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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 2月11日 数学教師

2014-02-11 19:01:59 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 2月11日 数学教師



 私が高校1年の時の担任は、数学の教師だった。
夏休み前の授業、期末テストも終わって、なんとなく開放感があった。
授業の日、先生は、

「 とても昔の話なんだけど・・・・。
もうすぐ夏休みだから新しい項目に進むのももったいないし、良ければ暇つぶしでもさせてくれないか。」

と言って語り始めた。


「 わたしはね、数学の教師だから、一応なんつうか科学つうかね、理屈に合わないことは信じないんだけど、教師になりたての頃、不思議なことに出会ってね。
お前らが産まれるより前の話だな。
いや、今でもよくわからない。
 その頃の修学旅行は、今みたいに新幹線がある訳じゃないから、夜行列車で行ったんだよ。
わたしは若かったから担任は持ってなくて、副担だったんだけど。
 旅行を前にして、ある生徒の親が、学校に文句をつけてきたんだ。
今でも信じられないんだけど、その日、旅行に行く方角がとても悪いから、中止するか延期しろと。
 そんなことできないんでさ、だって切符もそろってるし、宿もとってあるし。
そしたらその生徒の親は、危険だからうちの娘は欠席させるって言うんだよ。
修学旅行は、大切な旅行だったよ。
今みたいに自由に好きな所に行く余裕もないし、どの生徒も楽しみにしていた。
その生徒だって、行きたくてね、泣いてたよ。
 娘にせがまれてしょうがなくなったんだろう、その生徒の親は、たくさんのお札を持って学校に来てね、これを生徒全部に持たせるように、と。
どうやらおがみ屋さんだったみたいで、でも本業じゃなかったな。
あ、これはあとで知ったことなんだけど。
 いやいや、学校もね、そんな非科学的なことは誰も信じてないんで、どうしようか職員会議もしたんだけど、校長先生が、

「 お守りくらいで、父兄が安心するなら、いいじゃないか。」

って決めてね。
 じゃあどうせなら、きちんとやるかってんで。
夜行列車で行くから、列車の中では体操着なんだ。
それで、お守り札を、体操着の胸ポケットに名札みたいに縫い付けてもらうよう、通達してね。
今よりもっと迷信深い頃だから、案外、他の父兄からは文句が出なかったな。
 ああ、お札は、もちろんわたしら引率の教師も全員着けたよ。
列車に乗り込むと、生徒達ははしゃいでね、早く寝ろって言ってもいつまでもしゃべってて、寝ないんだよ。
何度も見回りに行ってね。
 そしたら、生徒のひとりが、体操着を来てないのに気がついた。
ちょっと金持ちの家の娘で、修学旅行のために新しいブラウスを買ってもらったんだと。
見せびらかしてたな。
昼間行動するときは制服だからね。
 いいから寝ろって、ホント女の子はたくさん集まると、わたしみたいな新米の教師の言うことなんか聞きゃあしない。
その内、静かになって、やっと寝られるようになった。

 夜中かな、悲鳴があがってね、びっくりして飛び起きたよ。
他の先生と一緒になって、生徒の車両に走った。
 夜行列車は寝台だったんだけど、蚕棚みたいな狭いベッドに寝るのさ。
車両の1カ所の電球が割れてて、一番上の寝台に寝てた生徒の背中に、ガラスの破片が突き刺さってた。
 すぐに列車の車掌に連絡してね、次の大きな駅で、生徒を病院に入れたんだよ。
女の先生がひとり付き添ってね。
 危なかったよ。
背中から、心臓に向かって、深く突き刺さってたんだ。
その生徒がね、ブラウス着てたんだよ。
体操着じゃなかった、あの生徒だったんだ。
 なんかね、こういうの信じたくないんだよね。
ほら、わたしら数学教師だって科学者の一員さ。
科学を信じてるからね。
でも、これは事実だったし、あのときのことは、忘れられないねぇ・・・。」


この話をしてくれた担任の数学教師は、今はもう鬼籍にある。
私は、この話とともに、あの先生を忘れられない。














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日々の恐怖 2月10日 人型

2014-02-10 18:57:34 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 2月10日 人型



 もう10何年か前になるけど、親父と親父の友達数人で船のイカ釣りに行った。
もちろんイカ釣りは夜中にライトを付けて釣る釣りだから、夕方からの出船だったんだけど当日は天気もよくて、海に沈んでいく夕日を船の上から眺めて、一緒に来ていた親父の友達の子供と騒いだりしていた。

 で、暗くなった頃にポイントに到着したんだが、かなり沖に出ているので360度何処を見渡しても水平線しか見えない状態で、もし船が沈んだら絶対助からないな、などと親父と冗談を言い合いながら釣り始めたんだが、これが全くつれない。
 普通イカというのは群れで動いているから、釣れ始めるとバタバタとつれるはずなんだが、たまに誰かが一杯か二杯パラパラとつり上げる程度で、嫌になるほどつれない。
隣で釣ってたおっさんは、船長の腕が悪いとかブツブツ言いながら釣ってたし、俺は早々に船酔いになって船室に引っ込んで仮眠を取ったりした。

 で、そんなこんなで真夜中を過ぎた頃、俺が起きて釣り座に戻ってみると、みんな嫌になったのか、殆どの客が寝ている状態になっていて、高い船賃を払って釣りに来たのか海に寝に来たのか解らない状態になってた。
 なにせ操縦室のぞいたら、船長までうたた寝してやがったくらいで、そんな状態で何となく仕掛けをおろす気にもならなくて、海の中をのぞいていたら、集魚灯にものすごい量の小魚が集まっていて、その下にはかなり大きな魚が腹を返す光や影が見えていた。
 イカ釣りの仕掛けしかなかったのが悔しくて、親父に、

「 道具持ってきてたらあれ釣れるよね。」

などと言っていたとき、親父が、

「 あれなんだ?」

と船の下の方を指さしたので、その方向をじっと見てみると、かなり大きな影が結構深そうな所を泳いでいる。
 サメか何かか!?と思って目をこらしてみていると、その影が明らかに人型なんだわ
岸に使い所ならダイバーと言う可能性もあるだろうが、今居る場所はかなり沖のまさに太平洋のど真ん中でそれもあり得ない、周りを見渡しても遠くに別のイカ釣り船の漁り火が見えるだけ。
 親父と俺はしばらく顔を見合わせた後、仕掛けを上げて船室に入ってそのまま朝まで釣りもせずに夜を明かした。
他の人もいたけど、見たのは俺たちだけだったみたいだった。
朝になって船が漁港に戻るとき、見えた岸の懐かしかったことといったら・・・。



