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思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

ステップダウンチョッパとフォワード型SW電源

2010-08-25 21:02:08 | 電子回路
本稿の副題は主題に対して「ステップアップチョッパとフライバック型SW電源」となります。つまり動作メカニズムにおいて、ステップダウンチョッパとフォワード型、およびステップアップチョッパとフライバック型は同じものということです。

図に基づいて説明します。ステップダウンチョッパとフォワード型は点線内において等価と言えます。異なるのは、トランスによって1次側と2次側を絶縁しているかどうかということです。ステップアップチョッパとフライバック型も同様です。

ステップダウンチョッパとフォワード型は、スイッチングトランジスタがONのときにチョークコイル(L)を経て電流を流し出力コンデンサ(OC)をチャージし、チョークコイルに磁気エネルギーを蓄えます。トランジスタがOFFすると、チョークコイルに蓄えられている磁気エネルギーによって、フライホイールダイオード(FD)を通って電流が流れ続け、継続してOCをチャージします。

この両者共に動作の理屈上(フォワード型は1次と2次の巻線比が1:1以下の場合)、入力電源(DCV)よりも高い電圧を出力することはできない電源です。

ステップアップチョッパとフライバック型は、スイッチングトランジスタがONのときに、それぞれチョークコイルとトランスに電流を流して磁気エネルギーを蓄え、この時は出力コンデンサ(OC)をチャージしません。(トランジスタONのときに出力ラインに電流が流れないのは、図から明らかですね)
トランジスタがOFFすると、チョークコイルあるいはトランスに蓄えた磁気エネルギーによって出力ラインに電流が流れ、出力コンデンサ(OC)をチャージします。

この両者共に動作の理屈上、入力電源(DCV)よりも高い電圧を出力できる電源です。

出力電圧を安定化させるためのフィードバック電圧は、ステップダウンチョッパ、ステップアップチョッパの場合はPWMコントロールデバイス(TL494、M62213等)に直結することができますが、フォワード型、フライバック型の場合は、1次側と2次側の絶縁を保つために、フォトカプラ等で絶縁してフィードバックしなければなりません。

【ポイント】
さて、ここで1点注意が必要です。フライバック型の説明では、さりげなく「トランスに磁気エネルギーを蓄え」とお話しましたが、フライバック型に使用されるトランスは、フォワード型で使用しているトランスの2次側の極性を、ただ逆にしただけのものではありません。

そもそもトランスは変換器ですから、エネルギーを蓄えることなく、1次側と同量のエネルギーを2次側に伝達するのが役目です。もしトランス自身がエネルギーを蓄えると、その分が2次側への伝達ロスになります。よってフォワード型で磁気エネルギーを蓄えるのは、あくまでもチョークコイル(L)です。

というわけでフライバック型の場合、フライバックトランス(結合インダクタ)と呼ばれる専用のものが使われます。これはコアの磁気回路に隙間を開けて(コアの1部を切断してギャップを作る)透磁率を下げ、BH積が大きくなるようにして、磁気エネルギーを積極的に蓄える構造になっています。

関連記事:
555を使ったPWMステップアップチョッパ 2010-08-16
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2 コメント

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Unknown (かとう)
2013-01-16 10:57:23
パワエレ分野でとても参考になる記事がたくさんあり毎回楽しく読んでおります。

本稿で疑問に思った点がひとつあります。
ステップアップ(昇圧)チョッパとフライバックが理屈上、絶縁する・しない以外同一動作のように書いてありますが、チョット違うと思います。
フライバックは巻数比が1でも入力電圧より低い出力電圧で動作可能なので、回路構成的・昇圧比的に考えると、昇降圧チョッパ(降圧+昇圧)が巻数比1のフライバック回路の非絶縁タイプだと思います。
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こんにちは。(^^) (ホロン)
2013-01-18 21:00:50
かとうさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

私も一応電子回路を職としてはいるのですが、トップエンジニアには程遠く、だいたい分かっているつもり程度ですので、記事にも少なからず間違いがあると思います。ですから、かとうさんのようなご指摘は本当にありがたく思います。それによって修正をかけたり更に向上したりできますものね。

さて、フライバック型は巻線比1でも降圧電源にできるという点において昇圧チョッパとは異なるのではないか、ということですね。

記事では、少し説明が不足してしまいましたが、「トランジスタONにおいて、昇圧チョッパの場合はチョークコイルに磁束を溜め、フライバックはコアにギャップを設けた結合インダクタに磁束を溜めて、トランジスタOFFにおいてコイル電流をダイオード経由でコンデンサに流し込んで出力電圧に変換する」という原理について、昇圧コンバータとフライバック型は同じというのが真意です。

また、添付図では省略していますが、スイッチング電源は必ず出力負荷(負荷電流)を想定しますよね。負荷を想定すれば、昇圧チョッパも降圧電源にすることができるのではないでしょうか?

あ、いやこれは無理か。よく考えれば無理ですね。という意味では、かとうさんの仰る通りですね。フライバック型と等価とは言えないですね。
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