明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



改めて制作中のHPではすでにアップしていた作品も、以前より高画質で見ていただけているだろう。 井伏鱒二だったか自作に手を入れ続けた作家がいるが、私も作品によれば完成から何年経とうが手を加える場合がある。たとえば三島の潮騒の初江である。モデルは牡丹灯籠のお露の姉さんで、近所の店の娘であり、母親にも牡丹灯籠のお米、拙著『貝の穴に河童の居る事』(風濤社)にも母娘で出てもらっている。この一家にはまったく足を向けて寝られないわけだが、屋外のシーンでは店の屋上でお米に娘の初江にひしゃくで水をかけてもらいながら撮影した。観的哨の「火を飛び越して来い」。のシーンであるが、ライトを一つを焚き火の炎に見立て店内で撮影したのだが、外に飲みにでも出かけてくれりゃいいのに、親父がカウンターの中にいる。かといって現場を観る訳ではなく、撮影している私の方を向いている。昭和らしくズロースにシュミーズでずぶ濡れの娘を撮影しているのを親父が私の方を向いている。こんなやりにくいことはない。おかげでカメラを落としてレンズが壊れた。親父は認めないが、後で考えると、私の背後の入り口のガラス戸に写る様子を眺めていたに違いがない。それにしても、別に撮影した他の海女はほとんど半裸なのにかかわらず、主役の初江がブラジャーをしている。さすがにブラジャーなしで、と実家で、両親の前で言う訳にもいかない。 完成した後、親父と飲んでいたら、初栄に電話して「お前、海女がブラジャーしてるなんておかしいだろ」なんていっている。終わったと思って。だったら撮影している時にいってくれ、という話である。 三島が様々な状況で死んでいる『三島由起夫へのオマージュ 男の死』の個展で発表後、数年経って眺めていたら、やはりブラジャーに違和感がある。すでに結婚し、子供もいる初江に許可をもらった上でブラジャーを取り外した。今回HPを作るにあたり久しぶりに見たが、どうやったのか思い出せない。私の制作上の秘訣はひたすら祈ることではある。

新HP
旧HP

『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載8回『昭和残侠伝“唐獅子牡丹”三島由紀夫』

2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界』 youtub


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