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徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

肥満の原因はアブラ(脂質)ではなく炭水化物とスイーツ

2022年05月04日 08時20分29秒 | 小児科診療
「アブラ(脂質、油、脂)を食べると体脂肪になる」
と長年信じられてきました。

しかし近年、この常識が覆されつつあります。

体脂肪の原因は「炭水化物」である
と。
もちろん、脂質も一役買いますが、
主役はやはり炭水化物。
こちらの記事のによると、脂肪肝の“脂肪”は食事の脂由来が14%、残りの86%は炭水化物・糖質由来と説明されています;

肝臓にたまる脂肪のうち、食事から摂った油や肉や魚などの脂が直接影響するのはわずか14%にすぎません。残りの86%は、体についている皮下脂肪と内臓脂肪が溶け出した脂が60%で、糖質から肝臓で合成される脂肪が26%です。

一方で、
「甘いものを食べると太る」
という常識もありますね。

甘いものは糖ですが、
なぜ糖を摂取すると太るのでしょう?

それは過剰な糖は脂肪として蓄えるシステムが、
人間の身体に備わっているからです。

その主役はインスリン
これが足らない、あるいは上手く働かない病気が糖尿病であることはご存じですね。

インスリンは血液中の糖を組織が利用できるようにしているホルモン。
そして、余った糖を脂肪として脂肪細胞に貯蔵する働きもあるのです。

これは、人類が飢餓の状態に晒されてきた歴史の中で獲得したものなのでしょう。
余った栄養分(糖)を脂肪として蓄え、
次の飢餓に備える、ということです。

炭水化物の話に戻ります。

炭水化物と言われてもピンとこない方、
炭水化物 ≒ 穀物(米、小麦、トウモロコシ)
です。

そして
炭水化物 ≒ 糖質・糖類
と切っても切れない仲です。
どういうことかというと、
炭水化物を食べると消化液で分解され、最後は“糖”として吸収されるから。

ですから、
「甘いものを食べるから太る」
と、
「ご飯やパンをたくさん食べるから太る」
は身体にとって同じことなのですね。

言葉をを変えて「白いごはんを食べるのは砂糖を食べるのと同じ」と表現する医師もいます。

肥満にならないためには、
「甘いものを控える」
だけではなく、
「ご飯やパンやパスタを食べ過ぎない」
ことも並行して実行しなければ効果が得られません。

現実世界ではどうでしょう。


・ダイエットで有名なライザップは糖質制限食です。


以上、その道のプロが行っている方法は、
脂質(油・脂)ではなく炭水化物・糖が脂肪になる
という考えが基本になっていることがわかります。

もちろん、炭水化物・糖質も栄養として必要ですから、
完全に断つ必要はありません。
ほどほど食べるのがよいということです。

日本人は縄文時代以降、
米を主食においた時点で「糖尿病」という国民病を背負うことになった、
という説があり、私は頷けます。

また、米をたくさん食べるために“しょっぱい”おかず(漬物文化)が発達しました。
これにより「高血圧」という国民病も抱えることになりました。

炭水化物の中には食物線維もあります。
これは人間が消化吸収できず、
糖としてカウントしなくてもよい炭水化物です。
食物線維は腸内細菌のエサになり善玉菌が増えるというメリットがあります。
便秘対策にもなるので積極的に食べてもOKです。

私自身、5年来“緩やかな炭水化物制限”(ロカボ)を実行してきました。
具体的には“主食を食べないだけ”、
つまり“ご飯を食べないでおかずだけ食べる”こと。

厳しい糖質制限をする方は、
とんかつや天ぷらの衣も剥がして食べますが、
そこまでやる決意や勇気がありませんので。

それまで、
「年々体脂肪がついてくるのは運動しないから仕方ないかな」
と半分あきらめていましたが、
ロカボを始めてから、
やせはしませんが体重増加が留まりました。

それから、いくつか気づいたことがあります。

・おかずだけ食べるとすべてしょっぱくて食べられない。日本食のおかずの味付けはご飯がはかどりやすい濃さに調整されている。おかずだけ食べる場合はかなり薄味になるので、高血圧対策になる。

・「おなかいっぱいで動けない」という満腹感は炭水化物による。蛋白質中心の食事を食べ過ぎると「苦しく」なる。

・糖質制限食に慣れると、炭水化物を食べると胃もたれする。胃もたれの程度により、食べたものにどれくらい炭水化物が入っているか感覚的にわかるようになる。この胃もたれが満腹感に通じることがわかった。

・蛋白質中心にすると、満腹感ではなく「もうこの辺でいいかな」と食事を終了するので、食後すぐに動ける。

・「ご飯を食べないと食事をした気にならない」という人は“炭水化物中毒”に陥っている可能性がある。

等々。


<参考>

▢ 「白いごはんを食べるのは砂糖を食べるのと同じ」脳を侵食する"糖質中毒"の恐さ薬物依存症よりずっと治療が難しい
牧田 善二:AGE牧田クリニック院長
▢ ボクサーの食事!減量ダイエット中の食事は?栄養士が教えます!

