことを25年
前に夢見たわた(たち)には朗報である。

 Jan 24, 2010 Gokutou Gokuraku

 

朝日新聞デジタル July 12, 2016

● 我が家の2016参院選総括

選ぶべき政党がないなか(「投票する政党がない!」2016.6.26.)、日曜の親父の月命日に参る前に彼
女と二人で投票に行く。車の中で、地方区は、民進党、比例区は、おおさか維新に決めた、きみには強
要しないがねと。地方区での出口調査結果(上グラフ)によると、初当選した自民新顔の小鑓隆史氏に
は、自民支持層の9割近く、公明支持層の8割が投票。「支持政党なし」「わからない」を合わせた
党派層も3割が小鑓氏に投票したとした。3選を目指した民進現職の林久美子氏には、民進支持層の9

割以上が投票。野党共闘して推薦を得た共産の支持層、社民の支持層の9割からも票を得た。3年前の
参院選
では民主現職への投票が30%にとどまっていた無党派層は、今回63%が林氏へ投票。無党派
層の過半数が
民主候補に投票した2010年(56%)、07年(68%)の参院選に近い水準。

また、比例区での投票先をみると、小鑓氏に投票した人の比例での投票先は自民へ65%、公明へ10
%、おおさか維新へ11%。林氏に投票した人の投票先は民進へ43%、共産へ19%、おおさか維新
へ12%、社民へ3%などだったという。さらに、投票の際、何を最も重視したか、との問いには「景
気・雇用」が32%、「社会保障」が22%、「子育て支援」が13%、「憲法」が12%など。「景
気・雇用」を重視した人の66%が小鑓氏に投票し、「子育て支援」を重視した人の54%、「憲法」
を重視した人の79%が林氏に投票した。「社会保障」については両氏への投票が拮抗。さらに
 今の
憲法を変える必要があるか、との問いには「変える必要がある」が52%、「変える必要はない」が
42%、無回答が6%だった報じている。

同日、同社はまた、「党名に「おおさか」いらない 吉村大阪市長、変更を提案」と報じている。それ
によるおおさか維新の会で常任役員を務める吉村洋文・大阪市長は11日、12日に開く党常任役員会
で新党名を提案する意向を示した。市役所で記者団に「国政政党として実績を全国に広げていくという
意味で、党名を変更すべきだ。『おおさか』は外し、『維新』は残すべきだ」と述べた。党代表の松井
一郎・大阪府知事も10日夜、党名変更を検討する考えを示しており、変更の流れは固まりつつある。
一方、おおさか維新幹部は11日、河村たかし・名古屋市長率いる地域政党「減税日本」に改めて合流
を打診したことを明らかにした。「おおさか」が付く党名が合流の壁の一つになっていたため、「党名
変更時に合流を」と呼びかけたとのことである。

自公民が勝つことは早々とわっていたことで、野党の対応がそれに抗せないと判断があり、地方区は、
民進党に投じたのは、一方的に勝つことに抵抗し投票したというのがわたしの動機である。ところで、
どこに投票したのかと彼女に問うと、あなたと同じよと応じたので、しおうらしいことを言うねと答え
る。

ところで「アベノミクス」の経済政策の評価はこのブログでも掲載しているが、「高橋洋一の俗論を撃
つ」の『日本が英EU離脱で緊急対応すべき4つの経済政策』(ダイヤモンド・オンライン 2016.06.30)
で下記の様に箇条書きする。

  1. 消費増税は延期ではなく、凍結にすべき
  2. 日銀の政策決定会合を臨時で開催して、量的緩和30兆円増
  3. 参院選後の補正予算で、財政支出 60兆円(20兆円×3年)。財源は、埋蔵金、財投債、国
    。支出対象はインフラ整備、減税+給付金
  4. 事実上無制限の為替介入。そのために、今の介入枠を参院選後の補正予算で引き上げ

ここで、3.の埋蔵金とは、国の各省庁が管理する特別会計の積立金や剰余金をいう、民間で言うとこ
ろの「ぶづみ」「引当金」などの勘定科目に当たり、会計上リスク対策(=安心代)で、B/C分析次
第では廃止してよい。問題は支出対象のインフラ「整備」の中身(質量)で、「事業瑕疵(リスク)」
の事前評価と中間評価と事後評価、「なし崩し」「黙認」というバイアス(=悪弊)の払拭。

ところで、高橋洋一によれば、イギリスの遠い将来はいいかもしれないが、当面は経済混乱が続くだろ
う。それに対し日本は、リーマンショックの時に「蜂に刺されたようなもの」と言って、無為無策の状
態であった。今回はその愚を繰り返してはならず、備えなければいけないと指摘しているが傾聴に値す
る。

 

【百名山踏破記:甲武信岳】

● 準備:8月中旬/1泊2日/雨天順延

ここ数日は体調が優れない(眼精疲労と不規則な睡眠・暴飲暴食?)が、いよいよ甲武信ヶ岳(こぶし
がたけ)に挑戦するは準備を始める。この山は、山梨県・埼玉県・長野県の3県境の標高2475メー
トルの山で、奥秩父山塊の主脈の中央に位置する。甲武信岳(こぶしだけ)とも呼ぶ。

甲州(山梨県)、武州(埼玉県)、信州(長野県)の境にあるのでこの名になっているとされる説と、
山容が拳のように見えるからという説がある。千曲川(新潟県に入ると信濃川)、荒川、笛吹川(釜無
川と合流し富士川となる)の水源の地。頂上に三角点はない。また、すぐ隣の三宝山のほうが標高が僅
かに高い。日本百名山の一つ。

コースは。山梨県側ルートのピストン。西沢渓谷入口から徳ちゃん新道(戸渡尾根)を通って登るルー
トが一般的である。長野県側から登るよりも、東京からのアクセスは良いものの、登りに5時間40分
(標準時間)もかかり、日帰りは厳しい。西沢渓谷入口までは中央本線塩山駅からバスが出ている。登
山道中はほとんど樹林帯で展望の良い場所は少ないが、シャクナゲが多く自生している。シャクナゲの
見頃は5月末から6月。



    

● ライトと電子機器

電気を使う道具にはバッテリー切れ、落下や水漏れによる故障か起こりうる。本当は確実性のない電気
機器は山中
で一切使わないで済むといいが、実際はそういってもいられない。夜の行動を可能にするヘ
ッドライト、情報収集に
役立つ多機能時計やラジオ、GPSなど、どれも安全性の向上に直結するもの。
ヘッドライトの主役は、電池が長持ちし、ライトの玉切れもないLED。遠くまで光が届く高照度タイ
ブなら暗い
道も安全に歩ける。低照度タイプはバッテリー交換をせずに100時間以上も使えるものが
あり、キャンプ生活には
適度な明るさ。しかし使い始め以外はそれほど明るくなく、暗い場所を歩くに
は注意か必要。それら2種のLEDを使い分けられるハイブリッドタイプも便利である。

SONY ICF-R354M    SmartWatch2 SW2

現在地の確・認に役立つのは、GPSと多機能時計。GPSは多少の読図かできれば必要ではないが、
周囲が見えないほどの悪天候でも衛星との通信によって現在地がわかり、道迷いの心配が少なくなる。
腕時計は一般的なものでも防水タイプなら使えるが、標高や方位がわかるものが山では安仝度を高める。
街でも使えるかわいらしいルックスなので、損はないだろう。天気情報の入手にはラジオか確実。現在
地に適合して自勤的に周波数を合わせる山専用ラジオは使い勝手かよい。



スマートフォンの耐衝撃は保証されないようで、取り出しやすい専用の耐衝撃用のカバーとホルダーに
入れておくのがベター。あるいは、スマートウォッチ・スマートガジェット(SmartWatch2 SW2 )と
ザックに入れておいた携帯電話と通信するがよりベターだと解説されている。
 

 

 

 

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量子ドット工学講座 13

2016年07月11日 | デジタル革命渦論

 

                       

           じぶん自身で見聞きしたり、確認したことがない
           社会的な評価や酵母のようにふくらんだ風評は一切信じるな。                  

   

                                            
                             Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 

                ※ 高度に複雑化した現在は、この言い方も危なっかしい。例えばそこが、現在的な
                  社会の犯罪の温床に繋がったりして。

 

    

 

【量子ドット工学講座 13】 


ご存知の通り、量子ドット太陽電池は、量子ドットに特定波長の太陽光が当たった励起電子とその電子
が価電子帯から伝導帯まで励起されたときに生じる正孔をキャリアとして利用するが、その構造は、量
子ドットは、その周囲を、量子ドット自身のバンドギャップよりも大きなバンドギャップをもつ障壁層
で囲まれている。

ところが、理論上では、電子のフォノン放出によるエネルギー緩和が起こりにくく、消滅し難いと考え
られていられているが、実施は量子ドットの集積させた量子ドットを集積させた場合、量子ドット内で
生成したキャリアは、障壁層を含む量子ドット集積内部に存在する欠陥に結合し消滅しやすく、折角、
キャリア生成させた密度が低下し、荷量の低下により電極まで到達できず、光電変換効率が上がらない
問題が横たわる。このような問題に対し、近年、量子ドット集積部内のキャリアの収集能力を高める構
造が提案されている。

下図は、従来の光電変換層の一例を示す断面模式図。図に示した光電変換層100は、キャリアの収集
能力を
もつ、膜状形成された基部層101をベース層にの表面上に、これもキャリアの収集能力をもつ
柱状部材103を設け、また、基部層上の柱状部材周囲に複数の量子ドット105aを配置し量子ドッ
ト集積部105を形成。
 特開2016-122696 光電変換層および光電変換装置

ところが、上図の光電変換層100の場合、柱状部材103を配置する基部層101が膜状バルク体で、
隣接する量子ドット集積部105の量子ドット105aは、結晶形状やサイズが大きく異なるため基部
層と量子ドット集積部との間でバンドギャップの差が1eVを超える。つまり、量子ドット集積部側か
ら基部層側へキャリアcが移動し難く、キャリアの収集効率が低く、これにより光電変換層変換効率の
指標となる開放電圧を高められない。従って、この新規考案では、キャリアの収集能力が高く、開放電
圧が高める光電変換層とこの装置の提供を目的とする。以下、要約掲載する。

下図1の複数の量子ドット1aが集積された膜状の第1の量子ドット集積部1と、この量子ドット集積
部1上に配置され、集積部1の厚み方向に延伸した柱状部材3と、集積部1上の柱状部材3の周囲に配
置した複数の量子ドット5aから構成される第2の量子ドット集積部5と、を備え、第1の量子ドット
集積部1、柱状部材3と第2の量子ドット集積部5は、それぞれの間のバンドギャップの差が、1eV
以内にある、高いキャリアの移動度を確保でき、高い光電変換効率が得られる量子ドット太陽電池の構
成・構造が提案されている。

 
【符号の説明】

A、B 光電変換層 C 光電変換装置 1 第1の量子ドット集積膜 1a、5a、7a 量子ドッ
ト 3 集電部材 5 第2の量子ドット集積膜

【特許請求範囲】 

  1. 第1量子ドット集積部、柱状部材と第2量子ドット集積部のそれぞれの間のバンドギャップの差
    1eV以内。
  2. 1.の構成部材の半導体材料が同じ。
  3. 1.の第1量子ドット集積部がn型、第2量子ドット集積部がi型の半導体。
  4. 1.の柱状部材がn型の半導体材料。
  5. 第2量子ドット集積部の第1量子ドット集積部側とは反対側面に、さらに、複数の量子ドットの
    p型の半導体材料相の第3量子ドット集積部を備える4.の光電変換層。
  6. 第1量子ドット集積部、柱状部材、第2量子ドット集積部と第3量子ドット集積部の半導体材料
    がいずれもシリコンである5.の光電変換層。
  7. 第1量子ドット集積部は、第2量子ドット集積部側の表面に凹部をもつ1.6.のうちいずれか
    の光電変換層。
  8. 1.7のうちいずれかに記載光電変換層が2つの導体層間に配置する光電変換装置。

 --------------------------------------------------------------------------------------------

ご存知の通り、太陽光を効率よく光電変換する太陽電池として、バンドギャップ(禁制帯幅)が異なる
複数の太陽電池を積層したタンデム型太陽電池(積層型太陽電池)が知られているが、タンデム型は、
複数の太陽電池がそれぞれ、そのバンドギャップに対応する波長範囲の光を光電変換し、連続的スペク
トルを示す太陽光などを効率よく光電変換する。例えば、結晶シリコン基板を使用した太陽電池は、吸
収波長の長波長端である1150nm以上の赤外線は透過するので、シリコン結晶の受光面とは反対側
の裏面に、赤外線吸収し発電するゲルマニウム太陽電池を配置し、を直列に接続したタンデム構造の太
陽電池がある。

この場合、180μmのSi単結晶基板を透過する近赤外線は、太陽光全体のエネルギーの1/4程度
であるので、シリコン太陽電池セルとゲルマニウム太陽電池を直列に接続した、いわゆるタンデム構造
にした場合、太陽電池JSC(短絡電流密度)は、シリコン基板を透過した近赤外線のエネルギーに依存
するため、シリコン基板のみを用いた太陽電池の1/4程度のJSCとなり、電流整合が不十分であり、
発電効率が小さいが、特開2013-239476に示されるようにシリコン太陽電池セルの裏面にゲルマニウム太
陽電池を2つ直列に接続したものを配置し、シリコン太陽電池セルと、ゲルマニウム太陽電池セルを2
つ直列に接続したものを並列接続した多接合型セルがある。

ところが、シリコン太陽電池のセルVoc(開放電圧)は、ゲルマニウム太陽電池Vocの丁度2倍ではないので、シ
リコン太陽電池とゲルマニウム太陽電池を2つ直列に接続したもののVocは一致しない。シリコン太陽電池と2つ
直列に接続したゲルマニウム太陽電池とを並列に接続した多接合型セルを用いた太陽電池モジュールは、多接
合型セル毎にロスがあり発電効率が低くなる恐れがある。

そこで、下図のような、第1の太陽電池セルを複数枚接続した第1の太陽電池群と、第1の太陽電池群
の受光面と反対側の面側に絶縁材料を介して設置され、第1の太陽電池セルよりも吸収波長が長波長側
にある第2の太陽電池セルを複数枚接続した第2の太陽電池群を備えることで、発電効率の高い太陽電
池モジュールが提案されている。

特開2016-122755

【符号の説明】

10太陽電池モジュール 11太陽電池セル 12インターコネクタ 13カバーガラス 14EVA
樹脂 15絶縁シート 16EVA樹脂 17EVA樹脂 18バックシート19太陽電池セル 20
インターコネクタ 21正極端子  22負極端子 23第1の太陽電池群 24第2の太陽電池群 

【特許請求範囲】 

  1. 第1太陽電池セルを複数枚接続した第1太陽電池群と、この太陽電池群の受光面と反対側の面側
    に絶縁材料を介し設置、第1の太陽電池セルよりも吸収波長が長波長側にある第2の太陽電池セ
    ルを複数枚接続した第2太陽電池群を構成した太陽電池モジュール。
  2. 第1太陽電池群を構成する複数枚は直列に接続し、第2太陽電池群を複数枚のこの第2太陽電池
    セルも直列に接続し、第1太陽電池群と第2太陽電池群を並列に接続した太陽電池モジュール。
  3. 第1太陽電池群の開放電圧と、第2太陽電池群の開放電圧が等しい1.2.の太陽電池
  4. モジュール第1太陽電池群は、シリコン太陽電池、第2太陽電池群はゲルマニウム太陽電池の1、
    ~3.のいずれかの太陽電池モジュール。
  5. 第2太陽電池群は、量子ドットを使用した太陽電池からなる1.~3のいずれかの太陽電池モジー
    ュール。

--------------------------------------------------------------------------------------------


ご存知の通り、従来のシリコン太陽電池は、シリコンのバンドギャップが約1.1eVであることから、
バンドギャップに対応する約1100nmより大きい波長の光が透過し、長波長領域の光を有効に利用
していないが、近年では、長波長領域の光も利用できる中間バンド型太陽電池が注目されている。例え
ば、「特開2006-114815」には、n型のGaAsでなる基板上に、n型のGaAsでなるn層と、Ga
Sbでなる複数の量子ドットがGaAsでなるバリア層内に分散しているi層と、p型のGaAsのp
層とが順次積層された中間バンド型太陽電池が開示されている。中間バンド型太陽電池では、i層を形成
するGaAsの価電子帯から伝導帯へ電子が直接励起されて電圧及び電流が生成されることに加え、価
電子帯及び中間バンド間と、中間バンド及び伝導帯間とでも電子が励起されて電圧及び電流が生成され
る。

