徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

オミクロン株BA.5の特徴を確認してみました。

2022年08月14日 07時46分42秒 | 小児科診療
オミクロン株BA.5が世界中を席巻しています。
といっても、一番騒いでいるのは日本かもしれません。
諸外国は、どんどん制限を緩和してきて、
「新型コロナはふつうの風邪」
にソフトランディングさせつつあります。

最近、「日本の患者数が世界一」というニュースが流れました。
諸外国は検査をしなくなったので当然かもしれません。
さらに、諸外国はオミクロン株BA.1とBA.2に相当数感染済みなので、
BA.5には感染しにくいという医学的理由もあるようです。

日本は「制限のない夏休み」までなんとかたどり着いたものの、
現在も感染症報第二類相当の扱いで全数把握し続けています。

さて、流行拡大に伴いBA.5の臨床像・症状が見えてきました。

忽那賢志:感染症専門医(2022/8/13)

いったい、どの程度怖がるべきなのでしょうか。
忽那先生がまとめたわかりやすい図表を読み解いて説明します。


▢ オミクロン株BA.5の症状


武漢株〜デルタ株の頃は、咳〜呼吸困難、倦怠感、味覚/嗅覚異常がクローズアップされていました。
上のグラフを見ると、のどの痛みが特徴ではありますが、ほかは咳・鼻水、頭痛、発熱とふつうの風邪とかわらず、よく指摘される強い倦怠感・関節痛/筋肉痛は30%弱にとどまります。

私は小児科医で、日々、新型コロナPCR陽性者を診療していますが、
発熱・全身倦怠感でつらそうな患者さんがいる一方で、
咳・鼻汁というふつうの風邪症状の人もいます。

「ものを飲み込めないほど強い咽頭痛」はあまりいません。
強い咽頭痛を訴える場合は、新型コロナよりも夏風邪のヘルパンギーナを疑います。

それから、嘔気・嘔吐が目立つ患者さんも多くいて、
上のグラフとちょっと異なりますね。

小児科医の間では、
「ワクチン接種済みの子どもの方が、未接種の子どもより症状が軽い」
という印象が共通認識です。


▢ 小児患者の発熱率は高い


高齢者と比較して、子どもでは発熱率が高いという報告があります。
これは本来の症状にワクチン接種が影響していると考えられます。

もともとある季節性の風邪コロナウイルスは、
小児期から何回も罹り、
だんだん軽く済むようになり、
大人になって罹っても熱が出にくい鼻風邪に落ちつきます。

新型コロナウイルスにおいても、この性質が観察されるようです。

ワクチン接種1回は、1回感染したのと同等の免疫獲得ができます。
ワクチン接種4回の高齢者は、すでに4回罹ったのと同じと見なすことができます。
つまり軽く済むのですね。

今回のパンデミックで当初高齢者が重症化してたくさん亡くなったのは、
高齢で免疫力が落ちたタイミングではじめて罹ったから、と分析されています。


▢ 年齢別重症化率


やはり重症化は高齢者ほど多い、という現象は武漢株〜デルタ株〜オミクロン株でもかわりません。

小児でも希に重症化することはありますが、
従来からふつうの風邪でも希に重篤な合併症は小児科医の常識でした。
・夏風邪のコクサッキーウイルスによる心筋炎
・おたふくかぜの無菌性髄膜炎
・RSウイルスの細気管支炎
これらと比較しても、コロナの重症化率は突出する頻度ではありません。

小児の入院患者が増えてきたと話題になりますが、
入院しているのは肺炎ではなく熱性けいれんが多いとTVで報告していました。


 重症化するタイミング

武漢株は発症するまでに7日、デルタ株は5日、オミクロン株BA.1は3日、
と潜伏期がだんだん短くなってきましたが、
オミクロン株BA.5では2.4日とさらに短くなっています。

実際に家庭内感染では数日以内に順番に発症する現象が認められ、
インフルエンザに近い印象になりました。

重症化するタイミングも、武漢株では発症後約1週間でしたが、
現在のオミクロン株BA.5では発症後2-3日がピークとこちらも短縮してきて、
あっという間に重症化するので臨床現場が大変です。


以上、オミクロン株BA.5情報を拾ってみました。
今後も新型コロナは変異株に振り回されながら、ふつうの風邪にソフトランディングしていくものと思われます。



感染対策も、基本を抑えて、ゆるめてもよいとわかったところはゆるめて生活していきましょう。
つまり、屋内では換気を重視し、接触感染対策はある程度ゆるめてもOKということです。

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