▢ ライザップ式の食事ルールは痩せる? – メニューやキツイと噂の指導・コンビニで買える商品も大公開!

▢ 医師が警鐘!「フォアグラ肝臓」引き起こす3NG習慣 「脂肪肝」の真犯人は脂肪ではなく「糖質だ」

そろそろマスクを外しても・・・?

2022年05月01日 07時50分22秒 | 小児科診療
最近、世界各国で“マスクを外す”動きが広まりつつあります。

▢ 英イングランド、マスク着用義務を終了へ オミクロン株は収束傾向
▢ 屋外でのマスク着用義務廃止 ワクチン接種進むイスラエルで
▢ 米TSAがマスク着用義務を廃止、CDCと国務省は日本への渡航注意レベルを4から3へ引き下げ
▢ 韓国 屋外でのマスク着用義務を廃止へ「国民の不便を考慮」

いち早くマスク義務を撤廃したイギリスは屋内でのマスクも解除しており、
勇気ある決断です。
他の国々は完全撤廃ではなく、
屋外での解除に留まる傾向があります。

マスクが習慣づいている日本人にはピンときませんね。

なぜ撤廃できるのか?
様々な理由が考えられます;

1.新型コロナが制圧された
2.新型コロナが制圧できないとあきらめた
3.新型コロナを風邪レベルと捉えるようになった

私の印象は、
1→ ✖️
2→ △
3→ 〇
です。

以前の私のブログ、
を読んだ方は、なんとなく以下のようなイメージが湧くと思われます。

・新型コロナは何回も罹る感染症である
・新型コロナは感染回数を重ねると重症化しにくくなる
・ワクチン接種1回は自然感染1回と数えられる

ことが徐々にわかってきたので、

ワクチン接種あるいは自然感染を複数回経験した人は重症化しにくい
国民全体が複数回の免疫獲得の機会があれば医療崩壊を起こすほど多数の重症患者は発生しない

との判断が根底にあると推察します。

解除する国々では、
・国民がマスクを嫌い、イライラしている
・新型コロナを重症感染症ではないと受け止めている
・新型コロナのダメージよりも感染対策による社会経済的ダメージの方が大きいと感じている
という社会通念があるのでしょう。

日本でもようやく専門家から、
「マスク義務をゆるめていいのでは?」
という意見が出てくるようになりました。

▢ 「必要ない場面も・・・」一律のマスク着用に見直しの議論が 犬の散歩や図書館ではマスクを外してもいいって本当?

この中で国際福祉医療大学の和田耕治氏は、
以下の場面ではマスクを外してもよいと言及しています;


皆さんはどのように感じますか?

私の印象は・・・
マスクは本来、ソーシャル・ディスタンスを取れない場合のかわりの手段という位置づけですから、1はOK。

2と3の場面では、感染リスクはどうなのでしょう。
「会話がなければ飛沫は飛ばない」
ことはわかるのですが、
「ふつうの呼吸(呼気)でウイルスを含んだエアロゾルは排出されるのか?」
つまり、
会話をしない、ふつうの呼吸だけで感染するのか?
という疑問が湧いてきます。

検索してみましたが、「ふつうに息するだけ」のデータは見当たりませんでした。
「ふつうの呼吸」と「ふつうの会話」が一緒になって評価されている報告は散見されました。

▢ 呼吸だけで感染力 スーパースプレッダー驚きの飛沫量
▢ 新型コロナ、通常呼吸でも伝染か 米がマスク指針変更の見通し

さて、ソーシャル・ディスタンスが取れない満員電車でクラスターが発生しにくい事実は、
・みんなマスクをしている
・しゃべらない
という2つの要因が大きいと分析されています。

ではもし「満員電車でマスクを外してもしゃべらなければ大丈夫?」なのでしょうか。
解除する前に、是非この実験をしていただきたい。

さらに学校教室における会話なしの授業1コマのエアロゾル浮遊シミュレーションをスパコン「富岳」で検証していただきたいものです(先生はしゃべる?しゃべらない?)。

寒い朝に息を吐くと白くなりますから、
ふつうの呼吸でもエアロゾル(マイクロ飛沫)は出ているはず。
満員電車でタバコを吸えば、会話をしなくてもそのにおいはずっと残ります。

おっと、ここで「エアロゾルはふつうの呼吸(呼気)でも少量排出される」という記述を見つけました;

