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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 2月28日 双子

2014-02-28 19:07:45 | B,日々の恐怖



     日々の恐怖 2月28日 双子



 一年ほど前、母と体験した話です。
最初に事が起きたのは、私が二階の自室でゲームをしていた時の事です。
 一階の居間にいた母がノックもせずに私の部屋に入って来て、

「 あんたさ、今起こしに来た?」

と突然聞いてきました。

「 いや無理だし、ゲームやってんじゃん。」

と言うと、怪訝な顔で、

「 いや、耳元であんたが呼んだから起きたんだけど・・・。
やだねボケてんのかね、私。」

と言って部屋から出て行きました。
その時は私もただの寝惚けか、と納得。
 しかし、二度目は私が外出中、母は台所で料理中。
この時もやはり私の声で呼ばれたのだそうです。
帰宅してからその事を聞いたものの、やはり気のせいだろうということで終わりました。
 そしてついに三度目。
私は自室で寝ており、母は夜食を楽しんでいた時のことでした。
また、聞こえたのだそうです。
私と全く同じ声のトーンと口調で、

「 お母さんっ!」

と。
 私は叩き起され、興奮気味に、

「 聞こえたんだって、本当に!」

と何度も言う母を相手にしながら、2つの可能性をぼんやり考えていました。

1、ついにボケた。
2、バニシングツイン。

 2番目の言葉は御存知ない方もいらっしゃると思います。
文字通り、消えた双子です。
 私は、中学生の頃に左腕に腫瘍が出来て手術を受けたことがあります。
何か二の腕が腫れているな、とは思っていたのですが、ある日突然ひっくり返るほどの激痛が走り救急車で病院に運ばれ、即手術となりました。
切除した腫瘍の中からは、魚より少し太い骨や細い髪の塊などが出てきたそうです。
 あまりにショッキングなものだったので、今は亡き父しかその実物を見ていないのですが、話はよく聞いていました。
母が私を妊娠した時には確かにいたのにすぐ消えてしまった、もう一人の母胎内の同居人の事を。
 2人で産まれるのが困難な場合、どういう訳かどちらか一方が消え、片方に産まれる権利を渡すのだそうです。
通常は母親の胎内に吸収されて消えるのですが、稀にもう一人の方に吸収されてしまうことがあるそうで、私達はそのパターンでした。
 そんなこともあり、

「 あの双子の子、かな?」

と何となく口に出してみました。
 少し母の顔が曇ったのを見て、若干後悔のようないたたまれなさを感じましたが、母はボケるにはまだ早すぎるし、私自身口に出した瞬間、その答えが不思議と一番しっくり来たのです。
 母は少し笑いながら、

「 そうかもしれないねぇ。」

と言ってまた居間に戻りました。
 その後、母がもう一人の私に呼ばれることはなくなりました。
本当に私を生かしてくれた双子の声なのか、今もはっきりとした答えは出ていません。
でも、私にはどうしてもあの子が忘れられるのが嫌で母を呼び続けていたのではないかと思えてなりません。














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