極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

東方賢者の選択

2016年07月05日 | デジタル革命渦論

 

 

        

        結局のところ、最後まで残るのは、最初からあったものなのだ。

                     チャールズ・ライト(『南部河川旅行記』より)

 
                                
                                               
                                            Charles Wright (born August 25, 1935)


        歴史ってのは、誰の考えや動きで決まっていくのかといえば、それはやはり、
        大多数の民衆がどう考え、どう動いたかで決まっていくんです。

        植民地化は悪であり、植民地からの解放は善である、という単純すぎる善悪
        感は、
ロシア・マルクス主義者が発明したものです。

                                              
                             Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 

 

 

 

【百パーセント再エネ時代: やっちゃえトヨタ】

 

矢沢永吉が出演する「やっちゃえ!ニッサン」のCMではないが、トヨタがオールソーラーシステムの
自社工場で「やっちゃうぞ!トヨタ」を展開するという。6月28日、岡県とトヨタ自動車九州、九電
テクノシステムズ、豊田通商がトヨタ自動車九州の宮田工場で、太陽光発電で水素を製造・活用する事
業を実施すると発表している(上図ダブクリ参照)。それによると、17年3月をめどにフォークリフ
トの運用を開始する。太陽光由来の水素で工場の燃料電池フォークリフトで活用するのは全国で初めて。
さらに17年度には、定置用燃料電池システムを設置し、車両や発電機器などの用途や利用時間帯の異
なる機器をマネジメントするシステムを構築する。この時、バックアップの系統電力とのバランスを図
り、併せて太陽光の余剰電力は、工場内で電力として使用。今回の事業実施で、系統からの受電量を削
減し、従来の電動フォークリフト利用の場合と比較して約6割の二酸化炭素の削減が可能になる。

トヨタ自動車九州は、水素利活用システムを導入し、運用・保守・メンテナンスと、他工場への展開検
討する。ま
た、九電テクノシステムズは、再エネ発電量の予測値と燃料電池フォークリフト、定置用燃
料電池システムの水
素利用計画に基づき、再エネ電力を最大に活用するように水素EMS(エネルギー
管理システム)を運転制御。
さらに、運用・保守・メンテナンスも担当する。豊田通商は、事業全体を
管理し、再エネ利用の最適化システムの
運用ノウハウを蓄積し、事業展開を前提に将来のビジネスモデ
ルの構築を目指す。なるほど、「セレクション・オブ・ザ・メイジャイ」(Selection of the Magi東方
賢者の選択)である。これは面白い。



   

【帝國のロングマーチ 13】    

     

● 折々の読書  『China 2049』33    

                                          秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」     

                                          マイケル・ピルズベリー 著
                                               野中香方子 訳     

ニクソン政権からオバマ政権にいたるまで、米国の対中政策の中心的な立場にいた著者マイケル・ピル
ズベリーが自分も今まで中国の巧みな情報戦略に騙されつづけてきたと認めたうえで、中国の知られざ
る秘密戦略「100年マラソン( The Hundred-Year Marathon )」の全貌を描いたもの。日本に関する言及
も随所にあり、これからの数十年先の世界情勢、日中関係そして、ビジネスや日常生活を見通すうえで、
職種や年齢を問わず興味をそそる内容となっている。 
     

 【目次】

   序  章 希望的観測
 第1章 中国の夢
 第2章 争う国々
 第3章 アプローチしたのは中国
 第4章 ミスター・ホワイトとミズ・グリーン
 第5章 アメリカという巨大な悪魔
 第6章 中国のメッセージポリス
 第7章 殺手鍋(シャショウジィエン)
 第8章 資本主義者の欺瞞
 第9章 2049年の中国の世界秩序
 第10章 威嚇射撃
 第11章 戦国としてのアメリカ
 謝 辞
 解 説 ピルズベリー博士の警告を日本はどう受け止めるべきか
     森本敏(拓殖大学特任教授・元防衛大臣)    

      

   第7章 殺手鐗(シャショウジィエン)

                   難知如陰、動如雷震
                   ――知り難きこと陰の如く、動くこと雷の震う如し

                                    『孫子』軍争篇

 「長官」と海軍兵が言った。
 「あなたの番です]
  その海軍兵は白いAクラスの制服を着て、アジア太平洋地域の巨大な地図の上に立っていた。六
 角形のマス目で区切られたその巨大な地図は、白黒のタイルの床全体を
 覆うほどだ,全員の目は、
 地図上のある場所に注がれている。中国が侵略した、長い
海岸線を持つ国。米軍の入念な計画がこ
 とごとく失敗に終わった国、ベトナムである。
 
