徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

新型コロナワクチン Q&A(2021年2月現在)

2021年02月07日 07時23分43秒 | 小児科診療
今月(2021年2月)末に医療関係者に対して新型コロナワクチン接種が始まる予定です。
その後はハイリスク者、一般の方へと広げていくスケジュール。
いよいよ間近になってきました。

現在、新型コロナワクチンに関する情報があふれています。
一体、どれを信じたらよいのか・・・ネットで検索するとマイナスイメージのコメントがヒットしやすい傾向があり、毎度のことながらマスコミは不安を煽る言葉を並べて注目を集めようとするあこぎな商売をしています。

ということで、私(小児科専門医)からみて信頼できる情報を集めて、詳しくなりすぎない程度のQ&A集を作成してみました。
ただ、情報は毎日更新されている状況なので、現時点での情報と割り切っていただくよう、お願い致します。


■ 新型コロナウイルスワクチンは今までのワクチンと違うの?

(④)ワクチンとは、病原体特異的な免疫を獲得させるために投与する弱毒化または死滅させ た病原体および病原体の成分を含む生物学的製剤の一種です。特異的な免疫というのは標的とした病原体だけに有効な免疫という意味です。弱毒化した病原体を用いるものを生ワクチン、死滅させた病原体や病原体の成分を用いるものを不活化ワクチンと呼んでいます。 この他に、感染性のあるウイルスベクターを用いたワクチンも開発されています。現在開発中の COVID-19 ワクチンには、不活化ワクチンまたはウイルスベクターワクチンが多くみ られますが、生ワクチンの開発も行われています。 これまでの不活化ワクチンに用いられた病原体の成分は、タンパク質や多糖体が主体でしたが、COVID-19 ワクチンでは、mRNA(メッセンジャーRNA)、DNA などの核酸用いられています。核酸ワクチンやウイルスベクターワクチンは迅速に実用化できる利点があり、緊急性が求められるパンデミックワクチンの方法として有用です。

(①)米国で承認されている2種類のワクチン(ファイザー社/BioNTech社製、モデルナ社製)はいずれも、mRNAワクチンと呼ばれるもの。このワクチンは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こす、ウイルス表面のスパイクタンパク質の遺伝情報を含んでいる。そのため、接種すると、mRNAの情報に基づいてヒトの細胞表面にスパイクタンパク質が形成される。ヒトにとっては異物であるこのスパイクタンパク質を認識した免疫系により抗体が作られることで、本物のウイルスが侵入しようとしてもブロックされ、感染を防御するという仕組みである。
・・・mRNAは、スパイクタンパク質が形成された後、速やかに分解される。このため、mRNAが細胞核の中に入ることはなく、DNAに変換されることは決してない。

(②)米・ファイザー/独・ビオンテック、米・モデルナのメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン。この種のワクチンが実用化されたのは世界初である。原理だけを見れば、安全性はむしろ既存の不活化ワクチンなどに比べて高いとも思えるのだが、これ以前に実績のないものゆえに逆に不安に思ってしまう接種対象者が出てきてしまう点は否めない。


■ 新型コロナワクチンは“筋肉注射”らしいけど、痛いの?

(②)・・・アメリカでのワクチン接種映像が放映されたことをきっかけにSNSをはじめ各所で「なんで注射針を腕に垂直に刺してるの?」などとおびえている人たちは少なからずいるのだ。・・・未知のワクチンを経験のない方法で接種しなければならないことに怖さを感じるほうがむしろ自然である。
・・・はっきり言って筋肉内注射に伴う痛みは一定程度注射を行う人の手技に左右されている側面があると感じる。


■ 新型コロナウイルスワクチンを接種すると、新型コロナに感染したときと同じ症状が出るの?

(①)新型コロナウイルスワクチンは生きたウイルスを含んでいない。スパイクタンパク質が感染を引き起こすことはない。


■ 新型コロナウイルスワクチンの有効性はどれくらい?

(④)ワクチンの有効率 90%というのは「90%の人には有効で、10%の人には効かない」 もしくは「接種した人の 90%は罹らないが、10%の人は罹る」という意味ではありません。接種群と非接種群(対照群)の発症率を比較して、「非接種群の発症率よりも接種群の発症率のほうが 90%少なかった」という意味です。発症リスクが、0.1 倍つまり 10 分の 1 なるとも言えます。

(④)有効性の評価方法
 ワクチンの有効性の評価方法には次の 3 つがあります。
1) 免疫原性(immunogenicity):被接種者の血清中の抗体のレベル(抗体価)が感染や発症を防ぐレベルに達した人の割合で評価します。
2) 臨床試験での有効率(efficacy):接種群と対照(コントロール)群との発症率の差を比較します。
3) 実社会での有効率(effectiveness):多くの接種対象者にワクチンが普及したあと、目的の感染症が実際にどのくらい減少したかを評価します。 有効率はおもに発症するかどうかで評価しますが、重症化率や致命率を指標とすること もあります。
 COVID-19 ワクチンはまだ接種が開始されたばかりですので、実社会での有 効率の評価はこれからですが、先行する一部のワクチンでは免疫原性が確認され、臨床試験での有効率が報告されています。