▢ 新型コロナウイルス:やっぱり空気感染するの?
坂本史衣:聖路加国際病院 QIセンター感染管理室マネジャー



「通常の呼吸」でも「エアロゾルは少量排出される」
と明記されています。
あとは「このエアロゾルが感染力とどの程度リンクするか?」を知りたいですね。

従来の“適切な換気”で解決するレベルなのか、どうか。

我々が相手にしているのは会話で飛び散る“飛沫”ではなく、数時間浮遊する“エアロゾル”です。
石橋を叩いて渡るに超したことはありません。

念を押しますが、
以上の考え方は新型コロナ感染症を“怖い感染症”と捉えたときのものです。
新型コロナを“ふつうの風邪”レベルと国民が受け入れていれば、
マスク解除に何の問題もありません。


新型コロナでは“集団免疫”が成立しない → 流行の制圧はできない

2022年04月29日 19時54分49秒 | 小児科診療
ウイルス感染症の流行が収まる目安として、
集団免疫”という考え方があり、
新型コロナ・パンデミック以降TVでもたびたび取り上げられてきたので、
皆さんご存じのことと思います。

「人口の一定割合以上の人が免疫を持つと、感染患者が出ても、他の人に感染しにくくなることで、感染症が流行しなくなる状態のことです」
と説明しています。

さて、ウイルスに対する免疫を獲得する方法は、
1.自然感染
2.ワクチン接種
の2つがあります。

ワクチンと自然感染で、100%に近い国民が免疫を獲得しているイギリスは、
集団免疫が成立するはずですが・・・実際には感染者が今でも後を絶ちません。

なぜかというと、新型コロナは罹患して免疫獲得しても数ヶ月で減衰し、
3ヶ月後には再感染する状態になってしまうから。

▢ 「人口の6割が感染」なぜ集団免疫はできないのか ほぼ100%イギリス人は抗体を持つが防げず

ワクチン接種で獲得できる免疫は自然感染を上回ることはできない、
というのが従来の基本でした。

自然感染でも3ヶ月後には再感染するウイルスですから、
ワクチンを何回接種しても“罹らない”状態を維持できないことは明白です。

つまり、新型コロナは集団免疫により流行終息を目指せる感染症ではないということ。

このようなウイルスは他にも存在します。

例えば、季節性インフルエンザ。
例えば、ノロウイルス。
この2つは感染回数を重ねても軽く済むようにはならないので、
そういう視点からは新型コロナよりやっかいかもしれません。

ではどうすべきか?

新型コロナはそういうウイルスと諦め、方針を変更しましょう。
目標を流行終息ではなく、重症化予防にシフトするのです。

ブログ内の記事「新型コロナウイルスの“正体”見たり!」でも書きましたが、
新型コロナに何回か罹患するとだんだん軽症化することが期待できるウイルスです。

ワクチンを1回接種すると、1回自然感染したこととほぼ同じ免疫状態になります(実はワクチン接種の方が強力なのですが)。
すると「ワクチン3回接種≒自然感染3回」ですから、
罹るのは防げないけど重症化はしないと思われます。

これから、高齢者と基礎疾患のある人には4回目接種が始まります。
「4回罹ったのと同じ」状態にして、重症化率をさらに下げる考えですね。

今回、医療関係者は接種対象から外されました。
まあ、どちらでもいいんですけど。


2022年春の花粉症は終了

2022年04月29日 12時51分34秒 | 小児科診療
先日、今季の春の花粉症が終わりに近づいていることが報道されました。

花粉 関東など本格的な飛散は終了

私自身、4月中旬までは目がシバシバしていたのですが、
ここ1週間はあまり感じなくなりました。
敏感な方でも、GW終了頃には症状が消えるはずです。

もし、その後も症状が残る場合は・・・イネ科花粉症の可能性があります。
イネ科花粉症と言っても田んぼの稲ではなくて、
道ばたに生えているカモガヤなどの雑草です。
こちらのサイトに花粉カレンダーがありましたので引用します;


花粉を飛ばすのは植物ですから、
桜前線同様、日本全国で飛散時期が少し異なります。
また、花粉の種類も異なります。
例として、北海道エリアと九州エリアの花粉カレンダーも引用;


北海道では、関東地方ではほとんど飛ばないシラカバがメインです。
昔は「北海道にはスギ花粉症はない」とされていましたが、
現在は少し飛んでいるので患者さんもいるのでしょう。

