ホヤの精子に存在する酵素の構造や機能がヒトのがん抑制遺伝子と似ていることを、大阪大大学院医学系研究科の岡村康司教授(神経生理学)と自然科学研究機構・生理学研究所などのグループが突き止め、19日までに米科学アカデミー紀要電子版に発表した。
似ているのは細胞のがん化を促進する物質を分解する部分で、岡村教授は「解明が進めばがん抑制遺伝子の働きを強める治療薬の開発などが期待できる」と話している。
岡村教授によると、ホヤの精子の酵素Ci-VSPの一部のアミノ酸配列はヒトのがん抑制遺伝子PTENとほぼ同じで、実験でどちらも細胞の増殖や分裂などを制御するリン脂質物質のPIP3を分解することが分かった。
ヒトのPTENの遺伝子が異常になりPIP3が増加しすぎると、細胞ががん化し、脳腫瘍(しゅよう)や前立腺がん、白血病などを発症する。
ホヤの酵素とPTENは配列のアミノ酸1個だけが異なり、PIP3の分解能力にも違いがある。そのため、岡村教授はそれぞれのアミノ酸の働きを調べればがん抑制遺伝子の謎が解明できるとみている。
[時事ドットコム 2008年06月19日]
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200806/2008061900930
生理学研究所 リサーチトピック
海産動物ホヤの精子の分子から発がんのメカニズムへ手がかり
—化学信号「リン脂質」を操る仕組み解明へ—
http://www.nips.ac.jp/news/2008/20080619/
海産動物ホヤの精子の分子から発がんのメカニズムへ手がかり -化学信号「リン脂質」を操る仕組み解明へ-(自然科学研究機構生理学研究所)【研究情報】
大阪大学医学系研究科の岡村康司教授(自然科学研究機構・生理学研究所)と岩崎広英博士(自然科学研究機構・生理学研究所・助教、現ハーバード大学)の研究グループは、海産動物ホヤの精子に存在するCi-VSPという酵素が、がん抑制遺伝子PTENと似たタンパク質構造をもつことに着目し、どのように細胞内の化学信号(リン脂質)を操っているのか、そのメカニズムを明らかにしました。
本研究はUCサンジエゴのJack E. Dixon教授との国際共同研究(ヒューマンフロンティアサイエンスプログラム)として行われました。
6月2日(電子版)に公開された米国アカデミー紀要(PNAS)に発表されました。
Ci-VSPのVSPとは、Voltage Sensor-containing Phosphatase(電位センサーをもつリン脂質脱リン酸化酵素)の略。岡村教授の研究グループが2005年に発見した、電気信号を化学信号に変換するというユニークな特性をもつ膜タンパク質です。Ci-VSPは、がん抑制遺伝子として知られているPTENと良く似たタンパク質構造を持っています。また、PTENは細胞の増殖に関わるリン脂質PIP3を分解することで、がんの発生を抑えることが知られています。今回、研究グループは、がん抑制遺伝子PTENとCi-VSPとを詳細に比較したところ、Ci-VSPは、PTENと似た構造をもちますが、リン脂質PIP3を分解するだけでなく、PIP2と呼ばれる別のリン脂質も分解することを明らかにしました。
PTENとCi-VSP酵素の化学信号を伝える部分の違いは、たった一つのアミノ酸配列だけです。この違いから、PTENがどのようにリン脂質PIP3を分解し、がんの発生を抑えているのか、そのメカニズム解明にもつながるものとして期待されます。
なお、詳細については下欄のリンク先をご覧ください。
[バイテクコミュニケーションハウス 2008年06月20日]
http://www.biotech-house.jp/news/news_695.html
気仙沼のおみやげに「ホヤの酒蒸し」という珍味があります。
東北の三陸から南津軽の辺りに旅行されると、他にも様々なホヤを食材とした料理を味わうことができます(旬は5月から8月、そうまさにシーズン酣(たけなわ)、ラットは酒の肴にホヤ、大好物です。ホントに不思議な、宇宙から来た生物のような形をしていますが、脊椎動物の祖先、脊索動物の仲間で、幼生はちゃんと泳ぐし岩に貼り付いて一生を終えるその体にも脳神経節や心臓があります。わたしたちと共通の遺伝子、共通のしくみを使って生きているわけです。
そういう訳で、ホヤを実験動物に使っている研究室は意外とたくさんあります(ナメクジウオも瀬戸内海では天然記念物ですが、海外から取り寄せて実験材料に利用されるそうです)。
