ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

もしも昔の医療水準に戻ってしまったら...

2006年01月02日 | 医療全般

我が国の妊産婦死亡率の推移を見ると、1950年は10万分娩に対して176でしたが、2000年には6.3となりました。また、周産期死亡率(早期新生児死亡率と妊娠28週以後の死産率との合計)の推移を見ても、1950年は出生1,000に対して46.6でしたが、2000年には3.8となりました。

これらのデータから、この五十年間で分娩の安全性が著しく向上したことがわかります。また、現在の我が国の周産期医療は世界でもトップレベルの水準に達していると考えられます。

しかし、今でも実際には、1,000人に4人の赤ちゃんが、また1万人に1人の母親がお産で亡くなっているわけですから、現在の医療水準であっても、必ずしも、一般に信じられているように『お産は母児ともに安全』とは限りません。

まして、万一、このまま地域から産婦人科医が絶滅してしまって、昔(五十年前)の医療水準に戻ってしまったら、現在の何十倍もの母児がお産で亡くなりかねないということを一般の人達にもよく理解していただきたいと思います。

崩壊の危機に直面している地域周産期医療体制を守ってゆくために、我々は今何をしなければならないのか?何ができるのか?それぞれの地域の実情に合わせて、長期的な視野に立って、地域全体で考えてゆかなければならないと思います。