一方、九州エリアでは、
スギ・ヒノキ花粉の飛散期間が関東地方より1ヶ月ほど早まり、
イネ科も4月中旬からたくさん飛びます。



例年、花粉症症状がつらい人には、
「シーズンが終わったから安心」
で済ませないで、来期以降に向けての治療である、
をお勧めします。

抗アレルギー薬による対症療法ではなく、
体質改善して花粉に反応しなくなる体を手に入れよう、
という治療法です。

当院でも数十人のお子さんがこの治療法を行っており、
昨シーズンよりひどかった今シーズンのスギ花粉症も、
「昨年より楽だった」
と手応えは十分です。


世界人口の40%超が新型コロナに罹患済み、日本人は?(2022年4月)

2022年04月29日 07時28分01秒 | 小児科診療
2019年末に新型コロナが登場して、約2年半が経過しました。
インフルエンザ以外の想定外の“パンデミック”に世界は混乱し、
未だに終息の目処が立ちません。

さて2022年4月時点で、
世界人口のどれくらいが新型コロナに罹ったのでしょうか?
最近の記事から探ってみましょう。

 世界人口の40%超がコロナ感染、感染率の高い地域は?/Lancet
2022/04/29:ケアネット)より抜粋;
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、オミクロン変異株(B.1.1.529)の急増が始まるまでに世界に衝撃的な影響を及ぼし、2021年11月14日の時点ですでに38億人の感染または再感染を引き起こし、世界人口の43.9%が少なくとも1回の感染を経験しており、累積感染割合は地域によって大きな差が認められることが、米国・ワシントン大学のRyan M. Barber氏らCOVID-19 Cumulative Infection Collaboratorsの調査で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2022年4月8日号に掲載された。
・・・
COVID-19の世界的流行の開始から2021年11月14日の期間に、SARS-CoV-2感染と再感染を合わせた総感染者数は推定で38億人(95%不確定区間[UI]:34億4,000万~40億8,000万)に達し、世界人口のうち33億9,000万人(43.9%[95%UI:39.9~46.9])がSARS-CoV-2に1回以上感染していた。
累積感染者数は、7つの広域圏のうち南アジアが13億4,000万人(95%UI:12億~14億9,000万)と最も多かったが、累積感染率はサハラ以南のアフリカが100人当たり79.3人で最も高かった。また、高所得地域(日本を含む世界の高所得国を合わせた地域)は感染者数(2億3,900万人、95%UI:2億2,600万~2億5,200万)が最も少なく、東南アジア/東アジア(日本は高所得国に分類され、ここには含まれない)/オセアニアを合わせた地域は感染率(100人当たり13.0人[95%UI:8.4~17.7])が最も低かった
累積感染割合は国や地域によって大きなばらつきがみられ、70%を超えた国が40ヵ国、20%未満が39ヵ国であった。
日本は、感染者数が645万人(不確定区間:508万~802万)、感染率は100人当たり5.0人(不確定区間:4.0~6.3)、感染割合は5.0%(不確定区間:4.0~6.2)だった。

論文はタイムラグがあるので、データは2021年11月までの統計です。
つまり、オミクロン株の流行は含まれていません。
その時点で、なんと世界人口の約40%がすでに罹患!

地位域別ではアフリカ大陸の南部は80%と異常に高い。
現在流行中のオミクロン株は南アフリカで登場しましたが、
南アフリカ内ではそれほど社会問題にはなりませんでした。
その理由は“すでにみんな罹っていたから”と聞いています。

アメリカではこの当時で約30%、
でもその後も増え続けて現在では60%?

“全米人口の60%近くが新型コロナ感染か” 米CDC報告書公表
2022年4月27日 :NHK)より抜粋;
アメリカCDC=疾病対策センターは26日、全米各地で行われた血液検査で検出された新型コロナウイルスの抗体の分析から、これまでに、人口の60%近くが感染したと推定する報告書を公表しました。
CDCは26日、全米で行われた血液検査のサンプルから、新型コロナウイルスの抗体が検出された割合をもとに、これまでに感染した人の割合を推定した報告書を公表しました。
それによりますと、ことし2月に採取された、およそ4万6000人分の血液検査を、統計的に分析した結果、これまでに、アメリカの人口のおよそ57.7%が、新型コロナウイルスに感染したと推定されるとしています。
年代別に見ると、0歳から11歳では75.2%、12歳から17歳で74.2%、18歳から49歳で63.7%、50歳から64歳で49.8%、65歳以上で33.2%となっていて、若い世代ほど感染したと推定される人の割合が高くなっています。
この割合は、アメリカでオミクロン株の拡大が始まった去年12月から大幅に増加していて、報告書は「オミクロン株は、特に子どもの間での感染率が高かった」と分析しています。

アジアは10%台で世界の中では低く抑えられています。
民族の差なのか、生活習慣の差なのか・・・。

日本ではどうでしょう?
緊急事態宣言とかマンボーとか騒いでいても、
まだ5%と非常に低く抑えられていますね。

オミクロン株流行後の日本のリアルタイムのデータ(2022.4.28)は以下の通り;


日本の総人口は、2022年4月現在での1億2,550万2,000人ですから、
単純計算で「6.2%」になります。

まあ、統計に出てくる“PCRや抗原検査で陽性になった”数字のため、
抗体価で評価するとアメリカのように倍増する可能性は否定できません。


話題の「小児急性肝炎」は原因はアデノウイルス?

