【イグゾーって何なの?】
イグゾってなによ?と彼女がたずねる。省エネ液晶ディスプレイのことだよ。それがどうしたの?
と問い返すと、いまテレビでシャープの亀山工場でつくって韓国・中国メーカへの巻き返しを図っ
るのね?!とテレビを観ながら話す。席を立ちテレビをのぞき込む。「もう充電を気にしない。驚
きの省電力。IGZO(イグゾー)」と経営危機にあるシャープが、テレビコマーシャルや新聞広告で、
盛んにPRしているという。これは『瞬間空間移動システム』(2012.4.15)で紹介していたが、た
のみの林檎(アップル)が銀河(ギャラクシー)に圧倒され目算がハズレ、iPad向けに第1、第2
四半期と、それぞれ200万台以上あった受注が、秋口から激減。10月に発売された廉価版のiPad mini
にも需要を食われ、韓国LGディスプレイに調達先を大きく絞り込まれた。自社製スマホも別工場で
手がけるため、あわてたシャープは、IGZOを搭載した高価な業務用ディスプレイの出荷計画を発表。
しかし毎月1500台と少量で生産能力の数パーセントにも満たないという。そのため亀山工場のIGZO
生産ラインは年度内“眠りつづける”という公算が大きいこと、中間決算で掲げた亀山工場の「下
期の稼働率5割」は、本当のところ“高級品”のIGZOではなく、標準的なテレビ用液晶を韓国サム
スン電子向けに赤字覚悟で大量生産して支えているが「本当にIGZOはシャープを救う技術になるの
か市場関係者は懐疑的にいる。
※IGZOとは、ポスト・アモルファスシリコンとしての透明アモルファス酸化物半導体(Transparent
amorphous oxide semiconductors :TAOS)の電気特性、光透過率など、TAOSの優れた特徴を生かして、
カラー電子ペーパー、大画面液晶ディスプレイへの研究が進められていて、このTAOSの中でもIGZO
(InGaZnOx)は最も注目されている材料。1~10cm2/VSと優れた電気特性を持ち、薄膜は可視光を
透過させるため、ほぼ透明の膜をつくることができ、室温~150℃といった低温プロセスで膜を形成
できることから、プラスチック基板等、高温プロセスに適さない基板材料にも適用可能。こうした
特徴により、電子ペーパーや各種の透明デバイスの実現に大きく寄与する可能性を秘めた材料とし
て期待されている。
経営の話はさておき、量産化はなるほどシャープだけれど、元は東京工大の細野秀雄らのグループ
の手によるもの。1997年に世界で初めて、透明酸化物でP型伝導性を持つ物質の設計法と具体例を
Nature誌に報告して以来、透明酸化物エレクトロニクスのフロンティアを拓く。実際に、紫外発光
ダイオード、高性能透明薄膜トランジスタ(TFT)、室温で作製したアモルファス酸化物 p/n接合な
どを開発し、透明酸化物半導体が高い潜在能力を持つことを実証。2004年には、酸化物半導体が持
つ優れた特徴をもつ、室温で作製したアモルファスシリコンや有機半導体よりも一桁以上高い特性
を持つフレキシブル透明TFTを実現。フレキシブルTFTでは世界でトップの性能を誇る。さらに酸
化物が持つ独特の結晶構造がもつ、混合価数イオンの共存、長距離力であるクーロン力と共有結合
性と両者のバランスから構成する ナノメートルサイズの超構造が得られ、量子効果を利用したデ
バイスの自己組織化的に形成したり、ごく有り触れた元素化合物の結晶の籠構造に様々なイオンを
包摂することで、電界放射型ディスプレイ電界効果型トランジスタや有機発光ディスプレイなどへ
応用できることを実証している。このれらの研究成果の延長には、深刻化している環境・エネルギ
ー問題の解決に大きく寄与できるスーパーセラミックスをつくることも可能だという。
セミナも受講した記憶があるが、量産安定性という点でこれからという印象が微かに残っているが、シャープ
や細野グループの新規考案を俯瞰する限り、低温での薄膜成長を材料構成比や成膜条件(例えば、酸素濃
度の制御など)の制御知見で課題克服できているようだ。
【符号の説明】1 基板 2 チャネル層 3 ゲート絶縁膜 4 ゲート電極(ゲート端子) 5 ドレイン電極(ドレイ
