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「彼女がその名を知らない鳥たち」(2017年日本映画)

2017年11月22日 | 映画の感想・批評


 15歳年上の陣治(阿部サダヲ)と十和子(蒼井優)は同居しているが、十和子は8年前に別れた黒崎(竹野内豊)のことが忘れられず、当時のビデオをこっそり見たりしている程で、陣治の一方的な献身で何とか成り立っている。ある日、購入した(してもらった?)腕時計のクレーム(勝手な言いがかりとしか思えないが)をした先の店長の妻子ある水島(松坂桃季)と出会い、黒崎の面影とダブる所がある彼との不倫に引き摺りこまれていくこととなり・・・。
 冒頭から、クレーマー紛いの電話を掛けている十和子と雑で下劣な陣治が登場し、更に、十和子と別れた当時の黒崎の信じがたい行動が分かり、あまりにも下劣で唖然とさせられ、水島のチャラチャラした言動に十和子が振り回されてしまう等、決して、気分が良くなる展開では無かったが、ラストの十和子の一言ですべて救われた気がする。
 この映画は、男性向け恋愛映画だと思う。女性目線だと陣治の行動は、ストーカーと捉えかねないだろうから、男性目線の恋愛映画ということだ。まだ、2本しか観ていないが、「日本で一番悪い奴ら」を撮った白石和彌監督らしいと思う。前作も、警察を舞台にした男くさい映画だった。私は、前作もとても面白く観たが、女性好みではないだろうと思う。監督自身も男が惚れる男というタイプなのだろうかと想像してしまった。
 癖の強い役柄ばかりなので、演技にも気合いが入っていて、皆がその人物自身になりきっている感があり、画面全体に力があった。特に、十和子の姉の役を演じた赤澤ムックの演技は、十和子と一緒にいる際は、十和子へのイライラする感情が溢れかえっていて、上手いと感じた。
(kenya)

監督:白石和彌
脚本:浅野妙子
原作:沼田まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち」(幻冬舎文庫)
撮影:灰原隆裕
出演:蒼井優、阿部サダヲ、松坂桃李、村川絵梨、赤堀雅秋、赤澤ムック、中嶋しゅう、竹野内豊他