当院は小児科ですが、
先週末からスギ花粉症患者さんが押し寄せてきています。
まるで季節性インフルエンザの流行期のように、
外来患者さんがモノトーンに見えてきます。
「昨年は来なくて済んだけど、今年は我慢できないので来ました」
「目がかゆくて痛くて泣いている」
「鼻が詰まって苦しくて夜眠れない」
等々の訴えで受診されます。
「今年初めてなんです」
と目をかき壊して赤く腫らした3歳前後の幼児も散見されます。
2月までは、
というニュースも流れましたが、
先週末からの患者激増を見るとそうでもなさそうです。
さて、肝心の治療の話を。
花粉症の治療のスタンダードは、
・抗アレルギー薬内服
・抗アレルギー薬点眼
・抗アレルギー薬点鼻
のラインナップです。
今年は、
「薬を飲んでいるけど症状が治まらない、なんとかして!」
という訴えを耳にします。
上記抗アレルギー薬中心の治療でも症状が治まらない場合は、
アレルギー反応を強力に抑える“ステロイド薬”の出番です。
しかし、この“ステロイド薬”は上手に使わないと副作用が問題になります。
危険度から言うと、
△ ステロイド点鼻
❌️ ステロイド点眼
❌️ ステロイド内服
と考えてください。
鼻水中心なら抗アレルギー薬内服や、
抗アレルギー点鼻薬で治まることが多いのですが、
鼻づまりがひどいときは飲み薬だけでは無理で、
ステロイド点鼻薬を使います。
他のルートと比べて、点鼻では心配な副作用は少ないです。
内側に向けてプッシュすると鼻血が出やすくなるくらい。
私は、
【指導】ステロイド点鼻は後頭部に向けて、かつ少し外側に向けてプッシュしましょう。
と指導しています。
長年ステロイド点鼻を使用してきましたが、
副作用で困ったことはほとんどありません。
白目がブヨブヨに腫れて充血し、
「目を取りだして洗いたい」
レベルの患者さんは、抗アレルギー薬点眼では解決せず、
ステロイド点眼が必要になります。
しかし、ステロイド点眼には、
「眼圧上昇」「緑内障」
という怖い副作用がありますので、
点眼・点鼻にステロイドを使わざるを得ず、
それでもなお症状がつらい・・・
最後の切り札は“ステロイド内服”。
しかし、ご存じのようにステロイド内服は全身にステロイドが巡るので、
頓用・頓服なら許容範囲ですが、
常用すると全身各臓器に副作用が出る可能性があります。
全身投与という意味では、
「一月に一回のケナコルト注射」
も同様です。
当院では症状のつらい方に対して、
ステロイド点眼・内服に手を出す前に、
漢方薬の併用を勧めています。
漢方薬の利点は、
・抗アレルギー薬と併用できる
・眠くならない
・鼻づまりに効く
・目のかゆみに効くエキス剤もある
等々。
花粉症に使う漢方薬は1種類ではありません。
私が使用するラインナップは、
・小青竜湯
・大青竜湯(麻黄湯+越婢加朮湯)
・葛根湯加川芎辛夷
・苓甘姜味辛夏仁湯
・麦門冬湯
・柴朴湯
・柴胡桂枝湯
等々。
これらを患者さんの症状・診察所見で使い分け、
飲めた患者さんは確実に満足度が上がっています。
毎年薬が欠かせず、春がゆううつな患者さんには、
舌下免疫療法による体質改善がお勧めです。
イメージがわきにくいと思いますので、
具体的な投与方法を提示します;
スギ花粉のエキスを固めた柔らかい錠剤を、
舌の下に置いて口を閉じます → すぐに溶けます。
でもそれをすぐに飲み込まないで、
1分間ガマンしてから飲み込み、その後、
5分間は飲食を避け、
2時間は激しい運動は避けていただきます。
これを数年間毎日続けると、
スギ花粉症の症状が軽くなり、薬が減らせます。
有効率は8割です(残念ながら10割ではありません)。
「舌下免疫療法は何歳からできますか?」
という質問をよくいただきます。
実は開始年齢に制限はありません。
が、実際にはこの治療を理解し、
・1分間つばを飲み込まないでガマンできる
・2時間暴れないようにできる
ことが可能な、小学生以降にお勧めです。
(中には5歳で始めた患者さんもいます)
なお、スギ花粉が飛んでいる季節に開始することはできませんので、
今希望される方は6月まで待っていただくことになります。
当院ではすでに数十人の子どもがこの治療を受けており、
手応え&満足度は十分です。
詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
以上、当院の花粉症治療を紹介させていただきました。
・他院でよくならなかった方
・漢方薬を試したい方
・舌下免疫療法に興味のある方
どうぞご相談ください。