2022年04月28日 07時55分14秒 | 小児科診療
4月に入ってから、この話題が目につくようになりました。

原因不明の「急性小児肝炎」専門家が警戒する理由〜まだ不明点が多いが、重度な肝炎の兆候とは

子どもに増加する謎の肝炎、移植が必要なケースも 原因はウイルスか
Bruce Y. Lee , CONTRIBUTOR

欧州を中心に小児の急性肝炎例の報告相次ぐ、日本でも疑い例が発生
久保田文=日経バイオテク、加藤勇治=日経メディカル

欧米で重症化する小児肝炎が一定数認められ、
今までわかっている肝炎ウイルスが検出できない、とのこと。

“肝炎”とは字の通り“肝臓の炎症”です。
いろいろな原因によって起こりますが、
急性肝炎はウイルスが原因になることが圧倒的に多いです。

特徴的な症状は黄疸(皮膚と白目が黄色くなる)ですが、
軽症の場合は目立たないこともあり、
ほかは「だるい(倦怠感)」「食欲がない」など、
ふつうの風邪と区別できません。

重症化すると「肝不全」状態となり、
血液中のアンモニアが上昇し、命に関わります。

記事では死亡1例、
それから「生体肝臓移植」を行った事例も紹介されています。

診察では、
おなかを触ると肝臓が腫れている所見で発見されることもあります。

さて、いわゆる“肝炎ウイルス”(肝臓に悪さしやすいウイルス)を忽那Dr.が以下のようにわかりやすくまとめています
B型肝炎ウイルスにはワクチンがあり、
乳幼児の定期接種に組み込まれていますね。

A型肝炎ウイルスにもワクチンが存在しますが現時点では任意接種で、
海外旅行や滞在する場合は接種が推奨される位置づけです。

C型肝炎にはワクチンがなく、
従来急性肝炎 → 慢性肝炎 → 肝硬変 → 肝癌という嫌なサイクルの主役でしたが、
近年薬剤開発が進み、
現在では内服薬で除菌ならぬ除ウイルスできる病気になりました。

D型、E型肝炎は少し特殊で、
私はこれらの肝炎の主治医になったことはありません。

そのほかにもEBウイルス、サイトメガロウイルスなどマイナーなウイルスが原因になることもあります。

しかし記事によるとこれらの既知のウイルスが原因ではなさそうで特定できていません。


なかでもアデノウイルスそのなかでも41型が多い)が多いと報告されています。

アデノウイルス?

夏風邪のプール熱(咽頭結膜熱)の原因として有名なウイルスです。
それから、流行性角結膜炎(略して“流角”)という感染力の強い結膜炎の原因にもなり、胃腸炎を起こすこともあります。

でも小児科医の知識の中に、
というイメージはありません。

新たに登場した変異アデノウイルス?
・・・記事を読むと、まだアデノウイルスを原因と断定する根拠はなさそうです。
三つ目の記事にWHOの見解が引用されています;

WHOは、アデノウイルスが原因という仮説があるものの、患者の臨床像および重症度を完全に説明できないとしている。また、COVID-19パンデミック下において社会のアデノウイルスの広がりが低下したことによる幼児における感受性の亢進、新規のアデノウイルス出現の可能性、SARS-CoV-2との同時感染の影響など、今後さらに検討していく必要があるとしている。なお、患者の多くはCOVID-19ワクチン接種を受けていないため、ワクチンの副反応によるものという仮説は支持されていないとWHOは指摘している。