   人型
    ↓


こんな感じ。






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日々の恐怖 2月9日 荒井

2014-02-09 18:25:37 | B,日々の恐怖



     日々の恐怖 2月9日 荒井



 私は、小さい頃からどちらかといえば男の子、もしくは似たような種類の男っぽい女の子とばかり遊んでいて、そのため男友達が多かった。
 中学に上がってどのくらいかは忘れたが、間違いなくメンバーから考えて中1の時のことだ。
男友達数人と話してる時、

「 お前そういや荒井とはどうなったの?」

と言われる。
でも聞き覚えが無い。

「 いや、誰だよ荒井って?」

と返すと、笑い含みで、

「 えー、お前荒井知らないの!?」

“ さてはこいつら、空想の人間を出して私をからかってるな?”

と思い、

「 知らないよ。
誰・・・?
いつ知り合った人・・・?」

と否定を続ける。
 だんだん男子の顔がマジになってくる。

「 いやお前小学校の時いっつも遊んでたじゃん。」
「 えっ、本当にお前荒井知らないの・・・?」
「 小3の時とか遊んでたよ。」
「 俺、荒井とお前と俺とで林の家で遊んだこともあるよ?」

だんだんマジな空気を感じてきて、自分の記憶が不安になるが、やはり記憶が無い。
荒井と私は仲良しだったらしい。
 林の家では小3くらいからほとんど毎日のように遊んでて、一度遊んだメンバーは覚えている。
というか私が人集めor管理役だった。
 誘った子が“xxやooも誘って良い?”とか言うことがあり、多すぎると林の家も大変なので、いつも4人前後に揃えるようにしてた。
だから、知らない人を呼ぶわけがない。
でも、名前も顔も全く思い出せない。

私「 荒井ってのは途中で転校した?」
友「 いやいや最後までいたよ、何組だったっけな~、4だっけな~。」

私は3組だった。
小学校の卒業アルバムは失くしてしまったため、確認が出来ない。
中学が別々なのは確実のようだ。
 最終的にネタばらし等もなく、男子たちは、

「 えーマジで・・・。」
「 あっれー・・・。」

とか言いながら散っていった。
それから、ネタばらしなんかももちろん無い。
 すぐ林に、荒井と遊んだことがあったか確認した。

「 あーそうだねー、何回か遊んだことあるね。」

やっぱり思い出せない。
そのまま放置して高校生になる。
 ある日ふと思い出して、同じ中学出身の、最初に聞いてきた男子とは交友関係のほとんど無い女友達に荒井のことを聞く。

「 あーいたねー天パの!
あたし、あいつあまり好きじゃなかったな~。」

荒井はやっぱりいるらしい。
天パの、という言葉に何かを感じたが、やっぱり思い出せない。

 最近、小学校の頃のアルバムが家で発掘された。
荒井は確かにアルバムに載っていた。
思い出せなかった。










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日々の恐怖 2月8日 港

2014-02-08 20:55:15 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 2月8日 港



 数年前、短期の単身赴任で九州の某県へ。
仕事先は港近くの事務所。
昼時にすぐ先の港内を海上警察?海上保安庁?の小さな船が数隻サイレン鳴らして走り回ってます。
 何事と思い同僚と5人で岸壁の方へ。
風も無くベタ凪で綺麗な海面が印象的でした。
離れた岸壁に救急車やパトカー、クレーン車が。

“ あぁ、事故か自殺かな?”

と思って見ていて、ふと気が付くと何も聞こえない。
と言うか周りが止まって見える。

“ あれ?”

と思った矢先、視界の端に赤い何かが。
 横を見ると、海面から小学低学年位の女の子がス~ッと上がって来る。
赤い服を着た半透明の女の子。
事件現場の方を向いて海面に立っている。
その時は不思議と怖くなく、なんだか悲しい気持ちになった。
 と、その半透明の女の子から目が離せないでいると、ゆっくりこっちへ体ごと向きを変えてきた。
目が合った途端に突然耳鳴りが。
いや、女の子に目は無かった。
ポッカリと開いた黒い穴しかなかった。
 いつの間にか気を失っていたらしく、同僚に起こされて聞くと、自分は突然泣き叫びながら海へ入ろうとしたらしい。
同僚に取り押さえられて気を失ったと。

 翌日、支社長と捜索隊の漁師が言うには、一家心中で車ごとダイブしたとのコト。
私の話を聞いた漁師が、少女を見た周辺を探して無事遺体を発見したそうです。
その漁師に言われました。

「 あんた、今後3年間はこの港に来ちゃなんねえ。」












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日々の恐怖 2月7日 父親

2014-02-07 19:13:16 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 2月7日 父親



 私の父親の両親の家で起きた話です。
その家は西武線沿線のひばりが丘という駅からかなり歩いた場所にある二階建ての家です。
 私がまだ五歳くらいの頃、私の家族はクリスマスからお正月はその家で過ごしていました。
何日かを過ごした夜、私は眠くなり二階の布団に一人で向かいました。
階段は大変暗く、幼い私は常にビビっていましたが、その日は電気をつける前に顔のすぐそばに光を感じました。
黄色いような光で、私の想像する人魂みたいな感じでした。
 大いにちびった(漏らしてはないですが)私はすぐに居間に戻りました。
母親がテレビを見ていて顔色が悪いとか言いましたが、私は心臓が壊れそうな勢いで打っていてそれどころでは無いです。
二階に再び行くのが怖くて母親に頼んで一緒に行きました。

 そのときはそれで終わりです。
しかし数年後にまた奇妙なことが起きました。
元旦、朝一番に父が話し始めたことは、屋上に誰か居るかもしれない、という物騒なものでした。
父以外は熟睡していたのですが、父は夜中に物音がしたのを聞いたらしいのです。
 父はかなり真面目で(大手電気会社のとある部門の部長でした)元旦の朝一番に屋上を調べると言い出しました。
雪が昨日まで降っていた寒い朝、父は早速二階から屋上に出て何か不審な点がないかを調べました。
 すると、そこには足跡があるのです。
父はやはり昨日の物音は気のせいではなかったと言いましたが、同時に悩み始めました。
その屋上には、家の構造上、二階の内部から通じるドアを使ってしか到達できないのです。
 父は兄を疑いましたが、兄は関与を完全に否定。
外部の者が進入する経路はありません。
今でも未解決な謎の事件です。

