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極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

エネルギーと環境 206

2025年04月08日 | ネオコンバ-テック

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果
彦根藩の当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救った
と伝えられる招き猫と井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時
代の井伊軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと
兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ-。

安土城CG2

【季語と短歌:4月8日】

      疲れ果て髪かき上げる手に桜 

『短歌十首貫徹集⓷』  
行く春の温度差激し記憶とどめ熱き夏を記録するかも
自らの先も分からずその先を何故行くのかと問う未来かな
次世代に贈るソーラ構想す今夜も途上小さく吐息

 

✳️ 次世代ペロブスカイト系フィルム型太陽電池
2️⃣ 特開2024-177790 ホール輸送材料及びホール輸送材料を用いた
  太陽電池 株式会社アイシン 審査前
【要約】一般式(1)で表されるドナー-アクセプター-ドナー型構
造を有し、A部を、炭素原子と水素原子からなる電子受容性基を含ん
で構成し、フルオレン環上の9位に炭素間二重結合を介して基(VI)
で表されるRが導入され、フルオレン環上の2位及び7位にD部が
導入されたホール輸送材料、及び、太陽電池。

000002

000003

000004
 非特許文献1には、透明導電膜付きガラス基板と、緻密な二酸化チ
タン(TiO)膜からなるブロッキング層と、光によって励起して
電子を発生するペロブスカイト化合物として臭化鉛(PbBr)、
ヨウ化鉛(PbI)、メチルアミン臭化水素酸塩(CHN・HBr
:以下、「MABr」と略する場合がある)、及び、ホルムアミジン
ヨウ化水素酸塩(CH・HI:以下、「FAI」と略する場合
がある)を多孔質の二酸化チタン(TiO)に積層させて形成され
る発電層と、ホール輸送層と、電極とを備えたペロブスカイト太陽電
が示されている。 この発電層は、混合ハロゲン化物(FAPbI
0.85(MAPbBr0.15ペロブスカイト層として形成され
ている。【0005】
  従来において、ホール輸送層に用いられるホール輸送材料として、
下記の一般式(A)で表される2,2´,7,7´-テトラキス(N,N
´-ジ-p-メトキシフェニルアミノ)-9,9´-スピロビフルオレ
ン(2,2',7,7'-tetrakis(N,N'-di-p-methoxyphenylamine)-9,9'-spiro-
bifluorene(一般呼称「spiro-OMeTAD」、以下、本呼称
を使用))が汎用されている。ペロブスカイト化合物の結晶が光を吸
収することによって電子とホールを生じる。ホールは、ホール輸送材
料により対向電極に輸送され、電子は光電極に移動するといったサイ
クルを繰り返すことで発電する。

000015
【0007】  spiro-OMeTADは市販されており入手が容
易であるが、非特許文献1でも報告される通り、spiro-OMe
TADには、合成及び精製工程数が多く要求されることから本質的に
低コスト化が困難であるとの問題点があった。更に、ホール移動度が
比較的低い、ホール輸送材料として効率的かつ安定的に機能するため
にはコバルト錯体等のドーパントを要する等の問題点もあった。また、
spiro-OMeTADをホール輸送材料として太陽電池に組み込
んだ際に高い初期性能を発揮し得るが、その持続性に問題があった。
そのため、低コストに提供でき、かつ、効率的かつ安定的なホール輸
送効果を奏するホール輸送材料の研究が進められている。【0008】
そこで、非特許文献1では、新規なホール輸送材料として、アクセプ
ター(以下、「A」という)部にカルバゾール環、ドナー(以下、「
D」という)部にトリフェニルジメトキアミノ基を有し、これらがド
ナー-アクセプター-ドナー型(以下、「D-A-D型」という)構
造に連結した下記の一般式(B)で表されるLD29と呼称される化
合物が報告されている。かかるLD29をホール輸送材料として利用
した太陽電池においてドーパントフリーでは変換効率が14.29%
であったが
、ドーパントとしてリチウムビス(トリフルオロメタンス
ルホニル)イミド(以下、「LiTFSI」と称する場合がある)、
4-tert-ブチルピリジン(TBP)、コバルト錯体(FK20
9)を添加すると変換効率が18.0%に改善され、spiro-O
MeTADに匹敵する変換効率が得られている。

000016
【0010】  LD29において、A部にカルバゾール環が導入され
ているが、当該カルバゾール環の9位のヘテロ原子(窒素原子)上の
不対電子対(ローンペア)が電子吸引性に対して阻害する方向に働く
ことが考えられる。これにより、LD29の分子内でのホール輸送能
力が低下し、LD29をホール輸送材料として使用する太陽電池にお
いて十分な太陽電池効率を得ることが難しいことが想定される。また、
当該太陽電池は、時間の経過と共に太陽電池効率が低下する等、その
耐久性の面での課題があった。これは、ホール輸送材料にドーパント
として添加されたLiTFSIに含まれるリチウムイオンがホール輸
送層の外に拡散してしまうことや、LiTFSI自体に強い吸湿
あること等に起因
するものであると考えられる。【0011】
  また、非特許文献2において、下記の一般式(C)で表されるYN1
と称される化合物が、非特許文献3において、下記の一般式(D)で
表されるPTZ2と称される化合物が報告されている。何れの化合物
もD-A-D型構造を有するものであるが、上記したLD29と同様
の問題点がある。【0012】【化3】

000017

000018
【0014】
  このように、D-A-D型構造を有するホール輸送材料等の低分子
有機材料に関する多くの研究が進められている。本願の発明者らも、
特許文献1において、下記の一般式(E)で表されるDHCF-3
称される低分子有機材料を報告した。かかるDHCF-3は、優れた
ホール輸送特性を安定的に示しホール輸送材料として良好に機能し、
かつ、太陽電池に導入したところ良好な太陽電池性能を発揮したこと
が確認されたものである。ここで、DHCF-3は、A部にフルオレ
ン環、D部に4-(ビス(4-メトキシフェニル)アミノ)フェニル
基を有し、かつA部のフルオレン環の9位の炭素にC-C二重結合を
介してD部と同一の置換基が導入された構造を有する。【0015】
000019
【0016】
  しかし、特許文献1に記載のホール輸送材料は、A部の置換基が嵩
高いことから、一方のD部とA部の置換基が立体的に接近した配置と
なり、この近接している側のD部がA部のフルオレン環に対しより大
きくねじれた配置を取る。そのためπ共役が弱くなりホール輸送効果
が阻害されることが想定される。
【先行技術文献】【特許文献】【0017】
【特許文献1】 特開2023-46046号 ホール輸送材料及びホ
ール輸送材料を用いた太陽電池

【非特許文献】【0018】
【非特許文献1】Xuepeng Liu他著、“A star-shaped carbazole-based
hole-transporting material with triphenylamine side arms for perovskite
solar cells
,”J.Mater.Chem.C., 2018, 6, 12912-12918(DOI:10.1039/
c8tc04191a)
【非特許文献2】Peng Xu他著、“D-A-D-Typed Hole Transport
Materials for Efficient Perovskite Solar Cells: Tuning Photovoltaic
Properties via the Acceptor Group
”、ACS Appl. Mater. Interfaces
2018, 10, 23(DOI:10.1021/acsami.8b04003)
【非特許文献3】Roberto Grisorio他著、“Molecular Tailoring of
Phenothiazine-Based Hole-Transporting Materials for High-Performing
Perovskite Solar Cells
”、ACS Energy Lett. 2017, 2, 5, 1029-1034(
DOI:10.21/acsenergylett.7b00054
【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0019】
  そこで、上記従来技術の問題点を鑑み、優れたホール輸送特性を安定
的に示すホール輸送材料の提供が依然として求められていた。また、
ホール輸送材料を安価に提供することが求められていた。更に、電池
性能の高い太陽電池を安価で提供することが求められていた。
【課題を解決するための手段】【0020】
  本発明に係るホール輸送材料の特徴構成は、  下記の一般式(1)で
表されるドナー-アクセプター-ドナー(D-A-D)型構造を有す
るホール輸送材料。【化6】
000020
〔一般式(1)中、  2つのD部は、同一の構造を有する領域であり、
  各D部は、下記の基(I)、基(II)、基(III)、基(IV)、
及び、基(V)から選択される1つの構造を有し、【化7】
000021
(基(II)中、
  XとYは、それぞれ独立して、0、1、2の何れかの整数である
  Rは、-H、-C2n+1、-O-C2n+1、及び、-S
-C2n+1から選択され、ここで、n=1~8の整数であり、
  Rは、-H、-C2n+1、-O-C2n+1、及び、-S-
2n+1から選択され、ここで、n=1~8の整数であり、
  ただし、RとRは、同時に-Hであることはなく、
  R2a1とR2a2は、それぞれ独立して、-H、-F、及び、-C
から選択され、ここで、R2a1とR2a2は、少なくとも一方が
-Hであり、  Rは、-H、-C2n+1、-O-C2n+1
及び、-S-C2n+1から選択され、ここで、nは、1~8の
何れかの整数であり、  Yが1又は2であって、Rが存在する場合
には、Rは、基(II)中のチオフェン環の3位又は4位に導入さ
れ、-H及び-C2n+1から選択され、ここで、nは、1~8の
何れかの整数である。)【化9】
000024
(基(I)中、
  XとYは、それぞれ独立して、0、1、2の何れかの整数である
  Rは、-H、-C2n+1、-O-C2n+1、及び、-S
-C2n+1から選択され、ここで、n=1~8の整数であり、
  Rは、-H、-C2n+1、-O-C2n+1、及び、-S
-C2n+1から選択され、ここで、n=1~8の整数であり、
  ただし、RとRは、同時に-Hであることはなく、
  R2a1、R2a2、R2b1、及び、R2b2は、それぞれ独立して
、-H、-F、及び、-CFから選択され、ここで、R2a1とR2a2
は、少なくとも一方が-Hであり、R2b1とR2b2は、少なくとも
一方が-Hである。)【化8】