この場合、価電子帯及び中間バンド間のバッドギャップと、中間バンド及び伝導帯間のバンドギャップ
とは、価電子帯及び伝導帯間のバンドギャップよりも小さい。そのため、電子は、価電子帯から伝導帯
へ直接励起される場合と比較してより長波長の光によって、価電子帯から中間バンドへ励起されると共
に、中間バンドから伝導帯へ励起される。このような中間バンド型太陽電池では、長波長領域の光によ
っても電子が励起されて電圧及び電流が生成されることから、中間バンドが形成されていない単なるシ
リコン太陽電池と比較して、より大きな電流が得られ、変換効率の向上が図られ得る。

ところが、このような中間バンド型太陽電池では、中間バンドが形成されることで得られる複数のバン
ドギャップにより、多くの電流が生成され得る一方で、得られた電流によって大きな発熱が生じ易く
エネルギーが熱として損失され、実際には高い変換効率が得られ難い問題があった。また、中間バンド
型太陽電池では、高い変換効率を得るために太陽光を高倍率で集光して照射させた場合、さらに大きな
電流が流れるため、発熱量が一段と大きくなり、熱破損する恐れがある

そこで、下図の太陽電池1は、電流調整用太陽電池セル3の光電変換積層部17が、中間バンド型太陽
電池セル2における埋込層13のバンドギャップBg1よりも大きいバンドギャップBg4をもつため、
電流調整用太陽電池セル3でバンドギャップBg4に対応する波長以下の光が吸収される分だけ、中間
バンド型太陽電池セル2で吸収される光を減らし、この中間バンド型太陽電池セル2にて発生する電流
量を抑制できるので、中間バンド型太陽電池セル2における発熱量を低減でき、太陽電池1の熱破損を
防止でき、また本発明の太陽電池1は、中間バンド型太陽電池セル2にて発生する電流量を抑制しつつ、
中間バンド型太陽電池セル2に直列に接続された電流調整用太陽電池セル3でも光の吸収により電圧が
発生することから、太陽電池1全体で得られる出力電圧を増加でき、従来よりも変換効率を格段的に向
上できる構成・構造の新規考案が提案されている。

 特開2016-122752

【符号の説明】

1 太陽電池  2 中間バンド型太陽電池セル  3 電流調整用太陽電池セル 10 量子ドット超格子
層  10B 量子ドット層  12 量子ドット  13 埋込層  17 光電変換積層部

【特許請求範囲】

  1. 複数の量子ドットが埋込層内に配置された複数の量子ドット層を積層させた量子ドット超格子層
    を有し、量子ドット超格子層には、量子ドット間で波動関数が重なり合い中間バンド が形成さ
    れている中間バンド型太陽電池セルと、
    p型光電変換層及びn型光電変換層を少なくとも備えた
    光電変換積層部を有し、中間バンド型太陽電池セルの光入射側に形成された電流調整用太陽電池
    セルとを備え、
    電流調整用太陽電池セルは、光電変換積層部が、中間バンド型太陽電池セルの
    込層のバンドギャップよりも大きいバンドギャップを持つ
    太陽電池。
  2. 前記量子ドットは、InAsで形成した埋込層は、GaAs、AlGaAs、GaNAs、Ga
    AsP、及びInGaPのうちいずれか1種で形成され、p型光電変換層及び前記n型光電変換
    層は、InGaP、AlGaAs、及びAlInGaPのうちいずれか1種で形成する1.にの
    太陽電池。
  3. 量子ドットは、InAsで形成され、埋込層は、GaAs、AlInGaAs、及びGaAsP、
    InGaPのうちいずれか1種で形成、 p型光電変換層及び前記n型光電変換層は、AlAsSb、
    及びInAlAsSbのうちいずれか1種で形成する1.の太陽電池。
  4. 電流調整用太陽電池セルは、pn接合でなるトンネル層を備え、トンネル層によって中間バンド
    型太陽電池セルに接合されている1.~3.のいずれか1.の太陽電池。
  5. 電流調整用太陽電池セルは、中間バンド型太陽電池セル上にエピタキシャル成長により形成、中
    間バンド型太陽電池セルの接合面と格子整合する1.~4.のいずれか1.の太陽電池。
  6. 光電変換積層部は、バンドギャップが1.55~1.9eVの範囲に選定された1.~5.のい
    ずれか1.の太陽電池。

--------------------------------------------------------------------------------------------


ご存知の通り、液晶ディスプレイは、電圧の印加により液晶の配向状態を制御し、領域ごとに光を透過
または遮断することで画像等を表示する表示装置。この液晶ディスプレイの光源は、液晶ディスプレイ
の背面に設けられたバックライトが利用される。バックライトには、従来、冷陰極管が使用されている
が、最近では、長寿命、発色の良さ等の理由から、冷陰極管に代えてLED(発光ダイオード)が使用
されつつある。

ところで、近年、量子ドットを用いたナノサイズの蛍光体が製品化されている。量子ドットとは、発光
性を有する半導体ナノ粒子であり、半導体ナノ粒子の直径の範囲は1~20nm程度である。量子ドッ
トは、幅広い励起スペクトルを示し、また高い量子効率を有するので、LED波長変換用蛍光体として
使用される。さらに、量子ドットのドットサイズ或いは半導体材料の種類を変更するだけで、量子ドッ
トの発光波長を可視域全体にわたって完全に調整することができるという利点がある。そのため、量子
ドットは、事実上あらゆる色、特に照明業界で強く望まれている暖かい白色を作り出す可能性を秘めて
いる。加えて、赤、緑及び青の発光波長に対応する3種類の量子ドットが組み合わされると、演色評価
数の異なる白色光が得られる。このように、量子ドットによるバックライトを用いた液晶ディスプレイ
は、従来よりも厚みや消費電力、コスト、製造プロセスを増やすことなく、色調を向上させ、人が識別
できる色の多くを表現可能にする。

白色LEDを用いたバックライトは、所定の発光スペクトルを持つ蛍光体(量子ドット等)をフィルム
内に拡散させ、その表面をバリアフィルムにて封止し、場合によってはエッジ部も封止した波長変換シ
ートを、LED光源及び導光板と組み合わせた構成を有する。バリアフィルムは、プラスチックフィル
ム等の基材の表面に蒸着等によって薄膜を形成して、水分や気体の透過を防ぐフィルムである。バリア
フィルムには、バリア性の他に、キズやシワといった外観不良の抑制や透明性などが要求される。例え
ば、蛍光体の劣化を抑制するため、蛍光体をバリアフィルムで挟んだ構造を有するバックライトが提案
されている。

ところが、従来のバリアフィルムは、食品や医療品等の包装材料や電子デバイス等のパッケージ材料と
して用いられてきたフィルム。このため、従来のバリアフィルムによって、量子ドット層を封止したデ
ィスプレイが作製されると、バリアフィルムのバリア性が不足するので、量子ドット層内への水蒸気の
侵入等によって量子ドット層の特性が維持され難い場合があった。このため、この量子ドット層を含む
バックライトユニットでは、高い輝度を維持できず、また、バックライトユニットがディスプレイに適
用されると、ディスプレイに色のムラなどによる色調変化、及び黒点などの色再現不良が発生して外観
に劣ることがあった。

下図の第1量子ドット保護フィルム1は、シリカ蒸着層を含む第1バリアフィルム10と、第1拡散層
22とを備える。シリカ蒸着層のO/Si比が原子比で1.7以上2.0以下であり、シリカ蒸着層の
屈折率が1.5以上1.7以下であり、波長450nm、波長540nm及び波長620nmの全ての
波長での第1量子ドット保護フィルム1の反射率が10%以上20%以下、透過率が80%以上95%
以下であり、バリア性に優れ、バックライトを構成した場合に長期間にわたって高い輝度を得ることが
でき、更に、ディスプレイを構成した場合に長期間にわたって優れた外観を得ることができる量子ドッ
ト保護フィルム、及び、この量子ドット保護フィルムを含む量子ドットフィルムを提供。さらに、

い輝度とディスプレイ適用時の優れた外観とを得ることができるバックライトユニットを提供する。
 

 【符号の説明】

1第1量子ドット保護フィルム、2第1量子ドットフィルム、3量子ドット層、4第2量子ドット保護
フィルム、5第3量子ドット保護フィルム、10第1バリアフィルム(バリアフィルム

【特許請求範囲】

  1. シリカ蒸着層を含むバリアフィルムと、拡散層とを備える量子ドット保護フィルムで、シリカ蒸
    着層に含まれる酸素とケイ素のO/Si比が原子比で1.7以上2.0以下であり、シリカ蒸着
    層の屈折率が1.5以上1.7以下であり、 波長450nm、波長540nm、及び波長620
    nmの全ての波長において、前記量子ドット保護フィルムの反射率が10%以上20%以下であ
    り、且つ、透過率が80%以上95%以下である、量子ドット保護フィルム。
  2. バリアフィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面上に、密着層、前記シリカ蒸着層、
    及び複合被膜層が、この順に積層された構造を有し、複合被膜層は、水溶性高分子、金属アルコ
    キシド、金属アルコキシドの加水分解物、及び、シランカップリング剤からなる群より選択され
    る少なくとも一種を含む層である、1.に記載の量子ドット保護フィルム。
  3. ポリエステルフィルムが、重量平均分子量が6万以上のポリエチレンテレフタレートからなるポ
    リエチレンテレフタレートフィルムである、2.に記載の量子ドット保護フィルム。
  4. バリアフィルムは、シリカ蒸着層と前記複合被膜層とが交互に2層ずつ以上積層された構造を有
    する、2.または3.に記載の量子ドット保護フィルム。
  5. 蛍光体を含む量子ドット層と、1~4のいずれか一項に記載の量子ドット保護フィルムとを備え
    る、量子ドットフィルム。
  6. 拡散層、バリアフィルム、量子ドット層、バリアフィルム、及び拡散層が、この順で積層される、
    5.に記載の量子ドットフィルム。
  7. LED光源と、導光板と、導光板の上に設置された請求項5又は6に記載の量子ドットフィルム
    と、を備える、バックライトユニット。

直近の特許公開事例をもとに、シリーズ講座を掲載する。眼がはなせない。^^;

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帝國のロングマーチ 15

2016年07月09日 | 時事書評

 

                       

          日本を含む先進資本主義国の今の課題は、いかにして、自国の民
                 衆や他国の民衆に対して国家を開いていくか、ということにある。                

   

                                            
                             Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 

 

 

 

    

【帝國のロングマーチ 15】     

      

● 折々の読書  『China 2049』35     

                                          秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」      

ニクソン政権からオバマ政権にいたるまで、米国の対中政策の中心的な立場にいた著者マイケル・ピル
ズベリーが自分も今まで中国の巧みな情報戦略に騙されつづけてきたと認めたうえで、中国の知られざ
る秘密戦略「100年マラソン( The Hundred-Year Marathon )」の全貌を描いたもの。日本に関する言及
も随所にあり、これからの数十年先の世界情勢、日中関係そして、ビジネスや日常生活を見通すうえで、
職種や年齢を問わず興味をそそる内容となっている。 
    

 【目次】

   序  章  希望的観測
 第1章 中国の夢
 第2章 争う国々
 第3章 アプローチしたのは中国
 第4章 ミスター・ホワイトとミズ・グリーン
 第5章 アメリカという巨大な悪魔
 第6章 中国のメッセージポリス
 第7章 殺手鍋(シャショウジィエン)
 第8章 資本主義者の欺瞞
 第9章 2049年の中国の世界秩序
 第10章 威嚇射撃
 第11章 戦国としてのアメリカ
 謝 辞
 解 説 ピルズベリー博士の警告を日本はどう受け止めるべきか
     森本敏(拓殖大学特任教授・元防衛大臣)     

  

   第7章 殺手鐗(シャショウジィエン) 

                   難知如陰、動如雷震
                   ――知り難きこと陰の如く、動くこと雷の震うが如し 

                                    『孫子』軍争篇

  中国の殺手鐗計画は、アメリカでの諜報活動に支えられて進展してきた。2005年、FBIが
 嫌疑をかけていたタイ・ワンマクという男とその妻が、キャセイパシフ
ィック航空のロサンゼルス
 から香港へ向かう便に搭乗しようとした,しかしその9日
前に、FBI捜査官はタイが中国にいる
 諜報部員にかけた電話を録音していた。その
電話で彼は、「北米のレッド・フラワーが一緒だ」と
 言った。中国の諜報機関のコ
ード・ネームだ,FBI捜査官は、タイの弟が出したゴミの中から、
 びりびりに破い
た書類を発見した。タイの弟、チ・マクがレッド・フラワーだったのだ。チは、潜
 水
艦の無音推進システム、船内通信システム、最新の駆逐艦の能力など、米海軍の最新技術に関す
 る情報収集を命じられていた(注12),もしチがそれに成功していたら、大
いに殺手鐗計画の助け
 となったことだろう。

  Chi Mak Wikipedia

  アメリカはまた、中国の軍事力増強のパートナーを喜んで引き受けてもいた。わた
しが1980
 年代にアメリカ政府に承認を急がせた中国への武器輸出と技術譲渡は、
冷戦下では間違いなく意味
 があったが、その多くは今も続いている。
覇権国アメリカの自己満足を誘い、刺激するのを避ける
 ことのほかに、中国の戦略
が意図するのは、指導者層が恐れる、アメリカが仕掛ける脅威に応じる
 ことだ。多く
のアメリカ当局者は(わたしも含め)中国の指導者がどれほど深刻に、アメリカを
 脅威」と見なしているかを理解するのが遅かった。その影響を示す証拠が集まるにつ
れ、全員では
 ないものの多くの人が、中国に対してこれまでとは別の見方をするよう
になった。中国は従来型の
 戦力投射を増強するより、アメリカの脅威に対抗すること
にはるかに大きな関心を寄せていた。殺
 手鐗はこのアプローチの重要な構成要素である。

  
わたしは国防総省から、中国が脅威をどのように認識しているかを調査するよう命じられた。わ
 たしが発見したことの多くは、すぐには信じてもらえなかった。しか
し、わたしが中国の文書の中
 に発見し、「七つの恐怖]と名づけたものは、軍部と政府
の指導者の姿勢を反映したものと言える。
 というのも、「七つの恐怖{が記されていた
のは、もっぱら中国軍部の内部資料であり、それらの
 恐怖について文書に綴った者
は、民意を動かすつもりでそうしたわけではないからだ,それは、幅
 広く民意を動か
すために書かれたプロパガンダではなかった。

  確かに、中国の指導者が考えるように、アメリカは少なくともアブラハム・リンカーンの時代に
 は中国を支配しようとした。しかし、現在、中国の指導者は何を根拠に
アメリカが自国を狙ってい
 ると考えているのだろう。わたしは中国の有力な知人たち
に、このようなアメリカの大いなる陰謀
 の証拠と見なされているものを集めてほしい
と依頼した。彼らは軍部と民間の研究者数名から、一
 連の書籍と論文を入手した。こ
れらの資料と、2001年から2012年までの6回の訪中で自分
 が行ったインタビ
ューから、中国の指導者はアメリカが戦国時代の覇権国のような行動をとると考
 えて
いる、とわたしは結論づけた。それを知った当初はわたしも非論理的で奇妙だと思ったのだが、
  中国の指導者は、「ジョン・タイラーからビル・クリントンまでのアメリカ
大統領は戦国時代の格
  言を学び、それらの深遠な教えに従って中国の成長を邪魔しよ
うとしている」と主張していた。こ
  れは事実とは正反対だ。アメリカは長く中国の統
治を支援し、その経済の発展と、国際社会におけ
  る地位の確立を後押ししてきた(
13), 

  驚いたことに、わたしがまとめた報告書は信じがたい事実を裏づけていた。それは、かつてわた
 しや他の人が、たとえ中国で最高位にいた亡命者から聞かされても信
じようとしなかった事実だっ
 た。中国外務省出身の亡命者、陳優脆は中国政府の意思
決定に見られるいくつかの病的傾向を特定
 した。敵の行動に最悪の意図を読み取る
頑ななイデオロギーに縛られている、現実を見ようとしな
 い、である(注14)。そして
奇妙なことに、中国政府は、アメリカの戦略計画は中国を中心に据え
 ている、と考え
ていた。

 

