徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

小学校で集団アレルギー発生!〜原因はビワ?

2024年06月30日 05時20分36秒 | 小児科診療
2024年6月末に、山梨県の小学校で100人以上に同時にアレルギー症状が発生しました。
原因は学校給食に出されたビワと報道されました。

果物アレルギーと一口に言っても、
実は3種類あります。

1.いわゆる“果物アレルギー”
2.口腔アレルギー症候群、あるいは花粉-果物アレルギー症候群
3.仮性アレルゲン(あるいは生理活性物質)による症状

1は特定の果物を食べてから30分〜2時間後に皮膚症状(じんましん)が出るタイプ、中には消化器症状(嘔吐・腹痛・下痢)や呼吸器症状(声がれ、咳込み、喘鳴、息苦しい)などを伴う重症型もあります。

2が今回のエピソードに当てはまります。先行して花粉症を発症し、その花粉のアレルゲン構造と似た構造を持つ果物アレルゲンを食べた際、「あ、花粉が入ってきた」とカラダが誤って認識して誤爆するメカニズム。
ただ、この場合の果物アレルゲンは消化酵素で分解されてしまうので、吸収してから思い全身症状が出ることは稀です(例外あり)。
そしてビワはヒノキ花粉と関係があることが判明しています。
つまり、今回症状が出た生徒は、ヒノキ花粉症がもともとあって、ビワを食べたときにカラダが「ヒノキ花粉が入ってきた!」と反応してアレルギー症状が出た、というカラクリです。
ヒノキ花粉症?ってメジャーではありませんが、実はスギ花粉症の7〜8割にヒノキ花粉症が合併していますので、スギ花粉症患者さんはヒノキ花粉症も持っていると考えた方がよいでしょう。

3は省略します(詳しく知りたい方はこちらをご覧ください)。


<参考記事>

■ 学校給食「ビワ」で集団アレルギー!意外と 知らない「花粉症と果物アレルギー」の深〜い関係
アサ芸プラス)より抜粋(下線は私が引きました);
 2024年6月25日、山梨県富士吉田市の学校給食に「ビワ」が出された。これを食べた市内の小中 学校の児童生徒3500人のうち126人が、のどの違和感など口腔アレルギー反応を訴えた。 のどのかゆみや違和感、唇の腫れのほか、充血や腹痛、じんましんなどの全身症状が出た 子供もいたという。
 同じ給食メニューを食べた市内の保育園ではビワが提供されておらず、アレルギー症状を 起こす園児がいなかったため、早々にビワアレルギーと判明した。・・・
 ビワでアレルギーを起こしやすいのは、3月から4月にヒノキ(カバノキ科)の花粉で花 粉症を起こす人。カバノキ科の花粉とビワに含まれるタンパク質が似ており、ビワを口に すると、口の中や喉の粘膜がアレルギー反応を起こす。ヒノキ花粉症は最もメジャーなス ギ花粉症の時期と重なっているため、ヒノキ花粉症を自覚していない人は少なくない。ヒ ノキ花粉の人は豆乳に含まれるタンパク質でもアレルギー反応を起こすため、要注意だ。
・・・
スギ花粉より早く、1月からアレルギー症状が出る人は、ハンノキやシラカンバの花粉症 かもしれない。桃やリンゴのアレルギーを起こしやすいのだ。
・・・
ひと昔前は果物でアレルギーが出るなんて、思いもよらなかった。今回のビワ集団アレル ギーは、子供たちに美味しい国産フルーツを味わってほしいという食育の一環で、不幸な アクシデントというしかない。
口腔アレルギーが判明し、生食のフルーツは食べられなくなっても、ジャムやゼリーなど 加熱調理したものなら食べられることがある。

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皆さん、マスクはしてますか?

2024年06月28日 06時37分05秒 | 新型コロナ
2023年5月に新型コロナが感染法上、“2類相当”から“5類相当”に格下げされてから、
巷の感染対策も随分、緩んできました。

街中ではマスクをしている人の割合が減少し、
コンビニではアルコール消毒を撤去している店舗も見かけるようになりました。

さて、医療の現場では?

