西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

鏡獅子―45

2009-06-10 | 役者 (c)yuri saionji
9代目市川団十郎


市川家の名跡を背負った団十郎は俄然、歌舞伎の革新運動に燃える。
従来の支離滅裂、ないまぜ的な歌舞伎では、これからの時代に受け入れられない。
何しろ、団十郎は養父の母つねに厳ししつけられ、
一般教養を身につけた、平行感覚のノーマルな人間に育った。

例えば「勧進帳」にしても、8代目の演出をさらに改良し、
四天王や、士卒の衣装を限りなくお手本とした能に近づけた。
”滝流しの合方”を正次郎(3世)に作らせたのも、この頃で、
「勧進帳」を現在の形に完成させたのも、9代目だ。

義弟、権之助(8代目)が、芝に新設した河原崎座で、
団十郎の演劇実験は続く。

時代は激動の明治初期、
江戸歌舞伎の祖として君臨してきた中村座が、
経営不振と近代化の浪に流されて、
250年の歴史に幕を下ろしたのも(1875年)この頃だ。


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tea breaku・海中百景
photo by 和尚