ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

グレープフルーツジュースに含まれる薬物相互作用をもたらす原因物質を特定=UCN大学

2006年05月09日 | 食品・栄養
 降圧薬やコレステロール降下薬をはじめ、さまざまな薬剤を服用するとき、医師からグレープフルーツジュースを飲まないよう指示されることは珍しくない。この理由は、グレープフルーツジュースによって薬剤が血中に取り込まれる効率が上がるため、用量および効果が増大し、時に危険な副作用が生じる可能性があるためだ。今回、米ノースカロライナ大学(UCN)チャペルヒル校総合臨床研究センターのPaul Watkins博士らによって、この原因となる物質が特定され、研究結果が医学誌「American Journal of Clinical Nutrition」5月号に掲載された。
 Watkins氏によると、かつてはグレープフルーツの苦味成分であるフラボノイド類がこの薬物相互作用の原因であると考えられていた。今回の研究は、無調整のグレープフルーツジュース、フラノクマリン類(furanocoumarins)と呼ばれる物質を除去したグレープフルーツジュース、オレンジジュースを比較したもの。その結果、フラノクマリンを除去すると、フラボノイド類をすべて残していても薬物相互作用が生じなかった。

 Watkins氏は、この知見には3つの意味があると述べている。第一に、ほかの果物についてもフラノクマリンの有無から薬物相互作用を生じるかどうかが予測できるということ。第二に、フラノクマリンを除去することにより、薬物相互作用が生じないジュースの製造が可能になること。第三に、薬剤にフラノクマリンを添加することにより、薬剤の「生物学的利用能」を向上させることができる可能性が出てきたことである。体内への薬剤の取り込みを増大させるというグレープフルーツジュースの作用は、「うまくコントロールできれば好ましい作用にもなり得る」とWatkins氏はいう。

 米エール大学(コネチカット州)医学部予防研究センターのDavid L. Katz博士は、この第三の可能性を最も重要だと考える。相互作用の生じないジュースの製造は、ある意味ささいな問題だが、フラノクマリンを用いて薬剤のレベルを調整できる可能性は極めて興味深いという。正体がわからない状況では単に有害な物質でしかなかったが、「特定された今、それ自体が有用な治療薬となる可能性がある」とKatz氏は述べている。(HealthDay News 5月9日)


[2006年5月9日/HealthDayNews]
http://www.healthday.com/view.cfm?id=532584
http://health.nikkei.co.jp/hsn/news.cfm?i=20060518hj001hj