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思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

励磁電流の話(トランス)

2010-09-17 10:36:47 | 電子回路
ここ数日、暇つぶしと勉強のためにスイッチング電源の設計を試みておったのですが、図のように全体の構想をしたものの、最後に残ったのは回路図の上方にあるトランス(3:1)を如何にして手に入れるかということでした。
(制御回路は真に受けないでください。まだ動作の検証ができていません。)

リング状のフェライトコアに1次巻線と2次巻線を巻いて作ろうと思いましたが、巻線比は3:1と決めているものの、30巻:10巻、300巻:100巻、3000巻:1000巻、と比率だけではどれも成り立ってしまいます。しかし実際はこのどれでもよいわけではなく、1次巻線のターン数は一意的に決まらなければならないのは言うまでもありません。

ポイントはトランスの「励磁電流」です。励磁電流は1次巻線と2次巻線を磁気結合するために、1次側に必ず流れなければならない電流であり、2次側が開放(無負荷)の状態で1次側に流れる電流のこととも言えます。

■そして一般に、励磁電流の大きさは、トランスの電流容量の1/100程度と言われています。これが答えです。

励磁電流を決めるトランスのインピーダンスは、1次巻線の自己インダクタンスのみです。自己インダクタンスは1次巻線、あるいは2次巻線それぞれのインダクタンスです。

例えば、フェライトコアに1次巻線のみ巻いたとします。これは単なるコアを有したひとつのコイル(インダクタ)ですね。このコイルのインダクタンス(H)は巻き線のターン数やコアの透磁率、コアの断面積等で決まります。これが1次巻線の自己インダクタンスです。この状態で同じコアに2次巻線を巻いたとしても、1次側の自己インダクタンスは変化しません。同じ理由で2次巻線にも自己インダクタンスが存在します。

となれば、懸案のスイッチング電源用トランスの1次巻線のターン数が求められそうです。前図のスイッチング電源の2次巻線からは最大2Aを取出す予定ですから、励磁電流はその1/100の20mA以下にすればよいわけです。ここでは10mAとしましょう。

V / ωL=10m(A) L:1次巻線のインダクタンス

このスイッチング電源は最大電圧:140V、240kHzの矩形波を1次巻線に入力しますので、

140(V)/(2π・240k・L)=10m(A)

この式からLを計算すると、L=9.28mHとなります。
よって1次巻線の自己インダクタンスが9.28mHになるターン数だけ、線を巻けばよいということになります。

【参考】
L:自己インダクタンス
M:相互インダクタンス
e1:1次側に発生する起電力
e2:2次側に発生する起電力
とすると

e1=L1・d(I1)/dt+M・d(I2)/dt
e2=L2・d(I2)/dt+M・d(I1)/dt

M×M=N1φ1 /I1 × N2φ2 /I2 (φ:磁界[磁力] φ=NI L=N2)
M2=L1×L2 M=√(L1×L2)

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コメント (3)
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