 父は先ほども話したように、真面目な人物です。
休日は勉強、子供には歴史の本を読ませていました。
そんな父は、実際に霊的な経験をしたことがあるらしいのです。
しかし真面目な父からその話が出ることはなく、母からその話を聞かされました。
 ある晩、父は何故か目が覚めたそうです。
しかし次の日も会社、時間を確認して寝ようと思い眼鏡を取り、時計を確認して、また眼鏡を外した瞬間、父は動けなくなったそうです。
 金縛り。
信じていなかったのに動けない!
かなり焦ったそうです。
 しばらくするとどうやら人が部屋にいるようだと気がつき、何か影を確認したものの目が悪くてよく見えない。
頭が???な状態になり、次第に息苦しく、気分が悪くなってきました。
そして少したつと気を失ってしまったそうです。
 次の朝、眼鏡の位置、時計の位置から夜の出来事が夢でないと判明。
そして母に話したらしいです。
 その後、父は普通に会社に行きました。
そしてその夜、父は覚悟をしていましたが何も起きませんでした。
 しかし、二、三日経ち、会社の父の机に一通の手紙が着きました。
それは入院中の知り合いの死を告げるもので死亡日時は、父が金縛りで死にそうになって焦っていた時と全く同じ。
 以来父は、そういったことを信じるようになったらしいです。
ちなみに、父は似た体験をこの後二回ほどしたらしく、その後には必ず知り合いが亡くなったらしいです。
 話してみると、なんかあっけないですね。
この父の話は、あんたも大きくなったし、と母が笑い話のような感じで話してくれました。
母は一切そういった経験をしたことがないそうです。
お終い。
 あ、本当です、この話。
でも私は幽霊とかは積極的に肯定しません。
あの人魂も見間違いかもしれないし。










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日々の恐怖 2月6日 空調

2014-02-06 19:06:58 | B,日々の恐怖




   日々の恐怖 2月6日 空調




 学生の時にバイトしたんだよ。
ビルのガードマン。
常駐ってヤツね。
場所は新宿の某高層ビル。
ベテランらしいオッサンの補助役です。
 地下に詰め所があってそこで監視装置を見たり、巡回じゃない時は待機しているんだけど、そのフロアの奥に不思議なドアがあるんだよ。
何故か表札が5人分かかってる。
最初はビルメンさんの寮かと思っていたが違うみたい。
 で、オッサンに聞いてみたんだよ。
あれは何ですか? と。
オッサンが教えてくれた。
建築の時に死んだ人の慰霊室なんだと。
へぇ、なるほどなぁ、と思った。
 次の出勤の時に、思い立ってその部屋の前に行って手を合わせたんだよね。
無信心だから手を合わせて、安らかにお眠りください、と心の中で唱えただけ。
ついでだから、その人たちの名前を手帳に控えた。
どうしてなのかは解らないが、善行らしき事をしたのを内心で誇らしく思ったのかもしれない。
ささやかなセンチメンタル。

 ところが、それから15年たった先月の事。
今のおれは空調屋。
一応は社長なんだけど、言ってみれば一人親方という立場。
職人さんとそんなに変わらない立場だ。
 もちろん、不景気は厳しくて経済的に厳しくなってきていた。
そんな中、突然だが、飛び込みで入ってきた仕事があった。
突然、電話がかかってきて、急ぎで出来るようならと言ってきたんだ。
 普通はラインがあるから、こんな事はありえない。
しかも改修工事で、施工業者が受ける仕事のはず。
相手は電話帳を見たという。
誰でも知ってる大手だし、支払条件も不安がない。
大喜びで、打ち合わせを繰り返し、受注が決まった。
嬉しかった。
 古い知り合いの職人さんに集まってもらって工事が終わる頃、地下のボイラー室に用があって行ったのね。
もちろん、そのビルは学生の時にバイトしていた高層ビルとは違うし、オーナーも関係は無い。
 だが、華やかな高層ビルも誰も来ない場所なんか昔も今もコストなんか、かけられずに置かれるのは同じ。
どこも同じような殺風景な場所なんだ。
 特にライフライン関連は不燃のために灰色が基調の冷たい風景なんだよね。
まぁ、空調屋のおれには見慣れた風景とも言える。
 ボイラーさんと打ち合わせが終わって、詰め所を出たんだ。
そのときに廊下の奥に図面にないドアが有ることに気が付いた。
何かの間違いかな、とそのドアの前に行ったんだけれど、どうしてそれがあるのか、すぐに理解できた。
最初に書いた学生の時の記憶が、その時に蘇った。
 誰に聞かなくても解る。
慰霊室だった。
表札も同じく5人。
俺は手を合わせ、昔と同じように安らかな眠りを祈った。
そして何故か、学生の頃の記憶に従い、彼らの名前を手帳に記名した。
 そして自宅に帰ってから、昔の手帳が妙に気になり出して天袋に収めていた段ボール箱から当時の手帳を取り出した。
見比べて驚いた。
記帳した五人の仏さんの姓が全部同じだったんだよ。
 大規模な建築関係に携わってる友人がいたなら聞いてみるといい。
必ず工事中に死んだ人たちへの感謝を表わすモニュメントがどこにもある。
昔は人柱なんて気味の悪い話もあった。
 とにかく今のおれは感謝している。
相手が誰かわからないが感謝しているんだ。













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日々の恐怖 2月5日 ロッカー

2014-02-05 19:11:31 | B,日々の恐怖


    日々の恐怖 2月5日 ロッカー


 フリーで仕事をしているので、新しい職場を転々とすることも多く、職場によっては着任時に十分な準備が整っていないこともある。
今から2~3年前に東京の某システム開発会社に着任したときも、ご多分に漏れず準備が十分に整っていなかった。
 というよりも、机や椅子、パソコンなど通常の仕事で使用する道具一式は問題なく揃っていたものの、なぜかロッカールームのロッカーに空きが無かったのだ。

 自己紹介を済ませ、職場の設備を案内してもらう時に、その話を聞かされた。
その後、実際にロッカールームへ通されると、横幅が約30cmと狭く、縦は約180cmと長い扉が、ズラッと並んだ大型のロッカーがいくつか置かれていた。
 それぞれの扉の、胸の高さの部分にはネームプレートがあり、使用中のロッカーには名札が付けられ、鍵が抜かれた状態になっている。
その中の一つに、未使用状態のロッカーがあるのを見つけた。
それで、リーダーに聞いてみた。