私は診療中、医療用の「N95」マスクの使用をずっと続けています。
これは密閉性が高く、キチンと装着すると苦しくなるタイプ。

なぜかというと、以前は医療用簡易マスクである「サージカルマスク」を使用していたのですが、
子どもにも流行が始まった2022年8月、
マスクをできない乳幼児達が目の前で咳き込んでウイルス飛沫・エアロゾルをまき散らす状況下、
私も感染してしまいました。

一方、当時N95マスクを片時も外さなかった看護師スタッフの感染者はゼロ。
以降、私はN95マスクに切り替えて、ずっとそれを続けています。
看護師スタッフは逆に、サージカルマスクに切り替えていますね。

さて、なぜここまでやるかというと…私はハイリスクなんです。
年齢が還暦で、持病持ち → 重症化しやすいタイプです。
最後のワクチン接種から期間が空いている今、
2度目の感染をすると無事では済まないような気がしてます。

実際に隣町の開業医がこの春に新型コロナに感染して亡くなりました。
基礎疾患ありの60歳代…私と同じです。

同様にハイリスク者が多い老人施設では、
現在でも感染対策を弛めていないと思います。

さて、新型コロナパンデミックの際は、喧々顎学だった“マスクの効果”。
最近検証された報告が目に留まりました。
ポイントは以下の通り;

・マスクが強制でない場合、3時間未満の短いフライトと比較して、3〜5時間の中距離フライトでは感染リスクが約5倍、6時間以上の長いフライトでは26倍に及ぶ。
・マスクが強制でない場合、フライト時間が1時間長くなるごとに、罹患率が1.53倍増加。
・マスク必須の場合では、長時間のフライトでも感染が報告されなかった!


■ 飛行機でのコロナ感染リスク、マスクの効果が明らかに~メタ解析
ケアネット:2024/06/20)より抜粋(下線は私が引きました);
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの拡大は、航空機の利用も主な要因の1つとなったため、各国で渡航制限が行われた。航空業界は2023年末までに回復したものの、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の多い時期は毎年発生しており注意が必要だ。米国・スタンフォード大学のDiana Zhao氏らは、ワクチン導入前のCOVID-19パンデミック時の民間航空機の飛行時間とSARS-CoV-2感染に関するシステマティックレビューとメタ解析を実施した。その結果、マスクが強制でない3時間未満の短いフライトと比較して、マスクが強制でない6時間以上の長いフライトでは感染リスクが26倍に及ぶことや、マスク必須の場合では長時間のフライトでも感染が報告されなかったことなどが判明した。
・・・
 本研究では・・・2020年1月24日~2021年4月20日に発表されたCOVID-19と航空機感染に関連する研究のうち、SARS-CoV-2感染のインデックスケース(最初の感染者)がいることが確認されていて、フライト時間が明示されているものを対象とした。抽出されたデータには、フライトの特徴、乗客数、感染ケース数、フライト時間、マスクの使用状況が含まれた。フライト時間は、短距離(3時間未満)、中距離(3~6時間)、長距離(6時間超)に区分し、フライト時間と機内でのウイルス感染率の関係を負の二項回帰モデルを用いて分析した。主な結果は以下のとおり。

・15件の研究が解析対象となった。これらの研究には、合計50便のデータが含まれた。
・50便のうち、26便が短距離(2~2.83時間)、12便が中距離(3.5~5時間)、12便が長距離(7.5~15時間)だった。うち、長距離の6便はマスク必須であった。
・50便のうち、35便では機内での感染がなかった(短距離20便、中距離7便、長距離8便)。うち、マスク必須の長距離の6便ではすべて機内での感染がなかった
・15便で1件以上の機内感染が報告された。
・感染率は中央値0.67(四分位範囲[IQR]:0.17~2.17)、短距離では0.50(IQR:0.21~0.92)、中距離では0.29(IQR:0.11~1.83)、長距離では7.00(IQR:0.79~13.75)だった。
・いずれもマスクが強制でない短距離、中距離、長距離のフライトの機内感染リスクを比較したところ、短距離フライトに比べて、中距離は4.66倍(95%信頼区間[CI]:1.01~21.52、p<0.0001)、長距離は25.93倍(95%CI:4.1~164、p<0.0001)の感染リスク増加と関連していた。
・フライト時間が1時間長くなるごとに、罹患率が1.53倍(95%CI:1.19~1.66、p<0.001)増加した。