  中国の七つの恐怖は、以下の通りだ

 【恐怖●】アメリカの戦争計画は中国を封鎖することだ

  戦略的な「行為者」の行動は、感情、文化、恐れといったその人の精神的な特性に左右される。
 中国はその長い海岸線が封鎖されることを恐れている。海岸に沿って一
連の島々が並んでいるせい
 で、より攻撃を受けやすいと感じるようだ(注15)。中国の
軍人の多くが恐れているのは、海岸線
 に沿って並ぶ日本からフィリピンまでの島々
に、外国軍が要塞を築き、やすやすと中国を封鎖する
 ことである(注16)。また、その
島々は、中国の船や潜水艦が外洋へ出るのを妨害する、天然の障
 害物のようにも見え
る(注17)。実際、かつて日本の海上幕僚長は、中国の潜水艦は日米の対潜水
  艦システ
ムに検知されることなく琉球諸島、台湾の北あるは南、あるいはバシー(ルソン)海峡を
 通って太平洋の深海へ潜入することはできないだろう、と豪語した(注18
)。中国の軍事書の作者
 はしばしば、この島々による封鎖を突破するための軍事演習や作戦策
定が必要だと説く(注19)。
 あるオペレーションズ・リサーチ分析は、封鎖を破るため
に中国の潜水艦が乗り越えなければなら
 ないむつの防御システムについて説明してい
る(注20)。その七つとは、アメリカが構築した対潜
 水艦ネット、水中音波システム、
機雷、水上戦闘艦、対潜機、潜水艦、偵察衛星からなる封鎖シス
 テムである(注21)。

The Sixteen Fears:China's Strategic Psychology Michael Pillsbury Oct 4, 2012



 【恐怖●】アメリカは他国による中国の海洋資源の強奪を支援している

  中国の軍事書の作者は、中国海軍が弱いせいで、領海内の貴重な資源が外国軍によって強奪され
 ており、中国の海洋開発の可能性を脅かしている、と主張する。その状況を改善するためにさまざ
 まな提案がなされている。国家安全部のシンクタンクの元研究員、張文木は、次のように述べる。
 「海軍は中国のシーパワーに、そしてシーパワ
ーは中国の将来の発展に関わりがある。わたしの見
 るところ、シーパワーが欠けてい
たら、国の発展は期待できない(注22)」。中国軍の雑誌『軍事
 経済研究』の2005
年の論文は、「中国の対外経済、外国との貿笥、海外市場はすべて、強力な
 軍隊という
後ろ盾を必要とする」と述べている(注23)。



 【恐怖●】アメリカは中国のシーレーンを妨害しようとしている

  多くの中国の著作物は中国のシーレーンの脆弱さに触れており、特に、石油輸送の生命線である
 マラッカ海峡に言及している,外洋海軍の増強を訴える人々は、中国の
エネルギー輸入が無防備で
 あることをその理由として挙げる(注24)。ある中国の研究
者は、アメリカ、日本、インドの艦隊
 は「中国の石油供給に、圧倒的なプレッシャ
ーをかけている」と述べるが(注25)、別の研究は「
  中国の石油輸送ルートを封鎖する
力と度胸があるのはアメリカだけだ」と結論づけている(注26)。
 同様に、中国人民解
放軍国防大学の教授が2002年に著した教科書、『戦役理論学習指南(戦闘
 理論研究
の手引き)』は、シーレーンヘの攻撃と防衛についていくつかのシナリオを挙げている
 注27)。同大学から出版されたこちらも重要な教科書、「戦役学(戦闘の科学)』の2
006年版
 も、シーレーンの防衛について論じている(注28)。緊急性を説く研究者も
いて、次のように述べ
 る。「海ヒ通商や石油輸送のルートが切断されるという問題につ
いて……中国は『雨が降る前に屋
 根を修理しなくてはならない(注29)』」。これらの主
張は、潜水艦中心の海軍から航空機を主軸
 とする海軍への移行を望んでいるようだ。



 【恐怖●】アメリカは中国の分断を狙っている

  中国は、軍内部だけで使用する訓練マニュアルにおいて、さまざまな侵略に対抗す
る戦闘計画を
 概説している(注30)。2005年に、中国人民解放軍国防大学、軍事科
学院、その他トップレベ
 ルの戦略シンクタンクの研究者が集結して行った影響力のあ
る研究は、中国のむつの軍区の脆弱性
 を評定し、さまざまな侵攻ルートについて検討
した(注31)。彼らはそれぞれの軍区の地形とこれ
 までの外国軍による侵略の頻度か
ら、陸からの侵略に対する脆弱性を予測し、さらには隣国を未来
 の侵略者と見なして
さえいる。最近の人民解放軍の再編は、陸上攻撃への対抗力を高めるのが目的
 のよう
だ(注32)。



 【恐怖●】アメリカは中国国内の反逆者を援助する

  ロシアとの国境沿いの三つの軍区には北京軍区も含まれるが、2005年の研究、「中国戦区軍
 事地理(中国の戦域の軍用地理学)」で言及されている通り、その3軍区
は装甲車での攻撃と空挺
 着陸(訳注*パラシュートでの着陸)に対して脆弱と見られている
注33)。2005年に内モン
  ゴル自治区で行われた軍事演習「北剣」は、戦車や装甲躯など2800台以上の軍用車輛を役人し
 た最大規模の機動演習だった。外国軍の支援を受けたテロリストヘの攻撃をシミュレートする装甲
 部隊も参加し、2000キロメートル超の空輸も行っている。中国政府のスポークスマンは、その
 演習は、外国の支援を受けた国内のテロリストを想定したものだと発表したが、その外国がアメリ
 カだとは明言しなかった(注34)。



 【恐怖●】アメリカは中国国内の暴動、内乱、テロを助長する

  台湾、チベット、新疆の「分裂分子」を外国が支援することに対して中国が声高に抗議するのは、
 お得意の誇張表現と見なされているが、そこには領土の完全性に関する根深い懸念が反映されてい
 る(注35)。党中央対外連絡部のある研究者は、分裂分子と法輪功学習者の活動による脅威 を、
 覇権国アメリカによる脅威に並ぶものと見なしている(注36)。



 【恐怖●】アメリカは航空母艦で攻撃を仕掛けてくる

  少なくとも10年にわたって、中国の軍事書の作者はアメリカの航空母艦による脅威を評定し、そ
 れらを阻止する最善の方法を探ってきた(注37)。オペレーションズーリサーチ分析は、中国軍は
 どうすればアメリカの航空母艦の脆弱さを突くことができるかを示唆しており(注38)、他の研究
  は中国が開発すべき特殊な兵器システムについて言及している(注39)。中国の地対空ミサイルは、
  この空母による攻撃への恐れの表れである。



「中国7つの恐怖」が掲載され、ロシアマルクス主義の強烈な「反植民地主義」の――例えば、「シー
ンを守れ」というスローガンは、戦後日本の保守政治委員(タカ派)が主張されたが、中国のそれは、
反植民地主義の裏返し考えれば極めて強固なもではないかと起想させる。そして、この過剰な思い込み
を解く作業の喫緊性、つまり、大規模な国家間戦争の「露呈」を意味する。戦後70年にして、戦争の
当事者として日本が開戦する事態が我々当時国家国民に迫る。戦争とという過剰過程に突入すれば後戻
りできなくなり、そして、大きな禍根を残すことになる。ここは、戦争を煽ることなく冷静に対処する
しかない。「いでよ!墨子」である。

  

                                                                              この項つづく

 

 

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植物工場ロボット工学

2016年07月08日 | デジタル革命渦論

 

 

    

    (今の若い作家たちが太宰治や坂口安吾になるには)酒を飲んだらいいんじゃないですか?

 

                                             
                             Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 


【イントロダクションX:進化する植物工場ロボット】

水耕栽培を利用して植物を工場で育てる「植物工場」は、都会でも新鮮な野菜を安全かつコンスタント
に収穫でき
るため盛んに研究開発されている。そんな中、ミスト(霧)を根に吹き付けることで、水耕栽
培のように大量の水を使うことなく植物を育てることのできる実証実験が日本をはじめ行われているが
北米カナダの植物工場「AeroFarms」の取り組みをGigazine(「LED とミストを自動制御して水使用量
95%カットを実現する都会の植物工場"AeroFarms”」2016.07.08)が紹介されている。
 

 Video

この「節水」というテーマは、例えば、米国では水質汚染の原因の70%が農場排水と指摘されている
が、その飲み
水の70%がまた、農業用水であり、農業は「水の危機」の引き金であること、また、過
去40年のうちに農耕土壌の3分の1が消失したという情報があり、世界規模で農業用地の確保が困難
になっている現状を炙り出す。「垂直農園:Vertical Farming」についてはこのブログでも取り上げてき
ているが、その発案者の一人、コロンビア大学のディクソン・デスポミエ教授は、垂直農園によって農
地不足や水不足、食糧不足の問題を解決するだけでなく、都会で農作物を収穫できる垂直農園では、農
地不足を補うだけでなく、新鮮な野菜を消費地で作れるというメリットとその物流つまりモーダルシフ
ト(modal shift)を簡素化させ再生可能な社会の実現に貢献できると提唱している。



The Vertical Farm: A Keystone Concept for the the Ecocity : Dickson Despommier

AeroFarms - An environmental champion, AeroFarms is leading the way to address our global
food crisis by growing flavorful, healthy leafy greens in a sustainable and socially responsible way.

また、超高齢化社会の日本で農業の労働力不足を補うアプローチとして、人間の代わりにロボット(=
全自動作業の機械)で野菜を育てる工場が今年2月に紹介されている(「日本から世界初のロボットが
農業を行う"自動野菜工場"の誕生」2016.02.20)。「ロボット野菜工場」を開始するのは京都府で植物
工場を運営する株式会社スプレッドで、パック詰めの高品質なレタスを提供する野菜工場亀岡プラント。


Japanese firm to open world’s first robot-run farm   theguardian Tue 2 Feb 2016 
 

株式会社スプレッドが京都府のけいはんな学研都市(関西文化学術研究都市)にロボットを使った自動野
菜工場「けいはんなプラント」を17年中頃にスタートする予定で、ロボットの導入により、稚苗を植え替える
育苗・移植・生育・収穫といった作業を完全自動化できるようになる。自動野菜工場の運用が始まれば、
1日に約3万個のレタス生産ができ、5年以内に1日50万個まで生産拡大が行える。 



同社の話では、種子の植え込みは人間の手でする必要があるものの、それ以外のほぼ全てのプロセスが
全自動で行われることで、既存の亀岡プラントに比べて労働コストは半分、LEDライトによってエネル
ギーコストが3分の1に抑えることができるほか、農作物を育てるために使われる水の98%は再利用
される。自動野菜工場の開始は「自動野菜工場が、農業の新しいモデルを示すことになり、人間と機械
が共に働ける新しいシステムの実現で若い人たちの農業に対する関心を高めたいとも語っている。

さしたるコメントはないが、『デジタル革命渦論』つまり情報科学の飛躍的進歩による「再生可能な社
会の実現」を担保する重要なシステム工学(「オールソーラーシステム」と「オールバイオマスシステ
ム」を結合する工学)の1つの進捗状況である。

Chilcot report: Tony Blair's Iraq War case not justified 6 July 2016


【ブレアがブレたわけ:遅すぎる調査報告と謝罪】

6日、03年のイラク侵攻に英国が参加した経緯について、英国の独立調査委員会(チルコット委員会)
が報告書を発表したことを受けて、当時首相だったトニー・ブレア元首相は記者会見で、「我々が解放
したかった、サダム(・フセイン)の悪行から守りたかった人たちは、代わりに宗派対立のテロリズム
の被害者になった」と述べ、戦後の計画が不十分だったことなどを認め謝罪した。実際に戦争とその後
の混乱を生きたイラク市民はどう受け止めたのだろうかとBBC News は、疑問を投げかける

  BBC News Japan

感想は?と聞かれれば、「酷すぎる、非道すぎる 余りにも、破廉恥だ。当事者はどう責任をとるのか
と答えるしかないだろう。

 ● 今夜の一品


アイリスオーヤマ株式会社が「こんなのあってもいいかな」という鉄板ふたつを同時に調理できるホッ
トプレートを販売。これに野外用に蓄電池も販売してくれたらもっと楽しいかもと、焼きそば、お餅、
パエリア、たこ焼き、焼き肉、ステーキと夢がふくらみ思わずにっこり。

 

   

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七夕に不貞寝の猛虎

2016年07月07日 | ネオコンバーテック

 

                       

              わたしは、どのように小さい闘争であれ、また、大きな闘争であれ、発端の
       盛り上がりから、敗北後の孤立裏における後処理(現在では闘争は徹底的に
       やれば敗北にきまっている)にいたる全過程を、体験したものを信じている。
        

                                            
                             Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 

 

二期咲きのグラハム・トーマスの横には色鮮やかに凌霄花 (のうぜんかずら:Trumpet creeper)が咲綻
ぶ季節だが、花の命は短くて、掃除が大変だと言いつつ、箒とちり取りを残したまま買い物に出かける
日常の一齣を切り取る

【波形超界面工学の此岸:波形選択無線多元アクセス方式】


上図の従来の無線アクセス方式の(a)周波数分割多元アクセス方式、(b)時分割多元アクセス方式、
(c)符号分割多元アクセス方式で、FDMA方式は周波数軸(f)上において各ユーザの通信信号を
分割し多重化を実現、TDMA方式は時間軸(t)上において各ユーザの通信信号を分割し多重化を実
現、CDMA方式は符号軸(拡散符号など)上において各ユーザの通信信号を分割し多重化を実現する。
尚、周波数軸(f)、時間軸(t)および符号軸(拡散符号など)の3軸は、直交(独立)するため任
意の組み合わせが可能となる。これを実現した例として、上図10に示すOFDMA方式があり、OF
DMA方式は、直交サブキャリアによるFDMA方式+TDMA方式で、各ユーザの通信信号を分割し
多重化を実現する。特に同一周波数帯を複数のユーザ無線通信の無線多元アクセスする場合、多岐に渡
る研究が取り組みまれ、FDMA方式、TDMA方式、CDMA方式、OFDMA方式等で無線周波数
資源を分割し多重化――携帯電話のセルラネットワークを始めとして多元アクセス――が行われていが、
周波数軸(f)、時間軸(t)、および符号軸(拡散符号など)の3軸を利用する方式は、周波数利用
効率が理論的限界に来ている。また、近年携帯電話やスマートフォンなど等の通信端末や無線LAN等
が爆発的に増加するなか、このような無線通信の利用拡大を背景に周波数資源の枯渇が心配され、周波
数資源枯渇のためによりさらなるユーザ多重化方式が求められている。

そこで、下図のような先行技術が参考となる。この事例は、通信を行う電子機器を高電力信号から守る
ため、非線形に表面電流、または表面波を吸収するメタサーフェスが提示されているが、現実的に高電
力信号は、インパルス的な短いパルス幅の電波となり、このメタサーフェスは、短いパルス幅の電波を
吸収し、長い電波を透過させるもので、通信機器外郭に取り付けられ、通信機器を保護するもので、通
信自体に用いられていない。


Waveform-Dependent Absorbing Metasurfaces DOI:http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevLett.111.245501

名古屋工業大学の研究グループは、新規な電磁界特性「波形(パルス幅)選択性」を用いた、全く新しい
無線多元アクセス方式で、電磁界特性(透過・吸収など)の周波数だけでなくパルス長(信号励振時間)
により変化させることのできる新たな電磁界現象を使い、新規無線多元アクセス方式を開発し、従来の
多元アクセスの分割軸である周波数、時間、符号に「波形軸」を追加させ、これまでの通信理論の限界
を突破する(1)周波数利用効率の実現や、(2)枯渇しつつある無線周波数資源の飛躍的拡張を実現
する。つまり、従来の通信システムにおける周波数、時間、符号の3軸に、パルス幅選択性の概念(波
形軸)を導入し、同一周波数帯または複数の周波数が存在する帯域においてパルス幅による波形選択を
行う波形選択フィルタを用いた多重化した通信システムおよび通信端末を新規呈示する。これはまた新
しいステージに誘う工学だ。

 
「特開2016-119646  波形選択フィルタを用いた通話システム、通信端末」

【要約】

従来の通信システムにおいて、送信側にパルス時間波形制御器10、および受信側に波形選択フィルタ
20を有することを特徴とする通信システム1により、同一周波数帯または複数の周波数が存在する帯
域においてパルス幅による波形選択フィルタによる多重化した通信システム1を提供する。また、パル
ス時間波形制御器10および波形選択フィルタ20を電気的に接続して通信機能として一体に設置する
ことにより、同一周波数帯または複数の周波数が存在する帯域においてパルス幅による波形選択フィル
タによる多重化した通信端末2を提供することで、
送信側に変調器12、受信側に復調器16を有し、
多重アクセス通信路30を介して通信を行う通信システム。または、送信側に変調器12および周波数
変換器14、受信側に復調器16および周波数変換器14を有し、多重アクセス通信路30を介して通
信を行う通信システムの提案(下図6)。

