弁護士NOBIのぶろぐ

マチ弁が暇なときに,情報提供等行います。(兵庫県川西市の弁護士井上伸のブログです。)

弁護士人口問題と弁護士人口急増とJR宝塚線沿線の弁護士事情

2012年04月02日 | ⑥弁護士等法曹情報
現在,司法試験合格者は,この数年間,約2000人で推移しています。

しかし,裁判所・検察庁は,裁判所・検察官の採用人数を年間各100人ずつで,全く増やしておりません。
そのため,弁護士登録者は急増しており,実際のニーズを超えて,弁護士人口が増えていきそうな傾向にあり,法律事務所も急増しております。

現に,私の事務所があるJR宝塚沿線も,法律事務所が急増しております。
私が独立した平成22年1月時点のJR宝塚沿線の法律事務所数は次のとおりでした。
JR伊丹駅付近:0(ただし,近くの阪急伊丹駅付近には,弁護士数10人の大手事務所があり,JRと阪急両伊丹駅の間には,弁護士数5人の事務所があります。)
JR川西池田駅付近:0(ただし,駅から離れた地域に2つの事務所がありました。)
JR宝塚駅付近:1
JR三田駅付近:1

これが平成24年4月1日には,次のとおり,増えました。
JR伊丹駅付近:1(上記の事務所も現在もあります。)
JR川西池田駅付近:3(上記のかっこ書き内の2つの事務所は,一つはなくなりました。)
JR宝塚駅付近:4
JR三田駅付近:5

増えた事務所の多くは,特に,前触れもなくいきなり開業しました。
これからも,いきなり事務所が増えていく可能性があります。

このままでは,JR宝塚沿線も,すぐに弁護士飽和状態になるかもしれません。

ところで,
弁護士人口が増えれば,住民の人口・弁護士ニーズと弁護士人口のバランスが良ければ,自由競争により,弁護士費用が安くなり,サービス内容もよくなるなど,市民にとっていい傾向になるでしょう。
しかし,弁護士が増えすぎると,過当競争になるおそれがあり,弁護士費用は確かに安くなる傾向になるでしょうが,その分,サービスの低下を招きかねません。

また,多くの法律事務所は,経営方針を転換し,営利中心に切り替えつつあります。
営利中心の法律事務所は,弁護士費用がリーズナブルで,顧客中心の法的サービスを提供するなどメリットがあります。
しかし,そういう事務所は,弁護士の手間に対し,お金にならない事件は敬遠する傾向があると思われます。
そのような事務所への相談・受任が増えると,営利中心でない良心的な事務所は,客を取られ,経済的にひっぱくし,そのような事務所も,お金にならない人権問題など社会的に特に救済する必要がある事件について敬遠するようになるおそれがあります。

つまり,このまま弁護士人口が急増を続け,営利的な事務所が増えると,お金がない人たちの,人権問題など社会的に特に救済すべき事件を敬遠する傾向が全体的に強くなるおそれがあるわけです。

政治の世界・経済界・マスコミ・弁護士会の旧体制派・営利系の事務所の多くは,司法試験合格者の増加,それによる弁護士人口の増加は市民にとっていい傾向であり,司法試験合格者の増加に反対する運動は,市民の理解を得られないと言います。

しかし,本当にそうでしょうか?

現在,弁護士をやめていく弁護士の世代の多くは,合格者500人の時代の人たちです。
理論的な計算によれば,現在,司法試験合格者を700人に減らしても,しばらく弁護士人口は緩やかに増え続けていくことでしょう。
司法試験合格者,昭和36年度から平成2年度まで500人前後で推移し,平成3年度から徐々に増え続け,平成16年度で1500人まで達し,それからは2000人前後で推移しています。

現状,弁護士人口の増加率は国内の弁護士ニーズに比べ,明らかに急増している状況です。
このままでは,大手事務所・顧客をがっちりつかんでいる老舗事務所・営利系ではない弁護士・宣伝がうまくない弁護士以外の弁護士は弱体化を余儀なくされるでしょう。
特に,弁護士の国際自由化がささやかれている現状も加味すれば,特にそういう傾向になることが予想されます。

私は,日本国内の弁護士ニーズにあった弁護士人口の増加をし,国内の弁護士は弱体化し,お金のない市民(特に,小泉政権以後のいわゆる「新自由主義」に基づく規制緩和により,格差社会化は進んでおり,お金のない市民は増えています。)の権利は,守れない社会が作られるのではないかと危惧します。

とりあえずは,市民の方々には,合格者人数を減らすことは,直ちに法曹人口の減少ではなく,既存の弁護士に既得権益を保持することではないことを理解していただきたいと思います。
少なくとも,既得権益保持ではなく,よりより市民(お金のない市民も含む)への法的サービスの提供は,司法試験の合格者数を適正な数に減少し,適正な弁護士人口増加に直すべきです。
どのくらいが,適正な合格者数か,適正な弁護士人口の増加かは,なかなか難しい政治的判断ですが,その点を深く検証・議論していく必要があります。
しかし,そのためには,検証・議論する時間が必要があり,とりあえず緩やかな弁護士人口増加にするべく,私は,すぐに司法試験合格者数を1000人にすべきだと思っております。
これでも,理論上,当面約500人ずつ弁護士は増えていくわけですし,20年後(20年前合格者した人の多くが70歳前後)でも約300人ずつ増えていきます。

ちなみに,日本は,欧米各国に比べ,法曹人口が少ないと言われていますが,それは一概には言えません。なぜなら,今までの日本は,アメリカのような訴訟社会ではなかっただけですし(現在,徐々に訴訟社会になりつつあります。),司法書士・行政書士・公認会計士・税理士・社会保険労務士・弁理士などの弁護士隣接士業の人口が多いと言われています。


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