 本研究により、フライト時間が長くなるほど、機内でのSARS-CoV-2感染リスクが増加することが示された。とくに、マスクを着用しない場合、このリスクは顕著に高まる。一方で、マスクの徹底した使用は、長時間のフライトにおいても感染リスクを効果的に抑制することが示された。
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新型コロナは夏に流行…沖縄でその気配が…

2024年06月28日 06時22分03秒 | 新型コロナ
新型コロナの“新型”を省略してシンプルに“コロナ”と呼ぶようになった昨今、
当院の状況はというと…コロナ陽性者が少ないながら出ています。

以前のように「発熱者は全員検査」態勢ではなく、
「希望者には検査」というスタンスなので、
おそらく実際にはもっといるはず。

さて、沖縄でまた感染者の報告が増加しています。
以前から「コロナは冬と夏に流行する」と言われていました。
その原因の一つに「三密状態になりやすい」気候が挙げられます。
つまり、寒かったり暑かったりすると、エアコンの効いた部屋で過ごしがちなので、
感染のリスクが上がるのですね。

これは季節性インフルエンザでも従来指摘されてきたことです。
日本では冬に流行るというイメージがあるインフルエンザ、
冬のない熱帯地方ではどうなんでしょう?

…実は波がありながらも流行るんです。
そしてその時期は「雨季」に一致すると報告されています。
つまり、屋内で過ごすことが多くなる時期と言うこと。

過去のデータ通り、沖縄に遅れて本州他の日本でも夏に向けて増加するのかどうか、
注視する必要があります。

■ 沖縄でコロナ急拡大、首都圏での流行予測は…
2024/06/14:ケアネット)より抜粋(下線は私が引きました);
・・・
新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の感染症法上の5類移行後、この件は世間的にどこ吹く風になっている感がある。
国内の感染状況を見ると、2024年第22週(5月27日~6月2日)の全国平均の定点当たり発生数は3.52人。前週の第21週(5月20〜26日)の3.35人と比べ、微増である。
2024年に入ってからは徐々に感染者数は増加し、第5週(1月29日~2月4日)の16.15人をピークに、その後は第18週(4月29日~5月5日)の2.27人にまで徐々に低下していたが、そこから再び増加している状況である。
ちなみに5類移行後の最高値は2023年第36週(9月4~10日)の20.19人、最低値は2023年第46週(11月13~19日)の1.95人である。
さて、そうした中で最新の2024年第22週の定点当たり発生数が19.74人と“突出”しているのが沖縄県である。・・・
沖縄県を除く都道府県別で最も発生数が多いのは鹿児島県の7.11人。これに次ぐのが北海道の5.44人。沖縄県はこれらの約3~4倍となっている。
・・・
国的な推移は前述のように2023年第36週前後と2024年第5週前後をピークにした二峰性のグラフを描いている。そして都道府県別でもおおむね二峰性の推移だが、沖縄県だけは明確に異なる。とくに2024年第5週前後は沖縄県も発生数は多少増加しているものの、ピークを描くには至っていない。一方、5類移行後最初のピークは第25週前後と全国平均より10週ほど早い。
この辺は気候的な影響が少なくないだろう。まず、全国的な推移で見られた2つのピークは、それぞれ気温がかなり高い時期か気温がかなり低い時期つまり暑さや寒さゆえに温度管理が行き届いた室内にこもりがちな時期である。新型コロナの5類移行後でもウイルスそのものの性質に変化がないことを考えれば、室内にこもりがちでいわゆる三密(やや懐かしい響きだが)の状態が起こりやすいことが感染拡大に影響しているのだろうと読み解ける。
これに対して沖縄県那覇市の平均気温を見ると、5月時点で24.2℃。すでにこの時点の平均気温で夏日(25℃以上)に近い状況なので、暑さゆえに室内にこもりがちな時期となる。ちなみに東京で同じく平均気温が夏日前後になるのは7月である。5月末から7月末までは9週間あるので、前述した全国平均と沖縄の夏の発生数ピーク時期の差である約10週前後と整合性は取れる。
一方、冬の1~2月に関して言えば、前述の那覇市の平均気温を見ればわかる通り、17℃台。これは東京で言えば4~5月や10月くらいに相当するので、気候が原因で屋内にこもりがちにはならない。それゆえ沖縄県でこの時期にそれほど発生数が上昇しないことも説明できる。
・・・となると、首都圏などでの感染拡大はこれからが本格的になるという嫌な予想が成り立ってしまう。しかも、繰り返しになるが新型コロナに関しては、もはや彼方のことになっている人も多い。


