音楽を演奏する立ち位置にある身として、耳にした音楽の影響源というのは、やはり自分が楽器を手にし始めてからより大きく動き変わると思う。
元々、ロック系という音楽に耳を引かれる傾向はあったが、そこからよりハードな感覚を持つバンドに傾いていくとなると、必然的に国外のバンドだった。
この辺はまた時代背景的なところも大きいが。
勿論、長いキャリアを経る様になると、自分が影響を受ける状況というのは、ある時点で止まる。
今の時代に台頭する、その時代の代表的な存在に対しては、自分が相対的に年老いている点により、自身の刺激とならないばかりか、悪い面で言うと非難をする事があったりする。
良く言えば、
❝外的影響を受けにくくなっている❞という事でもある。
その時に、自分の中で、掘り下げを始める時になったと考えられるようになるかどうかがケッコー重要なのではないかと思う。
進化から深化する事により、自分に於ける真価を創り上げる。
自分の演奏・音に対して確固たるものを得るための工程。
自分自身が受けた影響源に対しての返答が、ソレだと思う。
前置きがまた長くなったが、
気付けば、このアルバムがリリースされてから20年がたったんだなとふと気付いた。
NEVERMOREに関してまともに知るようになったのは2000年。
4th『DEAD HEART IN A DEAD WORLD』が丁度リリースされた時で、その時初めてこのバンドで入手したのもそのアルバムだった。
その時は、90年代に台頭してきたアメリカのラウド/ヘヴィロック系バンドを耳にしながらも、デス/ブラックメタルも聴いて、あれやこれやと刺激をもらっていた状況。
それでも、当時自分の中ではスラッシュメタルという音楽形態が最強であるという理念があり、その形態を今でも引き継いでいるバンドというのを、何処かで求めてもいた(時期的に、オレの中ではTHE HAUNTEDがそこにあったな。『MADE ME DO IT』が正にその時リリースされた)。
最初、『DEAD HEART IN A DEAD WORLD』に手を出してみたのも、国内盤の帯を見たからでもあったんだよな。
「鞭打つようなリフの鋭さで、ヘヴィメタルシーン随一の威力を誇る」なんて書かれていたら、まだガキの思考である当時のオレからしたら、さぞスラッシーなんだろうなと期待を抱いてしまうわ(笑)。
実際、聴いてみたら期待を抱いていた様なスラッシーな感触はなかった。
が、その代わりとしてメタルという音楽でないと表現し得ない冷徹さによる悲壮感、そして絶望感が楽曲として刻まれている感触を与えられた。
コレは所謂ドゥームメタルとかでは味わえない、音楽的である故に、耳で判る感覚を明確且つ残酷に紡ぎ出している。
重く冷たく絶望的な旋律を、鋭さを以て打ち出している。
NEVERMOREは、正にそんな音楽世界を生み出している、唯一無二のメタルバンド。
ソレは、『DEAD HEART IN A DEAD WORLD』以前のアルバムでも立証されている。
バンドとして最初に触れた『DEAD HEART IN A DEAD WORLD』も、当然ながらオレにとって独特の印象を与えたという事で影響の大きいアルバムなんだが、そこから3年後にリリースされた5th『ENEMIES OF REALITY』は、更に衝撃を与えたアルバムとなった。
写真で上げたアルバムはオリジナルヴァージョンで、実はこのアルバムはミックスの違う2つのヴァージョンが存在している。
オリジナルとしてリリースされているものは、メンバーとしては「音像がドロドロとしている感じで、本来のバンドの音ではない」と不満を呈したミックスになっている(リリース当初のインタビューでは、「とてつもなくヘヴィで気に入っている」という感想を述べていたが、ソレは結局建前だったという事)。
現在、正式なアルバムとしてリリースされているのはリミックスされたヴァージョンで、前作をプロデュースしたアンディ・スニープがミックスを手掛けている。
ただ、個人的な意見を言うと、オレはオリジナルヴァージョンを支持する。
飽くまで、アルバムとして耳にする場合に関しては。
耳慣れしている所為もあるかもしれないが、『ENEMIES OF REALITY』は、あの混然一体となって迫りくる質感こそが、楽曲的に相応しいものであると思っている。
前作で既にギターは7弦を使用し始め、重みを加えた判りやすい切れ味で暗さ・悲壮感を披露していたが、『ENEMIES OF REALITY』はデス/ブラックメタルとも言い難い、最早独自のブルータリティを備えた強烈な攻撃性による重たさ・絶望感を披露。
NEVERMOREが、新たな領域に進んだという節目を垣間見たアルバムだと、個人的には感じた。
7弦と言えばKORNやDEFTONESも居るし、オレにとってはFEAR FACTORYが君臨しているので、7弦を用いたギターの低域による不穏表現というのはその時点で珍しくもなくなってる(MESHUGGAHもそうだが、最早8弦という感覚の方が強いな)。
多分、ジェフ・ルーミスが演奏すれば、6弦でも充分だろうと思えるのだが、7弦へとギアチェンジしたからこそ、独自のヘヴィネスを獲得したのは間違いないだろう。
『ENEMIES OF REALITY』の楽曲は、勿論ライヴでは鋭利さのあるギターを聴かせているが、猛攻という意味に於いてはリミックスよりもオリジナルの方がライヴに通じるものがある。
上述で察してもらえると思うが、オレが多大な影響を受けたバンドの一つがNEVERMOREであり、その中でも『ENEMIES OF REALITY』はしっかりと根付いている。
ヘヴィネス、アグレッション、テクニックを如何なく駆使し、このバンドのこのメンバーでしか出し得ないサウンド/グルーヴを生み出しており、メタルとして魅力的な要素を全て持ち合わせているバンドだと、オレは見なしている。
つくづく思うのは、やはりウォレル・デインの歌唱の独自性よ。
声質と歌唱法が、他のメタルバンドと完全に違う存在感を放つ事に成功している。
好き嫌いの分かれる様なヴォーカルであるが、居そうで居ない、そして真似できないという点でも、彼はやはり唯一無二であり、バンドの絶対的顔役であった。
6年前にこの世から去ってしまった事が、今でも悔やまれる。
そして、そんなバンドを強靭なリズムで支えていたのが、ドラマーのヴァン・ウィリアムズである。
ギターだけでは、重量感は元より、切れ味も充分に引き出せるワケではない。
そこにはベースも勿論必要だが、高音と低音の突出力を描き出すドラムのパワーというのが不可欠。
ヴァンは正にソレ。
明確且つ的確なヒッティングに、ヘヴィネスを重点に置いたグルーヴ。
強烈なパワーとテクニックで、ジェフのギターとがっちり合わさる様に打ち進むドラミングは、上述した切れ味を増幅させる上で必要あり、理想的なドラマーだと言える。
アルバム聴いていると、ホント独特なグルーヴを生み出すリズムを叩いているし、先ずパワーありきだよな、と思う。
デイヴ・ロンバードほど突出した個性を引き出せているワケではないが、ヴァンもその存在が確立されたドラマーであり、「ドラマーとして在るなら、こう在りたい」と思わせてくれるドラマーである。
『ENEMIES OF REALITY』の後には、バンドを更に飛躍させたアルバムがリリースされる事になるが、ソレはまたの機会にでも振り返る事にしたい。
そのアルバムが、リリース20年を迎える時にでも。