朝起きていつものように作業をはじめると、これまたいつものように、若山牧水の「白玉の歯
にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり」の白玉は白玉団子なの?と「しが彦根新
聞」をもって彼女が部屋にきてそれを見せる。それは水、水滴、飛沫、あるいは露なんだろう
から酒の直喩としてストレートに解釈したら?!秋→中秋の名月→白玉団子の連想は何とも食
い気旺盛のきみらしいねと笑い飛ばすが、名水「十王の水」を使った酒の記事に目がとまる。
環境省の全国名水百選に選ばれている彦根市西今町の湧き水「十王村の水」を使った日本酒造
りを、豊郷町の岡村本家が9年ぶりに復活させる。岡村博之社長(43)は「彦根産の水と米を
使った地酒を楽しみにしてほしい」 と来年1月上旬の販売を目指す。十王村の水は1985年に
名水百選に指定されたが、88年ごろから大規模工場建設の影響などで水が枯渇。94年に地元住
民が十王村の水を復活させるため保存会を立ち上げ、地下70メートルの水をポンプで引き上げ
る方法で 復元した。現在は会員二百人が周辺河川の清掃や、池の美化に取り組んでいる。岡
村本家は九八年、名水PRの一助となればと仕込み水として利用を開始。6年後に水の衛生面
での問題が浮上して一時 取水を中断していたが、保存会からの依頼で再び使用を決めた。こ
のほど水取りがあり、保存会員が見守る中、岡村社長が地下から勢いよく吸い上げた水をくり
返しバケツにくみ、六百リットルを持ち帰った。早速仕込みに取り掛かり、地元のかつての村
名「福満」の名で販売する。中村正明保存会長(66)は「酒をきっかけ に名水の名が広まり、
たくさんの観光客に来てもらいたい」と期待を寄せる。十王村の水は湖東三名水の一つでもあ
る。この水を飲むと母乳がよく出るという伝承があり、石の柵で囲まれた池の中に 浮島のよ
うに六角形のお堂が建てられていて、母乳の地蔵尊が祭られているという。
岡村酒造の「金亀」は清酒工程で使われる濾過袋だろうと思われる、あるいは醸造容器(木質)
とおもわれる非水溶性の香り成分が僅かに溶け込んでいるのか辛口で独特の風味が気に入り飲
んでいた(現在は頑張ろう東北ということで二本松は大七「生もと」)。いまは化学物質分析
技術の進歩で成分解析は容易になっているから、加算法で同じものを醸造酒をつくることも可
能だ(わたしはそう考えている)。しかし、それを商業ベースに移すかどうかは別の問題で、
半導体のように僅かな異質な成分を付け足すことで劇的に付加価値を高めることができるが、
そこは人文科学あるいは文化芸術に渡る感性品質学的要素もあり、一筋縄ではいかない。「母
乳がよく出るという伝承」を付加できるのはまさに地域の文化力ということになりうる。来年
が楽しみだ。
【脳を磨く生活術】
「脳を磨く生活術-高齢化社会に向けて」をテーマに三年ぶりに開催されることとなった市民
講座をキャナリィ・ロウで昼食を済ませ、そこから対面にある彦根文化プラザで開催予定の茂
木健一郎の講演へ向かう。
人は本来、一人ひとり違う個性や考え方を持っているものです。これまでは規定の方程
式に合わせて生きることこそ幸せになるための第一歩だと信じられてきたので、それに従
って生きる人も多かったはずです。しかしそのような画一的な人生、あるいはソリューシ
ョンがひとつしかない人生のみが正解とされる世界は、それとは違う人生を歩みたい人に
とっては生きづらいものです。「自分の幸せはこれじゃない」と言いたくても、周囲がそ
れを許さない。「こうでなければ幸せにはなれないよ」と、自分のものではない価値観を
押しつけられることに、息苦しさを感じる人も多いはずです。
これからの時代はそうではありません。「こうすれば幸せになれる」という価値観は崩
れ、「幸せの方程式」は自分でつくれる時代になったのです。
どこの大学を出ていようが、それ以前に大学なんか出ていなくても、実力さえあれば自分
かやりたいことが自由にできる時代です。女性が活躍できる場も増え、結婚だけを重視す
る考えは古くなりました。
自分の人生をオーダーメイドできるようになったのです。自分にとって何か本当に大切
なのか、それを見つけながら人生を楽しめるようになったのですから、よい時代になった
のだ と私は思っています。
茂木健一郎 『幸福になる「脳の使い方」』
本書では、脳科学の最新知見を元に、幸福になるための脳の使い方を著す。内容例を挙げると
①幸せはお金で買えるのか②不安を人生のスパイスにする③口癖をコントロールする④「気分
転換」を味方につける⑤脳は年齢を重ねるほど自由になる⑥「幸せの方程式」は自分でつくれ
る等々 我々は、金銭的に裕福になれば「幸福感」が増すと一般的に考える。しかし、GDP(
国民総生産)が増加しても、幸福度は増えなかったという研究成果が発表されている。お金を
もっても幸せになれないのであれば、我々はどうすれば幸福になれるのだろうか。脳はどのよ
うなときに充足感を得るのであろうか-これらの問題に平易に解説するこの本の内容のエッセ
ンスは、きょうの「脳を磨く生活術-高齢化社会に向けて」で網羅、講演されていた。
私たちが日常何かをするときには、意識するしないに関わらず必ず何らかの動機がその行動の
背後にあり、ものを食べたり、ゲームをしたり、勉強をしたり、スポーツをしたり、朝起きて
顔を洗うといった習慣などにも煎じ詰めれば何らかの動機がある。ドーパミンニューロンはそ
行動の動機付けに関連して活動を増すことがわかってきた。さまざまな出来事がいいことであ
れ、いやなことであれ、とにかく自分にとって意味があって、何らかの行動を引き起こすよう
な場合には必ずドーパミンニューロンが活動する。つまり、周囲の環境にに適応し、学習しな
がら、生活するすべを会得し、人生は学習の連続としてドーパミンは学習の強化因子として働
らく。だから、逆説的には動機の正否を不問にし、ドーパントを増やす行為を行えばよい。と
いう戦略が成立する(そう仮定する)。勿論、半導体と同様にドーパントが過剰なら機能不全
(学習強化機能子)を起こす。それらを踏まえ「幸せの方程式」を解けばよいのだと。そんな
ことを現代的な教養とし、散文的に平易に茂木健一郎が話してくれた。しかしねぇ~、気が多
い性格のわたしはストレスによる免疫低下を心配した方が良いみたいだ。
※昨日、名城大学の鍋島俊隆特任教授らは、思春期に受けたストレスが成熟後の精神疾患につ
ながる仕組みの一端をマウスを使った実験で解明-精神疾患の遺伝要因を持つマウスを成長期
に隔離してストレスを与えながら育てたところ、意思決定や注意力に関係する脳の神経回路に
異常が起き、集団で飼育した場合はマウスの行動に異常はなかったという。発症したマウスは
血液中のストレスホルモンの量が増えていた。注意力や意思決定に関係する神経回路で、神経
伝達物質のドーパミンが減り、働きが鈍っていることがわかった。一方、幻覚や妄想にかかわ
るとされる脳の部分では、刺激を受けるとドーパミンが増えたと報告している。