【音符】『寒気氾濫』（１９９７年）７３頁
参加者：石井彩子、渡部慧子、鹿取未放、鈴木良明（紙上参加）
レポーター：渡部 慧子
司会と記録：鹿取 未放
１７２ 価格破壊激しき街へ迷い込みフライパンひとつぶら下げていつ
（レポート）（２０１４年１１月）
街は儲けんがための価格破壊とまでいえる売りをしている。そこに迷い込んだように来て、フライパンを買ったということだろう。この街へ来るには来たが、作者には何か場違いな感じがぬぐえなかったはず。それが「迷い込み」にも「フライパンひとつぶら下げていつ」にもみえる。その道具立て、さらに「ぶら下げていつ」という姿には、時代に在りながら飄逸味をただよわせる作者が見える。(慧子)
（意見）（２０１４年１１月）
★欲しい物を買いたいというより、価格破壊で安いからとにかく街に出てみたのである。そして、あれ
やこれや煽られ迷い込んだあげく、気が付いたら「フライパンひとつぶら下げて」いた。それまでの
喧騒が嘘のように、はっとわれに帰った瞬間である。(鈴木)（紙上参加）
★時代の雰囲気がよく分かるお歌ですね。(石井)
★安いから街に出たって鈴木さんは書いているけど、たまたま街に出たら、価格破壊がものすごい
状態だった、人々にもみくちゃになっているうちに気がついたら自分もフライパンを買っていた、
というんですよね。ちょっとした痛みがあるのかな。(鹿取)
★確かに安いから買おうと意識して出ていったのでは面白くないですよね。(石井)