(①)インフルエンザワクチンの有効性が一般に40~60%であるのに対して、新型コロナウイルスワクチンの有効性は94~95%である。

(④)被接種者の年齢は、16 歳 または 18 歳以上でいずれも高齢者を含みます。前述したように、ファイザーとモデルナの mRNA ワクチンはいずれも 90%以上の有効率を示し、アストラゼネカのウイルスベクターワクチンは、イギリスだけで実施した 1 回目低用量・2 回目標準用量の接種様式では 90%、 イギリスとブラジルで実施した 2 回とも標準用量の接種では 62%でした。両方を合わせた有効率は 70.4%となっています。



(④)いずれの臨床試験でも、年齢層ごとの有効性が評価されており、75 歳未満までは有意な 有効性がみられていますが、75 歳以上では対象者数が十分でなく評価できていません。 また、基礎疾患ごとの有効性についても今後の課題と考えられます。これらの臨床試験における被接種者の人種構成は、白色人種がファイザー83%、モデルナ 79%、アストラゼネカ 92%でした。アジア系の割合は、それぞれ 4.2%、4.4%、2.6~5.8% にすぎません。有効性に人種差が影響する可能性も想定されますので、国内での臨床試験の結果が重要ですが、国内の COVID-19 の罹患率は海外に比べて低いため、その評価にはかなりの時間が必要と考えられます。 さらに、これらの臨床試験の観察期間は 100~150 日という短期間であるため、どのくらいの期間ワクチンによって防御免疫が維持できるかという免疫持続性についての評価がまだできていないことにも注意が必要です。


■ 新型コロナウイルスワクチンの副作用(副反応)が心配です。

(①)副作用としてごく一部の人に重篤なアレルギー反応が生じることがある。そのため、米疾病対策センター(CDC)は、新型コロナウイルスワクチンに含まれる成分に対してアレルギー反応が生じたことのある人は、このワクチンを接種するべきではないとしている。また、他のワクチンに対してアレルギー反応が生じたことのある人は、医師に相談することを勧めている。その一方で、ワクチン以外のアレルギー(食物、ペット、季節性アレルギーなど)のある人は、このワクチンを接種しても安全であると述べている。
 その他、注射部位の腫れや痛み、発熱、頭痛、筋肉痛などの副反応が起こることがあるが、一過性のものだという。

(②)副反応という点ではほとんど問題がないとしても、
(1)未知のワクチンへの怖さ、
(2)未経験の筋肉内注射への怖さ、
(3)人によって痛さが異なることによる疑問・不信感、
というネガティブ要素がどうしても避けられない。その前提がある中で、国が主体となってこのワクチンを接種している以上、国や地方自治体、医療従事者の側にどうしても副反応が生じた際に接種者により親身に対応する窓口があることが望ましいと考える。


■ COVID-19に罹患したことがあっても新型コロナウイルスワクチン接種は必要?

(①)CDCは、COVID-19の罹患歴がある人にもワクチン接種を勧めている。感染後、ウイルスに対する免疫がどの程度持続するのかが明確になっていないからである。


■ 新型コロナウイルスワクチン接種後はマスクをしなくてもよい?

(①)マスク着用、手洗い、ソーシャルディスタンスの維持は、ワクチン接種後も継続する必要がある。ワクチンによって発症率は抑えられるが、それでも感染する可能性がまだあるのか、他者へウイルスを広げる可能性があるのかについては、はっきりしたことが分かっていないためである。

(③)ワクチン接種さえ受ければ以前の日常を取り戻せると、期待を膨らませている人もいるだろう。しかし、感染症の専門家は、既に供給が開始されているファイザー社やモデルナ社のワクチン、あるいは現在開発中のワクチンのいずれであっても、接種したからといって感染予防策が不要になるわけではなく、引き続きマスクを着用し、社会的距離を維持する必要があると警告している。
 これらのワクチンの安全性と有効性を検証した臨床試験では、主にCOVID-19の重症化や死亡を防ぐことができるかどうかに焦点が当てられているという。よって、ワクチン接種を受けた人が感染した場合は無症状で経過することが多いと考えられるものの、その人から周囲の人にウイルスが伝播してしまう可能性の有無は、まだ分かっていない。
 米ヴァンダービルト大学医療センターのWilliam Schaffner氏は、「ワクチンを接種していても感染する可能性があり、かつ他者に感染させる可能性もある。COVID-19のワクチン接種後にそのようなことが起きた事例はまだ確認されていないが、それが起きないと否定できる根拠もない」と述べている。
・・・ワクチン接種後にもマスクを着用し社会的距離を保つことで、自分が無症候性の保因者になるリスクを下げられるとしている。・・・「ワクチン接種後に、もし糖尿病患者や60歳以上などのハイリスクの人をハグしたりすると、その人たちに感染させてしまうかもしれない」と警告を発している。
・・・ワクチンの有効性が十分でないと指摘する声も聞かれる。接種により罹患リスクが低下するが、それでもわずかながらリスクは存在するという。・・・ワクチンの有効性は95%だ。つまり、5%のリスクが残されている・・・。


■ 新型コロナウイルスワクチンにマイクロチップが入っているというのは本当?ワクチンは不妊の原因になる?

(①)ワクチンにマイクロチップは入っておらず、不妊の原因にもならない。


<参考資料>
① 新型コロナウイルスワクチン、よくあるQ&A
② 副反応に匹敵!?新型コロナワクチンのもう1つの不安要素とは
③ ワクチンを打てばCOVID-19対策は不要?
④ 一般社団法人日本感染症学会ワクチン委員会「COVID-19 ワクチンに関する提言(第1版)」(2020.12.28)

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