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“グレタ叩き”に19歳の活動家ナオミ・ザイブトを利用する米保守派組織

2020-03-04 07:54:32 | Web News
「そもそも、気候はずっと変化し続けています」って…
“グレタ叩き”に19歳の活動家ナオミ・ザイブトを利用する米保守派組織

ブルームバーグ(米国)
Text by COURRiER Japon
2020.03.04

少女を戦わせる悪趣味を誰が仕組んだ?

ブロンドのロングヘアで、雄弁なヨーロッパ出身の10代の活動家──といえば、思い浮かぶのはやはり環境活動家のグレタ・トゥンベリではないだろうか。

グレタが公に活動を始めて約2年。ここにきて、同じくブロンドのロングヘアで、雄弁で、流暢な英語を話すヨーロッパ出身の10代の「アンチ・グレタ」活動家が注目を集めている。

ドイツ出身の19歳、ナオミ・ザイブトである。彼女は「クライメイト・リアリスト」を自称し、地球温暖化に対する懐疑論を唱えるインフルエンサー。約6万8400人のフォロワーを持つユーチューバーでもあり、グレタやその支持者を、地球温暖化を誇張し、脅威論を広めることで「人々の不安を煽っている」「不必要な狂乱を起こしている」と批判してきた。

たとえば、こんな感じだ。

「みんなにいいニュースがあります。なんと、気候変動で地球は滅びたりしません。いまから12年後も、私たちは地球上に暮らし、iPhone18を使って楽しく自撮りをしているでしょう」

そんな彼女が注目を集めるきっかけとなったのは、2月28日に米国で行われたCPAC(保守政治活動協議会)。彼女は、この米共和党の未来について語り合う、米国保守派の政治イベントに招かれ、スピーチを披露したのだ。

英紙「ガーディアン」や米紙「ワシントン・ポスト」によると、彼女をサポートするのは、米国の保守・リバタリアンのシンクタンク「ハートランド研究所」。同研究所は、地球温暖化の原因は人間によるものであるという科学的コンセンサスに異論を唱えてきた団体だ。

「気候変動否定派」として知られるほか、医療保険改革など保守的な考えを米国に広める発信源となっており、保守派のトランプ政権誕生以来、政権とのつながりをさらに強くしていると、各紙が報じている。

活動の対価に月23万くらい貰ってますが何か?

ハートランドが「ナオミかグレタか。私たちは誰を信じるべきか」というタイトルのYoutube動画を発信したのは昨年12月。ナオミを「新しいスター」と持ち上げる一方で、グレタを「地球は滅びるとの予想で人々を狂乱へと導いた活動家」と表現している。その上で、気候変動に関する科学を正しく理解し、合理的な主張をしているのはどちらかと、視聴者に投げかける内容だ。

今年2月には、ナオミも自身のプラットフォームで、ハートランド研究所からサポートを受けていることを発表。「ハートランドの操り人形だ」「ハートランドにいくらで魂を売ったんだ?」などコメントが寄せられていることに対し「悲しい」と述べ、「別にお金のためにやっているのではない」と「誰にも操られていない(自分の意志でやっている)」と主張した。

また、隠すことは何もないとして「ハートランドからは(ドイツの)平均的な月給くらいの支援をもらっている」と語っている。ガーディアンの見積もりによると「月に1900ユーロ(約23万円)くらい」。

その動画のタイトルは「メディアの皆さんへのメッセージ。 よくもそんなことを!(HOW DARE YOU)」。これに対し、ワシントン・ポストは、グレタの名スピーチを「引用している」と述べる。

関連記事: 【全訳】グレタ・トゥンベリ、国連気候行動サミットで怒りのスピーチ

また、上述の保守派の政治イベントでの、ナオミのキャッチフレーズは「パニックにならないで。それより、落ち着いて考えて欲しい」だ。これも、グレタが国際会議の場で訴えた「(気候変動の深刻さに)パニックになってほしい。私が毎日感じるような恐怖を感じてほしい」という言葉からきており、それを暗に否定するものだと解釈できる。