 【特許請求範囲】

  1. 電波の励振時間であるパルス幅を特定のパルス幅に制御して前記電波を送信する送信側通信端末
    と、前記送信側通信端末が送信した前記電波を受信する受信側通信端末と、を備え、前記受信側
    通信端末は、波形選択フィルタおよび受信部を有し、前記波形選択フィルタは、前記特定のパル
    ス幅の前記電波を選択的に透過または反射し、前記受信部は、前記波形選択フィルタが透過した
    前記特定のパルス幅の前記電波を受信する、通信システム。
  2. 前記波形選択フィルタは、導電性部材と、前記導電性部材の2箇所を繋ぐ整流回路と、RL回路
    およびRC回路のうち一方または両方を備え、前記RL回路は、インダクティブな成分を持つ回
    路素子および抵抗成分を持つ回路素子を有し、前記RC回路は、キャパシティブな成分を持つ回
    路素子および抵抗成分を持つ回路素子を有し、前記波形選択フィルタは、電波の励振時間である
    パルス幅によって電波の吸収率が異なることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
  3. 前記送信側通信端末は、前記電波のパルス幅を前記特定のパルス幅に制御するパルス時間波形制
    御器と、周波数領域での多重化を行う送信側周波数変換器と、を有し、前記送信側通信端末によ
    って送信される前記電波は、前記パルス時間波形制御器によって前記特定のパルス幅に制御され、
    かつ、前記送信側周波数変換器によって周波数領域での多重化が行われており、前記受信側通信
    端末は、前記波形選択フィルタが透過した前記特定のパルス幅の前記電波のうち、特定の周波数
    領域の信号を選択的に受信する受信側周波数変換器を有することを特徴とする請求項1または2
    に記載の通信システム。
  4. 前記送信側通信端末は、前記電波のパルス幅を前記特定のパルス幅に制御するパルス時間波形制
    御器と、アクセス時間での多重化を行う送信側アクセス時間制御器と、を有し、前記送信側通信
    端末によって送信される前記電波は、前記パルス時間波形制御器によって前記特定のパルス幅に
    制御され、かつ、前記送信側アクセス時間制御器によってアクセス時間での多重化が行われてお
    り、前記受信側通信端末は、前記波形選択フィルタが透過した前記特定のパルス幅の前記電波の
    うち、特定のアクセス時間の信号を選択的に受信する受信側アクセス時間制御器を有することを
    特徴とする請求項1または2に記載の通信システム。
  5. 前記送信側通信端末は、前記電波のパルス幅を前記特定のパルス幅に制御するパルス時間波形
    制御器と、拡散符号領域での多重化を行う符号拡散器と、を有し、前記送信側通信端末によって
    送信される前記電波は、前記パルス時間波形制御器によって前記特定のパルス幅に制御され、か
    つ、前記符号拡散器によって拡散符号領域での多重化が行われており、前記受信側通信端末は、
    前記波形選択フィルタが透過した前記特定のパルス幅の前記電波のうち、特定の拡散符号で信号
    拡散された信号を選択的に受信する符号逆拡散器を有することを特徴とする請求項1または2に
    記載の通信システム。
  6. 電波の励振時間であるパルス幅を特定のパルス幅に制御して前記電波を送信する送信側通信端末
    から、前記電波を受信する受信側通信端末であって、波形選択フィルタおよび受信部を有し、前
    記波形選択フィルタは、前記特定のパルス幅の前記電波を選択的に透過し、前記受信部は、前記
    波形選択フィルタが透過した前記特定のパルス幅の前記電波を受信する、受信側通信端末。
  7. 送信する電波の励振時間であるパルス幅を制御するパルス時間波形制御器を備えたことを特徴と
    する請求項6に記載の受信側通信端末。
  8. 電波の励振時間であるパルス幅が特定のパルス幅となっている前記電波を選択的に受信する受信
    側通信端末に前記電波を送信する送信側通信端末であって、前記電波のパルス幅を前記特定のパ
    ルス幅に制御して前記電波を送信する送信側通信端末。

 

 

● 七夕に不貞寝の猛虎

6日、ジャースの前田健太投手が、本拠地でのオリオールズ戦で代走デビュー。前日5日には4回4失
点で今季6敗目を喫したが、この日は“足”でチームに貢献した。試合は延長14回までもつれたが、
ドジャースが4-6で敗れた。4-4の同点で迎えた8回、1死から8番エリスが四球を選ぶと、ロバ
ーツ監督は審判に代走を告げる。姿を現したのは、なんと前田! 一塁線に沿って軽やかなダッシュを
繰り返して準備を進めた前田は、アットリーが放った右翼への二塁打で快足を飛ばして三塁まで進んだ
が、後続が倒れて生還することのない「初夏の夢と帰した」というが、さすが、ショーマン・シップの
国、ア・メ・リ・カだと感嘆する。さて、さて、である。



“超改革”をテーマに掲げ、ドラフト1位ルーキーの高山俊を開幕1番に抜擢。横田慎太郎や北條史也
ら若手選手を次々に抜擢、開幕当初はフレッシュなパワーで勢い良く飛び出した"
我がタイガース"――
"我が"など厚かましい"エセ・タイガース・ファン"であるが、テレビ観戦途中で民放は非情にも打ち切
るためそうならざるをえない。いや、だからこそ理性的になり細々と細々なファンとして今日に至るの
だが
徐々に順位を下げ7月に入りヤクルトに逆転を許し、単独最下位に転落。ここまで79試合を消
化し、34勝43敗8、勝率は0.447。原因はとにかく貧打。
チーム打率0.241は、12球団で
ワースト。加えて本塁打42もリーグワースト、
防御率は3.64から3.61で先月は3.44と月を追
うごとに改善されていっている中で打率0.231と歯止めが止まらない。
中でも不安なのが、これまで
チームを牽引してきた鳥谷敬の不振。プロ入りから12年に渡って2割後半から3割のアベレージを安定
して残してきた男が、今季はまさかの打率0.233と大不振。


今宵は七夕。「七夕の宵に不貞寝猛虎 」と一句もまた一興かと、いつか優勝と願かけ希つなぐ"似非ファ
ン"。

 ● 今夜の一曲

Glass Onion / The Beatles  

I told you about strawberry fields
You know the place where nothing is real
Well here's another place you can go
Where everthing flows
Looking through the bent backed tulips
To see how the other half lives
Looking through a glass onion 

I told you about the walrus and me-man
You know that we're as close as can be-man
Well here's another clue for you all
 The walrus was Paul
Standing on the cast iron shore-yeah
Lady Madonna trying to make ends meet-yeah
 Looking through a glass onion
Oh yeah, oh yeah, oh yeah
 Looking through a glass onion
 

I told you about the fool on the hill
I tell you man he living there still
 Well here's another place you can be
 Listen to me

Fixing a hole in the ocean
Trying to make a dove-tail joint-yeah
 Looking through a glass onion 

グラス・オニオンは、68年に発表されたビートルズのイギリス盤公式オリジナル・アルバム『ザ・ビ
ートルズ』、通称ホワイト・アルバムに収録されたレノン=マッカートニー作の曲。このアルバムで初
めてリンゴ・スターが登場。彼の威勢のいいドラムで曲は始まり、続いてポール・マッカートニーの
4001Sによる硬く締まったベースが続く。全編におけるストリングスのアレンジはジョージ・マー
ティンによる発案。

 

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東方賢者の選択 Ⅱ

2016年07月06日 | 時事書評

 

 

                       知ることは、超えることの前提である。

                      

                                            
                             Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 

 

● 愛犬に抗鬱剤を投与するって?!

愛犬のシェルが亡くなり5年が過ぎる。今でも抱き上げた感触は消えていない。不思議な存在だったん
だとksくにんする。ところが、ペットなどの小動物医薬品市場が、先進国の主要都市を中心として成長
――世界の動物用医薬品市場は、約 約2兆円($1=¥89:2010年)と推 計され、その中で日本市場は
約894
億円(世界の4.8%)を占める。因みに、世界の医薬品市場は、およそ 約77兆円、その中
で日本市場は約7兆円で、世界の8.8%――してきているが、精神が不安定な愛犬などに抗鬱薬を投与
することはいまや常識らしい。そんなことして問題ないのか?と、「彼女と彼女」の写真立てを眺め、
ふと素人の老婆心(下図ダブクリ参照)。
 

● 世界初、3次元物体表面に多層カーボンナノチューブを成長

5日、産業技術総合研究所の研究グループは、世界で初めて、大気中での簡単な表面処理により、カー
ボンナノチューブ成長に必要な触媒の担持層を成膜させ、複雑
な形状で大型の3次元物体の表面に、多
層カーボンナノチューブを成長させることに成功する。次世代光学機器用の遮光材
の開発や放射温度計
校正用の標準光源の高度化へ応用できると期待されている(下図参照)。図1を見ると、粒子ブラスト
処理後のタングステン基板に、多層カーボンナノチューブ成長させ、粒子ブラスト処理後、基板を加熱
炉に設置し、基板付近に置いた有機鉄化合物(フェロセン)の粉末が昇華して発生した鉄蒸気に曝して
触媒を担持。その後、アセチレンと窒素の雰囲気下に基板を置き加熱し、基板表面に多層カーボンナノ
チューブを成長させている。



 

上図の特許のように、高い放射率を有する光学部材は、例えば、望遠鏡、カメラ、測定機器、放熱部品、
黒体炉標準反射板、ヒーター等の幅広い用途に必要とされ、カーボンナノチューブ(CNT)やカーボン
ナノファイバー(CNF)のような繊維状かつ微細な構造を有する炭素物質膜を金属や炭素材料の表面に
成長させることで表面の放射率(吸収率)を1に近づける表面処理技術として、光学機器内部の乱反射
防止コーティング、放熱部材、黒体炉等の性能向上に大きく貢献できる技術である。これは面白い。

 

   

【帝國のロングマーチ 14】    

     

● 折々の読書  『China 2049』34    

                                          秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」     

                                          マイケル・ピルズベリー 著
                                               野中香方子 訳     

ニクソン政権からオバマ政権にいたるまで、米国の対中政策の中心的な立場にいた著者マイケル・ピル
ズベリーが自分も今まで中国の巧みな情報戦略に騙されつづけてきたと認めたうえで、中国の知られざ
る秘密戦略「100年マラソン( The Hundred-Year Marathon )」の全貌を描いたもの。日本に関する言及
も随所にあり、これからの数十年先の世界情勢、日中関係そして、ビジネスや日常生活を見通すうえで、
職種や年齢を問わず興味をそそる内容となっている。 
     

 【目次】

   序  章  希望的観測
 第1章 中国の夢
 第2章 争う国々
 第3章 アプローチしたのは中国
 第4章 ミスター・ホワイトとミズ・グリーン
 第5章 アメリカという巨大な悪魔
 第6章 中国のメッセージポリス
 第7章 殺手鍋(シャショウジィエン)
 第8章 資本主義者の欺瞞
 第9章 2049年の中国の世界秩序
 第10章 威嚇射撃
 第11章 戦国としてのアメリカ
 謝 辞
 解 説 ピルズベリー博士の警告を日本はどう受け止めるべきか
     森本敏(拓殖大学特任教授・元防衛大臣)    

      

   第7章 殺手鐗(シャショウジィエン)

                   難知如陰、動如雷震
                   ――知り難きこと陰の如く、動くこと雷の震うが如し

                                    『孫子』軍争篇

  さらに調査を進めるうちに見えてきたのは、軍事に関わる文脈において殺手は、自国より強
 い国の急所をついて勝つための非対称兵器を指しているということだ。そ
の訪葉は何度も現れた
 が、最初のうちわたしはそれを、中国が夢想する技術や目標な
のだろうと考えていた。殺手鐗と
 いう言葉は曖昧なので、単に「進歩した」あるいは
「未来型の」兵器、という意味だろうと思っ
 ていた。わたしはさらに調査を進め、アメ
リカの情報アナリストにも殺手鐗の意味を尋ねた。殺
 手鐗は確かにさまざまな文献に
何度も登場していた。

  アメリカは戦争を軍事的手段という方向からしか見ていないが、孫子のような古代中国の思想
 家が説く、より幅広い戦略では情報、経済、法律が強調される。「明らか
に、戦争の概念を拡張
 しているのは、その手段の多様性だ」と、喬良と王湘穂は、議
論を招いた1999年の著書『超
 限戦』で述べている。

 「戦場はあなたのすぐ隣にあり、敵はあなたが使うネットワーク上にいる。火薬のにおいも血の
 においもしないが(中略)明らかに戦争は、兵士、軍隊、軍事的衝突を超越
しつつあり、次第に
 政治、科学、そして金融の問題になりつつある」
  
9・11テロ事件の2日後、このふたりの大佐は中国共産党の機関紙によるインタビューを受
 け、その攻撃は「中国にとって好都合一であり、アメリカが非従来型の攻撃に対して脆弱である
 ことが露呈した、と述べた(注6)。



  2000年、わたしはCIAのために殺手鐗に関する報告を書いた。1年後、CIA本部から
 電話がかかってきた。ディック・チェイニー副大統領と側近は、CIAの分析官から大統領と国
 家安全保障会議(NSC)に送られた最新の報告書に、殺手鐗という言葉が何度も出てくるのを
 見て、その背景と意味を知るために、わたしに連絡してきたのだ。側近は、わたしの報告を聞い
 て驚いた。しかしわたしは、中国による危険な武器輸出は今後減るだろうと予測し、殺手洞は願
 望にすぎず、現在、中国はそれを稼働できるわけではないし、積極的に開発しているわけでもな
 い、と言い添えた,チェイニーは、中国が衛星攻撃プログラム、対ステルスプログラム、あるい
 は空母キラーミサイルを持っているのかどうかを極秘衷に調べさせた。答えはすぐ見つかった。

  現在わたしは、殺手鐗が100年マラソンにおける軍事戦略の重要な要素だということを知っ
 ている。殺手鐗は、中国の軍事指導者がいつか作りたい、あるいは、作るだけの力を備えたいと
 夢想する、奇矯な兵器などではない。彼らはすでに数十億ドルを投じてそれを進めており、一世
 代のうちに西洋列強の従来型の軍備を圧倒する軍事力を備えようとしている。それも西洋に気づ
 かれないようじわじわとである。



  しかし、国力を高めようとする中国の指導者が追求するのは、ハイテクの兵器システムだけで
 はない。1986年3月に始まった中国の「高技術研究発展計画」(「863計画」とも呼ばれ
 る)は、科学と技術によって国防の遅れを埋め合わせようとする大きな試みだった。進行中の8
 63計画には、民間・軍事両用の技術(バイオ術、レーザー技術、新素材など)が含まれる。8
 63計画は、「自主創新」戦略の基盤ともなり、2006年に、「国家中長期科学技術発展計画
 (MLP、2005~2020年)」に組み込まれた,自主創新戦略は、外国のR&D資本、技
 術譲渡、外国の企業や研究機関での中国人エンジニアと科学者の育成を通して、軍事・民事の両
 方で活用できる技術力を高めようとするものだ

  近年、中国の指導者は863計画に投入する資金を大幅に増やし、その領域を広げている,M
 LPは、それまで中国が進めてきたなかで最も野心的な科学技術計画になった。電気通信、航空
 宇宙科学などの16の「国家的メガプロジェクト」が「最優先中の最優先事項]として発表された
 が、そのうちの三つは機密扱いになっている,MLPと863計画が民間・軍事両用を掲げてい
 ることは、中国の長期的軍事計画と民間の科学技術開発が、土台部分で結びつきつつあることを
 反映している(注7)。

 Michael Raska for The Diplomat Sep 03, 2013

  アメリカの中国強硬論者の多くは、外洋海軍の拡大、新型のステルス戦闘機、弾道ミサイルの
 増強などからなる中国軍の増強を大声で喧伝してきた。米中の戦争がすぐ間近に迫っているよう
 な口ぶりで、それは空と開かれた海で戦われる、と彼らは言う(注8)。しかし中国の行動は往
 々にして、このような主張と矛盾する。中国が(ヒトラーやスターリンに倣って)近隣諸国やよ
 り遠い国を、積極的に攻撃し、支配するために、大きな軍隊を作ろうとしているという予想を裏
 づける証拠は今のところ見つかっていない



