わくわく CINEMA PARADISE 映画評論家・高澤瑛一のシネマ・エッセイ

半世紀余りの映画体験をふまえて、映画の新作や名作について硬派のエッセイをお届けいたします。

「淀川長治 映画の世界 名作DVDコレクション」全40巻が完結!

2013-12-30 17:05:58 | 映画の本

Yodogawa401 映画の伝道師・名語り部と呼ばれ、明治・大正・昭和・平成にわたって生涯現役を貫いた映画評論家の故淀川長治さん。その名を冠した「淀川長治 映画の世界 名作DVDコレクション」全40巻(東京ニュース通信社発行)が完結しました。各巻、淀川さん推薦名作映画の本編DVD2作品を収納。すべての作品に淀川さんならではのオリジナル解説映像付きで、映画の見どころや出演者紹介、作品の背景、淀川さんしか知らない隠されたエピソードなどが名調子で語られており、映画本編を盛り上げています。
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 全巻そろえれば、80作品のクラシック名画DVDコレクションとして貴重なアーカイブとなる。収録作品は、「第三の男」「モロッコ」「グランド・ホテル」「若草物語」などの名作から、ヒッチコックの伝統的サスペンス、「四十二番街」など懐かしのミュージカル、怪獣映画の原点「キング・コング」、キートンとロイドの喜劇、サイレント映画の金字塔「戦艦ポチョムキン」「イントレランス」「國民の創生」など幅広いジャンルに及ぶ。更に、マレーネ・ディートリッヒやグレタ・ガルボ、エリザベス・テイラーら伝説の美女たちの作品に触れることが出来るのも嬉しい。
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 また、DVDが収録されている冊子には、各作品についての淀川さんのユニークなコメントと、詳しい解説が付いて貴重な資料となっている。加えて、バラエティーに富んだ記事が満載だ。毎回ジャンルを変えた「淀川長治 名作映画を斬る!」、淀川さん独自の視点で展開される「ぼくにしか書けない独断流スター論」、名セリフを採り上げて人生を読み解く「名作映画で見つけた、気になる言葉」、全国各地の名画座をナマ取材した「名画座のある風景」、映画に登場するカクテルとレシピを紹介する「今宵の一杯 シネマカクテル」、珍しい名画のポスターを復刻した「名作映画ポスターの部屋」など。あらゆる角度から立体的に映画の楽しさに迫る企画がいっぱいです。
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 その中で私は、洋画・邦画を交えた昭和映画史を時代背景とともにつづる「あの時代がよみがえる―昭和と映画」を連載。太平洋戦争終結直後の「アメリカ映画解禁と民主主義の時」(「風と共に去りぬ」「カサブランカ」)から始まり、イタリアのネオリアリズム作品、世界を席巻した黒澤明・溝口健二、マリリン・モンローらセックス・シンボル、永遠の妖精オードリー・ヘプバーン、ジェームズ・ディーンや石原裕次郎ら反逆する若者像、懐かしの映画音楽、仏・ヌーヴェルヴァーグ作品、ジェームズ・ボンド映画、アメリカン・ニューシネマ、東映任侠映画(「昭和残侠伝」など)、カンフー映画、オカルト&ホラー作品、ルーカス&スピルバーグに至るまで、戦後40余年の映画史をおさらいしてみました。
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 監修者は、TV「淀川長治映画の部屋」(現テレビ東京)の元プロデューサーで映像作家の岡田喜一郎さん。生前の淀川さんの身近にいた人で、個人的なエピソードや映画ばなし、独特の人生訓などが随所にちりばめられている。かつて流行語になった「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ!」の挨拶で親しまれた淀川さんの心温まる世界が冊子に集約されている。すべてに目を通せば、世界映画史を気軽に学べてしまうという仕組み。サイレント期から黄金時代まで、名画の世界にどっぷりつかれる映画ファン冥利につきるDVDブックです。
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「映画は人生の教科書。人間勉強の場なんです。映画を見て、びっくりしたり、驚いたり、感激して涙を流したり、そのシーンの美しさに酔ったりしてごらんなさい。それが感覚を養う第一歩です」とは、淀川長治さんが遺された名言です。
(冒頭の写真は最終巻・第40号の表紙。連載記事「昭和と映画」のテーマは「SFXでスケールアップしたスペクタクル」)
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 では、映画ファンの皆さん、よいお年をお迎えください!


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