一方、彼女は同イベントで「私はアンチ・グレタではない」「気候変動を否定している訳でもない」と主張する。

「そもそも、気候はずっと変化し続けていますから」

米メディア「ビジネス・インサイダー」によると、彼女の主張は「地球温暖化や気候変動は人為的なものではなく」、温室効果ガスの環境への悪影響を全否定はしないが、「温暖化は人為的な温室効果ガスの増加によらない」「環境活動家や学者たちによって誇張されている」というものだ。

気候変動否定派たちが「地球温暖化は脅威で、急進的な対策が必要」と主張する人たちを、大げさに言い立ててむやみに警鐘を鳴らす「アラーミスト(alarmist)」と呼ぶのと同じように、彼女もこの言葉を使用する。

同イベントで、彼女は「気候変動アラーミストたちは、もう少し謙虚になるべきです」と語った。

■ドイツの少女が米国保守派の目に止まったきっかけ

ドイツ・ミュンヘンの実家に暮らす10代の少女は、いかにして米国保守派の「広告塔」に抜擢されたのか。

CPAC開催中に展示されたナオミの似顔絵入りアパレル
Photo: Andrew Harrer / Bloomberg / Getty Images

ナオミは「私にアジェンダはない」「イデオロギーに縛られていない」と主張するが、彼女に脚光が当たったのは偶然ではなく、脚光が当たる場所に彼女を連れていった大人がいるからだとガーディアンは指摘する。

その大人とは「ドイツの極右政党(AfD)と、法律家である母親」だ。

関連記事: ドイツ極右政党が「リベラル、左翼的」な芸術への攻撃を強める理由

AfDは移民排斥を掲げ、ここ数年で急激に支持率を上げている極右の新興政党だ。国民を巧みに煽動する「ポピュリスト政党」とも言われている。

ワシントン・ポストは、彼女が政治活動を始めたのは高校生の頃で、当時広がっていた「移民を積極的に受け入れよう」というドイツの進歩的思想に対する疑問をクラスで語ったのがきっかけだったと述べている。

「先生や生徒たちからバックラッシュを受け、私はドイツの主流派の考えにより懐疑的になった」

また、ガーディアンによると、彼女がYouTubeに最初の動画を投稿したのは2019年5月。AfD主催の詩のコンテスト用の文章を読み上げたものだったそうで、この動画が米ハートランド研究所の目に止まり、ナオミは同研究所主催の国際会議でのスピーチの機会を手にしたという。

その国際会議とは、昨年12月のCOP25マドリード会議と同時期にマドリードで行われた、COP25に対抗するための世界の気候変動の懐疑論者を集めた「クライメイト・リアリスト会議」である。

彼女はこれをステップに米国へと進出。先月の米保守派の政治イベント(CPAC)でのスピーチへとつながったのだ。

「気候変動アラーミストたちは、人間は愚かだと、愚行を叩くイデオロギーを中核とし、農業や産業に革命をもたらしてきた人類の功績、現代の便利な暮らしを頭から否定します。そして、化石燃料のおかげで発展した現代に生きる私たちに『人間のせいで地球が滅びる』という罪の意識を植え付け、自己嫌悪に陥らせるのです」

このようなナオミの主張は、「化石燃料の使用による地球温暖化の悪影響は小さく、恩恵のほうが多いはずだ」「化石燃料の利用は人類の発展に有効だ」といった、ハートランド研究所がこれまで大量に流してきた懐疑論とほぼ同じであり、語り手が若いということ以外、これといった新しさはない。

だが、この2年のグレタ効果が示すように「フレッシュ・ボイス」「フレッシュ・フェイス」の世論を動かす力は計り知れない。

ハートランド研究所による、この「ナオミ戦略」について、気候変動の否定派や懐疑論者を調査する環境保護団体「気候変動調査センター」の創始者は、ガーディアンにこう語っている。

「彼らはグレタ効果に乗っかろうとしているわけだが、ナオミではグレタに勝てないのは明白です。彼らの狙いは、グレタ効果を鈍化させることでしょう」
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