引き続き情報収集をしていきましょう。

<参考>
小児の原因不明の急性肝炎について

新型コロナ禍でも減っていない「突発性発疹」

2022年04月24日 07時28分27秒 | 小児科診療
少し前に「新型コロナ禍で減った感染症、減らない感染症」という文章を書きました。

先日福島県で開催された第125回日本小児科学会でも題名の内容が報告され、
この事実がますます明らかになりました。

▢ 全国調査でコロナ下でも突発性発疹は減っていないことを確認
中西 亜美=日経メディカル

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下で様々なウイルス感染症の疫学が変化している。一方、突発性発疹の患者数はCOVID-19流行前と変わらないことが示唆されていたが、新潟大学医学部小児科学教室助教の相澤悠太氏らによる調査の結果、全国的に減少していないことが確認された。成果は、第125回日本小児科学会学術集会(会期:4月15~17日、福島県郡山市の会場とウェブのハイブリッド開催)で発表された。
 相澤氏らが新潟県と全国の定点当たり報告数を調べたところ、2020年はいずれも学校閉鎖期間(第10~22週)に突発性発疹患者の減少を認めた以外には、2016~2019年の平均値と大きく変わらず、例年通りの報告数であることが明らかになった。学校閉鎖期間に報告数が減少した理由については、受診控えがあった可能性などが考えられた。
 突発性発疹は乳幼児期に発症する発熱発疹性疾患で、原因病原体であるヒトヘルペスウイルス6B(HHV-6B)とヒトヘルペスウイルス7(HHV-7)に感染すると、生涯にわたり体内にウイルスが潜伏する。感染経路は正確なところは不明であるものの、家族(同胞や親)の唾液を介して感染するとの仮説が有力視されている。また、この30年ほどで突発性発疹の罹患年齢が上昇しており、その要因として考えられているのが離乳食を口移しで与える機会の減少や出生数減による年長児との接触機会の減少などだ。
・・・
 COVID-19流行下では、感染対策の徹底により曝露機会を失った感染症が軒並み減少傾向にあるが、突発性発疹の感染者数は減少せず、2020年上半期で乳児の感染割合が高かったという結果を踏まえ、相澤氏は「HHV6/7の感染経路は市中ではなく家庭内にあるという従来の伝播様式の仮説を支持している」と結論した。


さて、新型コロナ禍で従来より強化された感染対策の影響で、
減った感染症と減らない感染症を観察すると、
その感染症の「感染様式」が浮かび上がってきます。

季節性インフルエンザが姿を消してしまうほどの感染対策でも、
新型コロナは消えないことを医療関係者は驚いています。

季節性インフルエンザは「接触感染+飛沫感染」、
新型コロナも当初は「接触感染+飛沫感染」とされていましたが、
これでは説明できません。
同じであれば、季節性インフルエンザ同様、感染拡大が止まるはずですから。

そこで登場したのが飛沫感染と空気感染の中間である、
「エアロゾル感染」あるいは「マイクロ飛沫感染」です。

先日、日本政府もようやく公式に認めました。

▢ 新型コロナ 「エアロゾルでも感染」 感染研、見解を変更
 新型コロナウイルスの感染経路について、国立感染症研究所(感染研)は28日、ウイルスを含んだ空気中に漂う微粒子(エアロゾル)を吸い込んでも感染するとの見解をホームページで公表した。感染研はこれまでエアロゾル感染に否定的で、飛沫(ひまつ)感染と接触感染だけを挙げた報告書を発表していたため、国内の科学者が「世界の知見とは異なる」と説明を求めて公開質問状を出していた。

実はこの「見解を変更」には伏線がありました。

未だ「空気感染を認めない」日本のコロナ政策の謎有識者8人が連名で国立感染症研究所に質問
鈴木 理香子 : フリーライター 著者フォロー
国立感染症研究所が1月に公表した「新型コロナウイルスの感染経路」の記述に間違いがあるのではないか――。2月1日、感染症や物理学などの有識者8人が連名で国立感染症研究所の脇田隆字所長に公開質問状を送った。

「新型コロナは空気感染」国はなぜ認めないのか空気感染は「迷信的な考え」と軽視される理由
西村 秀一 : 国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルス疾患研究室長 
2022/03/21:東洋経済オンライン)より一部抜粋;
・・・
ダイヤモンド・プリンセス号での感染の大流行が患者の移送作戦で終わろうとしていたころ、私は臨時検疫官として船に乗り込む機会を得ました。
事前の情報から船内の空調システムの概略を知ったのですが、これは「空気感染」が起きるのに最適なつくりだと驚きました。なぜなら、各部屋の空気を1カ所に集め、約3割分外気を混ぜただけで温度調節をし、それを一斉に各部屋に戻すものだったからです。
◆ 700人以上が感染した「仕組み」とは?
なるほど効率的な省エネ空調なのでしょうが、客室の1つに感染患者がいたために、これを介して日を追うごとに感染が拡大し、最終的に700人以上が感染してしまいました。
これだけ短期間に多くの部屋に分散していた大勢の人が感染したということは、特定の汚染か所に触れての接触感染や短時間で落下するような大きな飛沫での感染(飛沫感染)では説明できません。空気感染があった紛れもない証なのです。
何より重要なことは、新型コロナウイルスが発見されてから早い段階(2020年2月)で、すでに接触感染ではなく空気感染だということが、さまざまなところから報告されていた事実です。
それなのに、公に発表された感染経路は「感染者がくしゃみや咳をし、その飛沫あるいはそれを手で押さえたあと、その手で周りの物に触れてウイルスがつき、別の人がその物に触ってウイルスが手に付着し、その手で口や鼻を触って粘膜から感染する」というものでした。
・・・

