「ホワイトヘッドの宇宙における出来事というのは、唯一無二のものであって、過去にもありえず、未来にも決してあらわれない、ほかと比べることなどできない絶対的な事態なのだ」そして「活動的存在の生成というのは、価値が新たにあらわれること」だという事。
一人の人間が存在するという”出来事”は宇宙的にも絶対的一回性であり、一人の人間(活動的存在)が存在するのは新たな価値を創造する事にあるという事。
人が一人生まれ、生きる事はどこまでも深淵で奇跡的な事なのである。なぜ生きるのか、それは新たな価値を創造するため、そのように言い切ってもいいのかもしれません。「神は一切の創造に先立つのではなく、一切の創造とともにある」わけで、「世界の源はあくまでも”創造活動”」にあるというわけです。
ホワイトヘッドは数学者でありながら、60歳を過ぎてハーバード大学に哲学者として招かれ、それまでの哲学と全く違う方向を示した大変ユニークな方。彼の哲学で示した方向が量子力学などの最先端の物理学の方向と合っているそうで、今後さらに見直し必至な哲学者。ホワイトヘッドの哲学はプロセスを重視しており、それはハイデガーが存在認識を了解から生成へと転換していった事と重なり、人間存在の捉え方、認識を大きく変えうる。
さらにホワイトヘッドの哲学は有機体の哲学とも言われ「有機体の哲学はカント哲学を逆転したものだ…(中略)カントにとって、世界は主観(主体)から出現する。有機体の哲学にとっては、主観(主体)は世界から出現する…」
世界は自分であり、自己を問う事は世界を問う事になる。
ヒトを人間と表現していること。人だけでなく”間”をつけて”人間”としている事。この”間”には人と人との”関係””社会””世界”を含んでいるのであり、こういった単一的存在とだけでは捉えきれない人間存在を、さらに全体的、総合的な存在として捉え直す事。こういった事が今起きている事であり、これからの新たな道標となる、そう考えます。
以上『ホワイトヘッドの哲学』(講談社選書メチエ 中村昇著)より引用。