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「東京家族」(2013年 日本映画)

2013年03月07日 | 映画の感想・批評


 時代とともにうつりゆく日本の家族の姿を見つめ続けてきた山田洋次監督の50周年記作となる本作は、昨年「世界の映画監督が選んだ最も優れた映画」のNO1に選ばれた「東京物語」をモチーフにしながら、今を生きる家族を描いた力作だ。
 瀬戸内海の小島で暮らす老夫婦が子どもたちに会いに東京へやってきた。開業医の長男、美容院を営む長女、舞台美術の仕事をしている次男、久しぶりに集まった家族はお互いに思いやり、夫婦は子どもたちの家で順に世話になるが、生活リズムの違いからか、徐々に溝ができてしまう。大切なのに煩わしい、近くて遠い家族の有様は,自分の場合と同調できて、何ともおかしくて切ない。
 鑑賞後、どうしても確かめたくなって、「東京物語」のDVDを借りて見た。さすが、「世界一の名作」だけあって,何度見ても飽きることはない。配役も言わずと知れた笠智衆、東山千榮子、原節子に加え、山村總、杉村春子、三宅邦子、大坂志郎に香川京子と超豪華。「小津調」と形容される独自の技法で戦後間もない時代の親子関係を淡々と描いたこの不朽の名作を、山田監督も大いに意識したことであろう。しかし、見終わった後、同じ台詞や場面がいっぱいあったのに違った印象を受けるのはなぜだろう。それはやはり妻夫木聡演じる次男とその恋人蒼井優の存在が大きい。地震後の福島の被災地で出会ったというこの二人が実に自然で爽やかで、「明るい未来」を感じさせてくれるのだ。
 「家族を思いやること」を尊び、「希望の光」を失わない、山田監督らしい作品がまた一つ誕生した。 
(HIRO)


監督:山田洋次
脚本:山田洋次・平松恵美子
撮影:近藤眞史
出演:橋爪功・吉行和子・西村雅彦・夏川結衣・中嶋朋子・林家正蔵・妻夫木聡・蒼井優