シネマ見どころ

映画のおもしろさを広くみなさんに知って頂き、少しでも多くの方々に映画館へ足を運んで頂こうという趣旨で立ち上げました。

「バクマン。」 (2015年 日本映画)

2015年11月11日 | 映画の感想・批評


 例年より遅くなった就職戦線も今がたけなわだが、若い人たちにとって仕事を決めるというのは人生の一大事。できたら自分の好きなこと、本当にやりたいことをやって生活できたらと思うものだが…。本作の主人公真城最高(ましろもりたか・サイコー)と高木秋人(たかぎあきと・シュージン)が目指したのはマンガ家。それもマンガ家志望なら誰もが憧れる「週刊少年ジャンプ」の連載に採用され、人気投票1位を獲得するというものだ。
 夢を追いかけるこの二人の関係が面白い。サイコーは並外れた画力の持ち主で、子どものころからマンガ家志望。影響を受けたのはマンガ家だった叔父の川口たろうだが、川口の壮絶な死に直面し一度は夢をあきらめていた。一方のシュージンは文才があり、作文や感想文が得意。マンガ家になりたいとは思っていたが、絵が下手なことは自らも認めるところ。そこで自分の相棒となる絵の上手な人物を探していて、見つけたのがサイコーだったというわけだ。二人がタッグを組めばこわいものなしといいたいところだが、そこにはたくさんのライバルたちが待ち受けていた。特に十期ぶりに手塚賞に選ばれた新妻エイジ(染谷将太好演)は二人と同じ17歳の天才。この三人がマンガの世界に入ってペンを持って戦うCGバトルはかつて見たことのない迫力シーンになっている。人格の80%はマンガでできていると自負するほどのマンガ好き・大根仁監督が最も描きたかったのはきっとこのシーンだったに違いない。
 サイコーを演じるのは佐藤健。シュージンには神木龍之介。二人は「るろうに剣心」でも共演しているだけあって息もぴったり。そして何よりも原作の二人になりきって懸命に演じているところがいい。映画を観終わって真っ先に書店で原作を探したが、その表紙を見て納得した。まさにそこには佐藤と神木そのものがいたからだ。
 この傑作をかつて二人と同じようにジャンプのマンガ家を目指し、このブログの源となった本「シネマ見どころ」のイラストを担当してくれた「しみずやすお」氏に捧ぐ。感謝。
 (HIRO)

監督:大根仁
脚本:大根仁
撮影:宮本亘
原作:大場つぐみ、小畑健
音楽:サカナクション
出演:佐藤健、神木隆之介、染谷将太、小松菜奈、桐谷健太、新井浩文、山田孝之、リリー・フランキー、宮藤官九郎