徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

高齢者の熱中症対策

2024年07月04日 07時58分45秒 | 小児科診療
梅雨本番となり、熱中症のニュースが聞かれるようになりました。
昔は熱中症=酷暑の中でのイベント・運動、というイメージでしたが、
近年問題になるのは“高齢者”、それも“室内“での発生です。

なぜ高齢者?
なぜ屋内?

という疑問の答えてくれる記事が目に留まりましたので紹介します。

<ポイント>
・熱中症で救急搬送される患者の過半数が高齢者である。
・高齢者が熱中症になりやすい理由;
 ✓ 水分をためる筋肉量が少ない。
 ✓ 喉の渇きを感じにくい。
 ✓ 暑さ・寒さを感じにくい。
 → 表示の大きな温度計を用意すべし。
・高齢者がエアコンをつけない理由;
 ✓ 電気代を節約したい。
 ✓ クーラーは体に悪いという思い込み。
 ✓ 昔からの価値観や習慣が変えられない。
・高齢者に正論で説得しても効果がない。
・対処法;ムチではなくアメを上手に使う
 ✓ 子供や孫と会う約束をする
 ✓ 褒めてモチベーションを上げる(お世辞でもいいからすぐに褒めることが大切)
 ✓ 自分で選んでそうしているという感覚を持ってもらう
 → 上記を効果的に使うにはふだんから“親とこのコミュニケーション”があることが必要。


■ 「熱中症の怖さを伝えても微動だにしない」猛暑なのに冷房をつけない頑固な老親が素直になる必殺フレーズ
〜エアコン拒否は「電気代が高いから」だけではなかった
井上 智介(産業医・精神科医)
2024.6.17:PRESIDENT Online)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 老親の熱中症を防ぐにはどうしたらいいのか。精神科医の井上智介さんは「高齢者は、体が熱中症になりやすいことに加え、暑くてもエアコンをつけない人も多い。しかし、熱中症の危険を訴えて理屈で説得しようとしても難しい。親にとって、『アメとムチ』のうちの『アメ』は何かを考えて、伝え方を工夫する必要がある」という――。

▶ 高齢者は熱中症になりやすい
 今年の夏も、全国的に猛暑になりそうです。
 なぜ高齢者は熱中症になりやすいのでしょうか。
まず、高齢者の体は、もともと熱中症になりやすくなっています。筋肉は、体の熱をつくるほか、体の水分をためておくタンクとしての役割もあるのですが、人の体は加齢にともなって筋肉が落ちます。さらに、のどの渇きも感じにくくなるので、水分補給を怠りやすくなります。このため、筋肉の少ない高齢者は、体内の水分を保持できず、体温の調節をする機能が落ちて、熱中症になりやすいのです。
 さらに、年をとると、暑さや寒さを感じ取る感覚も鈍くなります。このため、暑さや寒さに応じて着るものを変えたり、空調で気温を調節する力も低下するのです。
 自分の体で暑さや寒さを感じることが難しいので、まずは、表示が大きくて見えやすい、温度計を設置してあげるといいでしょう。体感に頼れない分、室温調節が必要かどうかを温度計の数字ではっきりと「見える化」できるようにしてあげてください。

▶ なかなかエアコンをつけないのはなぜか
 しかし、温度計で、気温が上昇しているのがわかっていても、なかなかエアコンをつけない高齢者は多いようです。理由は大きく3つあります。
 1つ目は「電気代を節約したいから」。高齢者は、年金暮らしの人が多く、収入が安定していない人もいます。ものの値段も上がっていますし、電気代も年々上がっており、今年は特に値上がりが大きくなっています。そのため、「多少暑くても、我慢すればいい」と、エアコンをなかなか使わないというわけです。
・・・
 2つ目は、「クーラーは体に悪い」という思い込みです。昔から「クーラー病」という言葉があるように、「クーラーは体が冷えるので体によくない」と刷り込まれている高齢者は少なくありません。実際、筋肉の少ない高齢者には、ちょっとした冷風も寒く感じてしまうことがあります。・・・
 3つ目は、「昔からの価値観や習慣が変えられない」。窓を開けて自然の風を入れる、庭先に打ち水をする、暑ければ扇風機を使う……。「夏の暑さは、そうやってしのぐべきもの」という価値観が根強く、これまでの習慣がなかなか変えられない高齢者も少なくありません。・・・
 これら3つが複雑にからまって、「周りがいくら言ってもなかなかエアコンを使わない」ということになってしまうのです。

