みなさまご存知の歌、
「ほととぎす 鳴きつるかたを眺むれば ただ有明の月ぞ残れる」
これは、百人一首にある藤原実定の歌です。
「ほととぎすが鳴いたと思ってその方向を眺めたら、
ただ有明の月だけが残っているよ」
という意味です。
これを俳人の滝 瓢水がこう転写した。
「さてはあの 月が鳴いたか ほととぎす」
これから
「一声は 月が鳴いたか ほととぎす」
とバリエーションを広げ、
長唄の「とんび奴」(1814・文化11年・4世杵屋六三郎作曲)ではこうなった。
「一声は きゃつが鳴いたか 初鰹」
きゃつとは鰹をくわえて飛んでいった鳶のこと。
実定もびっくりのアレンジだ。
やんごとなき世界が庶民に下りるとこうなる、という面白いサンプルでした。