<NHK-FM「ベストオブクラシック」レビュー>
~アンドラーシュ・シフ ピアノ・指揮カペラ・アンドレア・バルカのモーツァルト:ピアノ協奏曲第23番/交響曲第40番~

①モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K.488
ピアノ・指揮:アンドラーシュ・シフ
管弦楽:カペラ・アンドレア・バルカ
②モーツァルト:交響曲第40番 ト短調 K.550
指揮:アンドラーシュ・シフ
管弦楽:カペラ・アンドレア・バルカ
③バッハ:チェンバロ協奏曲 第1番 ニ短調 BWV1052から 第1楽章(アンコール)
ピアノ・指揮:アンドラーシュ・シフ
管弦楽:カペラ・アンドレア・バルカ
④シューマン:楽しい農夫(アンコール)
ピアノ:アンドラーシュ・シフ
収録:2025年3月26日、東京オペラシティ コンサートホール
放送:2025年5月28日 午後7:35 〜 午後9:15
管弦楽:カペラ・アンドレア・バルカ
②モーツァルト:交響曲第40番 ト短調 K.550
指揮:アンドラーシュ・シフ
管弦楽:カペラ・アンドレア・バルカ
③バッハ:チェンバロ協奏曲 第1番 ニ短調 BWV1052から 第1楽章(アンコール)
ピアノ・指揮:アンドラーシュ・シフ
管弦楽:カペラ・アンドレア・バルカ
④シューマン:楽しい農夫(アンコール)
ピアノ:アンドラーシュ・シフ
収録:2025年3月26日、東京オペラシティ コンサートホール
放送:2025年5月28日 午後7:35 〜 午後9:15
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今夜のNHK-FM「ベストオブクラシック」の放送は、2025年3月26日、東京オペラシティ コンサートホールで行われた演奏会の前半、ピアノ・指揮:アンドラーシュ・シフ、管弦楽:カペラ・アンドレア・バルカの演奏で、モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番とモーツァルト:交響曲第40番の演奏会である。
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ピアノ・指揮のアンドラーシュ・シフ(1953年生まれ)は、ハンガリー出身。リスト・フェレンツ音楽大学で学ぶ。1974年「チャイコフスキー国際コンクール」第2位、1975年「リーズピアノ国際コンクール」第3位。1979年初来日。1991年「バルトーク賞」受賞。1996年ハンガリー最高の栄誉である「コシュート賞」受賞。1999年管弦楽団「カペラ・アンドレア・バルカ」を創設し、指揮者を務める。2014年イギリスのエリザベス女王よりナイトの爵位を授与された。 2022年に独ライプツィヒ市よりバッハ作品の普及に貢献した者に贈られる「バッハ・メダル」を授与された。夫人はヴァイオリニストの塩川悠子。
管弦楽団「カペラ・アンドレア・バルカ」のメンバーは、普段はソリスト・室内楽奏者として世界的に活躍している音楽家たちであり、いかなる常設オーケストラにも所属していない。彼らは、ザルツブルクの音楽祭「モーツァルト週間」で1999年から2005年にかけて行われたモーツァルトのピアノ協奏曲全曲演奏会のために、アンドラーシュ・シフが直々に出演を依頼した演奏者たち。以来、同音楽祭から定期的に招かれている。1999年からは、イタリアのヴィチェンツァにあるオリンピコ劇場でオマッジョ・ア・パッラーディオ音楽祭を主宰している。同楽団は2026年に解散を予定しており、今回が最後の来日公演。
管弦楽団「カペラ・アンドレア・バルカ」のメンバーは、普段はソリスト・室内楽奏者として世界的に活躍している音楽家たちであり、いかなる常設オーケストラにも所属していない。彼らは、ザルツブルクの音楽祭「モーツァルト週間」で1999年から2005年にかけて行われたモーツァルトのピアノ協奏曲全曲演奏会のために、アンドラーシュ・シフが直々に出演を依頼した演奏者たち。以来、同音楽祭から定期的に招かれている。1999年からは、イタリアのヴィチェンツァにあるオリンピコ劇場でオマッジョ・ア・パッラーディオ音楽祭を主宰している。同楽団は2026年に解散を予定しており、今回が最後の来日公演。
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最初の曲のモーツァルト:ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K.488は、第24番K.491とともに、1786年に3回開かれたモーツァルトの予約音楽会のために作曲された。モーツァルトは、ほとんどの協奏曲において、自筆による総譜にカデンツァを書き込んでいないが、この作品では第1楽章のカデンツァが完全に記されている。しかし、第2楽章にも第3楽章にもカデンツァは置かれていない。絶え間なく華麗なパッセージが現れ、いつもは非常に好んでいる即興演奏の技法を差し挟む余地がなかったのだと思われる。それだけ、この作品が極度に力を集中して作曲されたことを示している。
今夜のピアノ・指揮:アンドラーシュ・シフとカペラ・アンドレア・バルカのモーツァルト:ピアノ協奏曲第23番は、全てが自然に流れる落ちる深山の清流のように、清々しく、生き生きと光り輝くようなその演奏内容に耳が釘付けとなった。アンドラーシュ・シフのピアノ演奏は、モーツァルトを弾くのに、これ以上ないとも言える透明感と同時に温もりのある音質が、聴く者にとって満足感に十分に浸れるものとなっていた。第2楽章の憂いに満ちたメロディーも、どちらかというと控えめの演奏に徹したもので、これがかえって聴く者の胸を打つ。カペラ・アンドレア・バルカの演奏は、アンドラーシュ・シフとの一体感が完全無比であり、かつ、一流奏者たちの集団らしく全体に引き締まった伴奏の妙味を味わせてくれた。今夜は久ぶりにオーソドックスなモーツァルト:ピアノ協奏曲を存分に楽しむことができて大いに満足。
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次の曲のモーツァルト:交響曲第40番 ト短調 K.550は、1788年7月25日にウィーンで完成された。同年に作曲された第39番、第41番「ジュピター」とともに”3大交響曲”と呼ばれる。モーツァルトの作品の中でも最も有名な曲の1つであり、モーツァルトの交響曲のうち短調のものはこの作品を含めてわずか2曲しかなく、その両方がト短調であるため、こちらを「大ト短調」、もう一方の交響曲第25番を「小ト短調」と呼ぶことがある。第40番はトランペットとティンパニが用いられていないほか、第25番とは全体の構成、調性の選択、移行の仕方など、かなり多くの点で類似性が認められる。
今夜のアンドラーシュ・シフ指揮カペラ・アンドレア・バルカのモーツァルト:交響曲第40番は、比較的早めのテンポで曲の演奏が始まる。曲の隅々にまで目の行き届いた、なんと力の入った演奏であることか。もう、楽団の一人一人がアンドラーシュ・シフの指揮に全幅の信頼を寄せて演奏していることがスピーカー越しにひしひしと伝わってくる。カペラ・アンドレア・バルカは一流演奏家が集まった混成部隊の室内オーケストラであるが、そんなことは感じさせないほど全体に統一感のある演奏内容が素晴らしい。アンドラーシュ・シフの指揮は、我々の中にあるモーツァルト像を生き生きと表現し尽くし、あたかも、モーツァルトが現代に蘇ったような躍動感あふれる演奏内容となった。<蔵 志津久>