▶ 正論で説得しようとしても効果はない
 こうした高齢者には、正論をぶつけて説得しようとしても、なかなかうまくいきません。・・・
 一般的に、人間の行動を変えるには「アメ」と「ムチ」を考える必要があります。「行動を変えると、こんなにいいことがある」という報酬(アメ)を渡すか、「行動を変えないと、こんなに悪いことが起きる」という罰則(ムチ)を課すか、ということです。
 たとえば「○○をしてはいけない」と、行動を禁止するときには、ムチが有効です。一方、行動を促すには、アメのほうが効果的です。
 高齢者のエアコンの問題は、行動を禁止するのではなく、行動を促すほうなので、アメのほうが効き目があると考えられます。「エアコンをつけないと熱中症になってしまうぞ」と脅かしても響かないのです。
 それよりも「エアコンをつけたら、こんなにいいことがあるよ」と、アメを渡すことを考えたほうがいい。
そのためには、自分の親にとって、何が「アメ」=「ご褒美」になるのかを考えてみるといいでしょう。何が「アメ」になるのかは一人ひとり異なりますが、例えば、こんなことが考えられるでしょう。

▶ 子供や孫と会う約束をする
 特に、離れて住んでいる高齢者にとっては、子供や孫と会うのは、楽しみなことではないでしょうか。「子供や孫と会う」ことを「エアコンを使って元気でいること」の報酬にすることで、行動を促す方法です。
「お盆に帰るときまで元気に過ごしてほしいから、部屋の温度計が28度以上になったらエアコンをつけて、体調に気を付けて」「○月○日に子供と会いに行くから、熱中症にならないように毎日エアコンをつけてね」
こういった「会う約束」をすることで、「じゃあ熱中症にならないように、エアコンをつけて元気に過ごそうか」といった行動につながりやすくなります。

▶ 褒めてモチベーションを上げる
 エアコンの利用も、一日つけるだけでは意味がありません。夏の気温が高い間、継続して利用して習慣化することが大事です。そのためには、「褒める」ことで、モチベーションを維持することが効果的です。
 エアコンではありませんが、「褒める」ことでモチベーションを維持することに成功した事例があるのでご紹介しましょう。
 ある男性が、医者から痩せるように言われて、渋々スポーツジムに通い始めました。イヤイヤながら通っていたのですが、ある時、この男性がスポーツジムから帰ってきたときに、その男性の妻が、「いい感じに筋肉がついて、かっこよくなってきたね」と、褒めたのだそうです。するとその男性は、嬉々としてスポーツジムを継続できました。・・・
 妻が褒めたのは、夫の「スポーツジムに行く」という行動そのものではなく、その行動によって生じた“変化”(筋肉がついてきた)です。それが夫に大きな報酬を与え、継続を促すことになったのです。

▶ 行動による“変化”を褒める
 これをエアコンにも応用してみましょう。エアコンを利用することのモチベーションを維持するためには、「エアコンをつける」という行動自体でなく、その行動で得られる結果を褒めるようにします。
 例えば、「エアコンをつけていると、汗まみれになっていなくて清潔感があるね」「やっぱりエアコンを使っていると、顔色がよくて若々しく見えるね」「家の中でキビキビ動けるようになっているね」といった声をかけてはどうでしょうか。会ったときに伝えてもいいですし、離れて暮らしているなら、テレビ電話を使って伝えてもいいでしょう。
 ポイントは2つあります。一つ目は、うそでもお世辞でもいいということ。大げさに褒めてあげてください。そして二つ目は、すぐに褒めることです。「即時性」といいますが、その行動を行ったすぐあとに褒めるのがベストです。先週、先月のことを褒められても、効果は薄れてしまいます。