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子どもの便秘は「ウンチの呪い?」

2024年06月19日 08時41分10秒 | 小児科診療
小児科医の私の医院には、便秘で通院する子どもがたくさんいます。
毎日、5人くらいは来院されますね。

乳児期にはカマ、ラクツロース、
2歳以降はモビコールを中心に処方しています。

うまくコントロールできない患者さんには、
漢方薬の使用を提案します。
例えば、
お腹の痛みがメインだったり、
下痢と便秘を反復したり…
西洋医学では対応しきれない例ですね。

さて、いつものように医療情報を集めていたら、
「ウンチの呪い」といインパクトのある題名に出会いました。
どうやら子どもの便秘を扱っている様子…

読んでみると、「ウンチの呪い」は便塞栓による悪循環を指しているようです。
便塞栓(硬くて大きなウンチの塊)が肛門を塞いでいて、
便が出るのを邪魔しているという構図。

当院では便秘の相談で受診された患者さんのお腹に硬い便塊を触れた場合は、
浣腸もしくはテレミンソフト(浣腸と同じ効果のある坐薬)を処方し、
2日間連続で使用するよう指示します。

この方法はガイドラインにも書いてあります。

1回で十分便が出ても2日間連続?
・・・そうなのです。
1回でたくさん排便があっても、溜まった便塊が出切れていないことが多いのです。
消化器専門医は「3日連続浣腸」を指示すると聞いています。


■ 「うんちの呪い」を断ち切ることが治療の肝〜乳幼児期の便秘症

 便秘症は、小児科の日常診療において遭遇頻度が高い疾患である。大阪府立病院機構大阪母子医療センター消化器・内分泌科副部長の萩原真一郎氏は、第127回日本小児科学会(4月19〜21日)で乳幼児期の便秘症の診断と治療を解説。便秘症の連鎖を"うんちの呪い"に例え、原因となる便塊の貯留(便塞栓)を解除し、こうした負の連鎖を断ち切ることが治療の肝であると述べた。

▶ 診断はRoma Ⅳで、ただし該当しないケースも
 便秘症は、器質的異常による器質的便秘症と基礎疾患を除外した機能性便秘症に大別される。萩原氏によると、乳幼児便秘症は発症時期で分けると特徴が把握しやすいという。例えば、
・離乳食開始前の生後6カ月未満児の便秘症 → 器質的疾患が背景にある可能性を常に考慮する必要がある。
・離乳食の開始に伴い便が硬くなる → これを機に便秘を発症することもある。
・トイレトレーニング中に硬便による排便痛を経験する → 恐怖心から便秘症に至るケースもある。
 乳幼児の便秘症診断は、Roma Ⅳに基づいて行う。発症年齢が4歳未満では、1週間の排便回数が2回以下、過度の便貯留の既往があるなどの7項目中2項目以上が1カ月以上継続する場合は便秘症と診断する。ただしRoma Ⅳに該当しないケースもあり、同氏は「排便困難例の状況を見た上で診断すべき」と述べた。
 診断後は器質的疾患を除外するが、ここでは警告症状(red flags)の確認が極めて重要になる。警告症状は、日本小児栄養消化器肝臓学会の『小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン2013』、英国の『NICE Clinical Guideline』、RomaⅣ(Gastroenterology 2016; 150: 1456-1468)で若干異なるものの、
・胎便排泄の遅延(生後24~48時間以降)
・生後2カ月以内の血便
・成長障害または体重減少などを伴う例
…では基礎疾患を除外するため、専門医への受診を勧める。

