美術の旅人 Voyageur sur l'art  

「美術」との多様な出会い。見たこと、感じたこと、思ったこと。

東山魁夷展 9月22日(土・祝)~11月11日(日)宮城県美術館

2012-12-25 19:30:09 | レビュー/感想
東山魁夷展を十一月の展示最終日に訪れた。現代日本を代表する超メジャーな日本画家であるだけに、マスコミの報道も頻繁に行われ、誰もがよく見知った画家の作品の実物を一目見ようという人たちが連日押し寄せ、地方の美術館としては高い集客実績となったと思う。私が訪れたときも駐車場は満杯状態で、入り口で空きを待ってようやく中に入れた。

しかし、こんなに待って入った割には、鑑賞している人の表情にどことなく精彩がない。絵の全体的な印象のように皆どことなくぼやっとしてるのだ。確かにこれだけの大きな作品を継続的に生み出し続けた精神的な安定感と技術的な力量には舌を巻く。確かに成功するわけだ。だが、あえて正直を言えば心が動かないのだ。スタイルという名の自然の漁り方テンプレートを確立したら、もう畏怖も探求もなくてもOKの作られた予定調和の世界が量産出来る。これを致命的だと画家は思わないだろうか。むろんそんなプロフェッショナルになるためには並外れた才能と努力が必要だと認めた上での話だが。

真実は、対象たる自然の方が大きい。恐るべき生命感を持って、解けない謎として常に現前にある。必然的に人間が頭の中につくりあげてしまうイメージも、対象である自然によって常に改変を迫られる。ときには粉みじんにされることもある。だから画家は、同じ風景であれ、セザンヌのように描き続けなければならない。

美術館を出たら晩秋のすさまじいばかりの紅葉が山を覆っていた。これを見たら、ちんまり綺麗な紅葉の絵など描く意味があるのだろうか?

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