「 ここのロッカーは使えないんですか?」
「 あぁ、ここね。
ここはかなり立て付けが悪いので・・・。」
「 多少立て付けが悪くても問題ないですよ。」 立て付け
「 うーん、でも誰も使ってなかったし、汚れてるからね。」
「 それでしたら私が掃除してから使わせていただきますよ。」
「 そ、そう? 
だけどなぁ、あんまりお勧めじゃないなぁ・・・。」

ロッカーのハンドルを手前に引くと、立て付けが悪いという話に反してサクッと軽く開いてしまった。
油でも塗ってスムーズになったのかなぁと思い、

「 どうやら問題なさそうですね。」

と言ってから、中を覗き込んでみる。
 確かに誰も使っていなかったようで中は大量の埃にまみれていた。
上部にはハンガーを掛ける金属製のパイプがあり、下部は網棚のようになっていて鞄や小物を置くことが出来そうだ。
早速雑巾片手にロッカー内を掃除し始めた。
 掃除をしながら“どうして誰も使っていなかったのだろう”とか、“あんまりお勧めじゃないってどういう意味だろう”という疑問は沸いたものの、簡単に掃除が完了し、自分の私物を中に収めて一段落した。

 その後、10ヶ月ほどは何の問題も無く仕事のほうも順調で、職場の仲間や雰囲気にも慣れてきたのだが、開発も終盤に差し掛かって繁忙期に入り、気がつけば23時を過ぎることが増えてきた。
その日も23時頃になり、俺とリーダーの二人が最後まで残っていたのだが、いざという時の為に予め退室手順を聞いていたので、仕事のキリが良くなったリーダーが先に帰ることになった。

「 戸締りの方はくれぐれもよろしくね。
それからあまり遅くならないようにね。」
「 はい、わかりました。お疲れ様でした。」

 この職場に着任してから初めて最後の一人になったのだが、俺も地元の私鉄の終電時間が迫っており、何とかキリの良いところまで仕事を仕上げると、例のロッカールームに飛び込んだ。
 鍵を回してハンドルの部分をグイッと引っ張る。
いつもなら何の抵抗も無く、カシャンと軽い音を立てて開くのに、どこかに引っかかったような状態で開かない。

“ あれ、何か引っかかったかな?”

と思って押したり引いたりしても、中途半端に引っかかり、なかなか開かない。
そこで、きちんとロッカーの扉を押し戻してから施錠し、一旦鍵を抜いてから、再び鍵を差し込んで開錠。
その後ゆっくりハンドルを引いてみると、今度は何事も無かったようにアッサリと開いた。
 私物を取り出す前に、蝶番やハンドルの部分を丹念に調べたのだが、別に引っかかりそうなものは何も無い。
また、スーツや鞄の一部がどこかに引っかかっていたのかと思って調べてみたのだが、そのような形跡も無い。
まもなく終電の時間になってしまうので、細かい調査は翌日することにして、その日は慌てて帰宅した。

 翌日出社して、ちょっとした仕事の合間に、ふと昨夜のロッカーの件を思い出し、リーダーに話してみた。

「 昨日終電間際で慌ててるときにロッカーが空かなくなりましてね。
終電に遅れるかと思って冷や冷やしましたよ。」
「 そ、そうだったんだ。
あの・・・。
その後、特に問題なかった?」
「 えぇ、一応終電にも間に合いましたし…。」
「 そうか、それなら良かった。
だけど今後はあまり遅くまで残業しないほうがいいかもね。
ノルマがキツければ割り振れる仕事を他の人にも割り振るからね。」
「 はい、ありがとうございます。」
「 ところで、ロッカーなんだけど、どうやって開いたの?」
「 押したり引いたり、鍵を入れなおしたりして、何とか開きました。
無理やり引っ張ろうと思ったんですけど、壊すとまずいので・・・・。」
「 あぁ、そうだね。
無理やり力ずくで引っ張らないほうが良いよ。
なんていうか、まぁ、確かに壊れたらまずいもんね。
力ずくは良くないよ。特に無理やりはね。」

 どことなく様子がおかしいものの、妙に力ずくで空けないように強調するので、逆にそれが喉に刺さった魚の小骨のように、心の中にシコリとなって残ってしまった。
その後、何事もなく1週間が過ぎたある晩のこと。
その日は納品直前の晩で、商品に問題がないか最後のテストを終えてから、ふと時間を見るとやはり23時を過ぎていた。
 他のメンバーは既に30分ほど前に退社しており、気がつけば再び最後の一人になっていた。
例によって慌ててロッカールームへ飛び込み、鍵を差し込み開錠した後、ハンドルを引っ張ったのだが、先日と同様、何かが引っかかるような形で扉が開かない。
 先日の一件があってから扉を閉めるときには、何かが引っかからないよう十分に注意して閉めていたので、少し苛立たしくなったものの、前回と同様に一度きちんと閉めてから、もう一度軽くハンドルを引っ張ってみる。
しかし、今回はどうやってもうまく開かない。
 時間も迫ってきており、イライラが募ってきて、ついついグイッと力を入れて無理やり引っ張ってしまった。
あれだけリーダーに、力ずくは良くないとアドバイスされていたにも関わらずにだ。
 扉の引っかかりが外れて少し開いたのだが、まるで内側から引っ張られているかのような、 均一な抵抗感がある。
それを無視して、さらにハンドルを強く引っ張り続けてから、ふとハンドルに近い部分の扉の内側に目をやると、細くて青白い腕がロッカーの奥の暗闇から伸びていた。
まるで内側から扉を閉めようとしているかのようにだ。
 それを見た瞬間は特に何も感じず、ただ、

“ えっ・・・?”