  アメリカの戦力投射システムの要素には、前線に配備された大陸間弾道ミサイル(ICBM)
 と基地、戦闘機への燃料補給能力、核爆弾、長距離の軍隊輸送能力が含まれる。ソビエトはこの
 アメリカ流の戦力投射を真似ようとしたが、中国はそうしないことを決めた。なぜなら、早まっ
 てそのようなことをすれば、覇権国の怒りを買い、戦国時代の教えに背くことになるからだ。中
 国の指導者は知っていた。かつてソ連の軍拡がアメジカを警戒させ、第二次大戦中にスターリン
 が結んだ米ソの協力体制は打ち切られ、ソ連への投資や貿易は禁止され、ついには冷戦が始まっ
 ことを。中国政府はモスクワの轍を踏むまいと誓った。そんなことをすれば、マラソンはゴー
 ルに行き着かずに終わる。

  中国は、アメリカと競うために軍備を増強するどころか、長距離爆弾、陸上部隊、核を搭載し
 たICBMといった従来型の戦力投射手段への投資を、ほとんどかまったく増やしてしていない。
 むしろ大幅に削減している。一方で先進兵器への支出は、過去10年間で劇的に増えた。200
 2年にアメリカ国防総省が議会に提出した、「中国の軍事力に関する年次報告書」には大胆な主
 張が記されている。中国の防衛予算は、中国政府が公表している金額の2倍だったのだ。
 
  なぜ中国は軍事支出をそれほど大幅に偽ったのだろう。間違いなく、中国の指導者には戦略的
 意図があり、その着想は、古代の歴史に得たものだ。「中国は平和衷に隆盛しつつある」という
 イメージを維持するには、軍事支出や先進的な戦力への投資を秘密にしなければならない。近隣
 の国々や西洋諸国(とりわけ、覇権国アメリカ)に警戒心を抱かせ、軍拡競争が始まったりする
 ことは絶対に避ける必要がある。



Modernizing China's Military: Opportunities and Constraints Jun 1, 2005

  国防総省からの委託でランド研究所が行った研究によれば、2030年までの間に、中国は海
 軍、空軍の新兵器に1兆ドル以上を投入できるようになる(注9)。アメリカの状況はこれとは
 逆の方向に進んでいる。たとえば、米海軍の艦船は2050年までに250隻以下となり、その
 大半は沿岸地域での戦闘用の小型船だ。また米空軍はいまだに1970年代に開発された技術に
 頼っている。それを考慮すると、今世紀半ばまでに、中国の軍事力はアメリカに勝るか、少なく
 とも同等になると予測できる。未来の軍事カバランスは少しずつシフトしており、10対1のア
 メリカ優位から5対5になり、そして最終的には、中国が優位に立つ。2013年12月の米議
 会の証言で、今後30年間、斬たな軍艦の価格は上昇するが、米海軍の造船予算は毎年150億ド
 ル削減されるという見通しが報告された(注10)。アメリカが優位を保つ唯一のチャンスは、よ
 り優れた技術と、国防総省のエア・シー・バトル構想のような、殺手鐗
計画に対抗する手段を開
 発することだろう。エア・シー・バトルは、空軍と海軍の長所を生かして、航行の自由に異を唱
 える敵対国に対抗するものだ(注11)。
 

 
The China Fallacy: How the U.S. Can Benefit from China's Rise and Avoid Another Cold War:
Donald Gross: Bloomsbury Academic

今回は中国の覇権過程の再確認作業。

                                                           この項つづく

● 東方賢者の選択 Ⅱ

3年半で62カ国・地域──安倍晋三首相が外遊した数は、それを大きく引き離す。外交の活発さは第
2次以降
の安倍政権の特徴だ。なぜ安倍政権は外交に力を入れてきたのか。アメリカが「世界の警察官」
をやめる一方、
ロシア、中国は「力による現状変更」を打ち出していく。揺れる世界の中で、安倍外交
の1300日の成果が問われているが、いま、さまざまな、評価、予測、提言がなされているが「グラ
ンド・ストラテジー構築」には、精緻な解析の上、これまでの「常識を覆す大胆な発想」をもった練り
上げが必要とされる。非暴力(=いかなる集団による自由な意思の圧殺を認めない)による積極的平和
主義とこれ以上の経済格差拡大を認めず是正する積極的福祉主義社会の実現のためには、「共生と贈与」
の政策推進は不可欠であることをまず確認しておこう。「一人は世界のために/世界は一人のために」
(歌謡曲歌詞に似たような言葉があったけな?!)。

  ● 今夜の一曲

J・J・ジョンソン(James Louis Johnson, (Jan 22, 1924 – Feb 4, 2001)は、スウィングジャズ期末期からモ
ダン・ジャズ時代にかけて活躍したトロンボーンプレイヤー。モダンジャズのトロンボーン演奏といえ
ば彼を指すほどに著名な存在。スウィング・ジャズ時代の花形楽器トロンボーン、モダン・ジャズ時代
になるとあまり省みられなくなるその理由のひとつにトロンボーンの持つ構造的特徴にある。トロンボ
ンはトランペットやサックスのようにバルブやキーを操作することで音階を変化させるのではなく、
スライドを伸縮
させることによってそれを行うが、中間音(ハーフトーンやクォータートーン)を容易
に出せ、スライドトーンといった
表現できる。アンサンブルを重視するビッグバンド・ジャズにおいて
バンドや曲自体の性格を決定する「核」
の役割を担う。

しかしその後に訪れたビバップ時代は、スピード感あふれる素早い音の切り替えや高音域をカバーする
幅広い音
階を多用したアドリブプレイ重視となり、逆に欠点となって、ジャズ楽器の主流のから落ちて
いく。
J・J・ジョンソンは「トロンボーンのディジー・ガレスピー」の超絶的技巧で、この欠点を克服
し、モダン・ジャズのトップ・プレイヤーの地位を確立。同時に、以降の時代におけるトロンボーンの
ジャズ楽器としての可能性を示し、多くの後進たちに多大な影響を与えた。その高速フレージングは、
わざわざアルバムジャケットに「バルブトロンボーンに非ず」との注記まで付け加えられるほどであった。

 

 ● 今宵のカクテル

 Dirty Martini

                                               

 

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東方賢者の選択

2016年07月05日 | デジタル革命渦論

 

 

        

        結局のところ、最後まで残るのは、最初からあったものなのだ。

                     チャールズ・ライト(『南部河川旅行記』より)

 
                                
                                               
                                            Charles Wright (born August 25, 1935)


        歴史ってのは、誰の考えや動きで決まっていくのかといえば、それはやはり、
        大多数の民衆がどう考え、どう動いたかで決まっていくんです。

        植民地化は悪であり、植民地からの解放は善である、という単純すぎる善悪
        感は、
ロシア・マルクス主義者が発明したものです。

                                              
                             Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 

 

 

 

【百パーセント再エネ時代: やっちゃえトヨタ】

 

矢沢永吉が出演する「やっちゃえ!ニッサン」のCMではないが、トヨタがオールソーラーシステムの
自社工場で「やっちゃうぞ!トヨタ」を展開するという。6月28日、岡県とトヨタ自動車九州、九電
テクノシステムズ、豊田通商がトヨタ自動車九州の宮田工場で、太陽光発電で水素を製造・活用する事
業を実施すると発表している(上図ダブクリ参照)。それによると、17年3月をめどにフォークリフ
トの運用を開始する。太陽光由来の水素で工場の燃料電池フォークリフトで活用するのは全国で初めて。
さらに17年度には、定置用燃料電池システムを設置し、車両や発電機器などの用途や利用時間帯の異
なる機器をマネジメントするシステムを構築する。この時、バックアップの系統電力とのバランスを図
り、併せて太陽光の余剰電力は、工場内で電力として使用。今回の事業実施で、系統からの受電量を削
減し、従来の電動フォークリフト利用の場合と比較して約6割の二酸化炭素の削減が可能になる。

トヨタ自動車九州は、水素利活用システムを導入し、運用・保守・メンテナンスと、他工場への展開検
討する。ま
た、九電テクノシステムズは、再エネ発電量の予測値と燃料電池フォークリフト、定置用燃
料電池システムの水
素利用計画に基づき、再エネ電力を最大に活用するように水素EMS(エネルギー
管理システム)を運転制御。
さらに、運用・保守・メンテナンスも担当する。豊田通商は、事業全体を
管理し、再エネ利用の最適化システムの
運用ノウハウを蓄積し、事業展開を前提に将来のビジネスモデ
ルの構築を目指す。なるほど、「セレクション・オブ・ザ・メイジャイ」(Selection of the Magi東方
賢者の選択)である。これは面白い。



   

【帝國のロングマーチ 13】    

     

● 折々の読書  『China 2049』33    

                                          秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」     

                                          マイケル・ピルズベリー 著
                                               野中香方子 訳     

ニクソン政権からオバマ政権にいたるまで、米国の対中政策の中心的な立場にいた著者マイケル・ピル
ズベリーが自分も今まで中国の巧みな情報戦略に騙されつづけてきたと認めたうえで、中国の知られざ
る秘密戦略「100年マラソン( The Hundred-Year Marathon )」の全貌を描いたもの。日本に関する言及
も随所にあり、これからの数十年先の世界情勢、日中関係そして、ビジネスや日常生活を見通すうえで、
職種や年齢を問わず興味をそそる内容となっている。 
     

 【目次】

   序  章 希望的観測
 第1章 中国の夢
 第2章 争う国々
 第3章 アプローチしたのは中国
 第4章 ミスター・ホワイトとミズ・グリーン
 第5章 アメリカという巨大な悪魔
 第6章 中国のメッセージポリス
 第7章 殺手鍋(シャショウジィエン)
 第8章 資本主義者の欺瞞
 第9章 2049年の中国の世界秩序
 第10章 威嚇射撃
 第11章 戦国としてのアメリカ
 謝 辞
 解 説 ピルズベリー博士の警告を日本はどう受け止めるべきか
     森本敏(拓殖大学特任教授・元防衛大臣)    

      

   第7章 殺手鐗(シャショウジィエン)

                   難知如陰、動如雷震
                   ――知り難きこと陰の如く、動くこと雷の震う如し

                                    『孫子』軍争篇

 「長官」と海軍兵が言った。
 「あなたの番です]
  その海軍兵は白いAクラスの制服を着て、アジア太平洋地域の巨大な地図の上に立っていた。六
 角形のマス目で区切られたその巨大な地図は、白黒のタイルの床全体を
 覆うほどだ,全員の目は、
 地図上のある場所に注がれている。中国が侵略した、長い
海岸線を持つ国。米軍の入念な計画がこ
 とごとく失敗に終わった国、ベトナムである。
 
「国防長官は4隻の航空母艦に対し、南シナ海へ全速力で向かうことを命じた」と海軍将校は言っ
 た。
 「それで少なくともハワイを守ることができる」

  想定する年は2030年、国防長官に話しかけていた将校は、ロードアイランド州ニューポート
 のネイバル・ウォー大学で兵唄演習を行っているチームの一員だった。
  この部屋では70年以上にわたって、このような演習が行われてきた。平時の外交能力を競うも
 のもあれば、侵攻、海上封鎖、財界規模の戦争を模したものもあった。飾り石のタイルで装飾され、
 第二次世界大戦の記念品が並ぶこの部屋で、日本軍による真珠湾攻撃が予測され、無撹されたのだ
 った。ここへ来るのは、拙‥託を聞きにデルポイの神殿を訪れるようなものだ。かつてデルポイで
 は、神が巫女を通じて、偉大なアテネの立法者ソロンに世界初の憲法制定を勧め、アレクサンダー
 大王に「お前は負けない」と告げた。

  この日、わたしはたまたま兵棋演習に居合わせたのではなく、その演習のメンバーだった。わた
 しが所属する「レッド・チーム]は中国を表していた。わたしの任務は、中国の軍部の指導者のよ
 うに考え、創造的になり、調査中の中国の非対称戦術(正規の軍事力ではかなわない国が仕掛ける、
 思いがけない戦術)を用いることだった。その秘策を駆使して、海戦史上、最も強力な艦隊に立ち
 向かった。

  兵棋演習が終わるまでに3時間かかった,最後の手が打たれた時、地図はチェスのチェックメイ
 トのようになり、アメリカのキングは、にっちもさっちもいかない状況に追い込まれていた。国防
 総省が承認する兵棋演習で初めて、アメリカが負けた。勝つためにわたしは、自分がよく知る中国
 の戦略に基づく秘策を用いた。武器と戦略は古代中国の戦争をルーツとし、現在、人民解放軍はそ
 れらの秘策の現代版を日々、開発している。それらは「殺手鋼(注1)」(中国の昔話に登場する
 武器で、それを持つものは自分より強い敵に勝つことができる)と呼ばれる。



China Looks to Undermine U.S. Power, With 'Assassin's Mace'

  その後の数年にわたって、同様の兵棋演習が国防総省によって20回ほど行われた。
  中国チームが従来通りの戦術や戦略を用いた時は、常にアメリカが圧勝した。しかし、中国が殺
 手綱を用いると、必ず中国が勝った(注2)。これらの模擬演習から得た教訓をもとに、オバマ政
 権は、「アジア基軸戦略」を立てた(注3)。
 (わたしも含め)多くの米当局者は、中国の戦略が中国人の恐怖心に基づいて設計されていること
 に気づくのが遅く、その恐怖について理解するのも遅かった。さらに悪いことに、わたしたちはそ
 の恐怖の背景を誤解しがちだった。重要な証拠の槙み重ね、とりわけミズ・リーがもたらした情報
 はいくぶん助けとなったが、自分たちがどれほど間違っていたかを悟るにはいたらなかった。

  中国の指導者は、アメリカや西洋諸国が中国を「包囲」することを、偏執的に恐れているが、だ
 からと言って、アメリカに対して戦争を起こそうとしているとの証拠は今のところほとんどない,
 実際、直近での軍事衝突は、中国のマラソン戦略にとって最大の脅威となりかねない。そんなこと
 をすれば、これまで辛抱強く重ねてきた、経済的にも地政学的にも覇権国になるための努力が、水
 泡に帰すだろう。中国の指導者は、仮に近い将来、中国がアメリカと並ぶ軍事力、つまり軍艦、航
 空機、戦車、兵士(もっとも、人民解放軍はすでにアメリカ陸軍をはるかに上回る、230万人の
 兵士を有している)を備えれば、西側諸国は警戒し、おそらく軍拡レースが始まる、と読んでいる。

  そのため彼らは長期戦を決め込み、粛々と抑止カを高め、じわじわと兵力を増強しているのだ,
  中国の昔話に、自分より強い敵を倒した英雄の物語がある。敵は巨人より強く、その時代の最新
 の武器を携えており、誰からも恐れられていた。しかし英雄は死も恐れず、この敵と戦った。なぜ
 なら秘密の武器を持っていたからだ。上着の幅広の袖に隠していたのは、剣を(あるいは頭蓋骨さ
 えも)真っニつにできる、短くて軽い、柄頭の付いた梶棒だった。「殺手鐗」と呼ばれるその梶棒
 は、一見、それほど威力があるようには思えなかったが、英雄が使えば、一撃で敵を打ちのめすこ
 とができた。英雄は、何年もかけてその扱いを訓練し、また敵の弱点を学んだ。そしてついに、そ
 の武器を手に奇襲をしかけ、自分よりはるかに強い敵を打ち破った。



  この物語は、聖書のダビデとゴリアテの物語に似ているが、少年ダビデが神の加護によって巨人
 ゴリアテを破ったのに対して、中国の英雄は、殺手鐗と呼ばれる秘密の武器によって救われた。殺・
 手・鐗は、「殺す」「手]「鎚矛」を意味する。「暗殺者の鎚矛]という意味だ。
  殺手綱は、自分より強い敵に勝つための切り札である。その言葉は少なくとも戦国時代までさか
 のぼることができ、古代の政治術の文献、武術小説、日刊の軍事新聞でも使われている。中国人は
 さまざまな状況で、殺手銅を目にしている。デートをする時、男性が殺手鍋を持っていれば、高嶺
 の花の女性もその魅力には抗しがたい。ビジネスを進める上では、殺手淵を持つ経営者は、より規
 模の大きい競争者を凌駕できる。サッカーの試合では、殺手鍋とは次々にシユートを決める選手で、
 そのような選手がいるチームは無敵だ。