▶ 完全母乳栄養からの変更で生じる牛乳アレルギーによる便秘症
 生後9カ月未満の健康児に認められる乳児排便困難症は、腹圧の上昇と骨盤底筋群の弛緩が協調できないことで起こる。診断は、
① 少なくとも10分間、軟らかい便の排泄成功または失敗の前にいきみがある
② 他の健康上の問題がない
―場合となる。
綿棒による肛門刺激は条件付きとなりやすく、便自体が軟らかいため緩下剤による治療のいずれも推奨されていない
 牛乳アレルギーによる便秘症は、完全母乳栄養から混合栄養または粉ミルクに変更した際に発症することが多い。胃腸炎を来した後に摂取した牛乳の蛋白質に感作されて便秘を発症する。標準治療に反応がなければ牛乳の摂取制限を検討し、2~4週間の牛乳蛋白質除去により便秘の改善を図る。
 大阪母子医療センター消化器・内分泌科でも牛乳アレルギーによる便秘症が疑われた1歳6カ月児を診察しており、自身の乳製品摂取制限を解除した母親に再び摂取を制限してもらったところ児の便秘改善が得られている。
 前述の警告症状のうち、症状がない便秘症では便塞栓が重要となる。便塞栓の診断は、
① 身体所見上、下腹部に硬い便塊に触れる
② 肛門指診上、大量の便塊によって直腸の拡張が認められる
③ 腹部X線検査上、結腸内に大量の便が認められる
―の有無で行う。
ポータブルエコーは施行時に広いスペースが不要なため、便塞栓の判定に有益である。なお近年、直腸における便塊の判定を人工知能(AI)が支援する直腸観察ガイドプラスを搭載したエコーも登場し、乳幼児への施行時に利便性が期待される。

▶ 第一選択薬はグリセリン浣腸、浸透圧性下剤、刺激性下剤
 便秘症では便塞栓の存在によって負の連鎖が生じることから、治療では便塞栓に注意を要する。
 具体的には、便塞栓があると直腸が拡張するとともに便中の水分が吸収されることで便が硬くなるため、排便痛が出現。トイレトレーニングで排便に対する恐怖心を抱き、排便を我慢するようになり、便塞栓がさらに貯留する。この一連の流れについて、萩原氏は「まさに"呪い"のようであり、便塞栓を解除することが便秘症治療の肝である」と強調した。
 また日本における便塞栓治療として、軽症例やグリセリン浣腸に抵抗がある例では浸透圧性下剤または刺激性下剤が、抵抗がない例では浣腸が第一選択薬となる。さらに、漏便を伴う重症の便塞栓症例や浣腸がトラウマになっている例については、同科ではガストログラフィンを用いた注腸造影を施行し、酸化マグネシウムおよびピコスルファートによる治療を行っていると紹介した。

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ワクチン忌避への対策 → まずは医師への教育?

2024年06月19日 06時29分24秒 | 小児科診療
最近話題の「学校健診着衣脱衣問題」について考えてきましたが、
私が感じる大きな要因は「生徒・家族の知識・理解不足」です。
学校健診は学校医にとって「症状の出ない早期に病気を発見する繊細な医療行為」であり、
「疾患を見つけるためにこのような診察が必要」とマニュアルに記載されているため、
学校医はそれをシンプルに実行しているだけです。

ところが、
「思春期で恥ずかしいから」
「健診ごときで上半身裸になるのはおかしい」
と感情論で否定されがちです。

これは、学校・教育委員会が生徒への説明・啓蒙を怠ってきたツケです。
私が学校医を拝命した際、
生徒家族への説明と同意を提案しましたが、なしのつぶて。
ひたすらクレーム回避をする行動しか出てこないので呆れました。