と思って何が起こったのかがよく理解できないまま、1~2秒の間うつむいた状態で硬直していたと思う。
 その直後、おぞましい気配を感じるのと同時に、自分の真正面で何かが動くのに気がつき、すばやく視線を上げると、扉の内側の暗闇から、真っ黒でツヤツヤした髪の毛が出て来ようとしている。
よく見るとその髪の毛は、人の前頭部の部分で、前髪が顔の大部分を隠していて表情までは見えないものの、その輪郭から痩せた女性であることは間違いなかった。
 その女性がロッカーの奥の狭い暗闇からゆっくりと出てこようとしていたのだ。
体中に電流が走るような衝撃があって、思わず、

「 うわぁ!」

っと叫んだ後、自分の声で二重にビックリして、ロッカールームから逃げ出した。
 その後、夢中で階段を駆け下り、電気も消さず、もちろん施錠もせずに会社を飛び出して駅まで走り続け、ポケットに入れてあった小銭で電車に乗り込んで、自宅まで逃げ帰ってきた。
 自宅に着いても、先ほど会社で目にしたものが信じられず、寝るのも怖くて家中の明かりを点けたまま、膝を抱えてガタガタ震えていたのを覚えている。

 翌朝になって周囲も明るくなり、出社の時間になった。
昨夜のことがあってどうしても出社したくなかったのだが、電気も点けっぱなし、鍵も掛けずに飛び出してきたのと、今日は大切な納品日でもあることを思い出し、しぶしぶ準備を整えていつもよりも少し遅い時間に会社へ到着。
 既に人がいることを確認した上で、恐る恐るオフィスへ入り、ロッカールームには近寄らずに、リーダーを応接間に招いてから戸締りの不備の件を侘びて、事情を説明することにした。

「 あの、実は昨日の晩なんですけど・・・。」
「 ひょっとしてロッカーの件かな? 
出たんでしょ? 
例のヤツが・・。」
「 はぁ、あの、やっぱりご存知でしたか?」
「 俺は見たことが無いんだけど、これまでにあのロッカーを使った人が何人かいて、全員が体験しているみたいなんだよね。
俺が知っているだけでも、過去に3回ほど電気も消さず、施錠もせずに帰宅して、その後まったく連絡が取れなくなった人がいてね。
ロッカーで何があったのか、何となく噂には聞いてたんだけど、翌日きちんと出社したのは君が初めてだよ。」
「 ・・・。」
「 どんな感じだったのか教えてもらえるかな?」

 そこで昨日起こったことを思い出しながら事細かに説明し、荷物がまだロッカーに入れてあることを伝えた。
その後、リーダーが俺の荷物を取りに行ってくれて、スーツと鞄をよくチェックしてから俺に手渡してくれる。
そして、そのロッカーで過去に何があったのかをリーダーに尋ねてみた。
すると、リーダーは、

「 俺が来る前からあった事らしいのだけど、どうやら以前そのロッカーを使っていた若い女性が何らかの理由で自殺したらしくてね。
仕事絡みなのか、人間関係なのかよくわからないんだけど、この会社の中で首を吊っていたという事なんだよ。
最初は全然信じていなかったんだけど、そのロッカーを使う人がどうも深夜になると遭遇するらしくてね。」
「 だから“あんまりお勧めはできない”ということだったんですね。」
「 あぁ、以前そんな事を言ったかもね。
まぁ、こんなことを簡単に口に出せるものでもないし、俺自身は体験していないから下手なことも言えなくてね。」

 その後、プロジェクトが成功に終わり、契約期間の延長の話もあったのだが、丁重にお断りして契約期間の終了とともに逃げるようにその職場を離任した。
当然のことながら、あの件以降一度もロッカールームには入っていないし、使う気にもならなかった。
 あの狭いロッカーの中に生身の人間が潜んでいるのは難しいと思う。
無理やり体を押し込めば、女性なら誰でも入れるのかもしれないが、ぬぅーっと出てきた角度が、もう絶対に有り得ないような無理な角度だったのだ。
リーダーの話によると少なくとも過去に3人は遭遇しているようなので、こんな体験をした人が他にもいるのではないかと思って話させて頂きました。










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日々の恐怖 2月4日 中古車

2014-02-04 18:58:04 | B,日々の恐怖




    日々の恐怖 2月4日 中古車




 21才の時に叔父から頂いた車(軽)が故障し、廃車を余儀なくされてしまったので、産まれて初めて自分の金で車を買わなきゃいけなくなって嫁と話し合った結果、予算は100万以内に抑えようと決まりました。
 何にしようかな~と自動車の雑誌を眺めていると、突然頭の中に白い車が浮かんだのです。
不思議に思いながらも嫁に、

「 白い軽自動車とかで良いかな?
面倒だから近くの自動車屋まで歩いて行かない?」

と聞くと、

「 うん。良いんじゃない?あんたの好きな車にしなよ。」

と言ってくれたので、近くの自動車屋まで歩いて向かう事にしました。
 その道中も、俺の頭の中には白い車が鮮明に浮かんでいたのです。
ボディにシルバーのラインが横に四本入った、悪趣味な車が。
 自動車屋に着くと、沢山の車が置いてある中で、何故か一瞬で見つけてしまいました。
頭の中にずっと浮かんでた悪趣味なその車を。
ホイールは後で友達に聞いたらダンシングスターだかシューティングスターって名前で、ボディにはシルバーの四本のライン。
 冷静な自分だったら絶対に買わないだろうし、嫁さんも趣味悪いなぁって思ったそうですが、自分はどうしてもその車が欲しくなり購入。
5年落ちのその白いワゴンRは、変なカーナビとターボ機能とCDしか付属品はなく、75万一括で買った自分を未だに信じられませんが、買ってしまったのです。

 それから3日後、茨城県の神栖市、海岸通りで左前輪がいきなりバースト。
マジかよと思い、スペアタイヤに履き代えようと作業をしていると、タイヤの穴が合わない。
え?と思ったけれど、やはりどうやっても合わない。
 早速自動車屋に電話をして用件を伝えると、今すぐに別のタイヤを持って来てくれると言うので、暫く待機してました。
で、何やかんやで代金は無料で新しくなったタイヤで友達の家に向かう途中、今度は右後輪がバースト。
 流石に苛々して自動車屋にクレームを入れると、全部無料で作業をするので許して下さいと土下座されたので、また作業で時間を食わされるのは釈でしたが、大人しく待っていました、レッカー移動した自動車屋で。
 そして作業をしてたオジサンが一言、

「 ホイールが悪いのかもしれませんね。」

その一言にカチンと来てしまった俺は、

「 じゃあ全部交換して下さいよ。売る前に確認するのが基本じゃないんですか?」

と言うと、またもや全部無料でホイールとタイヤを全て交換して貰いました。
このオジサン土下座慣れてるなと思いながら、帰宅。
 嫁さんは、

「 またぁ?」

と、苦笑い。
 そして暫く代車に乗ってると携帯に着信があり、件のオジサンから、

「 すいませんHさん!タイヤの交換終了しました。」

と、連絡があったので引き取りに行きました。

 それから暫く何もなかったので、あ~やっぱりホイールが悪かったのかなって思いながら、何やかんや半年は何もない日々が続きましたが、家族3人で買い物に行った帰り、車から降りた奥さんが一言、