  中国は殺手網を作るために、自国の資源に釣り合わないほど多額の投資を非対称能力(非対称戦
 をするための能力)の開発に注ぎ込んでいる,1990年代後期と2000年代初期の亡命者は、
 人民解放軍が開発中の新技術について言及したが、それは「台湾を超えて」使用可能なものだった。
 つまり、起こりうるシナリオは、アメリカの戦略家が計画し、勝手にゲーム終了を決め込んだもの
 とは限らない、ということだ。ある亡命者は、このような意表をつく兵器を「殺手洞」と呼んだ。
 中国で最も検討されたシナリオは、台湾を中心とするもので、台湾への侵攻をアメリカが妨害しよ
 うとした時に、その接近を阻む戦略が含まれていた(注4)。

  中国の軍事サークルでは殺手鐗は、「弱者が強者を打ち負かすための教え」に分類される。そし
 て殺手綱と呼ばれる行動は、敵を優越感に浸させること、あるいは敵をだまして支援させることだ。
 敵に関する情報の収集も欠かせない。そうした緻密な情報をもとに、敵の行動を予測し、裏をかき
 同盟を妨害し、密かに反同盟を築き、勢を崩す好機が到来すればすぐ攻撃し、流れを中国に引き込
 む。それは、時機を読んで敵の急所を攻撃し、一撃で麻痺させるのに似ている。

  わたしが初めて殺手鐗という言葉を目にしたのは、1995年に「海上戦の軍事改革」というタ
 イトルの論文を読んだときのことだった。著者は3人の卓越した軍事戦略家である。彼らはアメリ
 カに勝つための新技術を列挙し、海戦で成功するには宇宙空間での軍事的優位性が欠かせないと述
 べていた。
 「かつてないレベルからの指令を可能にする宇宙空間の支配は、海戦での特利にとって必須である
 ……電磁戦で優位になつ者は、その殺手胴を最大限に利用して、海戦で勝利するだろう」



Naval Warfare in the 21st Century - Modern War Magazine


  彼らは中国に、レーザー兵器のような殺手鐗のパイオニアになることを求めていた。それは「ま
 ず、対艦ミサイル防御システムに使用され」、軍艦と巡航ミサイルに対するステルス技術でも使わ
 れる。「電撃と、最初の強力な一撃は、より広く使用されるだろう一と記されている(注5)。さ
 らに、アメリカのような超大国に対抗する上で必要な戦術が数多く挙げられている。たとえば、強
 襲レーダー、ハイテク兵器を備えた無線局、電子兵器による敵の通信設備の妨害、通信センター・
 設備・指揮艦への攻撃、電磁パルス兵器による電子システムの破壊、コンピューターウイルスを使
 ったソフトウェアヘの攻撃、指向性エネルギー兵器(訳注*電子ビームやレーザー光など指向性の
 エネルギーで目標を直接攻撃する兵器)の開発などである。


 ※ 『孫子』軍争篇

  孫子曰、凡用兵之法、将受命於君、合軍聚衆、交和而舎、莫難於軍争、軍争之難者、以迂為直、
 以患為利、故迂其途、而誘之以利、後人發、先至人、此知迂直之計也、故軍争為利、軍争為危、挙
 軍而争利、則不及、委軍而争利、則輜重捐、是故軍無輜重則亡、無糧食則亡、無委積則亡、是故巻
 甲而趨、日夜不處、倍道兼行、百里而争利、則擒三将軍、勁者先、疲者後、其法十一而至、五十里
 而争利、則蹶上将軍、其法半至、三十里而争利、則三分之二至。
  故不知諸侯是謀者、不能預交、不知山林険阻沮澤之形者、不能行軍、不用郷導者、不能得地利。
  故兵以詐立、以利動、以分合為変者也、故其疾如風、其徐如林、侵掠如火、不動如山、難知如陰、
 動如雷震、掠郷分衆、廓地分利、懸権而動、先知迂直之計者勝、此軍争之法也。
  軍政曰、言不相聞、故為金鼓、視不相見、故為旌旗者、夫金鼓旌旗者、所以一人之耳目也、人既
 専一、則勇者不得獨進、怯者不得獨退、此用衆之法也、故夜戦多火鼓、晝戦多旌旗、所以変人之耳
 目也、故三軍可奪気、将軍可奪心、是故朝気鋭、晝気惰、暮気帰、故善用兵者、避其鋭気、撃其惰
 帰、此治気者也、以治待乱、以静待譁、此治心者也、以近待遠、以佚待労、以飽待飢、此治力者也、
 無邀正正之旗、勿撃堂堂之陳、此治変者也。

今回から、「第7章 殺手鐗(シャショウジィエン)」に入る。「漢民族帝國主義国家の覇権幻想は
どう様にして生まれたのか」の課題設定の核心に迫れるのか?今後も緊迫した時間がつづく。そのヒン
トの1つが、巻頭で引用した吉本隆明の「民地化は悪であり、植民地からの解放は善である、という単
純すぎる善悪感は、ロシア・マルクス主義者が発明したものです」という言葉だと考えている。

                                       この項つづく


 

 ● 今夜の一曲

Lambert, Hendricks & Ross Gimme That Wine The Hottest New Group In Jazz 1962



Count Basie - Jumpin' at the Woodside

ランバート、ヘンドリックス&ロス(Lambert, Hendricks & Ross)は、米国のヴォーカリーズ・トリオ。
57年に結成し、初期のメンバーは、デイヴ・ランバート、ジョン・ヘンドリックスおよびアニー・ロ
スで、62年にロスは脱退し、バヴァンが加入し、ランバート、ヘンドリックス&バヴァンとなる。
80年代に入ってラップが脚光を浴びはしめたとき、"現代ポピュラー音楽の革命"と称えたのはクイン
シー・ジョーンズならば、パップ勃興時にバブス・ゴンザレスらによって始った〈ヴォーカリーズ〉に
も同等の名誉を与えてしかるべき
だとの声が上がるのも納得。黒人音楽家はこのようにして物語を声に
し音楽として表現する。「スキャット」とはその初期の形式だが、楽器のスキャット(アドリブ)の歴
史的な名ソロに歌詞をつけて歌うのがヴォーカリーズで、彼らはは57年にグループで初めて試みを成
功させる。これはその最高傑作("Sing Along With Basie")。彼らの独創性を認めたベイシーの勧めで、
翌年ベイシー楽団との共演で実現する。 『ザ・スインガーズ』は、ジャズ楽曲をソロまで含めてコーラ
スに置き換え再現した驚異的での最良の一枚。白人男性、黒人男性、白人女性各1名の編成。作詞はは

ヘンドリックス。 また、『シング・エリントン』は、57年に結成されたこのグループの洒落たセンス
はインテリジ
ェンスと高度な音楽的技術、ジャズへの愛情ゆえ。ベイシー、エリントン、マイルス、R・
ウェストン、W・プレイ、C・
パーカー、S・ロリンズとジャズの重鎮をヴォーカラチズした功績は、
M・トランスファー、B・マクファーリンの力量である。

 

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共生と贈与

2016年07月04日 | デジタル革命渦論

 

 

        

                      どんな可能もぼくたちの視ている風景のほかからやってこない。

 

                                       
                             Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 

                           ※ モダニズムの限界。

 

   

 

【ちょっとだけ量子ドット工学講座 12】
 

今回は、直近の2つの特許事例から量子ドット太陽電池の製造方法について紹介する。まず1つめは、
特開2016-111126 光電変換素子および光電変換素子の製造方法 国立大学法人 宮崎大学 他 2016年06
月20日
」である(下図ダブクリ参照)。



【要約】光電変換素子が、複数の量子ドットと、量子ドットの構成物質よりもバンドギャップが大きい
物質からなる障壁層とを有し、複数の量子ドットが障壁層内に離散配置されてなる光吸収層を備えるよ
うにするとともに、量子ドットと障壁層の間における伝導帯のバンドオフセット量ΔEc(eV)が絶
対温度T(K)、1Sunあたりの電流密度I(mA/cm)、ボルツマン定数kBおよび電気素量
qにおいて、ΔEc≦-ln(I/4.29×10)・(kB・T/q)をみたすようにすることで、
量子ドット構造を有し、かつ、熱励起によるキャリア輸送を好適に行えるとともに構造上およびプロセ
ス上の制約の小さい光電変換素子を実現する。

--------------------------------------------------------------------------------------------
特許請求の範囲  

    1. 光電変換素子であって、複数の量子ドットと、前記量子ドットの構成物質よりもバンドギ
      ャップが大きい物質からなる障壁層と、を有し、前記複数の量子ドットが前記障壁層内に
      離散配置されてなる光吸収層、を備え、前記量子ドットと前記障壁層の間における伝導帯
      のバンドオフセット量ΔEc(eV)が絶対温度T(K)、1Sunあたりの電流密度I
      mA/cm2)、ボルツマン定数kBおよび電気素量qにおいて、ΔEc≦-ln(I/
      4.29×10)・(kB・T/q)をみたす、ことを特徴とする光電変換素子。
    2. 請求項1に記載の光電変換素子であって、前記量子ドットのサイズが、3nm以上15n
      m以下である、ことを特徴とする光電変換素子。
    3. 請求項1または請求項2に記載の光電変換素子であって、前記複数の量子ドットの面密度
      が1×1012cm-2以上である、ことを特徴とする光電変換素子。
    4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の光電変換素子であって、前記光吸収層内にお
      ける前記複数の量子ドットの配置が非周期的である、ことを特徴とする光電変換素子。
    5. 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の光電変換素子であって、前記量子ドットがG
      aAsからなり、前記障壁層がAlxGa1-xAs(0<x≦1)からなる、ことを特徴
      とする光電変換素子。
    6. 光電変換素子の製造方法であって、複数の量子ドットを、前記量子ドットの構成物質より
      もバンドギャップが大きい物質からなる障壁層内に離散配置することによって光吸収層を
      形成する光吸収層形成工程、を備え、前記光吸収層形成工程においては、前記量子ドット
      と前記障壁層の間における伝導帯のバンドオフセット量ΔEc(eV)が絶対温度T(K
      )、1Sunあたりの電流密度I(mA/cm)、ボルツマン定数kBおよび電気素量
      qにおいて、ΔEc≦-ln(I/4.29×10)・(kB・T/q)

      がみたされるように前記複数の量子ドットを前記障壁層内に配置する、ことを特徴とする
      光電変換素子の製造方法。
    7. 請求項6に記載の光電変換素子の製造方法であって、 前記光吸収層形成工程においては、
      前記量子ドットのサイズを3nm以上15nm以下とする、ことを特徴とする光電変換素子
      の製造方法。
    8. 請求項6または請求項7に記載の光電変換素子の製造方法であって、前記光吸収層形成工程
      においては、前記複数の量子ドットの面密度が、1×1012cm-2以上となるように、
      前記複数の量子ドットを前記障壁層内に配置する、ことを特徴とする光電変換素子の製造
      方法。
    9. 請求項6ないし請求項8のいずれかに記載の光電変換素子の製造方法であって、前記光吸
      収層形成工程においては、前記複数の量子ドットを非周期的に前記障壁層内に配置する、
      ことを特徴とする光電変換素子の製造方法。
    10. 請求項6ないし請求項9のいずれかに記載の光電変換素子の製造方法であって、前記量子
      ドットをGaAsにて形成し、前記障壁層をAlGa1-xAs(0<x≦1)にて形成
      する、ことを特徴とする光電変換素子の製造方法。 

--------------------------------------------------------------------------------------------

ところで、単接合型の太陽電池の場合、光電変換効率の理論限界である理論限界効率はせいぜい30%
程度である。この理論限界効率のより高い太陽電池を実現として、理論限界効率の高い量子ドット構造
を備えた量子ドット型太陽電池がある(例えば、特許文献1参照)。量子ドット型太陽電池は、3次元
量子閉じ込め作用をもつ多数の量子ドット(コア層)とそれを取り囲むバリア層からなる量子ドット層
を光吸収層にもつ太陽電池。この場合、理論限界効率は60%を上回るともいわれる。

例えば特許文献1のような量子ドット型太陽電池の場合、キャリアの輸送は、トンネル効果と熱励起に
り実現される。このうち、トンネル効果によるキャリア輸送を効果的なものとするためには、量子ドッ
トの寸法や障壁層の厚みに強く依存する共鳴状態の実現が必要なため、障壁層の厚みを精密に制御する
必要が生じる
。このことは、量子ドット型太陽電池を作製するに際して、構造上およびプロセス上の制
約となる。そこで、量子ドット構造をもち、熱励起によるキャリア輸送を好適に行えるとともに構造上
とプロセス上の制約の小さい光電変換素子の実現
とする新規考案である。 

 

 

次ぎに、2つめは、「特開2016-111317 光電変換素子及びその製造方法 国立大学法人 千葉大学 2016
年06月20日
」(下図ダブクリ参照)である。

【要約】この事例の一観点に係る光電変換素子は、第1伝導型からなる第1半導体層と、第1半導体層
上に形成される活性層と、活性層上に形成され、第2伝導型からなる第2半導体層と、を備える光電変
換素子であり、第1半導体層と活性層、第2半導体層の少なくともいずれかが、転位不活性部をもち、
また他の一観点に係る光電変換素子の製造方法は、上記第1半導体層を形成する第1工程と、上記第2
半導体層を形成する第2工程と、上記活性層を形成する第3工程と、上記転位不活性部を形成する第4
工程とをもつ。簡便かつ効果的に接合リーク電流を減少することで光電変換素子とその製造方法の新規
考案である。

--------------------------------------------------------------------------------------------

特許請求の範囲

    1. 第一の伝導層と、光吸収層と、第二の伝導層と、を順次積層した光電変換素子であって、
      前記光吸収層は、窒化インジウム層が複数積層された構造を備え、前記窒化インジウム層
      上のいずれかに、転位又は欠陥を覆うパッチが形成されてなる光電変換素子。
    2. 前記パッチは、酸化物、窒化物、及び酸窒化物の少なくともいずれかである請求項1記載
      の光電変換素子。
    3. 前記パッチは、前記窒化インジウム層の転位又は粒界の周囲を選択的に覆う一方、前記窒
      化インジウム層の転位又は粒界のない領域を覆わないよう形成されている請求項1記載の
      光電変換素子。
    4. 第一の伝導層を形成する工程と、光吸収層を形成する工程と、第二の伝導層を形成する工
      程と、を備えた光電変換素子の製造方法であって、前記光吸収層を形成する工程は、窒化
      インジウム層を形成する工程と、前記窒化インジウム層上にパッチを形成する工程と、を
      含む光電変換素子の製造方法。
    5. 前記パッチを形成する工程は、さらに、窒化インジウム層上に金属膜を形成する工程と、
      前記金属膜を酸化又は窒化処理する工程を含む、請求項4記載の光電変換素子の製造方法。
    6. 前記金属膜を酸化又は窒化処理する工程は、前記金属膜を酸化又は窒化処理することで、
      生成された金属酸化膜又は金属窒化膜を、前記窒化インジウム層に生じた転位又は粒界を
      自己組織的に覆うパッチとして形成する請求項5記載の光電変換素子の製造方法。
    7. 前記パッチを形成する工程は、複数の窒化インジウム層上において行われる請求項4記載の
      光電

