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戦場のピアニスト

2007年07月11日 17時57分18秒 | 洋画2002年

 ◎戦場のピアニスト(2002年 ポーランド、フランス 148分)

 原題/The Pianist

 監督/ロマン・ポランスキー 音楽/ヴォイチェフ・キラール

 出演/エイドリアン・ブロディ トーマス・クレッチマン ジェシカ・ケイト・マイヤー

 

 ◎ウワディスワフ・シュピルマン『ある都市の死』

 1939~45年、廃墟の中の主題。

 いいかえれば、ユダヤ人のピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンとナチスドイツの将校ヴィルム・ホーゼンフェルト大尉の物語。

 第二次世界大戦における人間模様は、ナチスドイツのすべてが、ユダヤ人すべてを迫害したというのではなく、ナチスの将校にもさまざまな人間がいたということ、迫害されたユダヤ人の中にもいろんな人間がいたということ、つまり、人間は単純な型に嵌めてしまっていいものではないということを、この作品は主題のひとつにしている。

 ポーランド人のウワディスワフ・シュピルマンの自叙伝だから、事実を描いているのは当たり前なんだけど、その中に登場する、かれの命を助けたヴィルム・ホーゼンフェルトに興味がいく。ホーゼンフェルトはナチスの信奉者でありながら、ユダヤ人を助け、人類の生み出した音楽という分野に多大な貢献をした。にもかかわらず、ソ連によって強制連行され、やがて死を迎えさせられた。こんな皮肉な話があるんだろうかっていう主題もある。

 さらには、いかに芸術的に優れていても究極的な状況に追いこまれると、尊厳よりも生に執着してしまうのが人間だけど、同時に、過酷な情況でも、至高の芸術を求めずにはいられない本能を持っているのが芸術家だ、という主題もあるんだろう。

 ポランスキー自身、ゲットーの体験者であるから、いつかはその、忘れようにも忘れられない体験を映像化しなくちゃいけない、というように考えていただろうし、そういうことからいえば、最大の主題は、おのれの過去のおのれなりの清算にあったのかもしれないね。

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