000022
(基(II)中、
  XとYは、それぞれ独立して、0、1、2の何れかの整数である
  Rは、-H、-C2n+1、-O-C2n+1、及び、-S
-C2n+1から選択され、ここで、n=1~8の整数であり、
  Rは、-H、-C2n+1、-O-C2n+1、及び、-S
-C2n+1から選択され、ここで、n=1~8の整数であり、
  ただし、RとRは、同時に-Hであることはなく、  R2a1
2a2は、それぞれ独立して、-H、-F、及び、-CFから選
択され、ここで、R2a1とR2a2は、少なくとも一方が-Hであり、
  Rは、-H、-C2n+1、-O-C2n+1、及び、-S
-C2n+1から選択され、ここで、nは、1~8の何れかの整数
であり、  Yが1又は2であって、Rが存在する場合には、Rは、
基(II)中のチオフェン環の3位又は4位に導入され、-H及び-
2n+1から選択され、ここで、nは、1~8の何れかの整数で
ある。)【化9】
000023
000024
000025
基(III)、基(IV)、及び、基(V)中、
  XとYは、それぞれ独立して、0、1、2の何れかの整数であり、
  2つのRは、それぞれ独立して、下記の基(I´)で表される構造
を有し、【化12】

000026
(基(I´)中、
  X´とY´は、それぞれ独立して、0、1、2の何れかの整数である
  R´は、-H、-C2n+1、-O-C2n+1、及び、-S
-C2n+1から選択され、ここで、n=1~8の整数であり、
  R´は、-H、-C2n+1、-O-C2n+1、及び、-
S-C2n+1から選択され、ここで、n=1~8の整数であり、
  ただし、R´とR´は、同時に-Hであることはなく、  R2a1´、
2a2´、R2b1´、及び、R2b2´は、それぞれ独立して、-H、
-F、及び、-CFから選択され、ここで、R2a1´とR2a2´は、
少なくとも一方が-Hであり、R2b1´とR2b2´は、少なくとも一方
が-Hである。))  一般式(1)中、
  Rは、下記の基(VI)で表される構造を有し、【化13】