▶ 「自分で選んでそうしている」という感覚を持ってもらう
 人間は誰しも、強制されるのはいやなものです。特に親の場合は、子供から強制されて行動を変えることには抵抗感が強いでしょう。子供が「エアコンをつけろ」と言い続けるのは、溝が深まるばかりになります。
 ですから、親が「自分で選んでそうした」という感覚を持ってもらえるような伝え方をするといいでしょう。
 たとえば、「暑い時には、窓を開けるのもいいし、扇風機を使うのもいい。打ち水をしてもいいし、遮光カーテンやすだれを使うのもいい。公民館や図書館など、エアコンが効いたところに涼みに行くのもいい。ただし室温が28度超えたら、エアコンをつけよう」と伝えます。
 単に「室温が28度超えたら、エアコンをつけて」と言うだけだと、選択肢がなさそうですから、ほぼ強制になってしまいます。その前に、さまざまな暑さ対策の選択肢を提示することに重点をおいてください。こうして、本人が主体性を持って、「自分で選んでそうしている」という感覚を持ってもらうようにしましょう。

 ここでは、「子供や孫と会う約束をする」「褒めてモチベーションを上げる」「自分で選んでそうしているという感覚を持ってもらう」の3つを挙げましたが、いずれも、親子のコミュニケーションがカギを握ります。親が普段、どんな行動をしているのか、どんなことで嬉しいと思うのか、どんな言い方をすると耳を傾けてくれるのかを知っておかないと、的外れな言い方になりかねません。
 1年のうち、エアコンが必要な期間は長くなっていますし、今後もこの傾向は変わりそうにありませんから、毎年夏になると親の熱中症を心配する必要は出てきます。親の考えや生活スタイルを尊重しながら、最適なやり方を探してほしいと思います。

▶ 認知症の兆候にも気を付ける
 冒頭でお伝えしたように、年をとると暑さに対する感受性が低下しますが、認知機能が衰えると、さらに感覚が鈍化します。自分の体調の変化にも気付きにくくなる可能性があります。
真夏なのに、コートを着込んで外出したり、厚い冬用の布団で寝たりする高齢者もいます。こうしたちぐはぐな行動の背景には、認知症が潜んでいる可能性があります。帰省の機会が限られている人は、こうした点も頭の片隅に置いておき、お盆など、夏の様子も見るようにするとよいでしょう。・・・
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小学校で集団アレルギー発生!〜原因はビワ?

2024年06月30日 05時20分36秒 | 小児科診療
2024年6月末に、山梨県の小学校で100人以上に同時にアレルギー症状が発生しました。
原因は学校給食に出されたビワと報道されました。

果物アレルギーと一口に言っても、
実は3種類あります。

1.いわゆる“果物アレルギー”
2.口腔アレルギー症候群、あるいは花粉-果物アレルギー症候群
3.仮性アレルゲン(あるいは生理活性物質)による症状

1は特定の果物を食べてから30分〜2時間後に皮膚症状(じんましん)が出るタイプ、中には消化器症状(嘔吐・腹痛・下痢)や呼吸器症状(声がれ、咳込み、喘鳴、息苦しい)などを伴う重症型もあります。

2が今回のエピソードに当てはまります。先行して花粉症を発症し、その花粉のアレルゲン構造と似た構造を持つ果物アレルゲンを食べた際、「あ、花粉が入ってきた」とカラダが誤って認識して誤爆するメカニズム。
ただ、この場合の果物アレルゲンは消化酵素で分解されてしまうので、吸収してから思い全身症状が出ることは稀です(例外あり)。
そしてビワはヒノキ花粉と関係があることが判明しています。
つまり、今回症状が出た生徒は、ヒノキ花粉症がもともとあって、ビワを食べたときにカラダが「ヒノキ花粉が入ってきた!」と反応してアレルギー症状が出た、というカラクリです。
ヒノキ花粉症?ってメジャーではありませんが、実はスギ花粉症の7〜8割にヒノキ花粉症が合併していますので、スギ花粉症患者さんはヒノキ花粉症も持っていると考えた方がよいでしょう。