      変換素子の製造方法。
    8. 第1伝導型からなる第1半導体層と、前記第1半導体層上に形成される活性層と、前記活
      性層上に形成され、第2伝導型からなる第2半導体層とを備える光電変換素子であって、
      前記第1半導体層および前記活性層および前記第2半導体層の少なくともいずれかが、転
      位不活性部を有する光電変換素子。前記転位不活性部は、結晶欠陥を含むように形成され
      る請求項8に記載の光電変換素子。
    9. 前記転位不活性部は、結晶欠陥上に形成される請求項8に記載の光電変換素子。
    10. 前記転位不活性部の膜厚は、2分子層以下である請求項8に記載の光電変換素子。
    11. 前記転位不活性部の前記膜厚は、1分子層以下である
    12. 前記転位不活性部の表面被覆率は、1未満である請求項8に記載の光電変換素子。
    13. 前記第1半導体層は第1バンドギャップエネルギーを有し、前記第2半導体層は第2バン
      ドギャップエネルギーを有し、前記活性層は第3バンドギャップエネルギーを有し、前記
      転位不活性部は第4バンドギャップエネルギーを有し、前記第4バンドギャップエネルギ
      ーは、前記第1バンドギャップエネルギーおよび前記第2バンドギャップエネルギーおよ
      び前記第3バンドギャップエネルギーの少なくともいずれかよりも大きい請求項8に記載
      の光電変換素子。
    14. 前記第3バンドギャップエネルギーは、前記第1バンドギャップエネルギーおよび前記第
      2バンドギャップエネルギーの少なくともいずれかよりも小さい請求項14に記載の光電
      変換素子。
    15. 前記第1半導体層は第1抵抗率を有し、前記第2半導体層は第2抵抗率を有し、前記活性
      層は第3抵抗率を有し、前記転位不活性部は第4抵抗率を有し、前記第4抵抗率は、前記
      第1抵抗率および前記第2抵抗率および前記第3抵抗率の少なくともいずれかよりも大き
      い請求項8に記載の光電変換素子。
    16. 前記活性層は第3伝導型を有し、前記転位不活性部は第4伝導型を有し、前記第4伝導型
      は、前記第1伝導型および前記第1伝導型および前記第3伝導型の少なくともいずれかと
      異なる請求項8に記載の光電変換素子。
    17. 前記第1半導体層および前記第2半導体層および前記活性層の少なくともいずれかは、窒
      化物半導体InxGayAl1-x-yNであり、前記xおよびyの範囲は、0≦x≦1か
      つ0≦y≦1かつ0≦x+y≦1である請求項8に記載の光電変換素子。
    18. 前記転位不活性部は、前記第1半導体層および前記第2半導体層および前記活性層の少な
      くともいずれかの構成元素と異価数元素を含む請求項8に記載の光電変換素子。
    19. 前記転位不活性部は、前記第1半導体層および前記第2半導体層および前記活性層の少な
      くともいずれかの構成元素よりも電気陰性度が大きい元素を含む請求項8に記載の光電変
      換素子。
    20. 前記転位不活性部は、酸素および窒素の少なくともいずれかを含む請求項8に記載の光電
      変換素子。
    21. 前記転位不活性部は、アルミニウムおよびホウ素およびシリコンおよびマグネシウムの少
      なくともいずれかを含む請求項8に記載の光電変換素子。
    22. 前記転位不活性部は、前記第1半導体層および前記第2半導体層および前記活性層の少な
      くともいずれかの結晶構造と異なる結晶構造を有する請求項8に記載の光電変換素子。
    23. 前記第1半導体層および前記第2半導体層および前記活性層および前記転位不活性部の少
      なくともいずれかの結晶構造は、多結晶もしくはアモルファスである請求項8に記載の光
      電変換素子。
    24. 第1伝導型からなる第1半導体層と、前記第1半導体層上に形成される活性層と、前記活
      性層上に形成され、第2伝導型からなる第2半導体層と、前記第1半導体層および前記活
      性層および前記第2半導体層の少なくともいずれかが、転位不活性部を備える光電変換素
      子の製造方法であって前記第1半導体層を形成する第1工程と、前記第2半導体層を形成
      する第2工程と、前記活性層を形成する第3工程と、前記転位不活性部を形成する第4工
      程と、を有する光電変換素子の製造方法。
    25. 前記第1原料と前記第2原料とが非混和系である請求項26に記載の光電変換素子の製造
      方法。
    26. 前記第4工程が、第1原料を供給する工程と、第2原料を供給する工程と、を有する請求
      項25に記載の光電変換素子の製造方法。
    27. 前記第4工程が、前記第1原料を除去する工程と、前記第2原料を凝縮させる工程と、を
      有する請求項26に記載の光電変換素子の製造方法。
    28. 前記第4工程が、第3原料を供給する工程を有する請求項25に記載の光電変換素子の製
      造方法。
    29. 前記第1原料を供給する前記工程で、前記第1原料の供給量が、2分子層以上となるよう
      制御された請求項26に記載の光電変換素子の製造方法
    30. 前記第4工程が、前記第1原料もしくは前記第2原料の少なくともいずれかの融点よりも
      高温で行われる
    31. 前記第1原料が、ガリウムもしくはインジウムの少なくともいずれかであり、前記第2原
      料がアルミニウムである請求項26に記載の光電変換素子の製造方法。
    32. 前記第3原料が、窒素もしくは酸素の少なくともいずれかである請求項28に記載の光電
      変換素子の製造方法。
    33. 前記第3原料が、水もしくは亜酸化窒素の少なくともいずれかである請求項28に記載の
      光電変換素子の製造方法。

--------------------------------------------------------------------------------------------

ところで、現在、ほとんどの太陽電池はシリコン(Si)を原料としている。一方で、人工衛星搭載な
どの高い光電変換効率が要求される用途では、太陽光スペクトルとの整合性から化合物半導体である砒
化ガリウム(GaAs)を用いた太陽電池が実用化されている。太陽電池の公知の技術として、量子構
造によって構成される太陽電池が提案されている。例えば、特許文献1に記載の太陽電池は、量子井戸
もしくは量子ドット構造を有する太陽電池であり、その構成について図18を参照して説明する。図の
一例として、太陽電池500の構成を示すブロック図であり、基板501と、前記基板501上に形成
されるn型半導体層502と、前記n型半導体層502上に形成される量子構造層503と、前記量子
構造層503上に形成されるp型半導体層504と、の周知の構成からなり、これらが周知の半導体製
造技術などによって単一セルとして形成される。



さて、量子構造で構成では、特許文献1の太陽電池は、量子井戸もしくは量子ドット構造構成の基板5
01と、この基板501上に形成されるn型半導体層502と、その上に形成する量子構造層503と、
その上に形成するp型半導体層504との構成で、半導体製造技術などで、単一セルとして形成する。
上記特許文献1等に記載される太陽電池の構成は、変換効率の向上のために太陽光スペクトルの利用波
長域を広げることが望まれることから、量子構造層の混晶組成、および量子井戸層厚や量子ドットサイ
ズの適切な制御
が必要となるが、上記特許文献1に明確に記載されるように、太陽光スペクトルの適合
波長域を広げようとすると、量子構造層の混晶組成変化、さらにヘテロ構造の導入などで実際には格子
欠陥、結晶欠陥、もしくは転位
が多数導入され、かえって太陽電池特性が劣化することが知られている。

すなわち、これらの不活性化または終端化(パッシベーション)技術の開拓こそが、高効率太陽電池を
実現の必須条件であるが、上記特許文献1に明確に記載されているように、太陽光スペクトルの適合波
長域を広げようとすると、量子構造層の混晶組成変化、さらにヘテロ構造の導入などによって実際には
格子欠陥、結晶欠陥、もしくは転位が多数導入され、かえって太陽電池特性が劣化する。つまり、これ
らの不活性化または終端化(パッシベーション)技術の開拓こそが、高効率太陽電池の実現には必須条
件で、広い太陽光スペクトルのほぼ全域を唯一カバーできるので、窒化物半導体を高効率太陽電池クへ
の応用が期待されている。

しかし、適当な商用基板が入手困難であることに加えて、窒化物半導体は格子不整合系であり、現時点
での最高水準の技術を持ってしても106cm-2以上の高密度な貫通転位が存在する。さらに、格子欠
陥結晶欠陥、および転位の問題は窒化インジウムガリウム(InGaN)ではより深刻となりIn組成
を増大させることに伴い、混晶の非混和性などによって更に欠陥・転位密度が大幅に増大される
。この
欠陥・転位は、太陽電池の接合漏れ電流(リーク電流)を劇的に増大させるために、これらの不活性化
または終端化(パッシベーション)技術が真に求められている。 そこで本発明は、上記課題を考慮し、
簡便かつ効果的に、接合リーク電流を減少させることのできる光電変換素子及びその製造方法を提供
することを目的としている。

以上、2つの量子ドット太陽電池の製造方法に関する特許事例は、いずれも製造するに当たっての関連
パラメータの条件だしとその数値化という側面で同じである。



ISIS' Ramadan terror campaign, July 3, 2016 CNN


【共生と贈与】

最近は国内外とも、ぞっとするような事件が多発している。その1つが武器あるいは殺傷事件。これは
日本国内とはずいぶん事情が異なり、その差異の環境要因が明確であることである。もう1つは、超高
齢社会と家族・共同体崩壊(核家族化、所得・地域格差拡大)を環境要因による日本国内事情によるも
のであり、これも、原因と問題解消法も見えている――このブログで随時記載してきた通りであるり、
抜本的な解決には、日本の政治制度下でも、機動的な解決とはほど遠いものの是正はされていくだろ。
しかし、積極的な平和主義と福祉主義を掲げ力強く実現させていきそうな日本の政治組織は存在しない
と「参議院選挙で投票する政党がない」とブログ掲載HEY BULLDOG 2016.06.26)したが、「共生と
贈与」を掲げ政党をここはつくるしかないかと考えてみるが、とはいえ、現状がいっぱい、いっぱいな
のにできる訳がない。家族に迷惑をかけるし、どうしたらよいものかと頭を悩ませる。同士は?それも、
回りの仲間は超高齢社会突入で無理。
                                           

   ● 今夜の一曲

Betty Carter: How High The Moon



午後4時を過ぎると、眼精疲労が蓄積し早めの夕食を7時に終え風呂をあがるとそのままテレビを消さ
ずにいつものように、アルコールも回り寝込んでしまい10時過ぎに眼を覚まし、米倉涼子の主演の『
ドクターX』のドラマをすっぽかしていたことに気づき、慌て観賞する。ところが、途中でこのドラマ
背景にデスクトップの小物を即興で愛用のデジカメ(SONY DSC-T-100) する。それがその1枚である。
朝摘みのローズマリー、読みかけのレイモンドー・カーヴァーの本と眼鏡、ショットグラスのトリス・
エクストラ・ウィスキーと愛用フェンネル・シード・パウダの香辛料瓶を気取らず撮る。番組を見終え
ても、中断していた作業を続けるミッドナイト。ベティー・カーターの「 How High The Moon」を聴き
ながらそのままキーボードを叩いた。

 

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ご機嫌なバイクショップ

2016年07月02日 | デジタル革命渦論

 

 

         

             (第一原発の爆発の写真が、官邸の知らないうちに公開されたことについて)官邸は、
             こんな大事な時に情報が共有されていないってことが不快だった、わけです。多分、
             清水社長側はそれを言われた時に「その写真を出したことが不快だ」と官邸が思って
             いると勘違いしたのではないでしょうか。そこから、「ズレ」が始まってるんですよ。 

                                    「総理大臣官邸は『炉心溶融』の隠蔽を指示したのか
                       
                                                         (下村健一 
2016.07.02)

 

             しゃべることというのは、絶対に人には通じないんだ。

                                          
                              Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 





店舗紹介|有限会社チャンピオンインターナショナル


● ご機嫌なバイクショップ

水曜日に、息子(次男)の自転車修理(パンク)が完了したというので、近くのバイクショップに二人
で出かけそのバイクを乗って帰ってくる。自転車屋に行ってみてびっくりするほどの様変わりで、へぇ
~ど驚くほどの様々な機種のバイクが展示されいるので、「百見は一触にしかず」といことで、すかさ
ずマウンテン・バイクのタイヤを触ってみる。タイヤ修理のことで彼女と話している作業服を着た若い
店員が、眼を輝かせ独り言のような驚嘆を聞き分けこちらをのぞくようなみている。値段も様々、近く
にあるマンウテンバイクは20数万円の値札が表示されているの二度びっくり、こんなものが売れてい
くのか?と。「あなた、将平(次男の名前)も自動車から自転車に乗り換えようと言っているぐらいよ」
と話すので、当世はデフレと言えど、当事者のセンスで商品を選択するのだと感心させられるが、でも、
パンクフリータイヤという技術もあるのだがら、そちらを共通化させるのがさきだねと、独り言のよう
につぶやきながら、若い店員のきびきびした働く誇りをもって仕事している様に接し、久しぶりに感動
する。

 
2016 BMW Cruise e-Bike pedelec #BMW bicycle

勿論のこと、マウンテンバイクだけではなく、ママチャリや電気自転車も店内におかれている。上のバ
イクはBMWの2013年モデルの電動アシスト自転車(BMW Cruise e-Bike)。ここから BOSCHのユ
ニットを大手の完成車メーカーがこぞって採用を始める。性能的にはEU規制対応モデルの最高速25km
/hまでものと45km/hまで出せるモデルがあるというが、これは道路交通法への最適化が課題となるだ
ろうが、そこは「デジタル革命渦論」、今後も、「安全」や「もの情報」との融合としての面白い展開
がつづきそうだ。

  Queen - Bicycle Race


● 電気飛行機の本気度診断 Ⅰ

「モノの電子化」とは、昨今のはやり言葉で言うと「モノの情報化」(IoT)ということになるが、日
本人の言語表意というか「概念」としては、「モノのインターネット」つまりは、様々な「物」がイン

ターネット接続され、情報交換することで相互に制御する仕組みと定義される。ことの始まりは99年
ケビン・アシュトンが、RFID――個体情報を埋め込んだ高周波タグ(電子付箋あるいは機械語付箋) 
から無線技術により情報交換を行う技術体系で、小さなワンチップ集積回路で体現――による商品管理
システムを
インターネットに例えたものであったが、スマートフォンやクラウドコンピューティングが
広まり、こ
の環境全体を表現する概念の転用と了解される(何かよそよそしい表現となるがこれが目一
杯というのが正直な感想。要するに、この技術体系から「集積回路」をマイナスするとその機能は霧消
するという話)。その意味では、前述の「電動アシスト自転車」は「防犯」「安全」「アシスト」の機
能の「連関」「網羅」「統合」の"前” 。とはいえ、法律では、国立研究開発法人情報通信研究機構法
及び特定通信・放送開発事業実施円滑化法の一部を改正する等の法律(2016年法律第32
号)の附
則で、「インターネット・オブ・シングスの実現」を「インターネットに多様かつ多数の物が
接続され、
及びそれらの物から送信され、又はそれらの物に送信される大量の情報の円滑な流通が国民
生活及び経
済活動の基盤となる社会の実現」とし、そのように定義する。

 Published on Jul 28, 2015

さて、話を戻そう。先日の『イントラダクションX:再エネ電動飛行機時代』(2016.06.20)でとりあ
げた、各国の電動飛行機の研究開発の本気度具合を少し掘り下げみた(上図ダブクリ参照)。そも、米
航空宇宙局(NASA)が、化石燃料を使わない次世代の電動飛行機「X―57」(通称・マクスウェ
ル)の開発に乗り出すと発表したことによるが、従来の飛行機より大幅にエネルギー効率がよく、騒音
や二酸化炭素の排出も劇的に減らせることから、来年中にも試験機の打ち上げを目指というものからで
あったが、これを先立つ、昨年3月24日、独シーメンスが、電気飛行機用に出力重量比が一般の5倍
となる軽量・高出力モーターを開発している。
新たに開発されたモーターは、重量50kgで出力260
kW。一般の産業用モーターは1kW/kg、EV用のもので2kW/kgなのに対し、5kW/kgという高い出力重量
比を持つ。 回転数2500prmで連続運転が可能で、回転の加減速なし(ギアを必要としない)でプロ
ペラを駆動できるようになっており、バッテリーや太陽電池の電力で飛ぶ電気飛行用に適した作りにな
っている。ここで重要な鍵語が「出力重量比」(パワーウェイトレシオ)。これに適したモータが、ロ
ーターの内部に磁石を埋め込んだ構造の回転界磁性形式の同期モータのIPMモータ(Interior Permanent
Magnet Motor
)なのである。



電気自動車用小型・軽量・高出力IPMモータの開発

つぎに、高い磁力をもつ(高保持力×高残留磁束密度)ネオジウム系永久磁石の最適化(組成・形状・
結晶構造)の研究開発がなされている(ひとつのとして事例下図ダブクリ)。つぎの改題は、発電用に
搭載されているエンジンは小型で、離陸時に求められる大きな出力に対応せず、離陸・上昇の際には機
体内に搭載したバッテリーに蓄えておいた電力を一気に放出することで高出力を実現。巡航姿勢に入る
と飛行に必要な電力は少くなるので、余った発電能力で生みだされた電気をバッテリーに充電すること
で高効率性と軽量化を実現する。

世界最大規模の磁化反転シミュレーター

離陸時は、大出力で加速させ、巡航時は小出力で余力発電を蓄電池に蓄積するシステム回路の新規考案
が下図のシーメンス社の「特表2016-506219 電気的輸送手段及び電気的輸送手段の作動方法、並びに、
蓄電池」――電気的輸送手段(10)、特に電気車両に関する。本発明の電気的輸送手段(10)が、
蓄電池ユニット(22)と車両搭載電気システム(26)とを備え、蓄電池ユニットには第1の端子
(44)及び第2の端子(24)及び第3の端子(42)が設ける。蓄電池ユニットが完全に充電され
た場合に、第1の端子と第2の端子との間に少なくとも200Vの第1の電圧(56)が生じ、さらに、
第3の端子において、第1の電圧の20%より小さいか又は10%より小さいか、または5%より小さ
い第2の電圧(57)が取り出し可能となる。車両搭載電気システム(26)は、第3の端子に接続さ
れているか、または、電気的輸送手段の第1のスイッチングユニット(34,334)を介し、第3の
端子に接続可能――を応用したという技術背景である。
JP 2016-506219 A 2016.2.25

