団塊太郎の徒然草

つれづれなるままに日ぐらし

腐っていない電力を、腐らせよう。巨大化させないで、国民に戻さなければいけない。

2011-07-13 22:14:29 | 日記

東京電力の福島第1原発の事故を受け、これまで問題視されなかったことが、次々に浮き彫りになった。例えば国は巨大なエネルギーをマネージメントできないことが明らかになった。なんでも「コントロールできる」というのではなく、まずは「できない」ということを認識し、そこからスタートする必要があるのではないだろうか。

●原口一博×武田邦彦「それでも原発は必要か」バックナンバー:

●小さなエネルギーを共有できる仕組みに

原口:欧州では、人口500人の街でも経済的に豊かなところがあったりします。それはなぜかというと、エネルギーの搾取を許していないからです。

 日本の土地はカリフォルニア州よりも狭い。なのになぜ限界集落があったり、過疎の問題が存在するのか。被災地になった仙台はもともと、伊達藩が江戸を3分の1ほどまかなっていました。なのに、なぜ東北は過疎になってしまったのか。過疎になった背景には、エネルギーと金融の世界で搾取され続けてきたからです。

武田:ですね。エネルギーは小さいものよりも大きなもののほうが有利になるようになっている。権力を分散化させるために、小さなエネルギーを共有できる仕組みに変えていかなければいけません。

原口:その通りです。

武田:ただ30万キロワットの自家発電を造ったとしても、コストが高くつくだけ。そうなると自家発電が動かせなくなってしまう。コストを安くすることができれば、もっと自家発電は普及するでしょうね。これは技術的な問題になってきます。

 例えばメディアで考えると、これまでの大手新聞社は右肩上がりの購読部数と広告料で巨大化してきました。しかしインターネットの登場で、徐々に小さくなってきている。つまり技術力を高め自家発電を安く使えるようにすれば、巨大な電力会社が小さくなっていくでしょう。そうするとこれまでのようなシステムにも変化が生まれるでしょうね。

原口:それを可能にしようとしているのが、再生可能エネルギー特別措置法案。この法案は家庭や企業が太陽光や風量などで発電した電気について、電力会社に買い取りを義務付けるもの。買い取り費用は電気料金に上乗せして利用者から徴収することが認められています。

 菅首相はこの法案が通るまで「辞めない」と言っています。しかし大丈夫。僕が代わりにやってあげますから。

武田:ハハハ。

原口:菅首相は最近になって言い始めましたが、僕は昔から言っているので。

武田:ハハハ。

●国は違う方向を向いている

原口:話は変わりますが、『エンデの遺言――「根源からお金を問うこと」』という本をご存じでしょうか?

武田:はい。

原口:ドイツの童話作家、ミヒャエル・エンデに関する本ですが、彼は「お金を腐らさなければいけない」と言っています。そうしないと、小さな価値がいつの間にか大きな価値に考えられてしまうから。そしてお金というのは記号なので、記号だけがどんどん先行していってしまう。そうなれば貧富の格差と紛争の極大化になってしまう、と警鐘を促しています。

 1929年、世界大恐慌がありました。そして2008年にはリーマンショック。僕も、お金は腐らさなければいけないと思っています。そして電力も腐らさなければいけない。巨大化させないで、国民に戻さなければいけない。

武田:日本でも200年くらい前までは「同じ仕事だけど、給料は20万円と30万円、どちらがいいか?」と聞くと、「20万円」と答える人が多かった。ここでは分かりやすくするために「20万円か30万円か」としていますが、なぜ「20万円」と答える人が多かったのか。なぜなら「20万円」でも「30万円」でも自分の生活は変わらない、という確信があったから。自分は月に18万円しか使っていないので、30万円ももらう必要がない、という考えをもっている人が多かった。

 ところが今は、お金が“怪物”になってしまった。そして怪物になったお金が、自分の幸福をもたらすかもしれないという錯覚にとらわれてしまう。しかし自分が思った以上のお金を手にできない人が出てくるのは当然で、中にはその状態が不幸だと感じる人がいる。そして心を病んでしまったり、最悪の場合、自殺という道を選んでしまったりしている。

原口:そうですね。

武田:このようにさまざまな問題がリンクしてしまっているんですよ。原発の事故が起きたことはものすごい不幸なことですが、事故後お母さんたちの姿を見ていると、「お金持ちになりたい」とギスギスしたものを感じませんでした。むしろ「自分の子どもが健やかに育ってくれれば、それだけでいい」と願っている人が多いことが分かった。

 もちろんお母さんだけでなく、お父さんもそう思っている。親は子どもの健康を願っているのに、国は違う方向を向いている。なので親は「政治家は何をやっているの?」「子どもに放射性物質で汚染されている食べ物を食べさせたくないだけなのに。それもやってくれないの?」と、政治家に対し不信感を抱いていますね。
 
原口:ですね。

武田:今回の事故を受け、国は巨大なエネルギーをマネージメントできなきことがはっきりしました。「できない」ということを認識し、そこからスタートしなければいけないのではないでしょうか。

原口:今はずっと続いてきたパラダイムを転換させなければいけないとき。つながることを大切にする、情報を共有することを大事にする、お互いを支え合うことを大事する――いわば“解決型のリーダー”が求められているときです。

 ところが原発事故を招いた関係者たちは「答えは1つしかない」ということを教わってきた。彼らは答えが1つしかないと思っているので、想定外のことが起きてしまうと、手を挙げてしまう。つまり逃げようとするんです。答えが1つしかないという教育を受けている人は、排他的で排外的です。

武田:残念ながら、その通りですね。

●プロフィール

原口一博(はらぐち・かずひろ)

1959年佐賀県生まれ。1983年東京大学文学部心理学科(第4類心理学)卒業。1987年佐賀県議会議員当選。1996年衆議院議員に当選。2003年民主党副幹事長。2009年総務大臣。この間、郵政民営化に関する特別委員会筆頭理事、総務委員会筆頭理事、拉致議連(北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連盟)副会長などを歴任。現在は衆議院総務委員長を務める。

著書に『ICT原口ビジョン』(ぎょうせい)、『平和 核開発の時代に問う』(ゴマブックス)などがある。

武田邦彦(たけだ・くにひこ)

1943年東京都生まれ。1966年東京大学教養学部基礎科学科卒業後、旭化成工業に入社。1986年より同社ウラン濃縮研究所長を務め、自己代謝材料の開発に取り組む。1993年より芝浦工業大学工学部教授、2002年より名古屋大学教授を経て、2007年3月より中部大学総合工学研究所の教授。また内閣府原子力安全委員会の専門委員などを歴任する。

著書に『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』(洋泉社)、『偽善エネルギー』(幻冬舎新書)のほか、原発問題をテーマにした『原発大崩壊! 第2のフクシマは日本中にある 』(ベスト新書)などがある。


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