000027

(基(VI)中、
  Rは、-C2m+1であり、ここで、m=6~16の整数であ
る。)〕、点にある。【0021】
  上記構成によれば、安定的かつ効率的にホールを捕捉し移動させる
ことができる優れたホール輸送特性を有しているホール輸送材料を提
供することができる。詳細には、本構成のホール輸送材料は、D-A
-D型構造を有し、A部を炭素原子と水素原子からなるフルオレン環
等の電子受容性基を含んで構成すると共に、フルオレン環上の2位及
び7位それぞれに4-(ビス(4-メトキシフェニル)アミノ)フェ
ニル基等の電子供与性基を含むD部を導入し、更に、フルオレン環上
の9位に炭素間二重結合を介して5-アルキル-2-チエニル基を導
入して構成されている。このように構成することにより、A部の電子
吸引性が向上すると共に、従来における技術的問題であったA部の置
換基とD部との立体的な干渉が解消されることで、ホール輸送材料の
分子内でのプッシュ-プル効果が大きくなり、分子内の電荷移動特性
が向上する。結果として、分子内での電子の移動がスムーズになりH
OMO-LUMOの電荷分離がより明確になる。つまり、上記構成の
ホール輸送材料は、HOMO及びHOMO-1準位でD部に電子が集
中し、LUMO準位でA部に電子が集中する。このように、本構成の
ホール輸送材料は、分子内での電荷移動特性が向上したことから優れ
たホール輸送特性を発揮することができる。更に、ヘテロ原子を含ま
ないフルオレン環をA部に用いることにより、〔先行技術の〕項で説
明したLD29等で生じていたヘテロ原子の不対電子対(ローンペア)
による電子吸引性の阻害が解消され、より効果的にホール輸送材料と
して機能し得る。【0022】  また、本構成のホール輸送材料は、
深いHOMOエネルギー準位を有することから、ペロブスカイトのH
OMO準位との配置を適切に調節でき、ホール輸送特性を向上させる
ことができ、更に太陽電池効率を向上させ易いとの利点もある。
【0023】  本構成のホール輸送材料は、500nm以上の可視光
域でほとんど光吸収を示さず、かつ、400~500nm領域の光吸
収強度が従来において汎用されるspiro-OMeTADと同等程
度に弱い。このため、本構成のホール輸送材料を用いた太陽電池は、
ホール輸送材料による光吸収ロスを最低限に抑えることができ、高い
光電変換効率を期待することができる。
【0024】  本構成のホール輸送材料は、溶媒への溶解性の面でも
優れた特性を有する。特に、A部のフルオレン環に対して長鎖アルキ
ル基を有する5-アルキル-2-チエニル基を導入することにより溶
媒への溶解性が向上している。そのため、太陽電池を作製する際の作
業性が向上し、また、スピンコートによる塗布法等のウェットプロセ
ス等をも利用することができ、太陽電池のホール輸送層の形成が容易
となる。また、本構成のホール輸送材料は、非極性溶媒にも可溶であ
るため、安価かつ環境負荷の低い溶媒を用いて、太陽電池のホール輸
送層を作製することが可能である。一方、従来において汎用される
spiro-OMeTADは、ホール輸送層を作製する際に、溶媒と
してクロロベンゼンを用いるのが一般的である。しかし、クロロベン
ゼンは、分子内に塩素原子を含み、かつ、高価であることから、溶媒
廃棄等の後処理を含めた設備として費用が嵩み、また、排気漏れ等に
よる安全及び環境への負荷も大きいとの問題点がある。【0025】
  また、本構成のホール輸送材料は、安価な原料により、短時間に少
ない合成工程により合成することができ、かつ、簡単な精製工程によ
り高純度品を提供できる。そのため、高価な試薬や煩雑な工程を要せ
ず、合成や精製に要するコストを低減することができ、安価かつ高性
能なホール輸送材料を提供することができる。【0026】
  更に、A部に導入した5-アルキル-2-チエニル基の長鎖アルキ
ル基による疎水性効果により、本構成のホール輸送材料を導入した太
陽電池の耐水性を向上させることができる。また、本実施形態に係る
ホール輸送材料は、その分子内及び分子間のホールの移動がスムーズ
に行われることから、分子の酸化が抑制され耐久性が向上できる。こ
れにより、太陽電池の耐久性の向上が期待できる。【0027】
  このように、本構成のホール輸送材料は、優れた特性を有すること
から、太陽電池のホール輸送材料として好適に利用することができ、
本構成のホール輸送材料をペロブスカイト太陽電池等のホール輸送層
に用いた場合、初期実験において優れた電池性能を示した。
【図面の簡単な説明】【0028】
【図1】ペロブスカイト太陽電池の模式断面図である。
【図2】ペロブスカイト太陽電池の上方からの斜視図である。
【図3】ペロブスカイト太陽電池の発電説明図である。
【図4】ペロブスカイト太陽電池の作製手順を示す説明図である。
【図5】実施例1において調製を行ったホール輸送材料(DHCF-
17)の合成スキームを示す図である。
【図6】実施例1において調製を行ったホール輸送材料(DHCF-
17)の合成を確認したH NMR分析の結果を示す図である。
【図7】実施例1において調製を行ったホール輸送材料(DHCF-
17)の合成を確認した質量分析の結果を示す図である。
【図8】実施例1において調製を行ったホール輸送材料(DHCF-
17)の合成を確認した紫外可視近赤外分光分析の結果を示す図であ
る。【図9】実施例3で検討を行った太陽電池の電池性能評価の結果
を示すグラフであり、検討を行った各太陽電池のIV特性を示すもの
である。【図10】実施例4で検討を行った太陽電池の電池性能評価
の結果の一例を示すグラフであり、検討を行った各太陽電池のIV特
性を示すものである。
【発明を実施するための形態】【0029】
  以下に、本発明に係るホール輸送材料を用いたペロブスカイト太陽電
10(太陽電池10の一例。以下、「太陽電池10」と記載する。)
の実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、太
陽電池10の一例として、有機及び無機のハイブリッド化合物で生成
されるペロブスカイト層44を備えて構成された太陽電池10として
説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨
を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。【0030】
(本実施形態に係る太陽電池10の基本構成)
  図1及び図2に示すように、本実施形態に係る太陽電池10は、透
明基板21及び透明導電膜22を有する基板2と、基板2上に設けら
れ、電子を透明導電膜22に受け渡し、且つホール輸送層5と透明導
電膜22とを分離して電子とホールとの再結合(逆電子移動)を防止
するブロッキング層3と、ブロッキング層3上に設けられ、光によっ
て励起して電子を発生するペロブスカイト層44を多孔質半導体41
に積層させて形成される発電層4と、発電層4上に設けられペロブス
カイト層44で発生したホールが通過するホール輸送層5とで構成さ
れる積層体11を備えている。また、ブロッキング層3の表面に設け
られ、透明導電膜22を介して電子を放出する光電極61と、ホール
輸送層5の表面に設けられ、電子を受け取る対向電極62とで構成さ
れる電極6を備えている。なお、電極6の配置は、例えば透明導電膜
22に導線接続して光電極61を形成するなど、電子の受け渡しが可
能なものであれば特に限定されない。また、太陽電池10の耐久性
高めるため、対向電極62を透明基板21などで保護しても良い。
【0031】  透明基板21は、光透過性を有するもので構成される。
例えば、透明ガラス基板、すりガラス状の半透明ガラス基板、透明樹
脂基板等を適用することができる。また、透明導電膜22は、例えば、
フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化スズ(TO)、スズドープ酸
化インジウム(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)やアルミニウムドープ
酸化亜鉛(AZO)などを用いることができる。【0032】
  ブロッキング層3及び多孔質半導体41は、金属酸化物が適してお
り、例えば、二酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化
ニオブ(Nb)、二酸化スズ(SnO)や酸化アルミニウム
(Al)などが用いられる。特に、ペロブスカイト層44を積
層するための表面積を多く確保できる二酸化チタン(TiO)の焼
結体として構成することが好ましい。また、ブロッキング層3は、一
部が透明導電膜22に延出して形成され、透明導電膜22が区画され
る。更に、ブロッキング層3は、電子が積層方向に通過することがで
きるが、横方向への移動がし難いように緻密な絶縁層31を形成して
いる。つまり、ブロッキング層3から侵入した電子は、透明導電膜22
の積層方向に円滑に移動して光電極61に供給されると共に、絶縁層
31によって対向電極62への移動が防止されるので短絡しない。
【0033】  ペロブスカイト層44は、鉛及びハロゲン元素Xで構
成される化合物(PbX、X=ハロゲン元素)と、メチルアンモニ
ウムアイオダイド(CHNHI:以下、「MAI」と略する場合
がある)とを反応させて生成される。具体的には、多孔質半導体41
の孔内部に鉛及びハロゲン元素Xを含む溶液42を浸透・乾燥させた
後、MAIの混合溶液43に浸漬して、ペロブスカイト層44を形成
するペロブスカイト化合物(X=Iの場合、CHNHPbI
の結晶が速やかに生成される。なお、ハロゲン元素Xは、ヨウ素、臭
素や塩素などを用いることができるが、形態安定性の高いヨウ素を用
いることが好ましい。また、MABrと0.2Mの臭化鉛(PbBr
)、FAIとヨウ化鉛(PbI)を利用した混合カチオン-混合
ハライド((FAPbI1-x(MAPbBr)としてもよ
い。例えば、(FAPbI0.85(MAPbBr0.15
を好適に用いることができる。【0034】
  ホール輸送層5には、後述するホール輸送材料を用いる。電極6は、
例えば、金、白金、銀、銅等の金属の単体や合金、あるいはフッ素ド
ープ酸化スズ(FTO)やスズドープ酸化インジウム(ITO)とい
った酸化物導電体などを用いることができる。【0035】
  ここで、図3に基づいて太陽電池10が発電する原理について説明
する。透明基板21に太陽光や室内光等の光が入射すると、この入射
光はほとんど吸収されることなく基板2やブロッキング層3を透過し
て、大部分が発電層4に到達する。そして、発電層4に到達した入射
光がペロブスカイト層44に照射されると、このペロブスカイト層44
は光エネルギーを吸収して励起する。この励起により、ペロブスカイ
ト層44のエネルギー準位が多孔質半導体41である金属酸化物の伝
導帯電位よりも所定レベル以上高くなると、ペロブスカイト層44か
ら多孔質半導体41へと電子が注入される。注入された電子は、ブロ
ッキング層3を経て光電極61で集電される。【0036】
  一方、ペロブスカイト層44で発生したホールは、ホール輸送層5
を経由して対向電極62へ到達し、ここで外部負荷7を経由してき
た電子と再結合する。つまり、光電極61と対向電極62との間に電
位勾配が生じるので、両極間に外部負荷7を接続することによって、
電力を供給することができる。【0037】
(本実施形態に係る太陽電池10の作製手順)
  本実施形態に係る太陽電池10の作製手順を、図4に基づいて説明
する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸
脱しない範囲内で種々の変形が可能である。また、Michael Saliba他著、
Correction to “How to Make over 20% Efficient Perovskite Solar
Cells in Regular (n-i-p) and Inverted (p-i-n) Architectures””
、Chem.
Mater., 2018, 30, 4193-4218等の公知技術を参照して作製することが
できる。【0038】
  まず、透明基板21の上に透明導電膜22を形成して基板2を作製
する。透明導電膜22は、例えば、CVD(化学的気相成長法)やス
パッタリングなどにより透明基板21上に積層される。次いで、レー
ザースクライブを施して透明導電膜22を部分的に除去し絶縁層31
が入る凹部221を形成した後、洗浄する。次いで、基板2上の全面
に、ALD法(原子層堆積法)やSPD法(スプレー熱分解法)など
によりブロッキング層3を形成する。ブロッキング層3は、好ましく
は、TiO緻密層として形成される。次いで、マスキングを施した
基板2及びブロッキング層3上の中央付近に、ナノ粒子焼結層である
多孔質半導体41を形成する。好ましくはTiOの多孔質層(p-
TiO)として形成される。この多孔質半導体41は、ナノ粒子ペ
ーストを溶媒によって希釈し、例えば、4000rpm~6000
rpmの回転速度のスピンコート法で塗布・乾燥した後、マスキング
を取り除いて450℃~550℃で加熱し、焼結形成される。
【0039】  例えばPbIのN,N-ジメチルホルムアミド溶液4
2を調製し、多孔質半導体41上に滴下後、例えば、5000rpm
~8000rpmの回転速度のスピンコートにより孔(p-TiO
内部への浸透と余分な溶液の除去を行う。60℃~120℃(好まし
くは70℃~90℃)で乾燥させてPbI層を形成する。【0040】
  MAI(CHNHI)のイソプロピルアルコール溶液43(2~
20mg/ml)に、基板2・ブロッキング層3・ヨウ化鉛が浸透し
た多孔質半導体41を0℃~80℃(好ましくは常温)で浸漬する
(MAI浸漬法)。PbIとMAIが反応によりペロブスカイト化
合物[(CHNH)PbI(MAPbI)]をペロブスカイ
ト層44として多孔質半導体41の孔内部及び上部に形成した後、純
イソプロピルアルコール溶液で灌ぎ、60℃~120℃(好ましくは
70℃~100℃)で乾燥させる。混合カチオン-混合ハライド(
(FAPbI1-x(MAPbBr)系のペロブスカイト化
合物についても同様にして調製することができる。【0041】
  本実施形態に係るホール輸送材料を、例えば、クロロベンゼン溶液
60~90mg/mlとして調製する。溶液をペロブスカイト層44
上に滴下し、スピンコート法により余分な溶液の除去を行い、乾燥さ
せることでホール輸送層5を形成する。ホール輸送材料には、4-イ
ソプロピル-4´-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタ
フルオロフェニル)ボラート(以下、「TPFB」と称する場合があ
る)等の添加物を添加してもよい。TPFBを添加する場合には、
TPFBは、ホール輸送材料の0.01重量%~100重量%である
ことが好ましく、0.1重量%~50重量%であることが特に好まし
い。例えば、本実施形態に係るホール輸送材料を30mMとなるよう
に秤量し、その10重量%に相当するTPFBを加え、これらをクロ
ロベンゼンに溶解させたものを用いてホール輸送層5を形成すること
ができる。【0042】
  PbI層形成からホール輸送層5形成までの工程は、グローブボッ
クスなど乾燥窒素雰囲気下で行うことが好ましい。最後に、真空蒸着
法などによって、金などの薄膜をブロッキング層3及びホール輸送層
5の表面に付着させ、電極6を形成する。【0043】
  上記の作製手順では、ペロブスカイト層44を形成するペロブスカ
イト化合物を2ステップによって結晶成長制御したものであるが、こ
れを1ステップで行ってよい。例えば、ペロブスカイト((CH
)PbI)溶液をスピンコート法により、多孔質半導体41の
孔内部に浸透させる。スピン中にトルエンを滴下し、微小結晶を析出
させて表面を鏡面化する(貧溶媒析出法)。続いて、本実施形態に係
るホール輸送材料によりホール輸送層5を形成してもよい。【0044】
(本実施形態に係るホール輸送材料)
  本実施形態に係るホール輸送材料は、D-A-D型構造を有する。
下記の一般式(1)で表される化合物が好適に例示される。【004
5】【化14】
000028
【0046】  A部には、電子受容性基(電子吸引性基)が導入され
ここでは、A部がフルオレン環として構成され、当該フルオレン環上
の9位に炭素間二重結合を介して置換基Rが導入ている。フルオレ
ン環は、炭素原子と水素原子から構成され、窒素原子等のヘテロ原子
を含まない。更に、このフルオレン環上の2位及び7位で、D部とそ
れぞれ連結している。フルオレン環上の2位及び7位に連結している
各D部は、好ましくは同一の基として構成される。【0047】
  D部は、電子供与性基として構成され、ここでは、好ましくは、以
下の基(I)、基(II)、基(III)、基(IV)、又は、基
(V)から選択される1の構造を有する。なお、基中の波線は、A部
との結合位置を示す。
000029
【0050】【化17】

