◇母なる証明(2009年 韓国 129分)
英題 Mother
staff 監督・原案/ポン・ジュノ 脚本/パク・ウンギョ、ポン・ジュノ
撮影/ホン・クンピョ 美術/リュ・ソンヒ
衣装/チェ・ソヨン 音楽/イ・ビョンウ
cast キム・ヘジャ ウォンビン チン・グ ユン・ジェムン チョン・ミソン イ・ヨンソク
◇これ、現代の韓国?
物事には、善悪がある。
裏と表があって、犯罪者と被害者があって、
健常者と障害者があって、富める者と貧しき者があって、
差別する者と差別される者とがある。
この映画はそういうものをすべて並べて、
それをみんなぶち壊すような勢いで利己主義の権化になっていく恐ろしさを描いた映画だ。
5歳のときにトラウマを持ってしまった知的障害者の息子は、バカといわれるとキレる。
そんな息子が女子高生を殺した容疑で投獄された。
息子を溺愛する母親は息子の容疑を晴らすためにそれはもうありとあらゆることをする。
犯人を捜そうとするだけじゃなく、証拠の捏造、冤罪者の追い込み、証人の殺害などだ。
それはもはや狂気でしかないんだけど、
被害者となった女子高生は売春をすることで米や餅を手に入れ、家族を生かしている。
殺される証人は屑広いの老い先みじかい爺さんだ。
ほんとは息子が女子高生をコンクリートで叩き殺したにも拘わらず、
息子に代わって犯人に祀り上げられるのはダウン症のせいで満足に説明できない少年だ。
伏線というか要になっているのは、母親が鍼灸をしていることだ。
嫌なことを忘れてしまうことのできるツボは、内腿にあるらしい。
爺さんを叩き殺して火をつけて証拠を隠滅したはずなのに、
知恵遅れの息子が火事の現場から母親の鍼を見つけてしまい、母親に渡してやるところなんざ、
こいつほんとに知恵遅れなのかとおもわれ、観る者に鳥肌を立たせる。
だけど、この監督はこういうんだろね。
「それぞれの人生や境遇についていろんなことはあって、
不幸な人間も、犠牲になった人間も、加害者も被害者も、
そんなことはどうでもよいし、所詮は赤の他人でしかない。
この母親は息子を守ることができればそれでよく、
あとはただ踊るだけだという突き放すだけだ」
でも、どうにも、相容れないものを感じるのは、
滑稽な場面を見せられたときだ。
これって笑いをとるような映画なんだろか?と。
どうにも、感覚的に入り込めないわ。
とにかく、恐ろしい映画だったわ~。