3は省略します(詳しく知りたい方はこちらをご覧ください)。


<参考記事>

■ 学校給食「ビワ」で集団アレルギー!意外と 知らない「花粉症と果物アレルギー」の深〜い関係
アサ芸プラス)より抜粋(下線は私が引きました);
 2024年6月25日、山梨県富士吉田市の学校給食に「ビワ」が出された。これを食べた市内の小中 学校の児童生徒3500人のうち126人が、のどの違和感など口腔アレルギー反応を訴えた。 のどのかゆみや違和感、唇の腫れのほか、充血や腹痛、じんましんなどの全身症状が出た 子供もいたという。
 同じ給食メニューを食べた市内の保育園ではビワが提供されておらず、アレルギー症状を 起こす園児がいなかったため、早々にビワアレルギーと判明した。・・・
 ビワでアレルギーを起こしやすいのは、3月から4月にヒノキ(カバノキ科)の花粉で花 粉症を起こす人。カバノキ科の花粉とビワに含まれるタンパク質が似ており、ビワを口に すると、口の中や喉の粘膜がアレルギー反応を起こす。ヒノキ花粉症は最もメジャーなス ギ花粉症の時期と重なっているため、ヒノキ花粉症を自覚していない人は少なくない。ヒ ノキ花粉の人は豆乳に含まれるタンパク質でもアレルギー反応を起こすため、要注意だ。
・・・
スギ花粉より早く、1月からアレルギー症状が出る人は、ハンノキやシラカンバの花粉症 かもしれない。桃やリンゴのアレルギーを起こしやすいのだ。
・・・
ひと昔前は果物でアレルギーが出るなんて、思いもよらなかった。今回のビワ集団アレル ギーは、子供たちに美味しい国産フルーツを味わってほしいという食育の一環で、不幸な アクシデントというしかない。
口腔アレルギーが判明し、生食のフルーツは食べられなくなっても、ジャムやゼリーなど 加熱調理したものなら食べられることがある。

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皆さん、マスクはしてますか?

2024年06月28日 06時37分05秒 | 新型コロナ
2023年5月に新型コロナが感染法上、“2類相当”から“5類相当”に格下げされてから、
巷の感染対策も随分、緩んできました。

街中ではマスクをしている人の割合が減少し、
コンビニではアルコール消毒を撤去している店舗も見かけるようになりました。

さて、医療の現場では?

私は診療中、医療用の「N95」マスクの使用をずっと続けています。
これは密閉性が高く、キチンと装着すると苦しくなるタイプ。

なぜかというと、以前は医療用簡易マスクである「サージカルマスク」を使用していたのですが、
子どもにも流行が始まった2022年8月、
マスクをできない乳幼児達が目の前で咳き込んでウイルス飛沫・エアロゾルをまき散らす状況下、
私も感染してしまいました。

一方、当時N95マスクを片時も外さなかった看護師スタッフの感染者はゼロ。
以降、私はN95マスクに切り替えて、ずっとそれを続けています。
看護師スタッフは逆に、サージカルマスクに切り替えていますね。

さて、なぜここまでやるかというと…私はハイリスクなんです。
年齢が還暦で、持病持ち → 重症化しやすいタイプです。
最後のワクチン接種から期間が空いている今、
2度目の感染をすると無事では済まないような気がしてます。

実際に隣町の開業医がこの春に新型コロナに感染して亡くなりました。
基礎疾患ありの60歳代…私と同じです。

同様にハイリスク者が多い老人施設では、
現在でも感染対策を弛めていないと思います。

さて、新型コロナパンデミックの際は、喧々顎学だった“マスクの効果”。
最近検証された報告が目に留まりました。
ポイントは以下の通り;

・マスクが強制でない場合、3時間未満の短いフライトと比較して、3〜5時間の中距離フライトでは感染リスクが約5倍、6時間以上の長いフライトでは26倍に及ぶ。
・マスクが強制でない場合、フライト時間が1時間長くなるごとに、罹患率が1.53倍増加。
・マスク必須の場合では、長時間のフライトでも感染が報告されなかった!


■ 飛行機でのコロナ感染リスク、マスクの効果が明らかに~メタ解析
ケアネット:2024/06/20)より抜粋(下線は私が引きました);
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの拡大は、航空機の利用も主な要因の1つとなったため、各国で渡航制限が行われた。航空業界は2023年末までに回復したものの、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の多い時期は毎年発生しており注意が必要だ。米国・スタンフォード大学のDiana Zhao氏らは、ワクチン導入前のCOVID-19パンデミック時の民間航空機の飛行時間とSARS-CoV-2感染に関するシステマティックレビューとメタ解析を実施した。その結果、マスクが強制でない3時間未満の短いフライトと比較して、マスクが強制でない6時間以上の長いフライトでは感染リスクが26倍に及ぶことや、マスク必須の場合では長時間のフライトでも感染が報告されなかったことなどが判明した。
・・・
 本研究では・・・2020年1月24日~2021年4月20日に発表されたCOVID-19と航空機感染に関連する研究のうち、SARS-CoV-2感染のインデックスケース(最初の感染者)がいることが確認されていて、フライト時間が明示されているものを対象とした。抽出されたデータには、フライトの特徴、乗客数、感染ケース数、フライト時間、マスクの使用状況が含まれた。フライト時間は、短距離(3時間未満)、中距離(3~6時間)、長距離(6時間超)に区分し、フライト時間と機内でのウイルス感染率の関係を負の二項回帰モデルを用いて分析した。主な結果は以下のとおり。