000031

 000032
【0053】  基(I)、基(II)、基(III)、基(IV)、
及び、基(V)において、XとYは、独立して、0、1、2の何れか
の整数である。したがって、基(I)及び基(II)は、下記で説明
する置換基を有するジフェニルアミノ基(X=0、Y=0)、4-(
ジフェニルアミノ)フェニル基(X=1、Y=0)、4´-(ジフェニ
ルアミノ)〔1,1´-ビフェニル〕-4-イル基(X=2、Y=0)、
5-(ジフェニルアミノ)チオフェン-2-イル(X=0、Y=1)、
5´-(ジフェニルアミノ)〔2,2´-ビチオフェン〕-5-イル基
(X=0、Y=2)、5-〔4-(ジフェニルアミノ)フェニル〕チ
オフェン-2-イル基(X=1、Y=1)、5-〔4´-(ジフェニル
アミノ)〔1,1´-ビフェニル〕-4-イル〕チオフェン-2-イル
基(X=2、Y=1)、5´-〔4-(ジフェニルアミノ)フェニル〕
〔2,2´-ビチオフェン〕-5-イル基(X=1、Y=2)、及び、
5´-〔4´-(ジフェニルアミノ)〔1,1´-ビフェニル〕-4-イ
ル〕〔2,2´-ビチオフェン〕-5-イル基(X=2、Y=2)か
ら選択される。【0054】
  基(I)及び基(II)において、各置換基はそれぞれ独立して選
択されるものであり、Rは、-H、-C2n+1、-O-C
2n+1、及び、-S-C2n+1から選択され、ここで、n=1~
8の整数であり、Rは、-H、-C2n+1、-O-C2n+1
及び、-S-C2n+1から選択され、ここで、n=1~8の整数
であり、なお、RとRは、同一であっても、異なっていていても
よいが、同時に-Hであることはない。したがって、R及びR
少なくとも一方が、-C2n+1、-O-C2n+1、及び、-
S-C2n+1から選択される。【0055】
  
                        この項つづく

      

 

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エネルギーと環境 205

2025年04月08日 | ネオコンバ-テック

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果
彦根藩の当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救った
と伝えられる招き猫と井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時
代の井伊軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと
兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ-。

安土城CG2

【季語と短歌:4月8日】

        春霞ポストマン奔く先は闇 

『短歌十首貫徹集⓷』  
行く春の温度差激し記憶とどめ熱き夏を記録するかも
自らの先も分からずその先を何故行くのかと問う未来かな

【天下布武一会開催案内】
日  時  2025年4月13日(日)
JR京都方面 安土 08:50&09:00
JR彦根方面 安土 10:56&11:21
集合場所  安土城考古博物館前 09:30
安土駅~彦根駅移動 11:04~11:21
短歌一会(会場:鮨割烹銀水)    11:30~14:00
彦根城遊覧           14:00~15:30
閉  会                 現地
短歌一会(会場:鮨割烹銀水)    11:30~14:00
彦根城遊覧(参加自由選択)   14:00~15:30
閉  会                 現地
JR京都方面 彦根 16:04&16:22
JR長浜方面 長浜 16:19&16:49
会食費:寿司・天ぷら ¥2000+ビール・日本酒(¥1000~?)
※安土駅から博物館まで、徒歩かタクシーの自由選択
※会場から彦根状まで、徒歩かタクシーの自由選択
🎈短歌他の作品は各自、当日持参披露(小生は、三十首の予定)。
🪄昼食会で解散するのが自然でしょうね? 
 予約いれました。雨天ならタクシーで移動(安土)。現在、
2名参加。

✳️ 次世代ペロブスカイト系フィルム型太陽電池
1️⃣ 特開2025-53634 積層体、太陽光発電システム 積水化学工業株
   式会社
【要約】下図4のごとく、本発明の積層体1は、設置面3と、弾性体4
と、太陽光発電装置5の底部を構成するバックシート6とを備える。
弾性体4は、設置面3に載置された状態で固定される。バックシート
6は、弾性体4の上面に載置された状態で固定される、設置面と太陽
光発電装置の底部を構成するバックシートとを備える積層体であって、
設置面とバックシートとの間に隙間が生じにくい積層体を提供する。

図4.本発明の実施形態に係る積層体を備える太陽光発電システムの側
 面図
【符号の説明】【0225】
  1,201,302  積層体   3  繊維含有シート   4,93,301 
 弾性体   5  太陽光発電装置   6  バックシート 100,200,
300,400,500,600,700,800,900  太陽光発
電システム
【発明の効果】【0019】
  本発明の積層体及び太陽光発電システムによれば、設置面と太陽光発
電装置の底部を構成するバックシートとの間に隙間が生じにくい
【特許請求の範囲】
【請求項1】  設置面と、  弾性体と、  太陽光発電装置の底部を構成す
るバックシートとを備え、  前記弾性体は前記設置面に載置された状態
で固定され、  前記バックシートは前記弾性体の上面に載置された状態
で固定される積層体。
【請求項2】  前記弾性体の縦弾性率は、0.1MPa以上1000M
Pa以下である請求項1に記載の積層体。
【請求項3】前記バックシートの横弾性率Eaと前記弾性体の横弾性
率Ebの比率(Eb/Ea)が0.002以上0.1以下である請求項
1に記載の積層体。
【請求項4】前記弾性体の横弾性率は、0.05MPa以上1000
MPa以下である請求項1に記載の積層体。
【請求項5】前記設置面は繊維含有シートによって構成されており、
  前記弾性体を介する前記繊維含有シートと前記バックシートのせん断
剥離強度は、0.1N/cm以上である請求項1に記載の積層体。
【請求項6】前記設置面は繊維含有シートによって構成されており、
  前記弾性体の線膨張係数は、前記繊維含有シートの線膨張係数よりも
大きく、前記バックシートの線膨張係数よりも小さい請求項1に記載
の積層体。
【請求項7】  前記太陽光発電装置は、前記バックシートと、発電部と、
バリアシートと、封止剤とを備え、  前記バリアシートは、前記太陽光
発電装置の厚さ方向において、前記バックシートとは反対側に配置され、
  前記発電部は、光起電力効果を利用した光電変換素子である発電セル
を備えており、前記バックシートと前記バリアシートとの間に配置され、
  前記封止剤は、前記バリアシートと前記バックシートとの間における
前記発電部の周囲の空間に充填され、
前記封止剤の横弾性率は、0.01MPa以上500MPa以下であ
る請求項1に記載の積層体。
【請求項8】  設置面と、  弾性体と、  太陽光発電装置とを備え、  前
記弾性体は前記設置面に載置された状態で固定され、前記太陽光発電
装置の底部を構成するバックシートは前記弾性体の上面に載置された
状態で固定される太陽光発電システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】【0002】

【図1】従来の太陽光発電システムの側面図

【図2】従来の太陽光発電システムの側面図
  近年、図1及び図2に示すように、地面2に繊維含有シート400を
載置し、且つ、当該繊維含有シート400の上面に太陽光発電装置40
1を載置することが行われている。特許文献1には  上記の繊維含有シ
ート400として防草用途の不織布を使用することが開示されている。
また、特許文献2には、太陽電池積層体100を舗装道路1に接着層
5を介して貼付けて使用することが開示されている

【特許文献1】実用新案登録 第3232136号
【特許文献2】特開2013—38228号公報
【発明が解決しようとする課題】【0004】
  ところで上記従来の繊維含有シート400や舗装道路1等の設置面は、
一般的に、繊維により強化されていたり、アスファルト等で舗装され
ていたりすることで、線膨張係数が低い。一方、太陽光発電装置401
の底部を構成するバックシート402及び太陽電池積層体100は、
太陽光発電装置のフレキシブル性を確保すること等を目的として、通
常、繊維強化等されておらず、線膨膨張係数が高い。このため太陽光
発電装置401のバックシート402及び太陽電池積層体100には、
温度変化によって設置面(繊維含有シート400或いは舗装道路1)
とは異なる熱伸縮が生じていた