病気の発見のために不十分な診察法しかできないのなら、
学校健診の意味はありませんから、
私は現場から立ち去る予定です。

さて、小児科医にとって昔から問題になっていることが他にもあります。
それは「ワクチン忌避」。

こちらも大きな理由の一つに「知識・理解不足」があると思います。
小学校で「感染症」の授業をして理解させ、
その対策として「ワクチン」が有効であることを客観的に示す必要があります。
家族ではなく本人に情報提供するのです。

子宮頚がんワクチン(HPVワクチン)もここでつまづきました。
日本では性教育が遅れており、
子宮頚がんがウイルス感染で発生すること、
その感染は性行為によること、
などを教えてきませんでした。

そこに突然、筋肉注射という痛い接種が始まり、
その痛みと恐怖だけが注目されてマスコミが騒ぎ立て、
いろんな問題につながりました。

イギリスでは子ども自身に上記のことを教えてきたので、
拒否する例は少なく、ずっと接種率8割以上を維持しています。

先日、ワクチン忌避に対する記事が目に留まりましたので紹介します。
読んでみると、
「接種される子どもへの教育の前に、接種する医師への教育不足」
という事実が明らかになってきました…唖然!

確かに言われてみると、心当たりがあります。
小児科医は予防接種を担当するため、必要に迫られて情報を集めます。
私は一時期、医師会会員向けのレクチャーを担当していたので、
その準備として随分ワクチン関連本を読みあさりました。

しかしワクチン接種を担当しない他科医師達は最低限の知識しかないと思われます(個人差あり)。
医学生時代の教育でもワクチンを学んでいるのか不明です(私には記憶がありません)。

この問題、根が深いですね…
医師はまず「己の襟を正せ!」ということ。


■ なぜ生じる?「ワクチン忌避」―必要な対策は
 → 医療者の正しい知識が要
※ 下線は私が引きました。

 ワクチン接種により発症または重症化を予防できる感染症(VPD)について、ワクチン接種が可能であるにもかかわらず接種を先延ばしまたは拒否すること(ワクチン忌避)は、個人の罹患リスクを高め、感染症の流行抑制を妨げるため、公衆衛生上の課題となっている。三重大学基礎医学系講座教授の神谷元氏に、日本においてワクチン忌避が生じる要因を聞いた。(関連記事「コロナワクチン忌避に陰謀論が関連」)

▶ 忌避を助長する土壌―ワクチンの効果は実感しにくい
――ワクチン忌避によってどのようなリスクが考えられるか
 ワクチンは主に、
①治療法が確立されていない
②重症化のリスクが高い
③後遺症や合併症が起こりやすい
−疾患を対象に開発が試みられている。VPDに対する予防接種を受けられる環境にあるにもかかわらず、ワクチン接種をしなかったり最も効果が高い時期に接種を受けず先延ばししたりすると、ワクチンによる予防効果が十分に発揮されない。
――なぜワクチン忌避が生じるのか
 ワクチンは感染症に罹患する前に接種し体に抵抗力をつけるため、接種により感染しなかった/重症化を予防したという人はワクチンの効果を実感しにくいが、ワクチン接種部位の腫脹や発熱などが起きた人は副反応だけを実感しやすいという特徴がある。これがワクチン忌避の土壌となっている可能性がある。

▶ ワクチン忌避を助長する要因 ①:SNSにおける情報の錯綜
――ワクチン接種について、Twitter(現X)などのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)で論争が行われている
 SNSでは、個人の主観的な感想と、ワクチンの有効性・安全性の客観的評価に基づく情報が同じ土俵の中で錯綜している。しかし、不確定な情報はワクチン忌避のリスクを上昇させるので注意が必要だ。
 接種部位の痛みなど主観的な感想を個人がSNSで述べることは自由だが、それらと本来学会などの場で行われるべきワクチンの有効性・安全性についての科学的な議論は明確に区別される必要がある。SNSという公の場で両者が錯綜する状況は、ワクチンについての情報を混乱させ、ワクチン忌避のリスクとなりうる。
 また、医療者がそれぞれの主観に基づく意見を患者に伝えることもある。ワクチン接種について医療者の意見が統一されていない状況は、患者に過度な不安を与え、ワクチン忌避を誘引する。SNSにおける発信が一般の人々に与える影響について、医療者が正しい知識を得ることが重要だ。