・15件の研究が解析対象となった。これらの研究には、合計50便のデータが含まれた。
・50便のうち、26便が短距離(2~2.83時間)、12便が中距離(3.5~5時間)、12便が長距離(7.5~15時間)だった。うち、長距離の6便はマスク必須であった。
・50便のうち、35便では機内での感染がなかった(短距離20便、中距離7便、長距離8便)。うち、マスク必須の長距離の6便ではすべて機内での感染がなかった
・15便で1件以上の機内感染が報告された。
・感染率は中央値0.67(四分位範囲[IQR]:0.17~2.17)、短距離では0.50(IQR:0.21~0.92)、中距離では0.29(IQR:0.11~1.83)、長距離では7.00(IQR:0.79~13.75)だった。
・いずれもマスクが強制でない短距離、中距離、長距離のフライトの機内感染リスクを比較したところ、短距離フライトに比べて、中距離は4.66倍(95%信頼区間[CI]:1.01~21.52、p<0.0001)、長距離は25.93倍(95%CI:4.1~164、p<0.0001)の感染リスク増加と関連していた。
・フライト時間が1時間長くなるごとに、罹患率が1.53倍(95%CI:1.19~1.66、p<0.001)増加した。

 本研究により、フライト時間が長くなるほど、機内でのSARS-CoV-2感染リスクが増加することが示された。とくに、マスクを着用しない場合、このリスクは顕著に高まる。一方で、マスクの徹底した使用は、長時間のフライトにおいても感染リスクを効果的に抑制することが示された。
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新型コロナは夏に流行…沖縄でその気配が…

2024年06月28日 06時22分03秒 | 新型コロナ
新型コロナの“新型”を省略してシンプルに“コロナ”と呼ぶようになった昨今、
当院の状況はというと…コロナ陽性者が少ないながら出ています。

以前のように「発熱者は全員検査」態勢ではなく、
「希望者には検査」というスタンスなので、
おそらく実際にはもっといるはず。

さて、沖縄でまた感染者の報告が増加しています。
以前から「コロナは冬と夏に流行する」と言われていました。
その原因の一つに「三密状態になりやすい」気候が挙げられます。
つまり、寒かったり暑かったりすると、エアコンの効いた部屋で過ごしがちなので、
感染のリスクが上がるのですね。

これは季節性インフルエンザでも従来指摘されてきたことです。
日本では冬に流行るというイメージがあるインフルエンザ、
冬のない熱帯地方ではどうなんでしょう?