【0005】  図1に示すように接着剤403によって繊維含有シート
400と太陽光発電装置401のバックシート402とを接着する場
合には、上記の熱伸縮の差異から繊維含有シート400とバックシート
402との間に大きなせん断応力が発生する。このため、バックシー
ト402が繊維含有シート400から剥離して、繊維含有シート400
とバックシート402との間に隙間が生じて、長期間安定的に太陽光
発電装置401を固定することが困難であった。本事象は、アスファ
ルト、金属、硬質樹脂、セラミック等からなる設置面に太陽光発電装
置401が載置される場合であっても同様に生じ得る。【0006】
  また図2に示すように、太陽光発電装置401及び繊維含有シート
400を貫通する杭404などの固定手段によって、太陽光発電装置
401と繊維含有シート400とを部分的に固定する場合には、繊維
強化シート400とバックシート402との間に生じる隙間に風が入
り込むことで、太陽光発電装置401が振動して、太陽光発電装置4
01の発電効率の低下や発電セル・配線の破損が生じていた。  さらに、
近年の技術進捗に伴って、太陽光発電装置は軽量が故に大型化が検討
されている。従来のリジッドな太陽光発電装置は、大型化すると重量
により施工・作業・運搬性が低下する。このため、フレキシブルな太
陽光発電装置を大型化することが求められている。しかしながら、フ
レキシブルな太陽光発電装置を大型化する場合には、リジッドな太陽
光発電装置を大型化する場合に比して、シート全体での熱伸縮による
変形が大きく、当該熱伸縮による変形は、フレキシブルな樹脂素材が
主に使用されるバックシートにおいて特に顕著に生じる。
【0008】  本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであって、
その目的は、設置面と太陽光発電装置の底部を構成するバックシート
とを備える積層体であって、設置面とバックシートとの間に隙間が生
じにくい積層体を提供することを目的とする。
  また本発明のさらなる目的は、設置面とバックシートによって底部
が構成された太陽光発電装置とを備える太陽光発電システムであって
設置面とバックシートとの間に隙間が生じにくい太陽光発電システム
を提供することを目的とする。

【図3】本発明の実施形態に係る積層体を備える太陽光発電システム
の平面図
【図4】本発明の実施形態に係る積層体を備える太陽光発電システム
の側面図。
【図5】(A)は、太陽光発電装置の断面図である。(B)は、(A)
のa部分の拡大図。(C)は、(A)のA-A線に沿って発電部を切
断した状態を示す断面図。




【図6】本発明の変形例に係る太陽光発電システムの側面図
【図7】本発明の変形例に係る太陽光発電システムの側面図

【図8】本発明の変形例に係る太陽光発電システムの断面図
【図9】図8に示す太陽光発電システムの分解斜視図
【図10】図10(A)は、図8のA部分に対応する部分の拡大図。
図10(B)は、図10(A)のB部分の拡大図
【図11】図11(A)は、建築板に対して封止剤、発電層及びバリ
アシートを取り付ける際の状態を示す断面図である。(B)は、変形
例に係る太陽光発電システムの断面図
【図12】本発明の変形例に係る太陽光発電システムの平面図
【図13】図12におけるa-a線断面図である。
【図14】本発明の変形例に係る太陽光発電システムの平面図。
【図15】図14におけるa-a線断面図
【図16】図16(A)は固定具の断面図であり、図16(B)は図
16(A)のC部分の拡大図
【図17】図17(A)は固定具の断面図であり、図17(B)は図
17(A)のD部分の拡大図
【図18】本発明の変形例に係る太陽光発電システムの平面図
【図19】図18におけるa-a線概略断面図
【図20】図20(A)~(G)は固定具の断面図
【図21】図21(A)~(F)は固定具を示す図、図21(A)~
(F)の上図は固定具の平面図であり、図21(A)~(F)の下図
は固定具の断面図
【図22】本発明の変形例に係る太陽光発電システムの一部分の斜視

【図23】図23(A)は図22におけるa-a線断面図であり、図23
(B)は図22におけるb-b線断面図
【図24】太陽光発電装置の底面図
【図25】本発明の変形例に係る太陽光発電システムにおいて太陽光発
電装置を設置面から引き剥がす手順を説明する断面図
【図26】本発明の変形例に係る太陽光発電システムの平面図
【図27】本発明の変形例に係る太陽光発電システムの平面図
【発明を実施するための形態】【0021】
  (太陽光発電システム100及び積層体1の全体構成)
 本実施形態に係る太陽光発電システム100は、設置面3と、弾性体
4と、太陽光発電装置5とを備える。本実施形態に係る積層体1は、
太陽光発電システム100の一部を構成するものであり、上記の設置
面3及び弾性体4と、太陽光発電装置5の底部を構成するバックシー
ト6とを備える。
  (設置面3)
  設置面3は繊維含有シートによって構成される(以下、繊維含有シー
トの符号として設置面の符号3を適宜使用する)。繊維含有シート3
は、防草目的で地面2に載置されるものであり、当該繊維含有シート
3を貫通して先端側が地中に埋め込まれる杭7を用いて、地面2に固
定される。杭7の数や設置位置は、特に限定されず、繊維含有シート
3を固定できる限りにおいて、任意に設定され得る。弾性体4は設置
面(繊維含有シート3の上面)に載置される。バックシート6は弾性
体4の上面に載置される。【0024】
  (太陽光発電装置5)
  太陽光発電装置5は、シート状に形成されており、太陽光を受けるこ
とで発電を行うことができる。本明細書でいう「シート状」は、その
物体の厚さが、平面視における外縁の間の最大長さに対して、10%
以下である形状を意味する。平面視における形状が矩形状である場合、
「平面視における外縁の間の最大長さ」は、対角線の長さを意味する。
また、平面視における形状が円形状である場合、「平面視における外
縁の間の最大長さ」は、直径の長さを意味する。本明細書では、膜状、
箔状、フィルム状等も、「シート状」に含まれる。
【0025】太陽光発電装置5は、平面視略矩形状に形成されている。
ただし、本発明では、太陽光発電装置5の形状としては、例えば、平
面視略円形状、平面視楕円形状、平面視多角形状等であってもよく、
特に制限はない。
【0026】  図5(A)に示すように、太陽光発電装置5は、受光
面から光が入射することにより発電を行う装置であり、上記のバック
シート6と、発電部10と、バリアシート11と、封止剤12と、封
止縁材13と、を備える。バリアシート11は、太陽光発電装置5の
受光面6を構成するものであって、太陽光発電装置5の厚さ方向にお
いて、バックシート6の反対側に配置される。発電部10は、バック
シート6とバリアシート11との間に配置される。封止剤12は、バ
リアシート11とバックシート6との間における発電部10の周囲の
空間に充填される。封止縁材13は、バックシート6の外周縁14と
バリアシート11の外周縁15との間を封止する。
【0027】太陽光発電装置5は、可撓性を有する。本明細書におけ
る「可撓性を有する」とは、対象物が撓み得る性質を意味する。本実
施形態に係る太陽光発電装置5の曲げ強さは、特に限定されないが、
好ましくは10MPa以上であり、より好ましくは20MPa以上で
あり、より好ましくは50MPa以上である。また、太陽光発電装置
5の曲げ強さは、好ましくは200MPa以下であり、より好ましく
は150MPa以下であり、より好ましくは50MPa以下である。
また、太陽光発電装置5は、曲げ弾性率で定義されていてもよく、好
ましくは100MPa以上であり、より好ましくは500MPa以上
である。一方、太陽光発電装置5の曲げ弾性率は、好ましくは100
00MPa以上であり、より好ましくは5000MPa以下が好まし
い。太陽光発電装置5を曲げ弾性率で定義する場合、曲げ強さは上記
の範囲に含まれなくてもよい。太陽光発電装置5の曲げ強さ及び曲げ
弾性率の測定方法は、JIS  K  7171に準拠して測定される。こ
のように、太陽光発電装置5が可撓性を有することで、設置面3の形
状に対して追従することができ、なおかつ、設置された状態において、
風等でバタつきにくい。
【0028】  (バックシート6)
  バックシート6は、水蒸気に対するバリア性能、及び外力に対する
保護性能を有する。バックシート6は、透光性があってもよいが、必
ずしも透光性は必要ではない。【0029】
  本明細書でいう「透光性がある」とは、光の透過率が、入射前の光
のピーク波長に対して、10%以上であることを意味する。【0030】
  バックシート6は、可撓性を有する。バックシート6の縦弾性率(
縦弾性係数)は、2400MPa以上であることが好ましく、より好
ましくは3000MPa以上である。また、バックシート6の縦弾性
率(縦弾性係数)は、4200MPa以下であることが好ましく、よ
り好ましくは3100MPa以下である。バックシート6の材料とし
ては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、汎用プラスチック、エ
ンジニアリングプラスチック、ビニル樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル
)等の合成樹脂が挙げられる。また、バックシート6の材料としては、
合成樹脂のほか、例えば、天然樹脂、ゴム、金属、カーボン、パルプ
等が用いられてもよい。【0031】
  バックシート6の厚さは、50μm以上であることが好ましく、より
好ましくは、100μm以上である。また、バックシート6の厚さは、
2000μm以下であることが好ましく、より好ましくは、1000
μm以下である。【0032】 
バックシート6は、接着剤8を用いて弾性体4の上面に接着されるこ
とで、弾性体4の上面に載置された状態で固定される。【0033】
  接着剤8として、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹
脂、エポキシ樹脂、シアノアクリレート樹脂、アクリル樹脂、クロロ
プレンゴム、スチレン、ブタジエンゴム、ポリウレタン樹脂、シリコ
ーン樹脂、変性シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1つ以上を含
む樹脂組成物を使用できる。なお本発明は、接着剤8を、上記の樹脂
組成物に限定するものではない。また接着剤8は、800cP以上の
粘度を有することが好ましいが、接着剤の粘度は800cP未満であ
ってもよい。なお積層体1には、接着剤8と弾性体4を兼ねる接着性
のある弾性樹脂が設けられてもよい。【0034】
  (発電部10)
  発電部10は、光起電力効果を利用した光電変換素子である発電セ
ル20を備える。本実施形態では、発電部10は、複数の発電セル20
が太陽光発電装置5の面方向(例えば太陽光発電装置5の長手方向或
い幅方向)に配置された光電変換ユニットから構成される。なお、発
電部10は一つの発電セル20によって構成されてもよい。
【0035】  (発電セル20)
  発電セル20は、透光性基材21と、透光性導電層22と、発電層
23と、電極24と、を備える。透光性基材21、透光性導電層22、
発電層23、及び電極24は、バリアシート11からバックシート6
に向かう方向に沿って、この順で積層されている。すなわち、透光性
基材21がバリアシート11に対向し、電極24がバックシート6に
対向するように配置される。
【0036】  (透光性基材21)
  透光性基材21は、透光性導電層22、発電層23、及び電極24
を支持する。透光性基材21は、透光性を有する。透光性基材21の
透光性は、光の透過率が、入射前の光のピーク波長に対して、10%
以上であればよいが、好ましくは、50%以上であり、より好ましく
は、80%以上である。本明細書では、光の透過率が、入射前の光の
ピーク波長に対して、80%以上であることを、「透明」であるとす
る。【0037】

