素人、考古学・古生物学を学ぶ

人類の起源・進化・移動や太古の昔、日本に棲んでいたゾウ類にも関心があり、素人の目線で考えてみます。

絶滅した日本列島のゾウのはなし(32)

2021年04月23日 19時16分11秒 | 絶滅した日本列島のゾウたち
       
       絶滅した日本列島のゾウのはなし(32)


   9.日本列島に生息した古代ゾウの絶滅原因をめぐって

  (3)古代ゾウが消えた原因は

 アケボノゾウなどステゴドン科系のゾウの仲間たちが生息していたのは250万年前~120万年前頃といわれています。これには諸説ありまして、埼玉県立自然の博物館の資料では250万年前~60万年前まで生息していた、とありこの説もかなり有力なんです。

 アケボノゾウが何時どうして消えたのか、その理由というか、絶滅した正確な原因は分かっていません。250万年前~60万年前、もちろん日本には人類はおりませんし、したがって人類による殺戮などは考えられません。

 南極大陸東部で採取された200万年前の氷を分析した専門家がいるそうですが、「古代において大気中の温暖効果ガスの濃度と気象に関連があったとみられる」、と言うのです。アケボノゾウが消えた原因に気候変動があったのではないか、という説は考えられないことはないと思います。

 何も日本列島とは限らないのですが、地球上では、この100万年前、氷期と間氷期が10万年の周期で繰り返されてきたことは、地質学や古生物の専門家によってよく指摘されていることです。

 ではなぜ、10万年ごとに、氷期と間氷期が交互に訪れるのか。その点を少しばかり考えて見る必要があると思います。専門家の先生方によりますと、その一つが「日射量の増減、ないしは変化」が原因ではないか、と言う指摘があります。

 日射量と言うのは、太陽から地球に対する放射エネルギー量を測定したもののことです。そのエネルギー量は、10万年もの長い間には、増えたり減ったりと大変な変化をしてきたことが分かっています。なぜ変化するかは、地球が自転する軸がぶれて、太陽の周りを回る軌道が変化することで周期的に引き起こされるのです。この周期的変化を発見したのがミランコビッチで、彼に因んで、この現象を「ミランコビッチ・サイクル」と呼んでいます。

 アケボノゾウが日本列島に生息し始めた頃の気候変動ですが、250万年前から120万年前頃ですと、寒冷の氷期とかなり温暖な間氷期の周期は4万年くらいで、寒冷の氷期も極寒と言うほどではなかったと言われています。しかし、いろいろな書物を調べて見ますと100万年前以降になりますと、先に述べましたように、10年を周期とした氷期と間氷期とが交互に繰り返されていたようなのです。

 ところが実は、現在も地球では、南極や高緯度の地域と言うか、そういう地方をはじめ、標高が高い山に氷河が存在しております。その意味では、「氷期」または「氷河期」であると言えるのですが、この気候環境は余り知られていないのです。

 話しは少し本筋から逸れてしまいますが、長い地球の歴史の中で、気候は何度も変動してきました。それに伴い今から2憶3000万年前の中生代、三畳紀の中頃に地球上に恐竜が現れました。これにも諸説あるのですが、1億5000万年前には始祖鳥が出現しています。恐竜の全盛時代は1億年前だったと言う説が有力であります。そして第5回目の大量絶滅が起こった6550万年前に起こった巨大隕石の衝突で、地球上の恐竜もアンモナイトも絶滅してしまったと言われています。

 恐竜がわが世の春を謳歌していた時代の気候は、今よりずっと温暖というか高温の時代でした。南極や北極などの高緯度地帯にも植物が育ち、広く植生地帯があったと言われています。

 しかしまた一方では、地球上のほとんどが氷に覆われた非常に寒冷な時代もありました。この氷期というか、氷河時代は約 260 万年前に始まり、100万年前頃までは寒冷な氷期と温暖な間氷期とが繰り返される変動の激しい気候環境の時代だったことも分っています。
 
 今はもう絶滅してしまったのですが、大型哺乳類の草食獣ステゴドン科のゾウの仲間が日本列島にも生息していたことが発掘された化石からも分かっています。ところが、ステゴドン科の日本固有のゾウと言われるアケボノゾウが、いつ日本列島から姿を消してしまったかは全く分かっていません。

 アケボノゾウだけではなく、人類と出会う以前に日本列島に生息していた古代ゾウなど大型獣が絶滅した最大の原因が何か、ごく一般的には、地球レベルの激しい気候変動だったのではないか、と考えられるのです。

 気候の変動要因には、いろいろあります。たとえば、炭素循環を激変させるような要因も考えられます。たとえば、数十万平方キロもの範囲に溶岩を噴出させるような巨大噴火が起こりますと、大気中に、二酸化炭素などの温室効果ガスを大量に放出することになります。

 それだけではありません。火山の巨大噴火による火山灰の広域降下に起因する自然環境の変化との関連で大型草食哺乳類を絶滅に追いやることも考えられます。また、6500万年前のユカタン半島で起きた巨大隕石の衝突とまではいかなくとも、天体衝突の例はその後も数えきれないほどあるのです。20世紀になってからでも、いくつも天体衝突が地球上のどこかで起こっています。
 
 更新世になってからも、日本列島に生息していたアケボノゾウなど大昔の古代ゾウが6、70万年も前には姿を消してしまったと言われているのですが、その原因はまったく明らかにはなっていないのです。

 もしそれを明かすのであれば、地質学的に自然現象の激変、日本列島を襲った地球規模での極寒の氷期や間氷期に生じた暴走温室効果ガスの急激な増加と言った気候変動を精査して見る必要があるようです。


コメントを投稿