▶ ワクチン忌避を助長する要因 ②:マスメディアの報道姿勢
――ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種のキャッチアップ接種が2025年3月に終了するが、接種率は必ずしも伸びていない
 ワクチン忌避の定義に照らすと、HPVワクチンのキャッチアップ接種率は半数以下と、ワクチン忌避が起きている状況といえる。
 HPVワクチン接種者においては副反応が出なかった例がほとんどである。しかし当時マスメディアはその事実を踏まえず、少数の副反応例に焦点を当てて報道した。ワクチン未接種で子宮頸がんによって亡くなった方、子宮頸がんで母親を亡くした小さな子供を含めた残された家族の気持ち、子供を残してこの世を去らなければならなかった母親の気持ちなどを考えれば、ワクチンの効果についても報道するべきである。物事の一側面だけを過剰に取り上げて報道する姿勢は公正とは言い難く、一般の人々に過度な不安を与えたことは問題である。

▶ ワクチン忌避を助長する要因 ③:国の対応
――かつてHPVワクチンの積極的勧奨を中止した国の対応をどう考えるか
 先進国では積極的勧奨を行う場合、副反応など追加調査が必要と考えられる報告があれば、調査は行いつつも、積極的勧奨自体は予防のメリットを副反応のデメリットが超えない限り中止しない。
 すぐに積極的勧奨を中止するという対応は、国民だけでなく海外に対してもHPVワクチン接種への強い不安を与えた。
 一方、国は積極的勧奨を差し控えている間も、定期接種としてHPVワクチンの無償化は続けていた。そのことを理由に、積極的勧奨が行われていなかった世代(キャッチアップ接種対象世代)が将来的に子宮頸がんを発症しても「定期接種で接種する選択肢はあった」とする可能性がある。そうした点を考えると、やはり接種対象者および保護者の正しい判断に寄与する情報提供が重要である。

▶ まず医療者が接種の必要性を学ぶことが重要
――ワクチン忌避を防ぐためにどのような対策が考えられるか
 米国では新しいワクチンが登場した場合、まずは接種を進めながらリアルワールドデータを解析し、集積された新たな有効性や安全性に関するデータに基づいて接種方法の改善を図る。しかし、日本では新たなエビデンスが出るごとに推奨を改訂するという柔軟なワクチン接種の運用姿勢が不足しており、改善が必要である。
――臨床現場で有用な方法は
 患者に対する動機付け面接がワクチン忌避対策として有用であるとの報告があり、米国小児科学会では臨床現場に取り入れる活動をしている。
 動機付け面接では、医療者は「その日に接種可能なワクチンを全て接種する」という立場を取り、患者に対してワクチン接種を行うと伝えた上で、患者の抱えた疑問や不安を話し合いながら解消していく。大前提として医療者がワクチン接種の必要性を十分に知っていることが重要である。
――日本では医療者に対するワクチンの情報提供は十分か
 米国では、研修医を対象に保健所で1週間程度のトレーニングプログラムが提供され、その後実際に接種を行うなど、教育環境が整っている。他方日本では、指導医などの手技を見学する時間が設けられている程度にとどまっているのが現状だ。
 日本の医学教育や研修医指導において、ワクチンについての知識や患者とのコミュニケーション方法のトレーニングなどの機会を拡充すべきである。
――ワクチン忌避について医療者ができることは
 小学校入学前に予防接種が義務付けられている米国などに比べると、日本はワクチン接種が強制されない仕組みになっており、接種の選択が一般の人々に委ねられている。だからこそ、医療者は十分な知識に基づいて患者の判断を手伝えるよう努めてほしい。




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