AKILA's えgo

気まぐれに、ドラムや音楽の気になった事上げとります。

歩み止めぬ

2017-07-21 13:54:00 | 音楽・ライヴ
現在、DECAPITATEDの『ANTICULT』を繰り返し聴いている。

彼らはポーランドのエクストリームメタルバンドで、初期は同郷の大先輩であるVADERとも同じデスメタルの括りで語られていた。

バンドは平均年齢に見合わぬほどの高度な演奏力を持ち合わせていたのが世界的に注目され(結成当時の平均年齢は確か14歳くらいだったと思われる)。
そんな彼らがどんどんと音楽的進化を遂げ、頂点と見なされたのが4th『ORGANIC HALLUCINOSIS』だろう。
DECAPITATED流のテクニカル・デスメタルを極限まで磨き上げたその内容は、個人的にはポーランドから出てきたデスメタルの極みにある種到達していたんじゃないかと思っている。

しかし、
バンドはそのアルバムのツアー最中に、不慮の事故に見舞われ、メンバーが崩壊する。
特に、現在中心人物であるギターのヴォッグの弟である、ドラマーのヴィテックがその事故で亡くなった事はあまりにも大きく(当時ヴォーカルであったコヴァンも、一命は取り留めたが今も再起不能状態)、バンドは活動休止を余儀なくされた。

そこから復活した時のヴォッグの想いには、色々な覚悟はあっただろう。
復帰作『CARNIVAL IS FOREVER』から現在に至るまでの作風は、正直言ってデスメタルという言葉を使う事を躊躇われる音楽形態になってきている。

依然不穏な空気を生み出しているが、7弦を使用したギターリフはシャープさよりもへヴィさを押し出しており、ドラムに合わせた持ち前の切れ味が減退している感覚が否めなかった。
この点は従来のファンからの非難が出てくるのは明確で、特に6th『BLOOD MANTRA』は、PANTERAを筆頭とした90年代型アメリカン・パワーメタルに顕著な横揺れグルーヴを感じさせる(ギターがそう感じさせるところが間々あり、全体としてはファストで切れ味も損なわれた感は無い)点が、一部では不評を買ったようだ。
まァ余談だが、ブラストビートが楽曲に殆どなかった(最初の2曲の“鬼の様なブラストビートの嵐”を除けば)というのも理由の一つになるんじゃないだろうか。デスメタルファンの中には、このジャンルはブラストが入ってこそ、と捉える人間も多いだろうからね。

この辺りは、DECAPITATEDの周辺に於ける反応。
ただ、個人的には、彼らの現在の音楽的変化には否定どころか敬意を払いたい。

『ORGANIC HALLUCINOSIS』で、彼らは既に『CARNIVAL IS VOREVER』へ移行する様な音楽形態を見せていた。
時折覗かせるジェンティな演奏展開は、この2作品に共通している点であり、そこからよりダイレクトに図太い骨格で音楽性の勝負を仕掛けたのが『BLLOD MANTRA』であった。
こう考えると、今回の『ANTICULT』は「デスメタル→90年代アメリカン・メタル要素のあるハードコアメタル」の流れを経て、「バンドとしてのエクストリームとは?」に改めて答えを出してきたアルバムだと言える。

元々、このバンドが出てきた年代を考えると90年代~00年代に出てきたバンドに自然と影響を受けてきた筈。
「スラッシュよりも、へヴィなグルーヴへ」という、メタルでは言わばPANTERA時代でもあった。

誤解を恐れずに言えば、当時のメンバーではどうしても出せなかったヴォッグのルーツの一つが、今大々的に見せれるようになったのではないか。
そして、悲劇に見舞われた元メンバーに敬意を払って完成させたのが『CARNIVAL IS FOREVER』で、DECAPITATEDとしての新章は実質『BLOOD MANTRA』からだと捉えている。

このバンドがこれから進む方向、そして絶対に忘れる事の無い要素を今一度確認/統合させたのが『ANTICULT』である。

ドラマー視点からすれば、ブラストビートが今回は各楽曲の随所に入り込んでおり、相変わらず容赦ないツーバスによる音の砲撃はマジでドラマーいじめとしか思えないほどに苛烈(笑)。
テクニカリティも相変わらず高いが、それ以上に今回は猪突猛進的な勢いが感じられる。

このバンドは基本的に、アルバムとして10曲も作らない。
曲の密度が半端ないから、8~9曲くらいでも充分だと感じる事を察知しているんだと思うが、そこを踏まえたうえで個性の出た楽曲を、特にこの数年は丹念に作り上げている様に思える。

バンドの凄さは、実はそこにある。
だからこそ、多少グルーヴィ路線に入ったとしても、持ち前の不穏さを醸し出すリフ運びは色を失うどころか強烈さを帯びている。
この数作での楽曲の骨格の太さは、驚異的な攻撃性へと転化もされ、バンドが未だ加減知らずのエクストリームメタルである事を知らしめている。

元々、オレ自身が90年代のアメリカのメタルをルーツの一つとして持っているのもあるので、彼らがその辺りの要素を持ってきたとしても、年代的に特に不思議ではない。
しかも、元来持っている不穏性(そこにヴォッグの、DECAPITATEDの真髄がある)を捨てる事なく融合させている点で、バンドらしさを感じさせる新たな刺激は進化と見て取れるので、肯定的にもなる。

正直、彼らが『ORGANIC HALLUCINOSIS』から大した変化もしなかったら、自分の中でこれほどまでに気になる存在になっていただろうか?と思っている。

あの時確かにカッコよかった。今だってカッコイイ。が、これから一体どんな感じになっていくんだろう?
こんな好奇を寄せられるバンド、今オレの中にはDECAPITATEDくらいしか居ない。

確たる個性を持ち合わせたバンドは、良くも悪くも普遍性が強くなる。
だが、その個性を逆手にとって様々な変化を見せられるバンドは、実際少ない。
オレにとっては、かつてNEVERMOREがソレだった。

そう、彼らにはNEVERMOREと同じ匂いがする。
アルバムごとに不変と変化を突き付ける近作は正にそうだ。

絶対的な個性を持ち合わせている為に強い信頼を寄せながらも、どう転がっていくかの一抹の不安さもあるバンド。
オレにとって、本当に音楽的影響を与えてくれるバンドというのは、そーいったバンドである。

歩みを止めないで進むこのバンドの前途が、どうか再び悲劇で閉ざされない事を願い、これからの活躍にも注視したい。

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