玄語

玄音の弟玄です。日々感じている事、考えている事を語っていきます。そんな弟玄が語る”玄語”です。よろしく。

ヴィーコ〜新しい学

2018-12-01 10:58:56 | Weblog
(ジャンバッティスタ・ヴィーコ wikipediaより)

興味、関心の連鎖。
ふと気になった人や本を読み進めていくうちに、ある人の存在、思想にいきつく。そういう事がよくあります。

最近も、エントロピーという言葉が気になり、それでジェレミー・リフキンの『エントロピーの法則』を読んでるうちに、その本の中でマーシャル・マクルーハンの名前が出てきたので、そういえば読み途中だった『マクルーハン入門』をまず読み、それからマクルーハンの最後の本と言われる『メディアの法則』へ行き着きました。この『メディアの法則』はとてもユニークで面白い本で、言葉とメディアの働きについて独特の見解を示しています。サブタイトルが”The New Science"とし、新しい認識についての科学ともいえます。さらにその本の中で取り上げられていたのがジャンバッティスタ・ヴィーコです。1668年生まれのイタリア、ナポリの修辞学の学者で、その存在を初めて知りました。この人が大変面白い。デカルトの学問の体系に対して、アンチの立場に立ち、自身の学問の体系のこと、さらにその主著を『新しい学』とし、それは詩人の知恵をベースに歴史学、政治学、さらに哲学と範囲を広げていきます。

ヴィーコの新しい学は人間探求の学であり、歴史上の民族の分析を学者だけでなく、詩人から多くを導き出します。各民族の歴史、通史として残る歴史をあまり信用していないのがまた面白い。各民族は自分の民族だけが神の啓示を受けたとか、人類の発祥に連なるとか喧伝するきらいがあり、そういったことを”民族の自惚れ””学者の自惚れ”とし、誤った歴史観を正せるのは唯一、詩人であるとしています。この『新しい学』は全部で5巻に渡ります。それぞれは以下の様な内容です。

第1巻 原理の確立
第2巻 詩的知恵
第3巻 真のホメロスの発見
第4巻 諸民族のたどる過程
第5巻 諸民族が再帰したときに生じる文明の反復
著作の結論 神の摂理によって定められた、それぞれの種類において最良なる、永遠的で自然的な国家について
(『ヴィーコ』中央公論社)

各民族を民族たらしめている三大原理として、宗教、婚姻、埋葬の三つを上げています。この宗教は宗教だけにとどまらず聖なるものを崇める一つの秩序として捉えることもできます。婚姻については中世においてこういう考えを持っている人がいるのかと驚きましたが、一人の女性と一緒になるということは精神を柔和にし、それが家族、さらには国家の基礎になっていくといいます。女性を共有し、誰が親かもわからないような子がいる状態を野蛮と厳しく批判しています。そして埋葬は人間は死んで終わりではなく、魂は継承していくという、魂の永遠性を現すとしてます。各民族を民族たらしめる文化として、大体この三つの原理が確立されていることが確認できるとしています。

さらに面白いのは各民族の言語は時代も地域も異なってはいても、共通して”ことわざ”があり、そういった知恵を共有し継承していのるはどの民族にもみられ、その”ことわざ”の共通性から人間とは何か、人間としての何が正しいのかが導き出せるというのです。

ヴィーコはデカルトの無味乾燥な客観的な知識や科学というものではなく、すべて血の通った、文化的な背景をもったものから帰納して真理へ到達するプロセスをとっています。何よりも修辞学の教授をしていたこともあり、歴史の様々な事象に対して語源的なアプローチをとっていることや詩や神話などから導き出す手法は読んでいるだけで教養が高まる工夫がされているように感じます。

そしてヴィーコ自身の人生はかなりの苦労人だったようで、ナポリの小さな本屋の家で生まれ、何とか大学の教授にまではなったものの、自身の本の出版には相当苦労したことがわかっています。中世の有名な思想家は大体が宮廷の家庭教師や家柄が良くて大学者になっていたりしますが、ヴィーコはその全く対極にあるような生活だったようです。30歳過ぎての教授になるという遅咲きだったゆえ、その思索は独特の深みを増していったのかもしれません。

まだまだ知らないことだらけのヴィーコですが、何よりもこの人の生年月日が1668年6月23日であったというのが、私にとってさらなる興味関心を惹き起こしたのでした。まだ読み途中のヴィーコ。さらに調べていきます。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 雑感:景気 | トップ | 明けましておめでとうござい... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事