これはひとつの進歩ですね。
このような科学的事実を踏まえて、感染対策を進化させていくべきだと思います。


今シーズンのスギ・ヒノキ花粉は、まだ半分しか飛散していない。

2022年04月11日 22時23分04秒 | 小児科診療
気になるニュースが目にとまりました。

スギ・ヒノキ花粉 今シーズンの飛散は東京ではまだ予測の5割程度 終了時期はいつ?
2022年4月11日:tenki.jp)より抜粋;
東京都福祉保健局東京都アレルギー情報navi.のデータによると、今シーズン(1月4日から4月4日まで)、東京都千代田区のスギ花粉とヒノキ花粉合計の累積値は、2860.6個/㎠です。予測最大値(スギ・ヒノキ合計)は、5800個/㎠で、まだ予測の5割程度しか飛散していないことになります。

3月中旬から急に患者さんが増え、
「今年は去年よりひどいなあ」と感じつつも、
ようやくピークアウトしてきた印象を持っていましたが、
まだ半分残っている!?
・・・油断できません。

現在はスギ花粉はほぼ飛び終わり、
ヒノキ花粉に取って代わられているタイミングです。

でもスギ花粉に反応する人のほとんどが、
ヒノキ花粉にも反応するため、
4月いっぱいは症状に悩まされることになります。

私は患者さんに、
「GW開けまでは要注意!」
と説明しています。

さて、毎年このシーズンは花粉症情報をチェックしている私ですが、
案の定、昨シーズンもブログ記事を書いていました。

その中で、日本の各地域別花粉飛散状況図を引用しており、
今年の状況と単純比較ができます。

まずは昨シーズン(2021年)の図(ちょっと不鮮明);


「多い」が散見されますが「非常に多い」という表示はゼロです。
そして今シーズン(2022年)の図;


仙台・東京中心に、まだ「非常に多い」地域が認められますね。
今週半ばは台風1号の影響で天気が悪くなるため飛散数が一旦減りますが、
週末からまた「非常に多い」日が予測されています。

この図からも今シーズンの花粉は、
まだまだ飛びきっていないことがわかりますね。
予防や治療の手を緩めると飛散(悲惨)なことになりそうです。

花粉症の皆さん、ご注意ください。

という私自身も花粉症患者ですが、
マスクと花粉症対策ゴーグルを装着して、
近隣の桜巡りなんぞを楽しんでます。


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舌下免疫療法が“効きにくい”人がわかる検査の登場

2022年04月11日 06時29分14秒 | 小児科診療
2022年4月11日現在、
関東地方ではスギ花粉に代わってヒノキ花粉が飛散中です。
今月いっぱい〜GWまでは悩まされそうです。

現在の治療法は抗アレルギー薬内服+局所療法(点眼・点鼻)ですが、
体質を改善する舌下免疫療法も選択肢に入ります。

杉エキスを固めた錠剤を舌の下に含め、
1分間待ってから飲み込むだけ、
それを毎日数年間続ける治療法です。

当院でも数十人のお子さんが行い、恩恵を被っています。

その有効率は約8割で、
約2割が著効(薬が要らなくなる)、
約6割が有効(症状が軽くなり薬を減らせる)、
と説明しています。

残念ながら、残りの約2割は“無効”です。
数年間の努力が報われないのです。

しかし、効くか効かないかはやってみなければわかりません。
なので最初に「2割の方には効きませんよ」と念を押しておきます。

さて先日、
「舌下免疫療法が無効の人を鑑別できる」
というニュースが耳に入りました。

スギ花粉症「舌下免疫療法」の効果、遺伝子型で予測可能に 福井大など
福井大と筑波大などでつくる研究グループは五日、スギ花粉症の治療法「舌下免疫療法」の効果を患者ごとに判別できる遺伝子型を特定したと発表した。数千円程度の比較的安価な検査方法も確立し、臨床検査としての実用化を目指している。実現すれば、治療前に患者の血液や唾液から遺伝子型を調べることで、治療効果の出やすさを医師が説明できるようになる。 
・・・
研究グループは、免疫反応に関わるHLA遺伝子に着目。遺伝子型に個人差があるため、三重県の耳鼻咽喉科で舌下免疫療法を二年以上受けているスギ花粉症患者二百三人について、この遺伝子型と治療効果の関連性を調べた。その結果、スギによる花粉症で、舌下免疫療法が効きやすい患者と効きにくい患者を判別できる遺伝子型を発見した。
さらに、血液や唾液からDNAの特異的な塩基配列を調べることで、舌下免疫療法が効きにくい遺伝子型の有無を判別できる検査方法も確立。HLAの遺伝子型を調べるのに比べ、十分の一ほどの費用で済むという。