…実は波がありながらも流行るんです。
そしてその時期は「雨季」に一致すると報告されています。
つまり、屋内で過ごすことが多くなる時期と言うこと。

過去のデータ通り、沖縄に遅れて本州他の日本でも夏に向けて増加するのかどうか、
注視する必要があります。

■ 沖縄でコロナ急拡大、首都圏での流行予測は…
2024/06/14:ケアネット)より抜粋(下線は私が引きました);
・・・
新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の感染症法上の5類移行後、この件は世間的にどこ吹く風になっている感がある。
国内の感染状況を見ると、2024年第22週(5月27日~6月2日)の全国平均の定点当たり発生数は3.52人。前週の第21週(5月20〜26日)の3.35人と比べ、微増である。
2024年に入ってからは徐々に感染者数は増加し、第5週(1月29日~2月4日)の16.15人をピークに、その後は第18週(4月29日~5月5日)の2.27人にまで徐々に低下していたが、そこから再び増加している状況である。
ちなみに5類移行後の最高値は2023年第36週(9月4~10日)の20.19人、最低値は2023年第46週(11月13~19日)の1.95人である。
さて、そうした中で最新の2024年第22週の定点当たり発生数が19.74人と“突出”しているのが沖縄県である。・・・
沖縄県を除く都道府県別で最も発生数が多いのは鹿児島県の7.11人。これに次ぐのが北海道の5.44人。沖縄県はこれらの約3~4倍となっている。
・・・
国的な推移は前述のように2023年第36週前後と2024年第5週前後をピークにした二峰性のグラフを描いている。そして都道府県別でもおおむね二峰性の推移だが、沖縄県だけは明確に異なる。とくに2024年第5週前後は沖縄県も発生数は多少増加しているものの、ピークを描くには至っていない。一方、5類移行後最初のピークは第25週前後と全国平均より10週ほど早い。
この辺は気候的な影響が少なくないだろう。まず、全国的な推移で見られた2つのピークは、それぞれ気温がかなり高い時期か気温がかなり低い時期つまり暑さや寒さゆえに温度管理が行き届いた室内にこもりがちな時期である。新型コロナの5類移行後でもウイルスそのものの性質に変化がないことを考えれば、室内にこもりがちでいわゆる三密(やや懐かしい響きだが)の状態が起こりやすいことが感染拡大に影響しているのだろうと読み解ける。
これに対して沖縄県那覇市の平均気温を見ると、5月時点で24.2℃。すでにこの時点の平均気温で夏日(25℃以上)に近い状況なので、暑さゆえに室内にこもりがちな時期となる。ちなみに東京で同じく平均気温が夏日前後になるのは7月である。5月末から7月末までは9週間あるので、前述した全国平均と沖縄の夏の発生数ピーク時期の差である約10週前後と整合性は取れる。
一方、冬の1~2月に関して言えば、前述の那覇市の平均気温を見ればわかる通り、17℃台。これは東京で言えば4~5月や10月くらいに相当するので、気候が原因で屋内にこもりがちにはならない。それゆえ沖縄県でこの時期にそれほど発生数が上昇しないことも説明できる。
・・・となると、首都圏などでの感染拡大はこれからが本格的になるという嫌な予想が成り立ってしまう。しかも、繰り返しになるが新型コロナに関しては、もはや彼方のことになっている人も多い。


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子どもの便秘は「ウンチの呪い?」

2024年06月19日 08時41分10秒 | 小児科診療
小児科医の私の医院には、便秘で通院する子どもがたくさんいます。
毎日、5人くらいは来院されますね。

乳児期にはカマ、ラクツロース、
2歳以降はモビコールを中心に処方しています。

うまくコントロールできない患者さんには、
漢方薬の使用を提案します。
例えば、
お腹の痛みがメインだったり、
下痢と便秘を反復したり…
西洋医学では対応しきれない例ですね。

さて、いつものように医療情報を集めていたら、
「ウンチの呪い」といインパクトのある題名に出会いました。
どうやら子どもの便秘を扱っている様子…

読んでみると、「ウンチの呪い」は便塞栓による悪循環を指しているようです。
便塞栓(硬くて大きなウンチの塊)が肛門を塞いでいて、
便が出るのを邪魔しているという構図。

当院では便秘の相談で受診された患者さんのお腹に硬い便塊を触れた場合は、
浣腸もしくはテレミンソフト(浣腸と同じ効果のある坐薬)を処方し、
2日間連続で使用するよう指示します。

この方法はガイドラインにも書いてあります。

1回で十分便が出ても2日間連続?
・・・そうなのです。
1回でたくさん排便があっても、溜まった便塊が出切れていないことが多いのです。
消化器専門医は「3日連続浣腸」を指示すると聞いています。


■ 「うんちの呪い」を断ち切ることが治療の肝〜乳幼児期の便秘症

 便秘症は、小児科の日常診療において遭遇頻度が高い疾患である。大阪府立病院機構大阪母子医療センター消化器・内分泌科副部長の萩原真一郎氏は、第127回日本小児科学会(4月19〜21日)で乳幼児期の便秘症の診断と治療を解説。便秘症の連鎖を"うんちの呪い"に例え、原因となる便塊の貯留(便塞栓)を解除し、こうした負の連鎖を断ち切ることが治療の肝であると述べた。