「 あれ・・・、何か後ろ凄い錆びてるよ!」

 その時住んでた家は海沿いで車が錆びやすい状況下にはあったものの、俺の車より先にある仕事用の軽トラックは全然錆びてないので、凄い違和感を覚えました。
 白い塗装がニキビみたいに茶色の錆びとボコボコ混じりながら、本当に沢山浮かび上がってました。
削ると簡単にボロボロこぼれ落ちるその錆びを見つめながら、カチーンときた俺は、嫁と子供を残し自動車屋に猛スピードで向かいました。
 そして降りて早々、でかい声で力の限り叫んでしまったのです。

「 おいこの野郎!見てみろこれ!早くしろよこれ!どうなってんだ!?あ!?てめえのとこの車はよ、オラァっ!」

と、白いワゴンRに思い切り蹴りを入れました。
 社長の奥さんや作業員さん達に車を見てもらうと、信じられないだの、こんな筈はないだの散々身内同士で話し合いつつ、俺の様子を伺いながらも、ベラベラ話し合うばかり。
業を煮やした俺は、

「 一週間以内に無料で作業できるよな?」

と一言。
相手は承諾。
土下座はありませんでした。

 代車(無料)で帰って嫁に事の顛末を告げると、

「 でも買ったのでしょ?無料で直してくれるんだから、そんなに怒っちゃ駄目だよ。」

と、優しくキスされたので、すっかり機嫌良くなった俺は普通に車が直るまでの一週間、気楽に過ごす事が出来ました。
 そして、自動車屋から電話掛かってきたので引き取りに行くと、綺麗に塗装され、ついでに頼んでおいたシルバーの四本ラインも剥がして塗装し直してもらって、すっかり綺麗になった車で機嫌良く帰宅しました。
その時は・・・。


 今でも忘れません。
そのたった2日後ですよ、運転席のドアを開けたらドアがもげたんです。
 本当に忘れられません。
ショックと混乱と異常さ。
ドアを持ったままポカーンとしつつも兆番の部分を見ると、すっかり錆びてボロボロの状態。
 凄いオープンな白いワゴンR(エンジン等には問題無い)を、もう自分の中で完全に信用の無い購入した自動車に一応連絡し、状況を確認して頂き、他の修理屋に依頼するからお前の店で金出せよ、って事象を快諾して頂き、別の修理屋(義父の友人)へ。
 その修理屋のおじさんが、その白いワゴンRを見て一言。

「 お兄さん、何でこんな車買っちゃったの?
長い事この仕事やってるけれど、おらぁこの車は怖いな~。
一応修理はするけれど、怖いわ~。」

俺の方が怖いわ。

その時初めて、ああ何かこの車はヤバいんだなって思ったのです。

 無事に修理が終わり、一応お祓いしたって言ってくれた自動車屋の発言にビビりながらも運転を続けましたが、暫くは何も車に異常はありませんでした。


 それで、その後、職場の先輩であるMさんに、

「 家に来て飲めよ。」

と言って頂いたので、白いワゴンRで向かう事になりました。
 Mさんは、奥さんと二人暮らしで、奥さんの出してくれるツマミも美味かったので、それから何度かお呼ばれを繰り返してました。
 それで、そんな日が何回かあって、いつもの様に楽しく談笑した帰り際、Mさんの奥さんが、突然俺に言いました。

「 私さ、いつも帰り際にさ、絶対気をつけてって言うでしょ、何でかわかる?」

と、言われたのです。
 俺は普通に、

「 え・・・?
お酒飲んでるからでしょ?」

ところが、その言葉を遮る様に、

「 違うの。
それもあるんだけれど、あの車、女の人引きずりながら走ってるの!」

って。
 Mさん家の談笑で、散々奥さんには霊感がある事も知ってたし、Mさんも若干霊感があるらしい事も知ってました。
俺が詳しくその事を聞くと、奥さんとMさんは次々に俺の車の異常さを教えてくれました。

・車と一体化したみたいに、トランクの部分から女性の下半身がぶら下がってる。
・助手席に時折女性がいるので、奥さんを連れて来たかと思って楽しみにしてたら全然違った。
・タイヤの周りに白い布が挟まって見える。
・何故かトランクが青白く光ってる。

「 何で今まで言ってくれなかったの?」

って聞いたら、Mさんが、

「 いや、お前怖がりだし・・・・。
でも、最近前よりハッキリ見え出して不安だったから・・・。」

それで、言ってくれたんだそうです。
 ただ、俺には見えないし、怖かったけれど3年目でまだ車検は切れてなかったので、怖いの我慢して乗るしかなかったんです。
当然、俺より怖がりな嫁さんには内緒でした。


 ですが、とうとう俺にも見えてしまう時が来てしまったのです。
Iさんって言う先輩と、千葉県銚子市にあるミレニアムに行った帰りです。
帰宅して運転席を閉めた瞬間、今まで感じた事の無い寒気。
そして、尻の穴から頭のテッペンまで全身を走るゾワゾワ感。
恐る恐る車の後ろを見ると、何やら青白く光ってるんです。
 何だろうと思って確認しに行くと、その青白く光ってる物の正体が分かりました。
女の人の下半身でした。
妙に冷静でした。
ああ奥さんの言ってたのはこれかと、思いました。
 本当にトランクから腰が、例えるなら木から枝が当たり前に生えてる様に、腰からお尻、脚とはっきり女の人の下半身がうつ伏せに生えてるのです。
青白く光ながら。
 そして、恐怖と同時に込み上げてきたのは怒りでした。
こいつが散々俺を苦しめてきたのか。
そう思った俺は、その青白い尻を渾身の力を込めて叩いたのです。
パシーンとした感触はなく、泥の中に手を入れた感触。
ですが、青白い尻がピクっと動きました。