 透光性基材21の材料としては、例えば、無機材料、有機材料、金属
材料等が挙げられる。無機材料としては、例えば、石英ガラス、無ア
ルカリガラス等が挙げられる。有機材料としては、例えば、ポリエチ
レンテレフタレート(PET; polyethylene terephthalate)、ポリエチ
レンナフタレート(PEN; polyethylene naphthalene)、ポリエチレ
ン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、シ
クロオレフィンポリマー等のプラスチック、高分子フィルム等が挙げ 
られる。金属材料としては、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、
シリコン等が挙げられる。【0038】
  透光性基材21の厚さは、透光性導電層22、発電層23、及び電極
24を支持することができれば、特に制限はなく、例えば、10μm
以上300μm以下が挙げられる。【0039】
  透光性基材21は、発電セル20の製造過程で必要になる基材であ
り、必ずしも必要な構成ではない。透光性基材21は、例えば、太陽
光発電装置5の製造途中にだけ利用されてもよく、製造後又は製造途
中に取り除かれてもよい。なお、取り除かれる場合、透光性基材21
に代えて、透光性を有さない基材を用いてもよい。【0040】
  (透光性導電層22)
  透光性導電層22は、導電性を有する層であり、カソードとして機
能する。透光性導電層22は、透光性を有する。透光性導電層22は、
透明であることが好ましい。【0041】
  透光性導電層22としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO;
Indium Tin Oxide)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO; F-doped Tin
Oxide)、ネサ膜等の透明な材料が挙げられる。透光性導電層22は、
透光性基板の表面に対して、例えば、スパッタリング法、イオンプレ
ーティング法、メッキ法、塗布法等により形成される。【0042】
  また、透光性導電層22としては、不透光性材料を用いつつ、光を
透過可能なパターンを形成することで、透光性を有するように構成し
てもよい。不透光性材料としては、例えば、白金、金、銀、銅、アル
ミニウム、ロジウム、インジウム、チタン、ニッケル、スズ、亜鉛、
又はこれらを含む合金等が挙げられる。光を透過可能なパターンとし
ては、例えば、格子状、線状、波線状、ハニカム状、丸穴状等が挙げ
られる。【0043】
  透光性導電層22の厚さは、例えば、30nm以上300nm以下で
あることが好ましい。透光性導電層22が、30nm以上300nm
以下であると、可撓性を高く保ちながら、良好な導電性を得ることが
できる。【0044】
  (発電層23)
  発電層23は、光の照射によって光電変換を生じさせる層であり、
光を吸収することで生成された励起子から、電子と正孔とを生じさせ
る。図5(B)に示すように、発電層23は、正孔輸送層30と、光
電変換層31と、電子輸送層32と、を備える。正孔輸送層30、光
電変換層31、及び電子輸送層32は、透光性導電層22から電極24
に向かう方向に沿って、この順で積層されている。【0045】
  (正孔輸送層30)
  正孔輸送層30は、光電変換層31で発生した正孔を、透光性導電
層22へ抽出し、かつ光電変換層31で発生した電子が、透光性導電
層22へ移動するのを妨げる。正孔輸送層30の材料としては、例え
ば、金属酸化物を用いることができる。金属酸化物としては、例えば、
酸化チタン、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化亜鉛、酸化ニッ
ケル、酸化リチウム、酸化カルシウム、酸化セシウム、酸化アルミニ
ウム等が挙げられる。また、その他、デラフォサイト型化合物半導体
(CuGaO2)、酸化銅、チオシアン酸銅(CuSCN)、五酸化バナジウ
ム(V2O5)、酸化グラフェン等が用いられてもよい。また、正孔輸
送層30の材料として、p型有機半導体又はp型無機半導体を用いる
こともできる。【0046】 
正孔輸送層30の厚さは、例えば、1nm以上1000nm以下であ
ることが好ましく、より好ましくは、10nm以上500nm以下で
あり、更に好ましくは、10nm以上50nm以下である。正孔輸送
層30の厚さが、1nm以上1000nm以下であれば、正孔の輸送
が実現できる。【0047】
  (光電変換層31)  光電変換層31(光活性層)は、吸収した光を
光電変換する層である。光電変換層31の材料としては、吸収した光
を光電変換することができれば特に制限はなく、例えば、アモルファ
スシリコン、ペロブスカイト、非シリコン系材料(半導体材料CIG
S)等が用いられる。また、光電変換層31は、これらを複合したタ
ンデム型の積層構造としてもよい。非シリコン系材料が用いられた光
電変換層31は、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga
)、セレン(Se)を含む半導体材料CIGSが用いられており、光
電変換層の厚さを薄くしやすい。
【0048】以下では、光電変換層31の一例として、ペロブスカイ
トが用いられる光電変換層を挙げて説明する。ペロブスカイト化合物
を含む光電変換層31は、入射光の角度に対する発電効率の依存性(
以下、入射角依存性という場合がある)が比較的低いという利点があ
る。これにより、本実施形態では、より高い発電効率を得ることがで
きる。
【0049】  ペロブスカイト化合物は、ペロブスカイト結晶構造体
及びこれに類似する結晶を有する構造体である。ペロブスカイト結晶
構造体は、組成式  ABX3  で表される。この組成式において、例え
ば、Aは有機カチオン、Bは金属カチオン、Xはハロゲンアニオンを
示す。ただし、Aサイト、Bサイト及びXサイトはこれに限定されな
い。【0050】
  Aサイトを構成する有機カチオンの有機基としては、特に制限はな
く、例えば、アルキルアンモニウム誘導体、ホルムアミジニウム誘導
体等が挙げられる。Aサイトを構成する有機カチオンは、1種類であ
ってもよいし、2種類以上であってもよい。【0051】
サイトをサイトを構成する金属カチオンの金属としては、特に制限は
なく、例えば、Cu、Ni、Mn、Fe、Co、Pd、Ge、Sn、
Pb、Eu等が挙げられる。Bサイトを構成する金属カチオンは、1
種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。【0052】
Xサイトを構成するハロゲンアニオンのハロゲンには、特に制限はな
く、例えば、F、Cl、Br、I等が挙げられる。Xサイトを構成す
るハロゲンアニオンは、1種類であってもよいし、2種類以上であっ
てもよい。【0053】
 光電変換層31の厚さは、例えば、1nm以上1000000nm以
下が好ましく、より好ましくは、100nm以上50000nm以下
であり、更に好ましくは、300nm以上1000nm以下である。
光電変換層31の厚さが、1nm以上1000000nm以下である
と、光電変換効率が向上する。【0054】
  (電子輸送層32)
  電子輸送層32は、光電変換層31で発生した電子を電極24へ抽
出し、かつ光電変換層31で発生した正孔が、電極24へ移動するの
を妨げる。電子輸送層32としては、例えば、ハロゲン化合物又は金
属酸化物のいずれかを含むことが好ましい。【0055】
  ハロゲン化合物としては、例えば、ハロゲン化リチウム(LiF、
LiCl、LiBr、LiI)、ハロゲン化ナトリウム(NaF、N
aCl、NaBr、NaI)等が挙げられる。金属酸化物を構成する
元素としては、チタン、モリブデン、バナジウム、亜鉛、ニッケル、
リチウム、カリウム、セシウム、アルミニウム、ニオブ、スズ、バリ
ウム等が挙げられる。また、電子輸送層32の材料として、n型有機
半導体又はn型無機半導体を用いることもできる。【0056】
  電子輸送層32の厚さは、例えば、1nm以上1000nm以下で
あることが好ましく、より好ましくは、10nm以上500nm以下
であり、更に好ましくは、10nm以上50nm以下である。電子輸
送層32の厚さが、1nm以上1000nm以下であれば、電子の輸
送が実現できる。【0057】  (電極24)
  電極24は導電性を有し、アノードとして機能する。電極24は、
光電変換層31によって生じた光電変換に応じて、光電変換層31か
ら電子を取り出すことができる。電極24は、透光性を有していても
よいし、不透光性材料で構成されてもよい。電極24の材料としては、
例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム、
チタン、ニッケル、スズ、亜鉛、又はこれらを含む合金等が挙げられ
る。【0058】
  (バリアシート11)
 バリアシート11は、太陽光発電装置5の厚さ方向において、バック
シート6とは反対側に配置される。バリアシート11は、太陽光発
電装置5の受光面を含む。バリアシート11は、透光性を有している。
バリアシート11は、透明であることが好ましい。バリアシート11