▶ 診断はRoma Ⅳで、ただし該当しないケースも
 便秘症は、器質的異常による器質的便秘症と基礎疾患を除外した機能性便秘症に大別される。萩原氏によると、乳幼児便秘症は発症時期で分けると特徴が把握しやすいという。例えば、
・離乳食開始前の生後6カ月未満児の便秘症 → 器質的疾患が背景にある可能性を常に考慮する必要がある。
・離乳食の開始に伴い便が硬くなる → これを機に便秘を発症することもある。
・トイレトレーニング中に硬便による排便痛を経験する → 恐怖心から便秘症に至るケースもある。
 乳幼児の便秘症診断は、Roma Ⅳに基づいて行う。発症年齢が4歳未満では、1週間の排便回数が2回以下、過度の便貯留の既往があるなどの7項目中2項目以上が1カ月以上継続する場合は便秘症と診断する。ただしRoma Ⅳに該当しないケースもあり、同氏は「排便困難例の状況を見た上で診断すべき」と述べた。
 診断後は器質的疾患を除外するが、ここでは警告症状(red flags)の確認が極めて重要になる。警告症状は、日本小児栄養消化器肝臓学会の『小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン2013』、英国の『NICE Clinical Guideline』、RomaⅣ(Gastroenterology 2016; 150: 1456-1468)で若干異なるものの、
・胎便排泄の遅延(生後24~48時間以降)
・生後2カ月以内の血便
・成長障害または体重減少などを伴う例
…では基礎疾患を除外するため、専門医への受診を勧める。

▶ 完全母乳栄養からの変更で生じる牛乳アレルギーによる便秘症
 生後9カ月未満の健康児に認められる乳児排便困難症は、腹圧の上昇と骨盤底筋群の弛緩が協調できないことで起こる。診断は、
① 少なくとも10分間、軟らかい便の排泄成功または失敗の前にいきみがある
② 他の健康上の問題がない
―場合となる。
綿棒による肛門刺激は条件付きとなりやすく、便自体が軟らかいため緩下剤による治療のいずれも推奨されていない
 牛乳アレルギーによる便秘症は、完全母乳栄養から混合栄養または粉ミルクに変更した際に発症することが多い。胃腸炎を来した後に摂取した牛乳の蛋白質に感作されて便秘を発症する。標準治療に反応がなければ牛乳の摂取制限を検討し、2~4週間の牛乳蛋白質除去により便秘の改善を図る。
 大阪母子医療センター消化器・内分泌科でも牛乳アレルギーによる便秘症が疑われた1歳6カ月児を診察しており、自身の乳製品摂取制限を解除した母親に再び摂取を制限してもらったところ児の便秘改善が得られている。
 前述の警告症状のうち、症状がない便秘症では便塞栓が重要となる。便塞栓の診断は、
① 身体所見上、下腹部に硬い便塊に触れる
② 肛門指診上、大量の便塊によって直腸の拡張が認められる
③ 腹部X線検査上、結腸内に大量の便が認められる
―の有無で行う。
ポータブルエコーは施行時に広いスペースが不要なため、便塞栓の判定に有益である。なお近年、直腸における便塊の判定を人工知能(AI)が支援する直腸観察ガイドプラスを搭載したエコーも登場し、乳幼児への施行時に利便性が期待される。

▶ 第一選択薬はグリセリン浣腸、浸透圧性下剤、刺激性下剤
 便秘症では便塞栓の存在によって負の連鎖が生じることから、治療では便塞栓に注意を要する。
 具体的には、便塞栓があると直腸が拡張するとともに便中の水分が吸収されることで便が硬くなるため、排便痛が出現。トイレトレーニングで排便に対する恐怖心を抱き、排便を我慢するようになり、便塞栓がさらに貯留する。この一連の流れについて、萩原氏は「まさに"呪い"のようであり、便塞栓を解除することが便秘症治療の肝である」と強調した。
 また日本における便塞栓治療として、軽症例やグリセリン浣腸に抵抗がある例では浸透圧性下剤または刺激性下剤が、抵抗がない例では浣腸が第一選択薬となる。さらに、漏便を伴う重症の便塞栓症例や浣腸がトラウマになっている例については、同科ではガストログラフィンを用いた注腸造影を施行し、酸化マグネシウムおよびピコスルファートによる治療を行っていると紹介した。

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