西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

4世杵屋六三郎・6

2009-03-01 | 三味線弾き (c)yuri saionji
8代目団十郎が死んだ翌年(1846)の10月2日、
一門の月浚い会から帰った六三郎(4世)は、ほっと一息、茶をすすっていた。
と、ドカーンという大音響とともに、いきなり身体が天井に跳ね上がった、
と思う間もなく、どすとん落ちた。
幸い怪我もなく、無事だった。
マグニチュード7.5の直下型大地震、”安政の大地震”だ。

余震は約、ひと月も続き、江戸中がめちゃめちゃに壊れてしまった。
揺れがおさまると、六三郎は無性に若かりし頃入り浸っていた吉原が恋しくなり、
えっさえっさと仮宅(近所の百姓家を借りての仮営業)へ出向いた。

久しぶりに女の色香を堪能した六三郎は幸せに帰宅。
翌日は元気に不忍の弁天様へお参りをして、

「今までの若きこころに悟れかし 浮世は花の夢見草にて」

と、昔を回想した歌を詠んだまではよかったのだが、
その日の夜から高熱を出して寝込んでしまった。

六三郎の危篤を聞いて駆けつけたのが、くだんの遊女、若紫。
「どんなもんだい」
と、熱にうなされながらも六三郎の鼻の穴はふくらむ。

「さすがは昔取った杵柄」
と、周りの人に羨ましがられながら、六三郎は76才の天寿を全うした。
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