「 動いた。」

ボソッと独り言を言ってしまいました。
 その後、下半身はス~ッと消えてしまいました。
そこで我に返り、怖くなった自分は無我夢中で手を洗いに行きました。


 嫁さんにその事等、車に起きた事全部話すと大爆笑。

「 いやいや、待て、笑い事じゃなくてヤバいから。
車屋に全部話して、金返してもらう。」

 それで、俺は職場の先輩達に連絡し、営業が終わった後に金を返して頂くのを無料で手伝って頂く相談をしました。
その後、先輩達の承諾を得て、その先輩の家に向かう途中、車は爆発音と共に左前輪のホイールが火花を散らしながら転がって行くのを見ながら、情けない音を立てて横転。
俺は無傷でしたが、車の中から初めて縦に向かって降りました。

 そのあとは、その自動車屋は俺のワゴンRがきっかけで、メーターいじりとか事故車販売とか色々問題が噴出し、廃業に至りました。














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日々の恐怖 2月3日 CA

2014-02-03 18:27:14 | B,日々の恐怖



     日々の恐怖 2月3日 CA



 昔、九州の叔母から聞いた話です。
もう数十年近く前ですが、叔母は単身赴任で東京に出ている叔父に会う為、飛行機で上京したそうです。
当時就航していたYS-11(国産のプロペラ旅客機です。)は、直行するには航続距離が足りないのか、途中高松に立ち寄っての夜間飛行だったとか。
現在からすると、随分時間もかかった様です。
 飛行機に乗るのは初めてだった叔母が、真っ暗な機窓を興味深く覗いていた時、外にフワフワと、薄い緑色に光る人魂が現れたそうです。
良く見ていると、人魂はお婆さんの顔になったり、若い娘の顔になったり、子供の顔になったりと、ゆっくりと変化しながら、窓の外を漂いながらついてくる。
九州の田舎育ちの叔母は、何度も人魂を見ていたので、特段怖いとも思わなかったそうです。
 “給仕の女の人”が来たので、

「 空の上でも人魂が出るんやねえ。」

と窓を指すと、その人は窓から外をちょっと見つめ、

「 見間違いでは・・・・。」

と言い残して行ってしまったそうです。
 叔母に言うには、

「 あの人も、絶対見とるよ。ぎょっとしとったもん。」

給仕の女の人とは、スチュワーデスさんの事です、たぶん。
因みにYS-11の最大速度は時速450キロ程だそうなので、人魂もえらいスピードで飛んでいた事になります。
侮れません。

 と言うわけで、人魂と言う話を載せましたが、考えると、飛行機の怪談と言うのは、余り聞いた覚えがありません。
何処へでも出る幽霊さんにしては、飛行機には随分遠慮がちだなあと思っておりましたが、さにあらず。
 奥さんが元CAという同僚に、何かそれらしい話は無いかと聞いて貰ったところ、ありました。
彼女自身が経験したのは次のようなお話です。

 フライト中にギャレーにいる時、女性客がやって来たので用件を聞こうとした瞬間、目の前の女性客がすーっと消えてしまった。
驚いたが、勤務中は何があっても悲鳴をあげないと言う訓練の賜物で、ぐっと声を抑えて、その後も何事も無かったように仕事を続けた。
 目的地に到着後、乗客が降りた後に機内を点検していると、先程の女が一番後ろの席に座っていた。
今度は心置きなく悲鳴をあげた。

やはり、出る時は出る様です。
 続きです。

その1.

 奥さんが勤務していた航空会社では、当時トライスターと言う機材を運用していました。
何機もあるトライスターの内、ある特定の機体は、CAさんの受けが頗る悪かった。
出るからです。
 出るのは、客室階下にあるギャレー(調理室)。
狭いので、一人で入るそうです。
以前から、あの機体のギャレーは雰囲気が悪いと言われておりました。
 あるCAさんがギャレーで仕事をしていると、どうにも視線を感じて仕方が無い。
ふと、窓を見ると、高度30000フィートの機外から、女が覗きこんでました。
その話が広まると、私も見たと言うCAさんが続出し、一躍恐怖スポットになったそうです。
皆そこに入るのを嫌がるので、先輩に頭の上がらない新米さんの持ち場になったとか。


その2.

 飛行機で“ご遺体”を運ぶのは、割と良くある事だそうです。
奥さんの体験では、あるフライト中、インカム(機内の内線電話)が鳴るが出ると切れる、と言う事が頻繁に起るので、“電気系統のトラブルかしら?”と思い、上役のCAさんに報告すると、

「 今日、(ご遺体を)載せてるからじゃない?」

と言われた事があるそうです。
 また、その様なフライトでは、お客様からも息苦しいとか、乗った途端に肩が重くなった等と言われる事が多いとの事。


その3.

 これは、機内の怪談ではないのですが、ステイ先のホテルでも、色々あるそうです。
CAさんは系列のホテルに宿泊するのですが、身内だけあって、良くない部屋をあてがわれる事が多い。
自殺・殺人その他、曰くつきの部屋に泊まらされるそうです。
 特に良く出るのは福○と○島。
福○のホテルでは、心中したと思しきカップルの霊が天井から見下ろす部屋があるそうです。
○島では、目の前を、旧日本兵らしき霊が何人も壁から壁へ突き抜けて行くとか。
その様なホテルに泊まる場合は、お札持参でステイに臨むCAさんも多いそうです。











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日々の恐怖 2月2日 ドアノブ

2014-02-02 19:18:27 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 2月2日 ドアノブ



 ドアノブと言う単語を見て嫌な体験を思い出した。
キーボードを叩く手がなんか変な感じがする。
生唾を飲み込む音が頭の中に響く。
タバコに火をつけた。
 少し今迷ったが書いてみようと思う。
つたない文章だけど興味のある人は読んで欲しい。
 以前、ある地方にあるアパートに住んでいたことがある。
霊感とかは自分では全く無いと思うし、幽霊とか見た事は無かった。
自分の住んでいた部屋は、6畳と、4畳半の2部屋があって、一階の端の部屋、それまでは、ホントに何も無く、普通に暮らしてた。
 でもある日から突然、おかしい事がおき始めた。
奇妙な音、4畳半の部屋で寝ていると、6畳の部屋でだれかがボソボソしゃべっているような音。
最初は気にしなかった。
というより、気味が悪くて考えないようにしてた。
 電気もつけっぱなしで寝るようになった。
でもそれが、一週間、十日と続いてくると流石に気が参ってしまった。
ノイローゼになりそうだった。
 仕事先から家には帰らずに同僚や、上司の家に泊まり歩く日が続いた。
人には話せなかった。
根性なし、度胸なしと言われるのが恥ずかしかったから。
5日ぐらい帰らなかった。
でも流石に訳を隠して人の家に泊まる続けるのもそろそろ限界だった。
 で、思い切って一人の同僚に訳を話した。
不思議とすんなり信じてくれた。
たぶん、自分に気を使ってくれたのだと思う。
マジメにノイローゼ寸前だったから。