先日、ソーラーパネルからの電力だけで世界一周を果たした有人飛行機「ソーラーインパルス」や、
ヶ月も飛行し続けて観測・無線中継を行う無人機など、太陽光・充電器の進歩もあり、電気で飛ぶ飛行
機の可能性が見えてきている。ここでも質の高い日本の冶金工学が期待される。これは胸を張って言え
るだろう。

● 高性能なタフでコンパクトな軽量蓄電池

 

つぎに重要な課題は、高性能な、タフで、コンパクトで、軽い蓄電池の開発である。ここで、先月28
日、リチウム硫黄電池――これまで、リチウム硫黄電池はリチウムイオン電池の発展型の二次電池であ
り、理論的にはリチウムイオン電池の2倍以上の重量量エネルギー密度が可能な電池として期待されて
いるが、放電に伴い正極からリチウム多硫化物が溶出し、電池寿命に悪影響を及ぼすという課題があっ
た――のセパレーターとして、金属有機構造体を複合材料にして利用し、リチウムイオンを通すが、多
硫化物イオンは通さない「イオンふるい」 効果をもち、1,500回繰り返した充放電で安定した動作
を示すリチウム硫黄電池の開発に成功したと産業技術総合研究所がアナウンスしていが、この電池の実
用化が進めばまた一歩電気飛行機の実現の推進力となる。これは面白い(下図は関連新規考案)。

特開2016-042419  リチウム-水溶性硫黄電池 


● 世界初、新規ナノ炭素材料の「カーボンナノブラシ」を発見

6月30日、NECはナノ炭素材料の1つとして、カーボンナノホーンの繊維状集合体である「カーボ
ンナノブラシ」――従来の球状カーボンナノホーン集合体と同様に水や溶媒への分散性が高く、物質を
包含する吸着性が高いという特性を有しながら、従来の10倍以上の高い導電性も有し、これまで困難
であった産業応用において重要な特性を兼ね備えた新しいナノ炭素材料――を発見しその作製に世界で
初めて成功したとアナウンス。カーボンナノホーンは、直径2~5ナノメートル、長さ40~50ナノ
メートルの角の形(図2)をしたナノ炭素構造体で、これまで放射状に延びた球状の集合体として作製さ
れてきた(図3)。今回、新たに発見した「カーボンナノブラシ」は、カーボンナノホーンが丸棒ブラシ
のように、放射状かつ繊維状に細長く伸びて集合、今までにない形状の材料である(図2)。これらの特
性により、IoTデバイスとしてセンサやアクチュエータ(圧力・電力を用いたスイッチ)の応答速度向上、
蓄電池やキャパシタの出力向上、ゴムやプラスチック複合材の導電性向上を始めとする、様々なデバイ
スの基本性能向上や、幅広い分野への適用が期待されている。


【再エネ百パーセント時代:すごいぞ!群馬40%超】

  沼田市利根町太陽光発電所

群馬県では再生可能エネルギーを大幅に増やして、電力の自給率を30年に40%以上へ高める計画を
推進中。農地で営農型の太陽光発電が始まり、山間部では豊富な水量を生かせる中小水力発電が活発に
進んでいる。森林の間伐材を利用した木質バイオマス発電も地域の安定した電力源となる。



 

 

 

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ニューヨークのバーチャル・パワープラント

2016年07月01日 | 時事書評

 

              市民社会のほうが国家や公よりも概念としては大きいんだ。

   

                                          
                              Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 

 

  

【住宅太陽光と蓄電池で「仮想発電所」構築】

● ニューヨークの大手電力が「クリーンで災害に強い」新サービス

米ニューヨーク州の大手電力会社 Consolidated Edison社は、1500万米ドルを投じ「仮想発電所(バーチャ
ルパワープラント:VPP)」のパイロットプログラムを開始すると発表。米SunPower社と米SunVerge
とのパートナーシップのもとで実施する(『3百軒分の住宅太陽光と蓄電池で「仮想発電所」を構築』日
経テクノロジー 2016.07.01)。同プログラムでは、ニューヨーク州の「エネルギービジョンの改革(REV
)」の一部で、同州ブルックリン市とクイーンズ市の家庭約3百戸に高効率太陽光発電システムと定置型
リチウムイオン蓄電池を設置し、Con Ed(Consolidated Edison社が「仮想発電所」として制御する。



Nation’s Largest Residential Solar Storage Project to Launch This Summer
 

ところで、「仮想発電所」とは、送配電系統の需給に合わせ、太陽光や蓄電池などの分散電源をあたかも
一つの発電所のように群制御することで、需給バランスを最適化する次世代型の電力ビジネスモデル。住
宅用の屋根置き太陽光発電は、米国、豪州など先進国を中心に普及が進む、一方で送配電系統への負担増、
電力料金負担の不均衡、煩雑な需給調整などの問題が生じる。こうした課題に対し電力会社や送配電系統
運用者、電力小売事業者などに向け、住宅用太陽光に蓄電システムを併設し、ソフトウェアによりて蓄電
池と太陽光発電を「群」として統合制御するサービスシステムを意味する。



Clean Virtual Power Plant

ニューヨークでは14年の1年間で過去の累計設置容量を上回る勢いで屋根置きの太陽光が設置。太陽光
の導入拡大は温室効果ガスの削減と大気質の改善に大きく貢献を目的とする。ただ、Con Ed社のサービス
管轄内は、太陽光発電による電力供給のピーク時間帯と電力需要のピークが異なり、夕方から夜にかけ、
化石燃料を燃やす火力発電に依存する。太陽光によるクリーンな電力を送配電網の貴重な資産として最大
かつ最適化するため、同社は、太陽光発電と蓄電池を「ペアリング」で、変動する太陽光の電力供給を平
滑化、さらに、需要に応じて供給(放電)させる。
このプログラムは今夏、スタートする予定。各家庭に
は、7~9キロワットのSunPower社製屋根置き太陽光発電システムと出力6キロワット・容量19.4キ
ロワット時の蓄電池が、同社を通じ導入される計画である。同社は太陽光発電システムの供給に加え、プ
ロジェクトのEPC(設計・調達・施工)事業者とし、顧客獲得、システム設置、運営、メインテナンスサ
ービスも受け持つ。



New York’s Con Ed Is Building a Virtual Power Plant From Sunverge Energy Storage and SunPower PV

さて、蓄電池の設置にあたり、参加者は頭金などの必要は一切なく、各家庭に設置導入される全ての蓄電
池はCon Ed社が購入・所有し、出力1.8メガワット・容量4メガワット時の蓄電池を一つにまとめた「ク
リーン仮想発電所」を構築。このことで、(1)電力会社が蓄電池の所有で、現時点で高額な蓄電池をよ
り早く市場導入できる。(2)さらに将来、「第3者所有モデル」(電力会社以外の民間企業による所有)
に展開する際の貴重なデータを収集できるという2つのメリットが見込まれる。つまり、パイロットプロ
グラムの最終ゴールは、(1)電力需要家が災害時でも使用できるクリーンなエネルギー源にどれだけの
価値を見出すのか、(2)一方で電力会社が「災害に強い」電力サービスを「いくら」で消費者に提供で
きるかを導出することにあり、これらがうまく噛み合うことで事業的に発展前提になるという。



Con Edison "Virtual Power Plant" Program Combines Solar and Storage to Improve Grid Resiliency

 

   

【帝國のロングマーチ 11】    

     

● 折々の読書  『China 2049』32    

                              秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」     


                                           マイケル・ピルズベリー 著
                                                野中香方子 訳     

ニクソン政権からオバマ政権にいたるまで、米国の対中政策の中心的な立場にいた著者マイケル・ピル
ズベリーが自分も今まで中国の巧みな情報戦略に騙されつづけてきたと認めたうえで、中国の知られざ
る秘密戦略「100年マラソン( The Hundred-Year Marathon )」の全貌を描いたもの。日本に関する言及
も随所にあり、これからの数十年先の世界情勢、日中関係そして、ビジネスや日常生活を見通すうえで、
職種や年齢を問わず興味をそそる内容となっている。 
     

 【目次】

  序 章 希望的観測
 第1章 中国の夢
 第2章 争う国々
 第3章 アプローチしたのは中国
 第4章 ミスター・ホワイトとミズ・グリーン
 第5章 アメリカという巨大な悪魔
 第6章 中国のメッセージポリス
 第7章 殺手鍋(シャショウジィエン)
 第8章 資本主義者の欺瞞
 第9章 2049年の中国の世界秩序
 第10章 威嚇射撃
 第11章 戦国としてのアメリカ
 謝 辞
 解 説 ピルズベリー博士の警告を日本はどう受け止めるべきか
     森本敏(拓殖大学特任教授・元防衛大臣) 
   

      

    第6章 中国のメッセージポリス     

                                 樹上開花-樹上に花を開す

                                『兵法三十六計』第二十九計     

     中国批判者の処罰

  中国在住の外国人記者の多くは、発言、執筆、電話、Eメールのすべてが中国当局
に監脱されてい
 ることを察している(※中国に限らず、これは帝國主義的行動の基本特性である)。ニューヨーク・
 タイムズ、ウォール・ストリ
ート・ジャーナル、CNNは、中国政府にとって不快な情報を報じた後、
 中国政府に
よるサイバー攻撃の標的になった。2013年2月、ツイッターの発表によれば、その登
 録者のおよそ25万アカウントが、ニューヨーク・タイムズと 同じような形で、中
国からのサイバ
 ー攻撃の標的となった(注50)。

  2013年、中国にいる外国特派員の10パーセントが、彼らやその前任者のレポートのせいで、
 取材許可証の取得が難しくなったと報告した(注51)。中国は2009
年以降、ワシントン・ポスト
 北京支局長アンドルー・ヒギンズヘのビザを許可してい
ない。1991年、ヒギンズは中国の反体制
 者に関するレポートが賞賛された後、国
外追放に処せられ、以来、中国国内からの報道を許されてい
 ない(注52)。オンライン
新聞のクリスチャン・サイエンス・モニターは、ジャスミン革命と呼ばれ
 る2011
年の暴動の取材が厳しく取り締まられたことについて、次のように報じている。

   中国政府は外国人記者に接触し、その動乱について取材しないよう命じていた。
  いくつかの事例では、警察が記者の自宅を訪れて警告した。もし動乱の取材をすれば、その記者
  のビザは即刻取り消されるだろう。(記者のポールー)ムーニィが、あ
る出来事について報道し
  ないという、かつてない決断を下したのは、中国での自分
の地位に影響が及ぶと考えたからだった
  (注53)。

  ポール・ムーニィは18年にわたって中国を取材してきた記者だが、現在、彼もまた中国への入国
 を拒否されている。汚職、公害、中国のがん村やエイズ村といった問
題に焦点を絞った彼の報道が、
 中国当局を激怒させているのは間違いない(注54)。
ーニィ、それにアンドルー・ヒギンズやメリ
 ッサ・チャンを含む数名の外国の特派員
は、中国政府にとって不都合な報道をしたために、中国を強
 制退去させられるか、入
国を禁止されている(注55)。アルジャジーラ・イングリッシュの記者であ
  るチャン
は、2012年に国外追放の憂き目にあった。ワシントン・ポストが記したように、その他
  の多くの記者は「追放に脅えており、またビザの認可が大幅に遅れている者も
いる(注56)。



  ブルームバーグ・ニュースの複数の記者は、中国の反撃を恐れて記事を差し止めた上司たちを非難
 する(注57)。記者たちは、その状況を「ナチス配下のドイツ」に例え
た。その時代のドイツでは、
 外国の報道機関はドイツ国内での取材を続けるために自
己検閲を行っていた(注58)。中国でのイン
 ターネットの取り締まりはよく知られてお
り、また広範囲に及ぶ。ある意味それは、通信社のアジャ
 ンス・フランス・プレスが
記したように、「中国共産党は、世界最大級のデジタル帝国を運営してい
 る」と言える
(注59)。そのネットワーク、中国電信(チャイナ・テレコム)、中国聯合通信(チ
 イナ・ユニコム)、中国移動通信(チャイナ・モバイル)からなり、すべて国が運営
している。イン
 ターネットを監視するためにツールをインストールしようとする政府
の試みは、「中国のグレート・
 ファイアウオール」と総称される(注60)。中国当局は
国民の暗号化したコミュニケーションも、同
 様にブロックできる。「監視はソーシャ
ル・ネットワーク、チャットサービス、VoIPにも入り込んで
  いる(注61)」とされる。
 



Syria, China worst for online spying, RSF reports  March 12, 2013 

  政府の怒りを買ったブロガーは日常的に攻撃され、投獄されることさえある。この
ようにして、西
 側の記者が情報やメッセージを得る機会は奪われている。

  中国は西側の企業に、検閲への協力を強制している。2006年、優良ブランド保護委員会(QBP
  C
)トヨタ、アップル、ノキアなどの中国で操業する200以上の
多国籍企業を代表する委員会)か
 らそのメンバーに届いたEメールは、各社の従業員
がグレート・ファイアウオールを迂回して、国外
 の支社と連絡を取っていることを中
国当局が懸念しており、それを続ければ警察の捜査が入るかもし
 れない、と警告して
いた(注62)。

  アップルは、中国政府の要求を飲み、反中国的な内容を扱うテレビ局や海外の書店とユーザーをつ
 なぐアプリケーションを削除した。それまで数年にわたって交渉して
きた、中国移動通信でのiPhon
  売を実現するためだ。フランスの衛星通信事
業社、ユーテルサットはその衛星で、反中国のテレピ局、
 新唐入電視台の放送電波を
中継していたが、2005年にその接続を絶った。政府絡みの顧客を獲得
 するためだ
(注63)。電子証券取引所ナスダックも中国の圧力に屈している。次のレポートが明ら
 にしているとおりだ。

   2007年1月、中国での同社の代表(アメリカ人)は、国家秘密情報局より出頭を命じられ、
  ニューヨークのナスダックの本部オフィスから報道している新唐人
電睨台のスタッフについて、
  尋問を受けた。彼は同日に釈放されたが、圧力に屈し
て、ナスダック本部からの新唐入電視台の
  報道を「今後は許可しないと、中国当局
に誓約したらしい」。
   2007年2月、新唐入電視台の特派員は突然その建物から閉め出された。それまで1年以上、
  毎日のようにそこから報道していたのだが。予期せぬ心変わりの背
景には、中国政府の圧力が疑
  われたが、実際何が起きたのかは、2012年に機密
情報が漏洩するまでわからなかった。新唐
  入電撹台を追放した直後、ナスダックは
中国の正式な認可を受け、中国初の代理店をオープンし
  た(注64)。

  「アップル社とフォルクスワーゲンが最近中国で経験したトラブルは、世界企業にと
ってリスクが
 増大しつつあることを示している。急成長する中国経済に依存する彼ら
は、中国政府の頻繁に変わる
 規制に黙って従うしかない。外国企業の中には、国営メ
ディアから激しい攻撃を受けるようになった
 ものもある。別のケースでは、あからさ
まな贈賄を制限する贈賄防止策など、政府の規制や政策と衝
 突している(注65)」と
ウォール・ストリート・ジャーナルは2013年に報じた,
 「アメリカの大企業は、北京にオフィスを持っていたとしても、わたしたち(博訊)と関わりたくは
 ないだろう。中国は、(好ましくない海外の放送局やサイトヘの)出資
者を突き止めている,彼らに
 は電話がかかってくるだろう(注65)」と、中国のニュ
ースサイト博訊の創始者、孟維參は言う。博
 訊は人権侵害について定期的に報道し
ヨーロッパ連合に支持されている。
 
  世論の操作、好ましいメッセージを発信する者への報酬、耳障りな発言者への処罰
といった戦法は
 すべて、戦国時代の前例に基づいている。軍師が提言する、数十年に
わたって覇権国を傾かせていく
 戦略には、覇権国のタカ派とハト派の扱いが含まれ
る。もちろん、何にでも使える普遍的な方法はな
 いが、目的は常に、ライバル(覇権
国)の計画を打ち砕くことにある。本当の地政学的な状況をわか
 らなくするのが狙い
だ。もしライバルが先に勢を理解すれば、碁盤に石を置くことすらできなくなっ
 てし
まう(注67)。

                                       この項つづく
 

 

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