これは画期的です。
早く実用化してもらえると助かります。


病院・医院の“待ち時間”再考

2022年04月09日 07時54分39秒 | 小児科診療
先日、当院の google map に、
「予約システムを利用しても待ち時間が長い」
という投書がありました。

病院・医院の待ち時間について、再考してみたいと思います。

実は私は総合病院の専門外来に通院する患者でもあります。
まずは患者側(待たせられる側)の視点から。

長年通院していますので、
主治医が何回か替わっています。

最初の主治医は中堅の専門医でした。
毎回、待ち時間は1時間程度。
まあ、こんなものと思っていました。

次の主治医は研修期間が終了したばかりの若手。
待ち時間は2-3時間と一番長かった・・・。
まあ、読書の時間と割り切って過ごしていました。

その理由は、単純に予約数がキャパを超えて多いこと。
なぜ多くなるかを察すると、
担当した入院患者が退院すると、
そのフォローでどんどん患者さんがたまっていきます。
赴任当初は少なかった予約数も、
1年経てばパンクしてしまう・・・
と私自身の勤務医経験から想像されます。

午前中最後の予約でも、順番がきて診察室に入るのは午後2時頃、
そこには疲れた表情の若手医師が座っています。
聞くと、
「このあとすぐに検査が入っていて昼食を取る時間もない」
とのこと。
なんだかかわいそうになり、
気を遣って早々と診察室をあとにする私。

あれ、身の上話は聞いたけど、診察してもらったっけ?

最後(現行)の主治医は肩書きのあるベテラン医師。
予約数を完璧にコントロールしているので、
待ち時間がほぼゼロ!
長年通院しているけど、こんなこと初めてです。

以上、病院専門外来の待ち時間の長さは、
その医師が抱えている患者数と予約枠との相対関係で左右される、
と感じています。


次に医師側(待たせる側)の視点から。
病院の専門外来と異なることは、
いろんな相談内容の患者さんが入り交じることです。

昨今の小児科開業医は大抵、予約システムを導入しています。
このシステムは大きく分けて2種類があります。
①時間予約
②順番予約

①は病院で普及している「午前あるいは午後何時何分頃」を決めるタイプ。
②は銀行窓口によくある順番の紙をもらって待つタイプ。

開業する際、どちらを採用するか迷いに迷いました。
結論として、私が選んだのは②の順番予約。
銀行と異なるのは、
・直接出向かなくてもスマホで順番が取れること、
・スマホで進行状況を確認できること
で、自分の順番が近くなったら医院に向かうイメージです。

その選択理由は・・・

・医師側・患者側双方が納得できる医療を目指したいので、混んでいるからといって端折ったり、短く切り上げることができない。
・アレルギー科を標榜しているので、その相談に来た患者さんは風邪の診療時間(5-10分)より長く(数十分)かかることが多い。

・・・のため、一人一人の診療時間が様々で一定せず、
①の時間予約ではクレームがたくさん来ることが予想されたからです。

一方②の順番予約は、順番だけ決めて「何時何分に診察します」という約束はありません。
こちらの方が自分の診療スタイルに合っていると判断しました。

ただ、「あと何分後くらい」という目安の時間は表示されますので、
それを見てのクレームは時々聞こえてきますが。

もし、待ち時間の長さを調節してクレームを減らすことを優先すると、
「今日は混んでいるので、その話はまた次回」
という診療になってしまいます。
すると、患者さん側に不満足感が生まれ、それがまたクレームになります。

「予約しているのに待ち時間が長い」と当院に投書した方は、
「今日は混んでいるので、その話はまた次回」を受け入れるでしょうか?
・・・おそらく受け入れられず、そちらを投書のネタにするのがオチでしょう。

そして、医師側の私にも
「ああ、今日のあの患者さん、あの説明をしなかったなあ」
と不満足感が残り、これもイヤなんです。

診療はスーパーのレジのようには捌けません。

一人一人、相談内容が異なりますし、
現在のコロナ禍では感染対策上、順番が前後することもあります。

医療行為は人間がやっている作業なので、
どうあがいても計算通りにはいきません。

開業して17年が経ちました。

予約システムについては、
時間にタイトに生活している方は①時間予約が向いており、
時間に余裕があり診療内容を重視したい方は②順番予約が向いている、
と感じています。

というわけで当院には、
「何時何分に見てもらわないと困る」
という患者さんは向いていません。
もし待ち時間が長くなっても待っていただける方には、
精一杯診療させていただきます。

昨日も、最後に診療した風邪患者さんは午後7時。
待ち時間が長くなり申し訳ありませんでした<(_ _)>。