 次の日は休日だったし、同僚も一緒に自分の家に来てくれる事になった。
同僚がドアをあけようとした。
普通に中に入ろうとドアノブを廻しんだと思う。
その瞬間、同僚がふっ、と立ち止まった。

「 今・・・向こうでノブ、誰か廻したぞ・・・。」

 鳥肌が立った。
同僚も身じろぎ一つせず立ちすくんでいる。
同僚が小さな悲鳴のようなものを立て、バッ、と言う感じでノブから手を離した。
自分達が見たものは独りでにガチャガチャ言うドアノブ。
 明らかにドアの向こうには誰かがいて、自分達が部屋に入る事を拒んでいるような感じだった。
同僚と自分は、怖くなりそこを駆け足で逃げ出した。
 しかし、冷静に考えるともしかすると誰か中にいたんじゃないか・・。
そんなことも思い、思い切って同僚と警察に行った。
何者かが部屋の中にいるようなんです、と言うとお巡りさんが2人、一緒に来てくれた。
連絡も受けて、管理人さんも来てくれる事になった。
 お巡りさんと一緒に自分の家まで行った。
お巡りさんは中を見てきますので・・・と言うと家の中に入っていった。
鍵は開けたままだった。
 お巡りさんに部屋の中に入るよう言われて部屋に入った。
盗まれたものは何か無いか、荒らされてはいないか、等の質問をされたが部屋の様子は以前と変わらなかった。
 お巡りさんは、近頃この辺も物騒だから、もし何かあったらかまわずに通報してくれ、と言い残すと帰っていった。
それから少し遅れて管理人さんがやって来た。
自分は単刀直入に聞いた。
この部屋で以前何か無かったのか?と、自分の体験した事を全て話した。
 しかし、管理人さんは何も思いつかないと言う。
こういう仕事をしてればそういう怪談めいた話は聞くこともあるが、自分が見ているところにはそういう因縁めいた所は一つも無い!と言う。
 私と同僚と管理人さん、3人で私の部屋の前の廊下で、そんな話をしているとまたドアノブがガチャガチャ言い始めた。
気が狂いそうになった。
 そのあと自分はすぐ引っ越した。
業者に全部頼み、自分は引越しには立ち会ったが部屋には一歩も入らなかった。
管理人さんに挨拶に行くと、お祓いを頼んだよと言っていた。
 同僚は、今でもドアノブをつかむ事に何ともいえない恐怖を感じるそうだ。
自分も今になるとだいぶ落ち着いたと思う
けれど、いまだにドアノブをみる事が怖い。
ココにこうして書き込む事によって、自分の恐怖心は薄れるかと思ったが、鮮明に思い出してしまい心臓が今でも高鳴っている。












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しづめばこ 2月2日 P277

2014-02-02 19:18:00 | C,しづめばこ
しづめばこ 2月2日 P277  、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。(FC2小説)

小説“しづめばこ”



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日々の恐怖 2月1日 小さな箱

2014-02-01 18:46:10 | B,日々の恐怖




     日々の恐怖 2月1日 小さな箱




 僕の友人に、古美術商をしている坂さんという人がいる。
店が坂の途中にあるから”坂さん”。
30過ぎて枯葉のように生きている半引きこもりだ。
 取り扱っているのは一応は美術品や骨董品の類となっているけど、素人目に見ても価値なんてなさそうなガラクタで店が埋め尽されていて正直言って大分不気味だ。
品数だけはやたらと豊富なので、大繁盛とまではいかないまでも、食べていくのに困らない程度には客がついている。
 だけど、その品揃えの中にいくら探しても見つからない物がある。
美術品としてはポピュラーで、どこの店でも一つくらいはある物が無い。
金はないがコネはある坂さんなら、いくらでも仕入れてこれそうなのに、決してそうしない。
その事を疑問に思った僕に、坂さんはある物を見せてくれた。

 坂さんはレジスターの下から15センチ四方の箱を取り出して、僕の前に置いた。
箱の表面にはエナメル細工で出来た小さな薔薇が沢山付いていて、宝石箱のようだった。

「 ……箱?」

「 箱やないよ、寝室やね。」

坂さんは人差し指で箱の側面を小さく2回叩いた。

「 失礼します。」

箱に向かってそう言ってから、静かに蓋を開けた。
 箱の内側は赤い布が張られていた。
見るからに柔らかそうなその布に包まれて、ソレはあった。
丸みを帯びた、長方形の白い物体。
すべすべした表面を見るに、石膏で出来ているようだった。
左右の側面にそれぞれ一つ、底に二つ、上に一つ、嵌込み穴のようなものが開いている。
 もっとよく見ようと覗き込んだ瞬間、強烈な吐き気を催した。
次いで首筋に激しい痛みが走り、僕は椅子から転げ落ちた。
痛みは右手、左手にも現れた。
 鋭い棒で何回も何回も刺されているようで、だけど勿論棒なんか見えない。
というか店の中には僕と坂さん以外には誰もいない。
そうしている内にも両足も痛みだし、立っていられなくなった。
痛みでのたうち回る僕を尻目に、坂さんは箱の中へ向けて小さく呟き、静かに蓋を閉めた。

 痛みは急に消えた。
床に転がったまま呆然とする僕に、坂さんはため息混じりに言った。

「 君がじろじろ見るから、客やと思たみたいやね。
ちゃんと言うといたから、もう大丈夫やよ。」
「 ……なんなんすか、一体?」
「 彼女はウチが気に入ってるから、出ていきたないんやわ。」
「 彼女?」

坂さんは箱をしまい、僕を立たせてくれた。

「 そう。
嫉妬深くて執念深くて、おまけに自分にパーツが無いんを気にしてんねや。
新しいのん仕入れても直ぐに自分のもんにしてまうから、ウチじゃもう扱わんことにしとんねわや。」
「 それってつまり……。」

僕は慌てて首に手をやった。
ぬるぬるとした血の感触に背筋が凍った。
救急箱から傷薬を取り出し、坂さんは思い出したように言った。

「 彼女が君のこと、気に入った言うてんねやけど・・・。」

勿論即座に断った。













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