ガールズ&パンツァーは、今では戦車と女子高生たちの物語として広く知られていますが、その戦車を代表するのは、間違いなく主人公西住みほが搭乗するⅣ号戦車でしょう。
そのⅣ号戦車が、大洗女子学園が戦車道チームを復活させることになった時点で、学園内の戦車道倉庫に残されていた、唯一の車輌でした。上図のようにサビだらけのボロボロの状態であったのが、レストアされてチームの指揮車となり、西住みほ達と共に緒戦を戦い抜くことになります。
大洗女子学園が戦車道を必須選択科目として復活させ、少数ながらも履修メンバーを集めて再出発した時点では、西住流家元の娘みほが隊長を務めるとはいえ、まったくの無名かつ非力なチームでした。
その頼りない陣容のなかで、曲がりなりにも一応の戦闘力を備えてチームの主軸となり得たのが、このⅣ号戦車でした。
史実では第二次大戦初期のドイツ装甲師団の主兵として縦横に活躍したその実績の片鱗を示すかのように、ひとたび試合に出れば、西住みほの指揮のもとで、猛虎の如き荒々しさ、逞しさを取り戻してゆくⅣ号戦車でありました。
その実力は、親善試合にて初の対戦相手となった聖グロリアーナ女学院チームの一糸乱れぬ鉄壁の布陣をものともせず、その5輌中の3輌をたて続けに撃破、ダージリンをしてティーカップを落とさしめるに足るものでした。
全国大会第1試合の対サンダース戦では、敵の圧倒的な兵力に耐えつつも、傍受を逆手にとって反攻を試み、チームの中心となって動きました。相手フラッグ車を射程内に捉え得る唯一の戦力として、敵の攻撃の隙をぬっての捨て身の一撃を放ち、チームを窮地から救い出しました。このⅣ号戦車が無かったら、間違いなく負けていた試合でした。
そして第2試合の対アンツィオ戦では、敵の偽装作戦、さらに軽快車輌による陽動および攪乱を受けつつも、指揮フラッグ車P40と撃ち合うなどの接戦を繰り広げました。最終的には、地形と相手方の集結に沿っての包囲攻撃で優勢を確保し、Ⅳ号戦車が勝利判定の一撃を加えています。
いま最終章第1話までの公開を終えているガルパンのストーリーのなかで、大洗女子学園チームは、親善試合から数えると、全国大会で4試合、劇場版のエキシビジョンマッチと対大学選抜戦、無限軌道杯での第1試合、の合わせて8試合に出ています。そのなかで、上図のⅣ号戦車がD型タイプの状態にて出場したのは、3試合です。
この8戦中の3戦を、このⅣ号戦車D型で戦っていますから、おそらく西住みほにとっても、その時期のⅣ号戦車は格別な存在であったことでしょう。
もちろん、テレビシリーズからずっと視聴して応援している大多数のファンにとっても、同じ感慨があることと思います。既に全国大会の対黒森峰戦からの4試合をH型仕様にて戦っているとはいえ、まだまだこのD型の勇姿は記憶に鮮やかな筈です。
そのⅣ号戦車D型の躍動の場面を、もう一度プラモデルで再現してみたくなりました。二年前の2016年12月に発売されてすぐに購入していた、上図のプラッツの公式キットリニューアル版が手元にありました。これを旅先の旅館にて組み立てるべく、初めて開封したのは、2018年12月5日のことでした。
開けてみた際の第一印象は、意外に中身が少ないなあ、でした。ドラゴンが初心者向けに新規開発で作りやすいキットを出した、ということは知っていましたが、具体的にどういうキットになっているのかはまだ確かめていなかったからです。
キット付属のあんこうチームミニフィギュアです。初回販売の特典として、ピットロードのEDバージョンシリーズのミニフィギュアを添えてあるのでした。ですが、当時はまだパンツァージャケット仕様のフィギュアが出ておらず、御覧のように大洗女子各園制服の仕様となっています。
そして、履帯パーツは初心者にもやさしいベルト式です。この公式リニューアルキットの特徴の一つであり、タミヤの同型車輌の組み立て易さに劣らない扱いやすさを、ドラゴンの製品にも実現させています。
何よりも驚いたのが、パーツ数の少なさです。従来のドラゴン系の同型車輌キットにおいては細かくパーツ割りされているのが、なるべく一体成型に近い方向でまとめられ、従来品の三分の一程度になっていました。タミヤ製品のパーツ数とあまり変わらないな、と思いました。
ですが、このキットはドラゴンとしては史実のⅣ号戦車のスマートキットとしての開発品でもあるため、細部の特徴および形状の一部は劇中車と異なります。大体のポイントは上図右の組み立てガイドにも示されていますが、なおも修正または改造を必要とする箇所があります。
そこで、ガルパンプラモデル製作時の根本バイブルともいうべき、公式ガイドブックのアハトゥンクも準備しておきました。やっぱり、この一冊は常に欠かせません。 (続く)