「国防長官は4隻の航空母艦に対し、南シナ海へ全速力で向かうことを命じた」と海軍将校は言っ
 た。
 「それで少なくともハワイを守ることができる」

  想定する年は2030年、国防長官に話しかけていた将校は、ロードアイランド州ニューポート
 のネイバル・ウォー大学で兵唄演習を行っているチームの一員だった。
  この部屋では70年以上にわたって、このような演習が行われてきた。平時の外交能力を競うも
 のもあれば、侵攻、海上封鎖、財界規模の戦争を模したものもあった。飾り石のタイルで装飾され、
 第二次世界大戦の記念品が並ぶこの部屋で、日本軍による真珠湾攻撃が予測され、無撹されたのだ
 った。ここへ来るのは、拙‥託を聞きにデルポイの神殿を訪れるようなものだ。かつてデルポイで
 は、神が巫女を通じて、偉大なアテネの立法者ソロンに世界初の憲法制定を勧め、アレクサンダー
 大王に「お前は負けない」と告げた。

  この日、わたしはたまたま兵棋演習に居合わせたのではなく、その演習のメンバーだった。わた
 しが所属する「レッド・チーム]は中国を表していた。わたしの任務は、中国の軍部の指導者のよ
 うに考え、創造的になり、調査中の中国の非対称戦術(正規の軍事力ではかなわない国が仕掛ける、
 思いがけない戦術)を用いることだった。その秘策を駆使して、海戦史上、最も強力な艦隊に立ち
 向かった。

  兵棋演習が終わるまでに3時間かかった,最後の手が打たれた時、地図はチェスのチェックメイ
 トのようになり、アメリカのキングは、にっちもさっちもいかない状況に追い込まれていた。国防
 総省が承認する兵棋演習で初めて、アメリカが負けた。勝つためにわたしは、自分がよく知る中国
 の戦略に基づく秘策を用いた。武器と戦略は古代中国の戦争をルーツとし、現在、人民解放軍はそ
 れらの秘策の現代版を日々、開発している。それらは「殺手鋼(注1)」(中国の昔話に登場する
 武器で、それを持つものは自分より強い敵に勝つことができる)と呼ばれる。



China Looks to Undermine U.S. Power, With 'Assassin's Mace'

  その後の数年にわたって、同様の兵棋演習が国防総省によって20回ほど行われた。
  中国チームが従来通りの戦術や戦略を用いた時は、常にアメリカが圧勝した。しかし、中国が殺
 手綱を用いると、必ず中国が勝った(注2)。これらの模擬演習から得た教訓をもとに、オバマ政
 権は、「アジア基軸戦略」を立てた(注3)。
 (わたしも含め)多くの米当局者は、中国の戦略が中国人の恐怖心に基づいて設計されていること
 に気づくのが遅く、その恐怖について理解するのも遅かった。さらに悪いことに、わたしたちはそ
 の恐怖の背景を誤解しがちだった。重要な証拠の槙み重ね、とりわけミズ・リーがもたらした情報
 はいくぶん助けとなったが、自分たちがどれほど間違っていたかを悟るにはいたらなかった。

  中国の指導者は、アメリカや西洋諸国が中国を「包囲」することを、偏執的に恐れているが、だ
 からと言って、アメリカに対して戦争を起こそうとしているとの証拠は今のところほとんどない,
 実際、直近での軍事衝突は、中国のマラソン戦略にとって最大の脅威となりかねない。そんなこと
 をすれば、これまで辛抱強く重ねてきた、経済的にも地政学的にも覇権国になるための努力が、水
 泡に帰すだろう。中国の指導者は、仮に近い将来、中国がアメリカと並ぶ軍事力、つまり軍艦、航
 空機、戦車、兵士(もっとも、人民解放軍はすでにアメリカ陸軍をはるかに上回る、230万人の
 兵士を有している)を備えれば、西側諸国は警戒し、おそらく軍拡レースが始まる、と読んでいる。

