これは、新型コロナ騒ぎの当初からずっと抱いてきた疑問です。
ご存じのようにPCRはウイルスの遺伝子を検出する検査です。
しかし遺伝子全体を検出するわけではなく、その一部。
つまり、ウイルス粒子がバラバラになって壊れていても、
その一部が検出されただけという可能性があるのです。
新型コロナウイルスは「エンベロープ」という膜に覆われています。
この膜が壊れると、感染力を失います。
しかしこの状態でも、遺伝子構造の一部が保存されていれば、
PCR陽性になる可能性があるのです。
わかりやすい例でいうと、アルコール消毒はこの膜を壊すわけです。
だから有効。
つまり、「エンベロープ破壊=感染力消失」。
一方、ノロウイルスのようにアルコール消毒が効きにくいウイルスは、
このエンベロープを持っていません。
壊すターゲットがないので、アルコールの効きが悪いというカラクリです。
さて、ウイルス学の基本として、便の中にいるウイルスはエンベロープが壊れているそうです。
新型コロナでは、便の中にもウイルスが検出されると報道されています。
では、ノロウイルスのように便から感染(糞口感染)するのでしょうか?
現時点では「糞口感染の可能性は低い」
(Emerg Infect Dis. 2020; 26(7) Epub 2020 Apr 2. PMID32240078)
と報告されています。
話をPCR検査に戻します。
PCR検査では長期陽性が続く例がニュースで報道され、
一般市民を不安に陥れています。
現実問題として、PCR陰性にならなければ隔離解除できないというルールを使用している日本は、陽性だけど症状がない人も退院させられずに困っています。
ウイルスが生きているか、感染性があるかを評価できる検査は、
現時点では「ウイルス培養」しかありません(私の知識の範囲では)。
PCR陽性者の検体がウイルス培養でも陽性になるかどうか、
とっても興味があります。
実はそれを検討した研究があります。そしてその結果は・・・
「発症9日目以降にウイルス培養が陽性になった症例はなかった」
(Nature. 2020; PMID32235945)
と世界の科学雑誌のトップに君臨するNatureに掲載されました。
また、同じ論文の中で、
・呼吸器検体ではPCR10の6乗コピー/mL未満だと感染性のあるウイルスは検出されない。
・PCR定量とウイルスの感染性との相関ははっきりしていない。
と述べられています。
やっぱり・・・
散々振り回されてきたPCR検査。
PCR検査に依存する感染対策がいかに危うく、不確実性を含んでいるかが徐々にわかってきました。
他の報告でも、
「発症6日以降での感染はなかった」
(JAMA. May1, 2020)
と観察されています。
そろそろ、日本の隔離解除基準を見直す時期ではないでしょうか。
そしてこれから普及する「抗原検査」。
同様に、
「抗原検査陽性=感染力あり?」
という疑問が湧いてきます。
誰か教えてください。