シベリウス:バイオリン協奏曲
メンデルスゾーン:バイオリン協奏曲
ヴァオリン:堀米ゆず子
イヴァン・フィッシャー指揮/コンセルトヘボウ管弦楽団
CD:CBS/SONY RECORDS 30DC5111
堀米ゆず子のヴァイオリンは、繊細でいて、しかも情感のゆれの表現が巧みなところが魅力で、今の若いバイオリニストがなかなか引き出せない情景を描ききる。しかも、ばねのような強靭さも持ち合わせている。シベリウスとメンデルスゾーンのバイオリン協奏曲は目いっぱいにバイオリンを鳴らす演奏が多い中、堀米ゆず子は曲そのものの中に入り込み、表面的でない何かを探り出そうとしているかのような、心の奥底からの共感に基づいた演奏となっている。このCDの録音は1988年と今から20年前だ。
堀米ゆず子は1980年に日本人として初めてエリザベート国際コンクールで優勝し、その後マールボロ音楽祭など海外での活躍が中心で、現在ベルギーに在住している。このこともあり、最近の知名度は日本ではあまり高いとはいえないが、その実力のほどは現役の日本人のヴァイオリニストとして屈指の存在となっている。今後、さらなる日本での演奏会活動を期待したいところだ。(蔵 志津久)