わくわく CINEMA PARADISE 映画評論家・高澤瑛一のシネマ・エッセイ

半世紀余りの映画体験をふまえて、映画の新作や名作について硬派のエッセイをお届けいたします。

台湾のヤング・ノワールフィルム「モンガに散る」

2010-12-11 18:10:42 | 映画の最新情報(新作紹介 他)

Img373 台湾映画界では、1980~90年代にかけてホウ・シャオシエン(侯孝賢)、故エドワード・ヤン(楊徳昌)といった監督たちが、社会性のある斬新な映画作りで“台湾ニューウエーブ”としてもてはやされました。だが2000年代に入って、映画界は低迷。ここ数年は、華流TVドラマ・ブームが話題になったが、それも余りパッとせず。そんな中で、台湾映画ルネッサンスの火付け役になりそうなのが、ニウ・チェンザー(鈕承澤)監督のノワールフィルム「モンガに散る」(12月18日公開)です。同監督は役者出身で、ホウ・シャオシエンの「風櫃(フンクイ)の少年」(83年)などに出演、07年に「ビバ!監督人生」で映画監督デビュー。今回が2作目で、今年台湾で最高の動員記録を樹立したそうです。
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 物語の舞台は、1986年、台北一の歓楽街・モンガ。ここに越してきた高校生・モスキート(マーク・チャオ)は、校内の争いをきっかけに、暗黒組織の親分の息子ドラゴンや、頭の切れるモンク(イーサン・ルアン)に気に入られ、彼らが率いるチンピラ・グループの5人目として迎えられる。モスキートは、はじめは極道の世界に戸惑いながらも、生まれて初めてできた友だちとケンカに明け暮れながら、モンガの街で青春を謳歌する。彼らは固い絆で結ばれ、義兄弟の契りを交わし、組を結成。だが、町の利権を狙う新たな勢力がモンガに乗り込み、古くからの黒社会を交えての抗争が始まる。モスキートらも、その争いに巻き込まれ、友情と裏切り、血の抗争を繰り広げるようになる。
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 モンガは、台北市西部の古い商業地区。映画は、まるでフランシス・フォード・コッポラの「ゴッドファーザー」若者版を思わせるタッチで進行する。時代は戒厳令解除前夜の台北。ニウ監督自身も「これまでの台湾映画とちがって、『ゴッドファーザー』とか『ランブルフィッシュ』に比肩すべき作品。若者たちが謳歌する友情と、その傷つきやすさを描き出そうとした」と語っている。また日本びいきの監督らしく、下駄、刀、桜などが、武士道を柱とした日本人の精神の象徴として登場。若さにあふれたパワフルなノワール・アクションに仕上がっている。第83回米アカデミー賞外国語映画賞部門の台湾代表作品にも選出されました。


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