  そのため彼らは長期戦を決め込み、粛々と抑止カを高め、じわじわと兵力を増強しているのだ,
  中国の昔話に、自分より強い敵を倒した英雄の物語がある。敵は巨人より強く、その時代の最新
 の武器を携えており、誰からも恐れられていた。しかし英雄は死も恐れず、この敵と戦った。なぜ
 なら秘密の武器を持っていたからだ。上着の幅広の袖に隠していたのは、剣を(あるいは頭蓋骨さ
 えも)真っニつにできる、短くて軽い、柄頭の付いた梶棒だった。「殺手鐗」と呼ばれるその梶棒
 は、一見、それほど威力があるようには思えなかったが、英雄が使えば、一撃で敵を打ちのめすこ
 とができた。英雄は、何年もかけてその扱いを訓練し、また敵の弱点を学んだ。そしてついに、そ
 の武器を手に奇襲をしかけ、自分よりはるかに強い敵を打ち破った。



  この物語は、聖書のダビデとゴリアテの物語に似ているが、少年ダビデが神の加護によって巨人
 ゴリアテを破ったのに対して、中国の英雄は、殺手鐗と呼ばれる秘密の武器によって救われた。殺・
 手・鐗は、「殺す」「手]「鎚矛」を意味する。「暗殺者の鎚矛]という意味だ。
  殺手綱は、自分より強い敵に勝つための切り札である。その言葉は少なくとも戦国時代までさか
 のぼることができ、古代の政治術の文献、武術小説、日刊の軍事新聞でも使われている。中国人は
 さまざまな状況で、殺手銅を目にしている。デートをする時、男性が殺手鍋を持っていれば、高嶺
 の花の女性もその魅力には抗しがたい。ビジネスを進める上では、殺手淵を持つ経営者は、より規
 模の大きい競争者を凌駕できる。サッカーの試合では、殺手鍋とは次々にシユートを決める選手で、
 そのような選手がいるチームは無敵だ。

  中国は殺手網を作るために、自国の資源に釣り合わないほど多額の投資を非対称能力(非対称戦
 をするための能力)の開発に注ぎ込んでいる,1990年代後期と2000年代初期の亡命者は、
 人民解放軍が開発中の新技術について言及したが、それは「台湾を超えて」使用可能なものだった。
 つまり、起こりうるシナリオは、アメリカの戦略家が計画し、勝手にゲーム終了を決め込んだもの
 とは限らない、ということだ。ある亡命者は、このような意表をつく兵器を「殺手洞」と呼んだ。
 中国で最も検討されたシナリオは、台湾を中心とするもので、台湾への侵攻をアメリカが妨害しよ
 うとした時に、その接近を阻む戦略が含まれていた(注4)。

  中国の軍事サークルでは殺手鐗は、「弱者が強者を打ち負かすための教え」に分類される。そし
 て殺手綱と呼ばれる行動は、敵を優越感に浸させること、あるいは敵をだまして支援させることだ。
 敵に関する情報の収集も欠かせない。そうした緻密な情報をもとに、敵の行動を予測し、裏をかき
 同盟を妨害し、密かに反同盟を築き、勢を崩す好機が到来すればすぐ攻撃し、流れを中国に引き込
 む。それは、時機を読んで敵の急所を攻撃し、一撃で麻痺させるのに似ている。

  わたしが初めて殺手鐗という言葉を目にしたのは、1995年に「海上戦の軍事改革」というタ
 イトルの論文を読んだときのことだった。著者は3人の卓越した軍事戦略家である。彼らはアメリ
 カに勝つための新技術を列挙し、海戦で成功するには宇宙空間での軍事的優位性が欠かせないと述
 べていた。
 「かつてないレベルからの指令を可能にする宇宙空間の支配は、海戦での特利にとって必須である
 ……電磁戦で優位になつ者は、その殺手胴を最大限に利用して、海戦で勝利するだろう」



Naval Warfare in the 21st Century - Modern War Magazine


  彼らは中国に、レーザー兵器のような殺手鐗のパイオニアになることを求めていた。それは「ま
 ず、対艦ミサイル防御システムに使用され」、軍艦と巡航ミサイルに対するステルス技術でも使わ
 れる。「電撃と、最初の強力な一撃は、より広く使用されるだろう一と記されている(注5)。さ
 らに、アメリカのような超大国に対抗する上で必要な戦術が数多く挙げられている。たとえば、強
 襲レーダー、ハイテク兵器を備えた無線局、電子兵器による敵の通信設備の妨害、通信センター・
 設備・指揮艦への攻撃、電磁パルス兵器による電子システムの破壊、コンピューターウイルスを使
 ったソフトウェアヘの攻撃、指向性エネルギー兵器(訳注*電子ビームやレーザー光など指向性の
 エネルギーで目標を直接攻撃する兵器)の開発などである。


