◇変態島(2008年 フランス、ベルギー、イギリス、オーストラリア 96分)
原題 Vinyan
staff 監督/ファブリス・ドゥ・ヴェルツ
原案・脚本/ファブリス・ドゥ・ヴェルツ デヴィッド・グレイグ オリヴァー・ブラックバーン
撮影/ブノワ・デビエ 編集/コリン・モニー
音楽/フランソワ=ウード・シャンフロー
cast エマニュエル・ベアール ルーファス・シーウェル ジュリー・ドレフュス ヨセ・デパウ
◇Vinyanは、タイ語
意味は「魂、成仏できない霊、幽霊」だそうな。
エマニュエル・ベアールとルーファス・シーウェルの6歳の息子が津波に呑まれ、
その生存が絶望視されて6か月経っても尚、
ふたりはタイを離れることができず、プーケットに居続けている。
そんなふたりがとある映像を観たことから、
息子の生存、つまり、人身売買の村に連れ去られたことをつよく信じるようになり、
いろいろな村々を巡り歩きながら
ビルマの沖合にある島まで訪ねてゆくというシリアスな話だ。
けど、島にいたるまで、いろいろな障壁があり、
これに精神的に弱くなっているべアールがさらに痛めつけられ、
やがて夫の惨殺とともに自我が崩壊してゆくありさまを、
南洋特有のじめじめとした気象の中で描いているんだけど、
後半、ていうか、ほぼ佳境になってから、
ようやく到達した島で、彼女はVinyanに遭うことになる。
このVinyanは少年たちで、
息子がすでに他界しているという事実をべアールは認められずにきたんだけど、
白い泥に包まれたVinyanたちに丸裸にされ、
体中を撫でまわされている内に、
Vinyanたちの求めているものが母親の肌であり、乳房であると確信したとき、
彼女にようやく、心からの笑みが戻る。
べアールが息子の死を認め、Vinyanとなりながら母親を待っていたのかどうか、
これは、わからない。
けれど、この島でVinyanらと遭遇して、肌を合わせたとき、
すでにべアールは息子だけの母親ではなく、
島という非常に暗示的な空間に取り残されているVinyanたちすべての母親になった、
と考えるのが、いちばんストレートな見方なんじゃないかっておもうんだよね。
なんとも不思議な世界だったわ。