ン端子) 6 ソース電極(ソース端子); 特開2012-248853
彼女の疑問から、ネット下調べで気付いたが「特開2010-279905 |複合水素透過膜」という新規考案に
めがとまった。つまりこうだ。「複合水素透過膜は、水素透過性を有する金属合金基板と、被覆する酸化物ガ
ラス層と、それを被覆する触媒層との構造で、金属合金基板がNi(ニッケル)-Nb(ニオブ)-Zr(ジルコニウ
ム)合金で、酸化物ガラス層はプロトンと電子の混合導電性を有する酸化タングステン含む有リン酸塩ガラス
で、触媒層はNi、Pd(鉛)等の遷移金属。複合水素透過膜は、高い機械的強度をもち、長時間安定に動作し、
水素透過速度がPd(パラジウム)膜に匹敵する複合水素透過膜のつくり方を提案しているのだが、パラジウ
ムは非常に高価で、喩えれば、金を鉛で代用できるだと言っているわけで、現代の錬金術なのだ。
【符号の説明】 1,10,10A,15,15A:複合水素透過膜 2:金属合金基板 2A:金属
合金基板の側面 2B:金属合金基板の上面 2C:金属合金基板の下面 3:第1の酸化物ガラス
層(第1の酸化タングステン 含有リン酸塩ガラス層) 4:第1の触媒層 5:第2の酸化物ガラス
層(第2の酸化タングステン含有リン酸塩 ガラス層) 6:第2の触媒層 11:酸化物ガラス層
12,12A,21:原料水素ガス 13:触媒層 13A:触媒 層で被覆した複合水素透過膜の側
面 13B:触媒層で被覆した複合水素透過膜の膜上面 13C:触媒層で被覆した複合水素透過膜
の膜下面 14:密着層 16:容器 17,22:1次側容器 18,24:2次側容器 20:
水素純化装置 23:精製水素ガス 25:ヒーター 26:配管部 27:真空排気ポンプ 28:
ガスケット 30:不活性ガス(Heガス) 31:第1の切り替え弁 32:閉止弁 33:水素
ガス流量計 34a:第1の配管 34b:第2の配管 34c:第3の配管 35:真空ポンプ用
配管 36:第2の切り
さて、なにが言いたかったのかというと『オールソーラー水素システム』での水素製造システムにこ
の素材製造技術を組み込むことで、コストやロジスティクス的側面に役立てるというものだ。このブ
ログでも「オールソーラシステム事業」を適宜掲載するが、わたしの頭には既にエネルギー・持続可
能社会・大規模気候変動の人為的要因の解決方法は出来上がっているので、改めて構想を紹介してい
きたい。
自民、公明両党の税制調査会が、13年度税制改正で所得税の最高税率(現行40%)を45%に引き上げ
る方向で調整に入ったという。消費増税の負担感が重くなる低所得者の不公平感を和らげるため、富
裕層の課税を強化する。所得税の最高税率は、昨年の自民、公明、民主の3党合意で今年度中の見直
しが決まった。民主党は45%への引き上げを示したが、公明党は50%を主張。自民党は態度を明確に
せず、結論は先送りされていた。ただ、消費税率8%段階からの軽減税率導入を目指す公明党内には、
9日に始める自民党との与党協議で、最高税率で譲歩する代わりに、軽減税率導入の道筋をつける案
が浮上。3党合意時の取り決めにより、所得税の見直しは民主党の同意も得る必要があるため、45%
を軸に検討するという。
税制を巡ぐりその政党の支持社会階層の特徴が明確に反映される。節税・脱税は日常茶飯事だが見返
りだけ要求する自由主義の不自由あるいは不条理さは実に滑稽だ。税制や社会支援制度は煩瑣なぐら
い細やかな公明党だが最高税率において筋は通っている。1989年の消費税導入当時は世界一健全なぐ
らい中間層が分厚かったため、消費支出の占める割合が7割超にあっては消費税導入に妥当性があっ
た。しかし、失われた20年(ロスト・スコア)で所得税中心に戻さざるをえないとするわたし(たち)
と公明党の上限税率の主張と奇しくも交差する。さて、わたしの五年前の計算でいくと、この世界不
況は2013年に谷を抜ける節目となる。さて、この世は万事、事実は小説より奇なり。またこうも言う、
天は自ら助くるものを助けく(Heaven(God) helps those who help themselves.)と、時代は自身で切りひ
らくものだとも。