 ※ 『孫子』軍争篇

  孫子曰、凡用兵之法、将受命於君、合軍聚衆、交和而舎、莫難於軍争、軍争之難者、以迂為直、
 以患為利、故迂其途、而誘之以利、後人發、先至人、此知迂直之計也、故軍争為利、軍争為危、挙
 軍而争利、則不及、委軍而争利、則輜重捐、是故軍無輜重則亡、無糧食則亡、無委積則亡、是故巻
 甲而趨、日夜不處、倍道兼行、百里而争利、則擒三将軍、勁者先、疲者後、其法十一而至、五十里
 而争利、則蹶上将軍、其法半至、三十里而争利、則三分之二至。
  故不知諸侯是謀者、不能預交、不知山林険阻沮澤之形者、不能行軍、不用郷導者、不能得地利。
  故兵以詐立、以利動、以分合為変者也、故其疾如風、其徐如林、侵掠如火、不動如山、難知如陰、
 動如雷震、掠郷分衆、廓地分利、懸権而動、先知迂直之計者勝、此軍争之法也。
  軍政曰、言不相聞、故為金鼓、視不相見、故為旌旗者、夫金鼓旌旗者、所以一人之耳目也、人既
 専一、則勇者不得獨進、怯者不得獨退、此用衆之法也、故夜戦多火鼓、晝戦多旌旗、所以変人之耳
 目也、故三軍可奪気、将軍可奪心、是故朝気鋭、晝気惰、暮気帰、故善用兵者、避其鋭気、撃其惰
 帰、此治気者也、以治待乱、以静待譁、此治心者也、以近待遠、以佚待労、以飽待飢、此治力者也、
 無邀正正之旗、勿撃堂堂之陳、此治変者也。

今回から、「第7章 殺手鐗(シャショウジィエン)」に入る。「漢民族帝國主義国家の覇権幻想は
どう様にして生まれたのか」の課題設定の核心に迫れるのか?今後も緊迫した時間がつづく。そのヒン
トの1つが、巻頭で引用した吉本隆明の「民地化は悪であり、植民地からの解放は善である、という単
純すぎる善悪感は、ロシア・マルクス主義者が発明したものです」という言葉だと考えている。

                                       この項つづく


 

 ● 今夜の一曲

Lambert, Hendricks & Ross Gimme That Wine The Hottest New Group In Jazz 1962



Count Basie - Jumpin' at the Woodside

ランバート、ヘンドリックス&ロス(Lambert, Hendricks & Ross)は、米国のヴォーカリーズ・トリオ。
57年に結成し、初期のメンバーは、デイヴ・ランバート、ジョン・ヘンドリックスおよびアニー・ロ
スで、62年にロスは脱退し、バヴァンが加入し、ランバート、ヘンドリックス&バヴァンとなる。
80年代に入ってラップが脚光を浴びはしめたとき、"現代ポピュラー音楽の革命"と称えたのはクイン
シー・ジョーンズならば、パップ勃興時にバブス・ゴンザレスらによって始った〈ヴォーカリーズ〉に
も同等の名誉を与えてしかるべき
だとの声が上がるのも納得。黒人音楽家はこのようにして物語を声に
し音楽として表現する。「スキャット」とはその初期の形式だが、楽器のスキャット(アドリブ)の歴
史的な名ソロに歌詞をつけて歌うのがヴォーカリーズで、彼らはは57年にグループで初めて試みを成
功させる。これはその最高傑作("Sing Along With Basie")。彼らの独創性を認めたベイシーの勧めで、
翌年ベイシー楽団との共演で実現する。 『ザ・スインガーズ』は、ジャズ楽曲をソロまで含めてコーラ
スに置き換え再現した驚異的での最良の一枚。白人男性、黒人男性、白人女性各1名の編成。作詞はは

ヘンドリックス。 また、『シング・エリントン』は、57年に結成されたこのグループの洒落たセンス
はインテリジ
ェンスと高度な音楽的技術、ジャズへの愛情ゆえ。ベイシー、エリントン、マイルス、R・
ウェストン、W・プレイ、C・
パーカー、S・ロリンズとジャズの重鎮をヴォーカラチズした功績は、
M・トランスファー、B・マクファーリンの力量である。

 

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