は、水蒸気に対するバリア性能、及び外力に対する保護性能を有する。
【0059】  バリアシート11は、可撓性を有する。バリアシート
11に用いられる材料としては、縦弾性率(縦弾性係数)が100
Pa以上10000MPa以下であることが好ましく、より好ましく
は、1000MPa以上5000MPa以下である。バリアシート11
の材料として、具体的には、例えば、プラスチックフィルム、ビニル
フィルム等が挙げられる。【0060】
  バリアシート11の厚さは、50μm以上であることが好ましく、よ
り好ましくは、100μm以上である。また、バリアシート11の厚
さは、2000μm以下であることが好ましく、より好ましくは、
1000μm以下である。バリアシート11の厚さが50μm以上
2000μm以下であることにより、太陽光発電装置5の曲げ強さを、
50MPa以上150MPa以下に設定しやすい。【0061】
  (封止剤12)  封止剤12は、バリアシート11とバックシート6
との間に発電層23を配置した状態で、バリアシート11とバックシ
ート6との間に充
填される。封止剤12は、発電層23に対して、発電層23の周囲か
ら浸水するのを妨げる。封止剤12は、透光性を有しており、好まし
くは、透明である。なお、封止剤12は、必ずしも発電部10の全て
を覆う必要はない。例えば、発電部10の一部が封止剤12から露出
した場合、当該露出した部分を封止縁材13等で覆ってもよい。
【0062】  封止剤12の材料としては、例えば、エチレン酢酸ビ
ニル(EVA)、ポリオレフィン、ブチルゴム、シリコーン樹脂、ポ
リビニルブチラール、アクリル樹脂、ポリイソブチレン樹脂、SBS
樹脂、SIBS樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。【0063】
  封止剤12の横弾性率(横弾性係数)は、好ましくは0.01以上5
00MPa以下であり,より好ましくは0.05以上250MPa以
下であり、更に好ましくは0.1以上100MPa以下である。この
ようにすることで、バックシート6とバリアシート11の温度差で生
じる熱伸縮に追随して、封止剤12が面方向に変形する。これにより、
バックシート6とバリアシート11とが、熱伸縮により発生するせん
断応力により、封止剤12から剥離することを抑制できる。本願でい
う「横弾性率」は、例えば、引張り試験法により得た縦弾性率(縦弾
性係数)及びポアソン比から算出した値である。
【0064】  また封止剤12は、別の観点から、粘度で規定するこ
ともできる。封止剤12の粘度は、11000mPa・S以上700
000mPa・S以下であることが好ましく、より好ましくは、26
000mPa・S以上450000mPa・S以下であり、更に好ま
しくは、40000mPa・S以上110000mPa・S以下であ
る。【0065】
 この場合の封止剤12の材料としては、例えば、ポリオレフィン、ブ
チルゴム、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、
ポリイソブチレン樹脂等が挙げられる。本明細書でいう「粘度」は、
JIS  Z8803の回転粘度計法に準拠し、環境温度23℃で測定
を行った値である。【0066】
 封止剤12を介してバックシート6とバリアシート11は接着されて
いるが、その接着強度はピール試験にて、0.1N/10mm以上1
0N/10mm以下であることが好ましい。特に、曲げた状態で施工
される場合は、太陽光発電装置5に生じるせん断応力はより大きく
なるため、ピール試験における上記範囲の接着強度を採用することで、
長期間剥離を効果的に抑制することができる。ピール試験は、JIS
  Z  0237に準拠して行われる。【0067】
 剥離抑制の効果を高める観点より、封止剤12の厚さとしては、10
μm以上が好ましく、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは
50μm以上が挙げられる。一方、封止剤12の厚さとしては、30
0μm以下が好ましく、より好ましくは200μm以下であり、更に
好ましくは100μm以下である。封止剤12の厚さを10μm以上と
することで、熱伸縮時のせん断応力の逃げしろを十分に確保すること
ができる。封止剤12の厚さを、300μm以下とすることで、太陽
光発電装置5の重量を軽量化できるため、施工性・作業性を向上する
ことができる。【0068】
  (封止縁材13)  封止縁材13は、バックシート6とバリアシート
11との間に複数の発電セル20及び封止剤12が配置された状態で、
バックシート6の外周縁14とバリアシート11の外周縁15との間
を封止する。太陽光発電装置5の外周縁は封止縁材13によって構成
される。図5(A)に示すように、封止縁材13は、第1接着部40
と、第2接着部41と、第1接着部40と第2接着部41とをつなぐ
封着部42と、を備える。第1接着部40は、バリアシート11の表
面(図では上面)に接着される。第2接着部41は、バックシート6
の裏面(図では下面)に接着される。第1接着部40、封着部42、
及び第2接着部41は、一体に形成されている。
【0069】封止縁材13の材料としては、例えば、ブチルゴム、シ
リコーンゴム等からなるテープ材が挙げられる。【0070】
  なお、本実施形態において、封止縁材13は、必ずしも必要ではな
い。例えば、封止縁材13に代えて、バリアシート11の縁部をバ
ックシート6側に折り曲げ、折り曲げた先端をバックシート6に接合
してもよい。これにより、封止縁材13は不要となる。
【0071】  (太陽光発電装置5の作用)
  上記の太陽光発電装置5によれば、表面側(バリアシート11側)
から太陽光発電装置5に光が照射されると、発電層23の光電変換層
31が光を吸収して光電変換を行うことで、光電変換層31で電子と
正孔とが生じる。当該電子が電子輸送層32を介して電極24(アノ
ード)へ抽出され、正孔が正孔輸送層30を介して透光性導電層22
(カソード)へ抽出されることで、透光性導電層22から電極24へ
と電流が流れる(すなわち発電が行われる)。【0072】
  発電部10を構成する光電変換ユニットでは、各発電セル20の電
極24(アノード)に延長部24aが設けられる(図5(C))。
当該電極24の延長部24aは透光性導電層22(カソード)側へ延
びる。隣り合う2つの発電セル20,20では、一方のセル20の電
極24の延長部24aが、他方のセル20の透光性導電層22に接合
される。この接合により、太陽光発電装置5に光が照射される間では、
発電部10(光電変換ユニット)の一方側端にある透光性導電層22
Aから、発電部10の他方側端にある電極24Aへと電流が流れる(
図5(C)では電流の流れを矢印で示している)。当該電流は、図示
しない配電線を介して取り出される。
【0073】発電部10を上記の光電変換ユニットから構成すること
で、一部の発電セル20で不具合が生じても、発電部10からの電気
取り出し量を安定化させることができる。
【0074】  お各発電セル20の電極24(アノード)に延長部24a
を設けることの代わりに、各発電セル20の透光性導電層22(カソ
ード)に、電極24(アノード)側へ延びる延長部を設けてもよい。
この場合、隣り合う2つの発電セル20,20では、一方のセル70
の透光性導電層22の延長部が、他方のセル70の電極24に接合さ
れる。このようにしても上記と同様の効果が得られる。【0075】
  また発電部10に透光性基材21を設ける場合には、発電部10の製
造を容易にする観点から、図5(C)に示すように、各発電セル20
の透光性導電層22、発電層23及び電極24を、共通の透光性基材
21に支持させることが好ましい。【0076】
  また発電部10が一つの発電セル20によって構成される場合には、
電極24から透光性導電層22へと流れる電流が配電線を介して取り
される。【0077】
  なお太陽光発電装置5には、複数の発電部10が含まれていてもよ
い。この場合、複数の発電部10は、太陽光発電装置5の面方向に配
置されて、直列又は並列に電気的に接続される。【0078】
  発電部10が光電変換ユニットから構成される場合には、複数の発
電部10を直列に接続するために、隣り合う2つの発電部10,10
において、一方の発電部10の端にある透光性導電層22Aと、他方
の発電部10の端にある電極24Aとを、配電線を介して接続するこ
とが行われる。複数の発電部10を並列に接続する場合には、隣り合
う2つの発電部10,10の端にある透光性導電層22A,12A同
士と、上記隣り合う2つの発電部10,10の端にある電極24A,
24A同士とを、それぞれ配電線を介して接続することが行われる。
【0079】  また発電部10が一つの発電セル20から構成される
場合には、複数の発電部10を直列に接続するために、隣り合う2つ
の発電部10,10において、一方の発電部10の透光性導電層22
と、他方の発電部10の電極24とを配電線を介して接続することが
行われる。複数の発電部10を並列に接続する場合には、隣り合う2
つの発電部10,10の透光性導電層22,12同士と、上記隣り合
う2つの発電部の電極24,14同士とを、それぞれ配電線を介して
