かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

馬場あき子の外国詠 160(スペイン)

2014年03月22日 | 短歌一首鑑賞
   【西班牙 4 葡萄牙まで】『青い夜のことば』(1999年刊)P67
                           参加者:T・K、T・S、崎尾廣子、藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
                           レポーター:T・S
                             まとめ:鹿取未放

 ◆ものを書くことや鑑賞に不慣れな会員がレポーターをつとめています。不備が多々ありますがご容赦ください。

116 ソムリエはネロのセネカを知らざりき昼餐の質朴なかぢきまぐろよ

       (まとめ)(2008年11月)
 先の歌からの続きで、コルドバで赤ワインを傾けながら昼食をとっているところである。餐とあるからやや豪華な料理であろうか。そこでソムリエにワインはどれが合うか相談しながら、ふとセネカのことを話題にした。作者は町に建つセネカの像を見てきた後だったのかもしれない。コルドバはセネカの生まれた土地だから当然知っていると思ったのに、ソムリエの反応は「セネカって誰?」というようなものだったのだろう。そこで旅人はあの有名なセネカを土地の人が知らないのかと驚いて「暴君で有名なネロの補佐をした哲学者ですよ。この町の生まれだそうですよ。」などと説明するはめになった。「ネロのセネカ」というややこなれない言いまわしはこういう状況を想像するとよく分かる。そしてワインを傾ける昼餐ながら素朴なかじきまぐろの料理が出てきたというのだ。
 こういう齟齬は、日本の地方の城下町などでもありそうな気がする。日本料理屋で外国人の客の方がその土地の歴史上の人物をよく知っているというようなことが。(鹿取)


      (レポート)(2008年11月)
 西班牙はワイン生産は世界でも群を抜いている。ソムリエはネロのセネカを知らないであろう。などなど思いながら作者は生地のままの質朴なかじきまぐろを見ている。だが「ネロのセネカを」と問うところがこの歌の眼目なのは確かだ。  (T・S)


      (発言)(2008年11月)
★レポーターが書いている「知らないであろう」の部分は間違い。「知らざりき」の「ざり」は打
 ち消しの助動詞、「き」は過去の助動詞だから、まあ口語訳すれば「知らなかった」となります。
     (鹿取)