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医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

脳の巧みな時間順序の推定法の解明=科学技術振興機構、順天堂大学

2006年05月29日 | 脳、神経
 JST(理事長 沖村憲樹)と順天堂大学(理事長 小川秀興)は、左右両方の手に加えた刺激の順序の判断に、これまでの経験を加味した「ベイズ推定」が用いられることを明らかにしました。
 本研究チームは、右手と左手に少し時間をずらして刺激を加える、という作業を何回も繰り返すと、左右の手に同時に与えた刺激が、繰り返した刺激と同じ順序に感じられるようになることを見出しました。この錯覚は皮膚の感覚器からの情報に加えて、事前の経験を総合して判断する「ベイズ推定」と呼ばれる効率の良い推定法で良く説明できました。感覚器からの信号にノイズがある場合には、ある程度経験に頼る「ベイズ推定」を行うことで誤りを最小化できることが数学的に示されています。この錯覚の発見は、脳の中には時間順序を判断する際に巧みな「ベイズ推定」を行うメカニズムが組み込まれていることを示す成果です。
 学習障害の一つである「難読症」の背景には、次々と入力される感覚信号の順序判断をする脳の機能に障害がある可能性があると言われています。脳が感覚信号を順序付けるメカニズムの一端を解明した本研究の成果は、これらの障害の原因を解明する手がかりとなる可能性があります。
 この研究成果はJST戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)「脳の機能発達と学習メカニズムの解明」研究領域(研究総括:津本 忠治(独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センター ユニットリーダー))の研究テーマ「応用行動分析による発達促進のメカニズムの解明」の研究代表者・北澤 茂(順天堂大学大学院医学研究科 教授)と宮崎 真(早稲田大学人間総合研究センター 助手)、山本慎也(独立行政法人産業技術総合研究所 研究員)らの共同研究によって得られたもので、米科学雑誌「Nature Neuroscience(ネイチャー・ニューロサイエンス)」オンライン版に2006年5月28日(アメリカ東部時間)に公開されます。

Bayesian calibration of simultaneity in tactile temporal order judgment
Published online: 28 May 2006 | doi:10.1038/nn1712
http://www.nature.com/neuro/journal/vaop/ncurrent/abs/nn1712.html

[2006年05月29日/JSTプレスリリース]
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20060529/index.html

ホヤの体作る 遺伝子の働き 全容解明=京都大学

2006年05月29日 | 発生
--脊椎動物の原形--

 海に住むホヤが発生初期に体をつくり上げる際の遺伝子の働きのほぼ全容を、京都大大学院理学研究科の佐藤矩行(のりゆき)教授(発生生物学)らの研究グループが解明し、26日付の米科学誌サイエンスに発表した。ホヤの仲間は脊椎(せきつい)動物の原形といわれ、佐藤教授は「脊椎動物の進化の仕組みを解明する大きな手がかりになる」としている。


 佐藤教授らはこれまでの研究で、ホヤの一種「カタユウレイボヤ」の全遺伝情報(ゲノム)を解読。ホヤの受精卵が8回、細胞分裂した時点でどの部分がそれぞれどんな器官や組織に成長するのか決まっていることは判明していたが、それを制御する遺伝子の働きや結びつきは不明だった。

 佐藤教授らは約2年かけて、この時期に働く76の遺伝子ごとに一つひとつ機能を消失させ、他の遺伝子との結びつきなどを調査。その結果、ある遺伝子では神経をつくる機能をなくすと、別の遺伝子とつながって表皮ができるなど、約3000のパターンがあることを発見した。

[読売新聞(関西版) / 2006年05月29日]
http://osaka.yomiuri.co.jp/eco_news/ec60529b.htm