接続することが行われる。【0080】
 なお発電部10が、上記の光電変換ユニット及び一つの発電セル20
のいずれから構成される場合においても、隣り合う発電部10,10
の間の距離は、0mm超であればよく、好ましくは2mm以上であり、
より好ましくは10mm以上であり、更に好ましくは、15mm以上
である。また、隣り合う発電部10,10の間の距離は、100mm
以下が好ましく、より好ましくは50mm以下であり、更に好ましく
は、20mm以下である。【0081】
  (繊維含有シート3)
  設置面を構成する繊維含有シート3は、繊維を含有するシートであ
り、遮光性を有する。太陽光が繊維含有シート3によって遮られるこ
とで、草木が地面2に生えてくることが防止される。繊維含有シート
3の引張強度は1N/cm以上10000N/cm以下であることが
好ましい。繊維含有シート3の厚さは、例えば、0.1mm以上10
0mm以下であることが好ましい。【0082】
  繊維含有シート3として、繊維の周囲が樹脂で被覆された繊維強化
シート、或いは不織布を使用できる。この場合、繊維含有シート3に
含ませる繊維の材料として例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、
、ポリ乳酸、ポリオレフィン、アスファルト、珪砂が使用される。
【0083】  (弾性体4)
  弾性体4は、弾性材料から形成されたシートである。当該弾性体4
の横弾性率(横弾性係数)は、好ましくは0.05MPa以上、より
好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.5MPa以上、よ
り好ましくは1MPa以上、より好ましくは5MPa以上、より好ま
しくは10MPa以上である。また弾性体4の横弾性率(横弾性係数
)は、好ましくは1000MPa以下、より好ましくは500MPa
以下、より好ましくは400MPa以下、より好ましくは300MP
a以下、より好ましくは200MPa以下、より好ましくは100M
Pa以下、より好ましくは50MPa以下である。また弾性体4の粘
性は、好ましくは0.1Pa・s以上、より好ましくは0.5Pa・
s以上、より好ましくは1Pa・s以上、より好ましくは10Pa・
s以上、より好ましくは100Pa・s以上、より好ましくは500
Pa・s以上である。また弾性体4の粘性は、好ましくは10000
Pa・s以下、より好ましくは5000Pa・s以下、より好ましく
は4000Pa・s以下、より好ましくは3000Pa・s以下、よ
り好ましくは2000Pa・s以下、より好ましくは1000Pa・
s以下、より好ましくは800Pa・s以下である。当該弾性体4を
形成するための弾性材料として、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン
酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シアノアクリレート樹脂、アクリル
樹脂、クロロプレンゴム、スチレン、ブタジエンゴム、ポリウレタン
樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも
1つ以上を含む樹脂組成物を使用できる。弾性体4の厚さは、例えば、
0.1mm以上100mm以下であることが好ましい。
【0084】  弾性体4は、接着剤40を用いて繊維含有シート3の
上面(設置面)に接着されることで、繊維含有シート3の上面(設置
面)に載置された状態で固定される。【0085】
  接着剤40として、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル
樹脂、エポキシ樹脂、シアノアクリレート樹脂、アクリル樹脂、クロ
ロプレンゴム、スチレン、ブタジエンゴム、ポリウレタン樹脂、シリ
コーン樹脂、変性シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1つ以上を
含む樹脂組成物を使用できる。なお本発明は、接着剤40を、上記の
樹脂組成物に限定するものではない。また接着剤は、800cP以上
の粘度を有することが好ましいが、接着剤の粘度は800cP未満で
あってもよい。【0086】
  なお弾性体4を介してバックシート6と設置面3とを接着できれば
、必ずしも弾性体4をシート状する必要は無く、弾性体4は、バック
シート6を部分的に設置面3に接着する形状とされ得る(例えば、弾
性体4は、バックシート6の周辺部のみを設置面3に接着する形状と
され得る)。熱伸縮によるバックシート6の変形に伴って積極的に弾
性体4を変形させる観点においては、バックシート6と設置面3とは
弾性体4のみを介して接着されていることが好ましい。一方で、施工
性を考慮し、一時的な仮固定や、相対的に弱い強度での固定、部分的
な固定を図る観点においては、バックシート6と設置面3とを接着す
るために弾性体4以外の部材を設けてもよいが、この場合には、弾性
体4以外の部材が、バックシートの変形を阻害しないことを考慮する
必要がある。設置面若しくは太陽光発電装置のバックシート背面に弾
性体を塗布・粘着層として設けておき、互いを張り合わせる形態でも
よい。また、上記の接着剤40と弾性体4を兼ねる接着性のある弾性
樹脂を積層体1に設けてもよい。
【0087】
  また、バックシートの横弾性率Eaと弾性体4の横弾性率Ebの比率
(Eb/Ea)は、好ましくは0.002以上、より好ましくは0.
004以上、より好ましくは0.006以上、より好ましくは0.0
08以上、より好ましくは0.01以上、より好ましくは0.015
以上、より好ましくは0.02以上、より好ましくは0.03以上で
ある。また上記の比率(Eb/Ea)は、好ましくは0.1以下、より
好ましくは0.05以下、より好ましくは0.045以下、より好ま
しくは0.04以下、より好ましくは0.035以下である。
【0088】  (作用効果)
  本実施形態に係る積層体1及び太陽光発電システム100によれば
、繊維含有シート3とバックシート6との間に弾性体4が配置される
ことで、繊維含有シート3及びバックシート6の温度変化による熱伸
縮に追随して、弾性体4が3次元的に変形する(すなわち、弾性体
4の繊維含有シート3側では、繊維含有シート3の熱伸縮に応じた変
形が生じ、弾性体4のバックシート6側では、バックシート6の熱伸
縮に応じた変形が生じる)。これによりシート同士の間(繊維含有シ
ート3と弾性体4の間や弾性体4とバックシート6の間に相当)に大
きなせん断応力が発生することを回避できるので、シート3,6が剥
離しにくい。したがって積層体1及び太陽光発電システム100によ
れば、設置面を構成する繊維含有シート3とバックシート6との間に
隙間が生じにくく、長期間安定的に太陽光発電装置5を固定できる。
【0089】  なお熱伸縮により積層体1に生じる応力を小さく抑え
る観点から、弾性体4の縦弾性率を、好ましくは0.1MPa以上、
より好ましくは1MPa以上、より好ましくは10MPa以上、さら
に好ましくは100MPa以上とすることが好ましい。また、上記縦
弾性率は1000MPa以下、より好ましくは500MPa以下、よ
り好ましくは250MPa以下とすることが好ましい。発生応力を抑
制する観点では弾性体4の縦弾性率を低くすることが好ましいが、弾
性体4の縦弾性率が低くなるにつれて弾性体4の形状保持力が下がる
ため、弾性体4の縦弾性率は上記の0.1MPa以上とすることが好
ましい。また弾性体4の縦弾性率が高くなるにつれて弾性体4に発生
する応力が大きくなるため、弾性体4の縦弾性率は上記の1000M
Pa以下とすることが好ましい。【0090】
  また弾性体4の線膨張係数を、繊維含有シート3の線膨張係数よりも
大きく、バックシート6の線膨張係数よりも小さくすることが好まし
い。このようにすれば、シート間に生じるせん断応力を小さく抑える
ことができる。なお上記のようにする場合には、繊維含有シート3の
線膨張係数を1×10-6/℃以上1000×10-6℃以下とするこ
とが好ましく、弾性体4の線膨張係数を、10×10-6/℃以上1
000×10-6℃以下であって、且つ、バックシート6の線膨張係
数よりも小さい値にすることが好ましい。【0091】
  また弾性体4を介する繊維含有シート3と弾性体4との接合を安定
して維持する観点から、弾性体4を介する繊維含有シート3とバック
シート6のせん断剥離強度を0.1N/cm以上とすることが好まし
い。上記のせん断剥離強度は、JIS  K6850の方法によって計
測される値であり、上記のせん断剥離強度を0.1N/cm以上とす
ることは、例えば、繊維含有シート3や接着剤40の材料を適宜選択
することで実現される。上記のせん断剥離強度を測定する際には、使
用環境温度よりも高い環境温度下で計測することが好ましく、90℃
等の環境温度下で計測することが好ましい。一方で、使用環境温度が
一定の低温等とされることが明らかな場合は、その使用環境温度近辺
での計測が好ましい。【0092】
             ー 後 略 ー
                         この項了

      



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