玄語

玄音の弟玄です。日々感じている事、考えている事を語っていきます。そんな弟玄が語る”玄語”です。よろしく。

さわっている

2022-11-11 11:30:11 | Weblog


昨日、兄玄から最近読んでいたという本についての話を聞く。それは聞こえない音と見えない光についてのことで、この自然界には意識化できなくても、多くの音と光に充ちており、そういった働きがどれだけ重要であるかということが、予防医学の分野でも提唱されているといいます。

この話を聞いていて、最近読んでいた若松英輔さんの岡倉天心の”茶の本”についての批評書のある一節が思い起こされた。それは天心による茶道についての解説から、染織作家の志村ふくみさんが自著で引用されていたという18世紀ドイツのロマン派の作家であるノヴァーリスの言葉である。その引用までの文章を抜粋します。

「狭義の意味における宗教がしばしば、非日常的世界での出来事を語るのに対し、茶道は、どこまでも俗事を離れない。むしろ、日常にこそ美は伏在していることを明示する営みである、と天心はいう。純粋も調和もすでにこの世界にある。茶道は互いに愛することを教える。

「「ローマン主義 romanticism」との記述も、いわゆる「浪漫派」とは異なる次元の記述であることはすでに見た。ここでロマン主義を説明するよりも、それを端的に想起できる言葉を引いてみたい。染織作家であり、散文家でもある志村ふくみが、自著に引いている、ノヴァーリスの言葉である。

 すべてのみえるものは、みえないものにさわっている。
 きこえるものは、きこえないものにさわっている。
 感じられるものは感じられないものにさわっている。
 おそらく、考えられるものは、考えられないものにさわっているだろう。
(『一色一生』)

「十八世紀ドイツのロマン派の作家として語られるノヴァーリスの世界観は、『茶の本』を貫く天心の哲学に近い。」(『岡倉天心「茶の本」を読む』若松英輔著 岩波現代文庫)

現代はここで語られるロマンが失われていってると感じる。何もかもが無味乾燥で、何て事のない日常が時間と共に過ぎていく毎日。こうやって心は荒廃し、生きる意味を見失っていく。が、本当はそうではない。見えているものは見えているものだけでなく、それ以上のことにさわっている。聞こえているものも、実はそれ以上にはるかに豊かな世界をも現している。

何も特別なことでなく、常にふれている、日常を超えた世界がそこにはある。そういったことを天心は茶を通して、志村さんは染織を通して語ってくれる。さらにこれらのことを紹介してくれている若松さんは言葉を通して、はるか彼方、言葉の彼方に存在するある”もの”について語ってくれている。

聞こえない音に見えない光。そういったことをあえて、ロマンを感じる詩的な言葉で表現する事。同じ事であっても、どういった言葉で表現するかはとても大事な事です。だからこそ、自分は詩的な表現の崇高さに惹かれ、忘れられているロマンをこの日常に取り戻したいと感じるのです。



 
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抜け出し口〜天晴れ

2022-11-10 14:27:35 | コンサート


富士は晴れたり日本晴れ。
天晴れ!

といわんばかりの、素敵な富士山のコンサートのチラシです。
いよいよ今年も残すところ2ヶ月。今日から始まるコンサート。チラシは12月末までのコンサートの日程が記されております。

このチラシの富士山のようにはっきりと堂々とした佇まいの存在に出会いたい。この混沌として、何もかも曖昧にして誤魔化し、本当に誰のためにしている事なのか、検証もせず、反省もせず、何か別の目的のためにあらゆることが遂行されているかのような昨今の世界の有り様です。

こういう事が大手をふってなされていると、感覚が曇ります。そして動きは低迷し、動いてはいてもどこに向かっているのかわからなくなる。本当に今起こっている事は何なのか。コロナによりあらゆる事がおかしくなり、変な当たり前が増えてきて、その変な常識により本来性が失われている。その事すら気づいていないことが最も恐ろしい。

こういった状況を、天晴れ!とするかのように今日からあるコンサートに希望を託しています。

今日、11月10日からコンサートが始まります。今日は三鷹、14日は府中と東京近郊では今月はこの2回。大事にしたいコンサートの経験です。21年前の11月10日はエチオピアにいました。”天命”と題された全世界に発信された世界的ないだきしんコンサートに参加しておりました。あれから21年。今日のコンサートの演奏者でもあられる いだきしん氏の姿勢、在り方は21年前からも全く変わらず、常に一貫しておられます。

どのコンサートも一回限りの表現だからこそ即興演奏と言われます。どのコンサートも大事ですが、21年前のエチオピア天命コンサートは特に凄いものがありました。現地に11万人ものエチオピア人が集まり、皆、穏やかにそして活気に充ちながらコンサートを楽しんでいたのが印象的でした。人類発祥の地と言われるエチオピアから世界へ向けてのコンサートでした。今日は11月10日ということもあり、その当時の事が思い出されます。その時の凄まじい世界へむけたエネルギーの事を。いだきしんコンサート。いま一度、それは世界的なアーティストであり、世界に通用するコンサートであることを思い直す今日の日です。

閉ざされがちな状況にありながら、世界への視点を取り戻す。いや、世界へと飛躍する経験となるコンサートでもあります。心よりオススメします。

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"いだきしんコンサート
ーDivine Agesー
"

2022年11月10日(木) 三鷹市公会堂 光のホール
2022年11月14日(月) 府中の森芸術劇場 どりーむホール
2022年11月22日(火) 電力ホール(仙台)
2022年11月27日(日) 京都コンサートホール 大ホール
2022年11月28日(月) びわ湖ホール 中ホール
2022年12月7日(水) 電力ホール(仙台)
2022年12月9日(金) 盛岡市民文化ホール 小ホール
2022年12月13日(火) 三鷹市芸術文化センター 風のホール
2022年12月24日(土) 京都コンサートホール 大ホール
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このコンサートは毎回以下のサイトでインターネット中継をされています。

IDAKI SHIN Official Site

さらにはオンデマンドでも視聴が可能です。自分自身は最近は地方のコンサートにはなかなか参加できないので、このライブ中継やオンデマンドで経験できることが大変ありがたい経験となっています。もちろん、会場での実体験が一番ですが、不思議とオンデマンドでもコンサートと同じような体感を感じられ、できる限り視聴しております。こちらもチェックしてみてください。
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