シューマン/ブラームス/シューベルト歌曲集
コントラルト:カスリーン・フェリア
ピアノ:ジョン・ニューマーク/フィリス・シュプール/ベンジャミン・ブリトゥン
CD:独DECCA 433 471-1
カスリーン・フェリア(1912-1953年)は、英国の著名なコントラルト(アルト)。ブルーノ・ワルターに見い出され、ワルターと競演したマーラー「大地の歌」は有名なレコードで、シューマン/ブラームス/シューベルトの歌曲集のレコードも、ワルターがピアノ伴奏した盤があるが、これは3人のピアノ伴奏によるもの。最初はシューマンの「女の愛と生涯」で、このCDの中心をなしている。普通「女の愛と生涯」はソプラノかメゾソプラノのよって歌われるのを我々は聴きなれているので、コントラルトの「女の愛と生涯」を聴くと最初、異質な感覚に捉われる。しかし、聴きこんでいくうちに「女の愛と生涯」の別な側面を見せられるようで、聴き終えて新しい発見といった気持ちにさせられる。安定した光沢のある、心に残る魅力ある歌声で、ソプラノを聴きなれた耳には特に新鮮に聴こえる。
フェリアの声の特性により合うのがシューベルトのリートだ。存在感のあるコントラルトの歌声は、シューベルトの歌を寄り深く、大きな空間へと導いてくれる。ソプラノやメゾソプラノでは、こんな奥行きのあるシューベルトはなかなか表現できないであろう。そして、フェリアの歌声は聴くものを包み込んでしまうような包容力を秘めており、改めてその魅力に引き込まれる。このCDの最後に、「きよしこの夜」「神の御子は」の2曲のクリスマスキャロルがオーケストラ伴奏で収められているが、これもフェリア
の歌声で聴くと一層奥行きが広い世界を感じることができる。(蔵 志津久)