このような不思議な形の生物の研究から、ヒトの難病治療のヒントになる成果が発見されるのは、とても興味深いことだと思います。
似ているのは細胞のがん化を促進する物質を分解する部分で、岡村教授は「解明が進めばがん抑制遺伝子の働きを強める治療薬の開発などが期待できる」と話している。
岡村教授によると、ホヤの精子の酵素Ci-VSPの一部のアミノ酸配列はヒトのがん抑制遺伝子PTENとほぼ同じで、実験でどちらも細胞の増殖や分裂などを制御するリン脂質物質のPIP3を分解することが分かった。
ヒトのPTENの遺伝子が異常になりPIP3が増加しすぎると、細胞ががん化し、脳腫瘍(しゅよう)や前立腺がん、白血病などを発症する。
ホヤの酵素とPTENは配列のアミノ酸1個だけが異なり、PIP3の分解能力にも違いがある。そのため、岡村教授はそれぞれのアミノ酸の働きを調べればがん抑制遺伝子の謎が解明できるとみている。
[時事ドットコム 2008年06月19日]
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200806/2008061900930
生理学研究所 リサーチトピック
海産動物ホヤの精子の分子から発がんのメカニズムへ手がかり
—化学信号「リン脂質」を操る仕組み解明へ—
http://www.nips.ac.jp/news/2008/20080619/
海産動物ホヤの精子の分子から発がんのメカニズムへ手がかり -化学信号「リン脂質」を操る仕組み解明へ-(自然科学研究機構生理学研究所)【研究情報】
大阪大学医学系研究科の岡村康司教授(自然科学研究機構・生理学研究所)と岩崎広英博士(自然科学研究機構・生理学研究所・助教、現ハーバード大学)の研究グループは、海産動物ホヤの精子に存在するCi-VSPという酵素が、がん抑制遺伝子PTENと似たタンパク質構造をもつことに着目し、どのように細胞内の化学信号(リン脂質)を操っているのか、そのメカニズムを明らかにしました。
本研究はUCサンジエゴのJack E. Dixon教授との国際共同研究(ヒューマンフロンティアサイエンスプログラム)として行われました。
6月2日(電子版)に公開された米国アカデミー紀要(PNAS)に発表されました。
Ci-VSPのVSPとは、Voltage Sensor-containing Phosphatase(電位センサーをもつリン脂質脱リン酸化酵素)の略。岡村教授の研究グループが2005年に発見した、電気信号を化学信号に変換するというユニークな特性をもつ膜タンパク質です。Ci-VSPは、がん抑制遺伝子として知られているPTENと良く似たタンパク質構造を持っています。また、PTENは細胞の増殖に関わるリン脂質PIP3を分解することで、がんの発生を抑えることが知られています。今回、研究グループは、がん抑制遺伝子PTENとCi-VSPとを詳細に比較したところ、Ci-VSPは、PTENと似た構造をもちますが、リン脂質PIP3を分解するだけでなく、PIP2と呼ばれる別のリン脂質も分解することを明らかにしました。
PTENとCi-VSP酵素の化学信号を伝える部分の違いは、たった一つのアミノ酸配列だけです。この違いから、PTENがどのようにリン脂質PIP3を分解し、がんの発生を抑えているのか、そのメカニズム解明にもつながるものとして期待されます。
なお、詳細については下欄のリンク先をご覧ください。
[バイテクコミュニケーションハウス 2008年06月20日]
http://www.biotech-house.jp/news/news_695.html
気仙沼のおみやげに「ホヤの酒蒸し」という珍味があります。
東北の三陸から南津軽の辺りに旅行されると、他にも様々なホヤを食材とした料理を味わうことができます(旬は5月から8月、そうまさにシーズン酣(たけなわ)、ラットは酒の肴にホヤ、大好物です。ホントに不思議な、宇宙から来た生物のような形をしていますが、脊椎動物の祖先、脊索動物の仲間で、幼生はちゃんと泳ぐし岩に貼り付いて一生を終えるその体にも脳神経節や心臓があります。わたしたちと共通の遺伝子、共通のしくみを使って生きているわけです。
そういう訳で、ホヤを実験動物に使っている研究室は意外とたくさんあります(ナメクジウオも瀬戸内海では天然記念物ですが、海外から取り寄せて実験材料に利用されるそうです)。
このような不思議な形の生物の研究から、ヒトの難病治療のヒントになる成果が発見されるのは、とても興味深いことだと思います。